※この作品はR-18です。

侯爵令嬢物語【完結】〜羞恥と快楽の果てに令嬢と女騎士の姉妹が選んだ甘美な隷従   作:ドン・ドナシアン

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4章  隷嬢姉妹の選択
36  スピナの魔核


 ゆっくりと意識が覚醒していく。

 ジャンヌは、項垂れていた頭をあげた。

 ──視界は、揺れている。

 

 重いまぶたの奥に、橙色の光が滲んでいた。灯火の揺れが、石壁にゆるく反射している。視点はまだ定まらず、像は輪郭を保てない。けれど、ゆっくりと、細部が現れはじめる。

 

 正面──。

 木の机があった。広くはない。古びた材に鉄の鋲が打たれ、片脚だけに獣の彫金が施されている。実用の中に演出を溶け込ませたような、貴族軍人の典型だった。

 その机の奥に、ひとりの男が座っていた。

 

 ヴェルナー=レグニエ。第一騎士隊長。

 

 名前と顔は一致した。面識はない。だが、王都の軍務報で何度か目にしていた。武と政を静かに秤にかけ、決して前に出ない男だ。

 いま、その口元に銀の盃がある。ゆるく傾けて口に運び、その盃を置くと、今度は、肉とパンを切り分けて食べ始めた。だが咀嚼の気配はない。味わっているというより、形式として“食べている”だけだった。

 

 ジャンヌは、自分の姿勢に気づいた。

 

 両手首に革の枷がかけられ、鎖が天井の梁から斜めに引かれている。肘は伸びきり、肩の関節にはじわじわと痺れが蓄積していた。

 足は地についている。けれど、両踝には鉄の輪。床に固定された環に繋がれている。左右に引き開かれた脚には力の逃げ場がない。

 

 立ったまま、吊られている。支える筋肉は引き伸ばされ、痛みよりも先に、重さだけが染みていく。

 

 衣服は──剥がされていた。

 

 肩に数枚の布切れだけを残し、上半身はさらけ出されている。乳房の上には布の痕跡すらなかった。腰に細い紐だけの下着がかろうじて残され、骨に食い込む感触と半裸を晒す羞恥が、まだ自分が女であることを思い出させた。

 

 けれど、それ以上に──

 

 ──ここは、石牢だ。

 

 壁は粗く刻まれている。削ったというより、叩き割って積み上げたような岩肌。湿気が石の目に染みていて、触れずともひんやりと伝わる。苔のにおいと、古い血の鉄臭さが空気の底に沈んでいた。

 天井は低く、垂れた梁の下に鉄製の滑車と輪環。ジャンヌの腕を吊っている鎖も、そこにかけられていた。錆は赤黒く、過去の使用を否応なく語っている。

 

 床は石畳。けれど、長年の沈殿物と苔でぬめりを帯びている。排水のための溝が床の中央に一本、格子のように切られていたが、流れの跡はなく、むしろ詰まりかけた血の塊のような染みがあちこちにあった。

 

 ──声は響かない。

 

 空気に音がない。反響がないのではなく、吸い込まれていく。通気孔も、外光もない。灯りは三つ。壁に打ちつけられた油灯が、わずかに揺れている。その光だけが空間をかろうじて照らし、逆に影を濃くしていた。

 

 足元近くの壁──そこに、浅く彫られた爪の跡のような線が見えた。数字か、文字か、意味はない。けれど、それが“誰かがここで数を数えようとした証”であることだけは、皮膚が理解していた。

 

 ──閉じられている。

 

 時間も、音も、記憶も。

 ジャンヌは、もう一度視線を真っ直ぐに向け直す。

 ヴェルナーの視線が、こちらにあった。

 だが、そこに欲望はない。冷笑も、蔑みもない。ただ、計測していた。処理対象を評価する、それだけの視線だった。

 その机の脇に、魔道具が置かれていた。

 

 幻写晶──。

 

 透明な鉱石の芯に、淡い魔光が周期的に点滅している。記録している。身体の向きも、息の荒さも、声の震えも。すべてが……。

 ジャンヌは、微かに口を開いた。

 

「……律儀なものだね。裁く前に、記念撮影とは」

 

「崩れるところから撮るのが、手順でね」

 

「ふうん。あんた、そんなに記録ってやつにうるさい人間だったんだ」

 

「証拠は後から効く。本人の言葉よりも、ね」

 

「なるほど。それで、現場まで来て、監督業までやってるってわけだ」

 

「誤差を減らすには、素材を近くで観察することだ」

 

「素材、ね。私のことを、ずいぶん面白い被写体だと?」

 

「価値があると思った。実験体としてな」

 

「なるほど。直接見ると、壊れがいがあるように見えたってことかい」

 

「そういうことだ」

 

「悪趣味だね」

 

「趣味でなければ、ここまで徹底できない」

 

「記録、記録って、そんなものが君らの正義になるの?」

 

「正義には興味がない。残るかどうかだ」

 

 ジャンヌは、机の上の幻写晶を一瞥しながら、わずかに口元を歪めた。

 

「じゃあ、たっぷり記録すればいい。……こっちはまだ、崩れる予定はないけどね」

 

「耐える時間も、記録する」

 

 ヴェルナーの声が、幻写晶の光とともに沈んだ。

 返す言葉はなかった。ジャンヌは口を閉じたまま、視線だけを机の上から外した。

 静かだった。灯の揺れだけが、石壁に細い影を踊らせている。

 

 ──そこで、ふと気づいた。

 

 首の裏。うなじのくぼみのすぐ下に、妙な感覚があった。

 触れてはいない。何も当たっていない。それでも、そこを起点に、じわじわと神経の奥に向かって痺れが広がっていく。

 筋肉が動かないわけではない。けれど、どこにも力が入らない。腕も、脚も、支えられていないのに、感覚だけが浮いていた。

 身体の芯に、誰かが手を入れているような──そんな異様な感覚。

 指先が震えた。けれど、それは自分の意志ではなかった。

 

 ──これは、魔道的な制御だ。

 

 毒ではない。もっと直接的な、構造そのものに作用するもの。

 ジャンヌは目を細めた。

 

「……首に、なにを仕込んだ?」

 

 声が落ち着いているのは、自分でも意外だった。

 ヴェルナーは、すぐには答えなかった。

 ただ、視線を逸らさず、幻写晶が記録を続ける音だけが、静かに間を埋めていた。

 ヴェルナーが、机の上に置かれた制御盤に指をかけた。銀と銅の合金で作られた操作具。突起のひとつを押し込む動作は、ためらいのないものだった。

 

「……体験してみるか?」

 

 言葉の直後、ジャンヌの肌を風が撫でた。牢の空気はいつも通り冷たいはずなのに、その流れが皮膚に触れた瞬間、ぞくりと熱が背筋を走った。

 

 ──なに、これ。

 

 なにも触れられていない。それなのに、胸がひくついた。布の内側で乳首が硬くなり、下腹がひどく熱い。脚の間にわずかに滲むものを感じ、思わず身体が震える。

 

「……っ……」

 

 言葉にならない声が漏れた。

 

「神経の操作体だ。名称は《スピナ=グラヴィス》──旧王朝で奴隷管理に使われていた魔道核だ」

 

 ヴェルナーの声は、まるで書類を読み上げるようだった。

 

「いまの王国法では禁忌指定になっているが、純血派の研究機関で再現に成功した。お前の首の裏に埋めた“核”が、全身の神経に反応している」

 

「……な……に……」

 

 ようやく絞り出したその言葉に、ヴェルナーは淡々と頷いた。

 

「性感を十倍程度に引き上げてやろう」

 

「うわっ」

 

 その瞬間、さらに全身が熱くなる。

 下着が股間に擦れる。その一点が、鋭く脳を撃った。立っているのがやっとだった。背を伸ばそうとしたが、体の芯が崩れていくような感覚に変わっていた。

 汗が、背中を伝う。胸の谷間から流れた滴が、肌を這うだけで刺激になった。

 

「……なんの、つもりだ……」

 

 言うつもりもなかった言葉が、喉から出ていた。

 喉が焼けるようだった。声はうまく整わない。脚が震え、汗が鎖骨を伝って落ちる。息をひとつ吐くたびに、股の奥がじわじわと熱くなっていく。

 ヴェルナーは、その様子に一瞥もくれず、静かに言葉を継いだ。

 

「単なる拷問では、人はなかなか落ちない」

 

「……はあっ?」

 

「人間は、痛みには耐えるようにできている。特に、訓練された者なら、死ぬまで耐えることもある」

 

 言いながら、机の上の操作盤に指先を添える。その動作すら無駄がない。次の出力の用意だった。

 

「だが──快楽と苦痛を交互に与えると、反応は変わる」

 

 ジャンヌは、呼吸を止めるようにして彼を見た。

 

「……あんた……」

 

「それが、《スピナ=グラヴィス》の目的だ」

 

 ヴェルナーの声には、どこにも熱がなかった。興奮でも興味でもない。ただ、ひとつの仕組みを説明する者の声だった。

 

「スピナ……グラヴィス……?」

 

「快楽と苦痛の組み合わせは、拷問に最適だ。それを、私は記録し、検証したい」

 

「検証……?」

 

「君の反応、持続、拒絶、崩壊。すべてが、素材になる」

 

 ジャンヌは、言葉を失っていた。

 

「私にとっては、何が壊れるかではなく、どう壊れるかが重要だ。……君には、その役を担ってもらう」

 

 その瞬間、ヴェルナーが眼だけを横に向けた。

 それだけで、騎士たちが動く。

 抵抗はできなかった。手は吊られ、足は開かされ、ただ風だけが、肌の上をなぞっていた。

 まず、胸を隠していた裂布が引き剥がされた。

 わずかに湿っていた布が、乳房の先端に引っかかる。その瞬間、空気と擦れた表面が、痺れのような感覚に変わった。

 

「……くぅっ……」

 

 息が漏れる。声ではなかったはずの音が、喉の奥からあふれ出ていた。乳首が露わになると同時に、神経が集まっていた一点に衝撃が走った。布が離れただけだったのに、そこに何かが吸いついたような錯覚すらあった。

 次に、腹部にかかっていた布きれがめくられた。

 へその下。薄く張りついていた繊維が剥がされ、粘膜の近くにまで達していた神経が、直に空気に晒された。

 

「……あ、あっ……」

 

 喉がかすれた。腹の奥が跳ね、吐く息のたびに背が反った。吊られた腕が軋み、引き伸ばされた肩の筋が震えた。

 そして、太腿の内側に残っていた裂け布が引かれた。

 皮膚に貼りついていた汗が、一気に剥がれる。そこに風が流れた。

 

「……んっ、ぁあっ……」

 

 声が明確にあふれた。唇が勝手に開き、喉がひとりでに震えた。下腹部に走った衝撃が、背中へ、胸へと連鎖していく。脈打つ感覚が、太腿の付け根に広がった。

 残されたのは、腰にかかる一枚きりの小さな下着。

 

 両腰で結ばれた細紐が、皮膚に食い込み、湿った布が中心に張りついている。《ペニティ》──平民層で広まりつつある節布型の下着。その中央には、すでに濃く丸い染みが浮いていた。

 誰の指も触れていない。なのに、全身が敏感に反応している。

 

 視線が集まっているのがわかる。

 四人の騎士たち──無言のまま、だがその顔が微かに歪んでいた。口元が緩み、頬の下に熱が浮かんでいる。誰も動いてはいない。けれど、視線が、確実に舐めてきていた。

 羞恥が熱を生む。汗が額から流れ落ち、胸の谷間を伝い、ぬるく腹を撫でる。

 その感覚にさえ、思わず腰が震えた。

 

 脚の内側に汗が伝った。太腿の付け根を通って、染みの下へと滑り落ちていく。

 その感触すら、刺激だった。

 唇が震えた。吊られた腕が引き絞られているのに、背中はわずかに反り返る。声はもう、押し殺せなかった。

 

「……ぁ、あっ……」

 

 喉の奥で、熱が滾る。冷静さは、感覚の波にかき消されていく。

 幻写晶の光が、淡く点滅を続けている。記録は止まらない。

 机の前に座ったままのヴェルナーが、わずかに視線を下に向けた。

 そして、無感情に言葉を落とす。

 

「染みているな。《ペニティ》は色が浮きやすい構造だ」

 

 その声に、とがめる響きはなかった。ただ、観察の結果を述べただけだった。

 染み──小さな布の中央に、明らかな丸い濡れ跡が浮いていた。

 皮膚の内側が焼けるような羞恥が広がる。

 喉が詰まりそうだった。頬に血が集まり、胸の奥がきりきりと疼く。

 

 顔が歪んだ。苦悶ではない。口惜しさと、羞恥。それを飲み込むようにして、吊られた身体で、できる限り脚を寄せようとした。

 ヴェルナーが静かに言った。

 

「右の者。胸に触れてみろ。軽くでいい」

 

 騎士のひとりが無言で前に出た。両手は丁寧に、そしてためらいなくジャンヌの胸元に添えられる。

 片方の手が、乳房の下側にわずかに触れた。

 

「……っ……」

 

 その時点で、肩が跳ねた。皮膚の表面に乗った熱が、奥へと引きずり込まれていく。

 もう片方の手が、胸の外側から支えるように包み込む。

 

「……くぅ……ん……」

 

 乳首にはまだ触れていない。それなのに、空気が通るたびに突端が反応し、ぴんと張っていくのがわかる。

 親指が、谷間の内側に沿って滑った。

 皮膚を押しつけるのではない。触れて、止まった。

 

「……あっ……あ……ああっ……」

 

 声が、喉の奥から震える。跳ねるような反応が、腰へ、腹へと響いていた。

 

「わかったと思うが、いまのように《スピナ=グラヴィス》は、単体でも神経系の反応を補足し、制御できる。自己制御は不可能だ」

 

 揉まれていた乳房が、さらにわずかに押し上げられる。乳首のまわりに、圧がかかる。

 

「っ、あ、くっ……ぅ……ん……」

 

 唇が勝手に開いた。息が抜ける。快感が、思考を圧していた。

 

「そして、これも教えておく。現在、お前の筋力は平常時の四分の一以下。逃走も抵抗も成立しない」

 

 手のひらが乳首にかすめた。撫でたわけではない。ただ、その部分を通っただけ。

 

「……ぁ──ぁあっ……」

 

 喉が開いて、空気を震わせる。吊られた両腕が軋み、脚が微かに震えた。

 

「制御核は首裏に埋め込まれている。遠隔作動も可能だ。感度調整はこれが最大ではない、対象の逃亡は不可能だ」

 

 騎士の手がそっと離れる。乳房に残された体温と、その動きの記憶が、皮膚の裏でまだ震えていた。

 

「そして、《グラヴィス》の真価は、単体ではない。本来のスピナと併用してこそ、観察に足る」

 

 言い終えると、ヴェルナーが一度だけ顎で合図した。

 

「もういい。手を離せ」

 

 ヴェルナーの指示に、騎士の手がすっと離れる。

 胸から手が離れただけだった。

 だが、それだけで全身の力が抜けた。まるで支えを失ったかのように、身体が吊られた鎖にぶら下がる。

 首が少し垂れる。肩が震えていた。

 

 呼吸が荒い。喉が渇いていた。息をひとつ吸うたびに、胸が大きく上下する。

 ペニティの布には、濡れた染みがさらに拡がっていた。

 両腰の紐で結ばれた下着の中央──そこに沁み出す愛液が、布を重くしていた。

 脚が小刻みに震える。腹の奥が熱を持ち、全身がびくびくと反応していた。吊られた腕の関節が軋む。背に沿って汗が流れ落ちていく。

 顎の先からも、ひと筋の汗が垂れていた。

 髪が頬に貼りつく。額も首筋も、すでにじっとりと濡れている。

 ヴェルナーは、それを静かに観察していた。

 

「《スピナ》。一段階。快感で」

 

 淡々とした声。そこには感情も強調もなかった。

 

 さっきとは別の騎士が腰から白い棒状の装置を取り出す。先端は丸く加工され、根元に魔道具特有の起動機構が仕込まれていた。

 ジャンヌの前へと進む。

 警棒状の《スピナ》が、下腹部にそっと押し当てられる。

 小さな下着の布の上から。皮膚すら直接触れていない。

 

 次の瞬間──。

 

「……やっ……あ、あああっ……」

 

 腰が跳ねた。根元のスイッチが押し込まれたその瞬間、内側から快感が沸き上がった。

 動いているわけではない。当たっているだけだ。しかし、神経の深層から突き上げるような快感に、熱が噴き出した。

 股間が痙攣する。胸が勝手に揺れ、足の付け根に力が入らない。

 

「いや、あっ、だめ……だめ、だめぇ……っ……」

 

 喉が裂けそうだった。呼吸が荒く、吐く息のたびに腹が震える。

 吊られた鎖がきぃと音を立てる。両脚がもつれ、全身が跳ねるように波打った。

 

「っ……っ、あっ、あああっ……」

 

 ひと際大きく、腰が反り返る。

 

 そして──達した。

 

 なにもされていないはずだった。下腹に押し当てられただけ。それだけで、頂点に達していた。

 視界が揺れていた。幻写晶の光が、淡く瞬き続けていた。

 

「……一段階でこれだ。ちなみに、五段階まである」

 

 ヴェルナーの声は、淡々としていた。記録者の観察。それ以上でも、それ以下でもなかった。

 

「次は、苦痛だ。目盛りは三」

 

 別の騎士が前に出て、白い《スピナ》をジャンヌの脇腹に押し当てる。

 肌が粟立つ。再びあの快感が来ると身構えた、しかし──

 

「ぎ……っ、あああああああ……」

 

 脳に、直接注ぎ込まれるような激痛だった。

 身体が跳ね、鎖が軋む。叫びは喉を擦り、反響した。

 

「……傷は残らない。だが、鞭や棒よりも、余程に苦痛を与えられる」

 

 ヴェルナーの声には、冷たさすらなかった。ただ、機械のような静けさがあった。

 

「くっ……う、あ……っ……」

 

 痙攣が続く。刺激が止んでも、神経に残る余韻が意識を濁す。

 棒はすぐに離れた。ジャンヌの身体は完全に脱力した。

 

「快楽も、痛みも。首に埋めた魔道核を通じて、脳に直接送っている」

 

 額から汗が流れ落ち、顎に滴り、胸の谷間に落ちていく。

 

「……こ、こんなやり方、正気とは思えない……」

 

 息が乱れ、胸が大きく上下するたび、下腹が疼く。背筋が震えていた。

 

「昨夜、王都南門を出たお前を見た目撃者は複数いる。剣も、遺体も、揃っている」

 

「それで、すべてが片付くとでも……?」

 

「証言と証拠を組み合わせれば、裁定は容易になる。“少年たちは女騎士を襲い、返り討ちにあった”──そう言えばいい。処刑にはならん。女性監獄入りにはなるがな」

 

「……それじゃ、あの子たちが罪人にされるじゃないか……。あの子たちの名誉は……」

 

 視線が揺らがない。羞恥も痛みもある。けれど、言葉は折れなかった。

 

「名誉? 平民だぞ。どこにでもいる虫のような連中だ」

 

「ふざけるな──。私は、そんな嘘を吐かない」

 

 沈黙が落ちた。

 

 そして、ヴェルナーの口元に、微かな変化が現れる。

 笑み。冷笑でも嘲りでもなく、純粋な安堵の弧。

 

「……よかった。これで検証が続けられる」

 

 その声に、喜びの色はなかった。ただ、淡々と安堵の温度だけが混ざっていた。

 幻写晶がまたひとつ、淡く光る。

 

「せいぜい耐えてくれ。できるだけ、長くな」




《ご感想・高い評価をいただけますと、次の執筆の力になります。どうか応援よろしくお願いいたします。》

 また、拙作『異世界で淫魔師ハレム』がカドコミ・ニコニコ漫画でコミカライズ中です。エロチックで迫力のあるイラストで製作して頂いています。合わせて応援お願いします。
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