※この作品はR-18です。

侯爵令嬢物語【完結】〜羞恥と快楽の果てに令嬢と女騎士の姉妹が選んだ甘美な隷従   作:ドン・ドナシアン

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38  調教─命令と罰

 ──まだ、降ろされない。

 

 全身の力はとうに抜けていた。

 なのに、縄だけが確かに支えている。

 腕の後ろで縛られた結び目が、肩から脇へ、容赦なく引き上げ、骨ごと軋ませる。

 

 膝は伸びきり、つま先は床に届かない。

 浮いている──その不確かな感覚が、逆に身体を敏感にしていく。

 

 けれど、もっと酷いのは、股間だった。

 

 前後から食い込む股縄が、粘膜の中心にずっと圧をかけ続けている。

 重力が、それをさらに強くする。

 締めつけられ、擦られ、焼けつくように疼く。

 

 誰にも触れられていない。

 命じられてもいない。

 なのに──。

 

「んっ、あ……っ」

 

 喘ぎが、口をついて出る。

 押し殺そうとしても、喉が震えて止まらない。

 

 目が霞む。

 額からは汗が滲み、鼻筋を伝い、唇の端を濡らす。

 髪が張りつく。首筋が火照る。

 空気の温度が、皮膚に突き刺さるほど鋭く感じる。

 

 そして、あの場所。

 

 縄に締め上げられた芯の先が、脈打っていた。

 濡れて、火照って、きゅうきゅうと勝手に収縮していた。

 自分の身体なのに、何も制御できない。

 

「あ──や、だ……」

 

 ぴく、と脚が跳ねる。

 その反動で、縄がまた擦れる。

 痺れが腰を貫き、腹の奥で甘い火が弾ける。

 

 ──また、垂れた。

 

 愛液が、粘膜からとろりと溢れて、腿の裏へと這っていく。

 縄が濡れ、膣のあたりでじゅっと音を立てた気がした。

 恥ずかしい。恥ずかしくて──たまらないのに、身体は、止まらない。

 

「ふぁ……っ……」

 

 吊られていること自体が、もう罰のようだった。

 でも、ご褒美のようでもあった。

 

 絶頂してはいない。

 でも、限りなく近い。

 そこへ届く一歩手前の縁を、延々と彷徨わされている。

 

 吐く息が熱い。

 腰がぶるぶると揺れ、脚が微かに開く。

 縄が、その動きに合わせて粘膜をゆっくりと撫でてくる。

 

 その繰り返しだけで、もう──意識が浮きそうだった。

 

 ──お願い。

 早く終わらせて欲しい。

 でも、終わらないで欲しい。

 何も命じないで欲しい。

 でも、命じて欲しい。

 

 そんな矛盾が、ひたすらに脳をかき乱していく。

 

「は……っ、ルシ……アン……さま……」

 

 誰にも届かない呟き。

 それでも、そう呼ぶだけで、また奥がひくひくと震えた。

 

 ──革靴の足音が、音もなく近づいてきた。

 

 それが、誰であるかなんて考えるまでもない。

 音がなくても、空気が変わっただけでわかった。

 

 セリーヌは、吊られたまま震えていた。

 もう、なにも考えられなかった。

 ただ、熱い。苦しい。もう限界。

 そう、訴えるように呼吸を乱し続けることしかできなかった。

 

「──つらいか?」

 

 低い声が、静かに降ってきた。

 答えようとしても、うまく声にならない。

 喉の奥が焼けて、言葉にならないものばかりが、胸の中に積もっていた。

 それでも、どうにかして、絞り出した。

 

「……つらい、です……」

 

 しばらく沈黙があった。

 けれど、それは拒絶ではなかった。

 息の合間に、わずかに感じる気配──それが、なによりの救いだった。

 

「心は素直だ。……それは、美徳だ」

 

 その一言とともに、背中で縛られていた縄が、ひとつだけ、ぴんと緩んだ。

 次の瞬間、重力が戻ってくる。

 足が床に触れる。

 吊られていた身体が、解放された。

 

 ──そのはずだった。

 けれど、縄が解けたその刹那、セリーヌの下腹が跳ねた。

 

「あっ……ああ……っ」

 

 まずは思わず、膝が折れた。

 そのため、股間を横切るように通っていた縄が身体の動きに合わせて締めつけた。

 自分の体重が、最後の一撚りに沿って引き落とされる。

 

 それが、あまりに強くて──。

 

「ひあっ」

 

 全身が痙攣する。

 脚の奥で、なにかが溢れた。

 突き上げるような熱が、腰の奥からせり上がってきて、逃げ場もなく、ただ、果てていく。

 

「くああっ……ん、あ……あああっ……」

 

 はだけた胸が波打ち、喉がくぐもった声を漏らす。

 足が床を踏んだ。

 けれど、支えきれなかった。

 声が、裂けるように漏れた。

 びくびくと腰が跳ねる。

 腕はまだ後ろ手に縛られている。

 支えもなく、全身の感覚が一点に集まり、そこで爆ぜた。

 

 小さな絶頂だった。

 だが、それは──。

 

 あまりにも深く、長く、静かに、セリーヌのなにかを、壊した。

 

「……く……っ、ぁ……あ、あ……んっ……」

 

 膣の奥が、何度も、何度も震えた。

 下腹がきゅう、と引き締まり、股縄が濡れた粘膜をさらに擦った。

 

 ぐしょ、と音がした。

 床に、ひとしずく。

 それでも、しばらく──止まらなかった。

 

 目の前が揺れていた。

 視界が霞んでいた。

 

 ふと、声が落ちる。

 

「……心より、身体のほうがずっと素直だな。……それも、美徳だ」

 

 どこまでも静かな声だった。

 けれど、その言葉だけで、また腰がぴくりと震える。

 

 ルシアンの足元に、膝をついたままのセリーヌが、荒い息を吐いていた。

 快楽の余韻がまだ股間に残り、縄は濡れたまま、粘膜にぴたりと張りついていた。

 

 ルシアンは、わずかに視線を落とす。

 

「──欲望は、口にしていい。……それが、ヴェールスに与えられた、唯一の特権だ」

 

 セリーヌは、顔を上げた。

 その言葉が、許しのように聞こえた。

 

「……それなら……」

 

 喉が震えた。

 ためらいながらも、言葉をつなぐ。

 

「せめて……股の縄を……外して、いただけませんか……」

 

 声はかすれていた。

 でも、確かに、そう願った。

 震える脚の奥、粘膜を擦り続けていた細縄の感触が、意識のすべてを支配していた。

 もう耐えられない──けれど、それを口にした瞬間、自分がなにを晒しているのか、思い知らされる。

 

 だが──ルシアンの一言で、凍りつく。

 

「……だが、それはいつも叶えられるのか?」

 

 沈黙。

 そして、ゆっくりと、言葉を探すように、セリーヌは口を開く。

 

「……ドミエンヌ式隷属誓約、第九条……」

 

 声が震えていた。

 けれど、その条文は正確だった。

 

「“欲望は心に秘めてはならない。隷属者は、欲求を忠実に主に告げ、指示を仰ぐことが求められる。”……ですから……わたくしは、願いを口にすることはできます。……でも、それが叶うかどうかは……」

 

 喉が詰まりかけた。

 それでも、最後まで言う。

 

「……主が決めることです」

 

 ルシアンの口元に、かすかな笑みが浮かんだ。

 

「──その通りだな。立て」

 

 その声は、乾いていた。

 優しさも、冷たさもない。

 ただ、命令だけがそこにあった。

 

 セリーヌは、震えながら頷いた。

 

「……はい……」

 

 脚に力を込めようとする。

 けれど、膝がぐらりと揺れた。

 

 足元に残る、熱い雫。

 吊られていた余韻が、筋肉の奥に残っている。

 腕はまだ後ろに縛られたまま、胸が持ち上がり、呼吸が浅い。

 

 それでも、従うことだけは忘れなかった。

 ふらつく脚で、慎重に立ち上がる。

 

 立つ、その動作だけで──。

 

「っ……くぅ……あ……んっ……」

 

 股間の縄が、縦に強く擦れた。

 粘膜に焼けついたような疼きが走る。

 わずかな動きが、快感と羞恥の境界を突き破ってくる。

 

 身体が悲鳴をあげているのに、命令には、従いたい。

 

 それが、セリーヌの中で、もはや自然になっていた。

 

 立ち上がった姿勢のまま、背を伸ばすと──。

 ルシアンが、懐中時計を取り出す。

 

「部屋を一周だ。壁沿いに時計回り。十五秒以内で回れ」

 

 ぱちんと蓋が開き、金属の反響音が静寂に響いた。

 

「──始め」

 

 セリーヌは、反射的に動き出した。

 

 一歩。

 また一歩。

 

 足を出すたびに、縄が粘膜を斜めに押し上げ、その一点を擦り上げては、熱い疼きを置いていく。

 

「っ……く、ぅ……っ、んん……っ……」

 

 声が漏れる。

 歩こうとするたび、崩れそうになる。

 

 肩を揺らすこともできない。

 腕が背中に縛られているため、バランスも取れない。

 ただ、脚を動かすたびに──あそこが、ひりひりと痺れ続ける。

 

 壁沿いの円弧を描くように、進んでいく。

 広い、ルシアンの私室。

 一歩のたびに床が遠く、残りの距離が残酷に思えた。

 

 時間が──足りない。

 

 セリーヌの胸が、早鐘のように鳴る。

 

 セリーヌは、歯を食いしばっていた。

 

 一歩ごとに、股間の縄が粘膜を押しつける。

 そのたびに、腰の奥がひくりと跳ねる。

 

「……っ、ん……く……ぅ……」

 

 声を殺すのに精一杯だった。

 脚が震える。目の端に涙が滲む。

 

 壁際を沿って、私室を回る。

 広い部屋が、まるで迷路のように長く感じた。

 

 ──急がなきゃ。

 

 けれど、急げば急ぐほど、足がもつれる。

 身体の重心が崩れ、膝が折れそうになる。

 そして、股縄が、粘膜のいちばん敏感なところを、また擦る。

 

 「──ん、あ……っ、く……っ」

 

 ついに最後の角を曲がり、ルシアンの机の前へ戻ってきた。

 

 もう、喉が焼けそうだった。

 目も、足も、力が抜けかけていた。

 

 そのとき、ルシアンが時計を見て、静かに口を開いた。

 

「──三十三秒」

 

 セリーヌの脚が、かくんと沈む。

 

 それが、合図だった。

 

「っ──ああああっ」

 

 レコルに、電流。

 股間の器具が、クリトリスの奥に向けて一閃の刺激を撃ち込む。

 刹那、膣が痙攣し、腰が跳ねた。

 

 全身の汗が一気に吹き出す。

 視界が滲む。

 

「……あ、あっ……や……っ……」

 

 悶えるように、膝をつきそうになる。

 けれど、縛られた腕のせいで、支えがない。

 ただ、喘ぎと痺れに耐えながら、ぎりぎりのところで身体を保つ。

 

 ルシアンは、なにも言わない。

 その沈黙が、さらに恐怖を濃くする。

 

 そして──再び、時計を見て言った。

 

「二度目だ。始めろ」

 

 ルシアンの声が落ちた瞬間、セリーヌの身体が跳ねた。

 反射的に脚を踏み出す。

 怯えが、先にあった。

 また電撃がくる──それが、何よりも怖かった。

 

 一歩。

 もう一歩。

 

 脚は、前に出る。

 でも、前屈みの姿勢は崩せない。

 吊られていた時間のせいで、背筋はまだまともに伸ばせない。

 

「っ……く……ん、あ……っ」

 

 足を出すたびに、縄が粘膜を擦る。

 前へ進もうとする動きが、かえって股間を締めあげる。

 

 痺れる。

 疼く。

 粘膜が火照って、芯の奥が脈打つ。

 汗が額から流れ落ち、視界が曇っていく。

 

 ──早く、早く……。

 口を開けば、声にならない声が漏れる。

 

「っ、ん……ふっ……ぁ、あ……」

 

 羞恥も、苦痛も、快楽も──すべてが濁流のように混ざっている。

 

 ──お願い、間に合って。

 

 最後の壁を回り、机の前へ戻る。

 脚がもつれそうになりながらも、どうにか到達する。

 

 そのとき──。

 

「──二十五秒」

 

 ぴたりと脚が止まる。

 でも、もう遅い。

 

「っ……あああっ」

 

 二度目の電撃が、レコルを通じてほとばしった。

 芯を撃ち抜かれた感覚。

 膣が跳ね、尿道に近い場所まで痙攣が走る。

 腰が、勝手に弾む。

 太ももが濡れ、また、雫が床に落ちた。

 

「っ……は……あ、ぁ……っ、んっ……」

 

 苦痛の声か、快感の声か──自分でももう、わからなかった。

 目の奥が滲んで、足元の絨毯が波打つように見える。

 けれど──終わりは、まだ先だった。

 

「──三度目、始め──」

 

 ルシアンの声は変わらなかった。

 ただ、静かに、次の命令を落としただけ。

 

 セリーヌの身体が、反応する。

 言葉ではなく、ただ震えを孕んだ脚が、また前へ。

 

 一歩。

 そのとき、もう膣の奥が、ぴくんと跳ねた。

 

 ──もう、無理。

 

 そう思っても、止まれなかった。

 

 命令されたから。

 逃げられないから。

 止まるほうが、もっと怖いから。

 

 足元がふらつく。

 汗が流れる。

 脚が前に出るたび、股縄がねっとりと粘膜を擦り、快感というより痺れに近い疼きを刻みつけていく。

 

「っ……ぅ……くっ……くぅ……っ」

 

 喉が詰まり、呼吸が続かない。

 背筋を伸ばせず、腰が前に折れる。

 その姿勢のまま歩くたび、縄の結び目が絶えずクリトリスを叩く。

 

「っあ……や……ぅっ、んっ……」

 

 また、熱いものが脚を伝った。

 愛液か、汗か、もはや判断できなかった。

 

 部屋の角を曲がるたび、身体の重みが偏ってバランスを崩す。

 倒れそうになる。

 けれど、倒れることすら、許されない。

 

 ──あと少し。

 

 視界の奥に、机が見えた。

 最後の壁だ。

 

 一歩。

 また一歩。

 

 ──あと……

 

「……二十二秒」

 

 その声を聞いた瞬間、セリーヌの脚が崩れた。

 

「っ──あああああああっ」

 

 電撃。

 裂けるような痛み。

 けれど、それはもはや痛みではなかった。

 膣の奥が、膀胱の裏が、神経そのものが、快感と混ざって、はじけ飛んだ。

 腰が抜け、脚がひくつき、呼吸すらまともにできない。

 声が、言葉にならない。

 

「──っ、ぁ……っ……んんっ……あ……」

 

 涙がこぼれる。

 太ももが濡れている。

 熱い、冷たい、苦しい、甘い──すべてが混ざって、世界が滲む。

 

 自分がなにをしているのか、もう、わからなかった。

 ただ、命じられたから動いた。

 動けば罰が来ると知りながらも、動くしかなかった。

 

 ──それが、快感だった。

 でも、苦しみだった。

 そして、ただの──従順だった。

 

「──四度目、始める」

 

 脚が、勝手に動いた。

 もう、怖さもあった。

 痛みも、羞恥も、あった。

 でも──いちばん強かったのは、「達したい」という衝動じゃなかった。

 

 ──命令に、応えたい。

 

 一歩。

 粘膜が擦れる。

 二歩。

 膣がひくつく。

 でも、止まらなかった。

 

「っ……ん……っ、あ……ああっ……」

 

 声が漏れた。

 その瞬間、膣奥が締まり、快感が突き抜けた。

 はっきりと、果てた。

 

 歩きながら、軽く絶頂。

 身体がぶるぶると震える。

 だが、脚は止めなかった。

 

「くっ……ん、っ……あ、ああっ……っ」

 

 二度目。

 わずか数歩の間に、股縄が粘膜を横断し続け、再び果てた。

 びゅっと熱が垂れ、床に雫が落ちる。

 

 なのに──止まらない。

 腰が折れそうなのに、脚が勝手に前へ進む。

 

 ──命令に、応える。

 

 その一心で、机の前までたどり着いた。

 

 膝ががくがくと震え、足元が滲む。

 身体に力が入らなくて、膝を折る。

 でも、立っていた。

 歩ききっていた。

 

 ルシアンの時計が、音もなく蓋を閉じた。

 

「──丁度、十五秒」

 

 沈黙。

 

 そして、わずかな息を吐くように。

 

「……合格だ。よくやった」

 

 その一言が、落ちた。

 

 セリーヌの目に、涙が浮かんだ。

 

 嬉しかった。

 やっと、褒められた。

 やっと、認めてもらえた。

 

 股間が熱く、脚は震えていたのに、胸の奥が、それ以上に震えていた。

 

 ──嬉しい。

 命令を果たせて、嬉しい。

 果てながらでも、命令に応えられて、嬉しい──。

 

 それが、セリーヌのいまの心のすべてだった。

 

 そのとき。

 

 ルシアンが近づいてきた。

 

 セリーヌが顔を上げたとき──。

 視界に、ルシアンの瞳が間近に映った。

 

 次の瞬間。

 抱き寄せられていた。

 

「──っ」

 

 思考が止まる。

 片腕を腰に、もう片方を肩に添えられて、身体がそっと引き寄せられる。

 

「よく頑張った。ご褒美だ……」

 

 そして。

 唇が、重なった。

 

「……ん……っ……」

 

 柔らかかった。

 熱かった。

 ただそれだけだったのに──。

 

 舌が、そっと差し込まれる。

 遠慮のない滑りだった。けれど、乱暴ではない。

 上顎を擦り、歯の裏をなぞり、セリーヌの舌を探し当てて、絡め取っていく。

 

「ん、っ……く……」

 

 舌先が逃げようとするたび、奥へと追いかけられる。

 捕らえられて、巻き込まれて、引き寄せられて──

 自分の口腔が、まるごと支配されていくようだった。

 

 舌の裏を、ゆっくりとなぞられる。

 濡れて、蕩けて、どこが自分のもので、どこが相手のものなのか、もうわからなかった。

 ただ、唾液が混じる。

 自分のものか、相手のものか、区別のつかない熱が、喉の奥から零れていく。

 

 息ができない。けれど、それが苦しくはなかった。

 脳の奥の奥が、甘く痺れていく。

 それは、明確に“快感”だった。

 

「……っ、ん……く、ぁ……っ、ああ……っ」

 

 びくん、と膣の奥が跳ねた。

 その瞬間、何かがはじけた。

 

「……っ、んんんんっ」

 

 全身がぶるぶると震える。

 足元が抜ける。

 レコルが何をしているわけでもない。

 縄が動いたわけでもない。

 

 ただ……。

 ──ただ、抱きしめられて。

 ──ただ、唇を重ねられて。

 それだけで、絶頂に達した。

 

 自分でも、信じられなかった。

 でも、身体は正直だった。

 膣がぎゅうと収縮し、粘膜がきゅっと締まって、熱が一気にあふれた。

 ぐしょりと濡れた感覚が脚を伝う。

 

「……あっ……はあ……はあ、あ……」

 

 言葉も、息も、意識も曖昧だった。

 ただ、胸の奥が満たされていた。

 罰じゃない。命令でもない。

 ──ご褒美だった。

 

 それだけで、涙が滲んだ。

 

 信じられなかった。

 ただ唇を重ねられただけで、達してしまったなんて──。

 

 セリーヌは、呆然としていた。

 身体は確かに反応していた。けれど、それが“事実”として受け入れられなかった。

 

 ──わたし、なにを……。

 

 膣の奥が、まだ名残のように小さく痙攣していた。

 脚の間には、温かなものが垂れている。

 そのすべてが、いま起きたことを否応なく突きつけてくる。

 

 そんな彼女の耳元に、低い声が落ちた。

 

「縛られれば、なにをされても感じてしまう。……それが、いまのお前だ」

 

 抱きしめたまま、ルシアンはくすりと笑った。

 その声音に、優しさはなかった。

 ただ、事実を述べているだけだった。

 

 次の瞬間、唇が胸元に下りる。

 鎖骨の下をなぞりながら、左の乳房の先端へと到達する。

 

「──ん……」

 

 熱が、柔らかく吸いつく。

 舌が、乳首のまわりを円を描くように撫で、ゆっくりと内側に沈んでくる。

 そして、じわりと吸われる。

 唇の内で、芯が引き絞られ、転がされ、甘く脈打ち始めた。

 

「く、んっ……ふ……」

 

 それだけで、また達しそうになる。

 胸から走った快感が、膣の奥にまで伝ってきた。

 けれど──そのとき、ルシアンが口を離した。

 

 びく、と身体が跳ねる。

 取り上げられた刺激の余韻だけが、皮膚の裏に残された。

 

「たまらないか?」

 

 その声は、静かだった。

 

「縛られて抱かれることを覚えたら……普通に抱かれても、物足りなくなってしまう」

 

 セリーヌは、息を呑んだ。

 その言葉が、胸の奥でこだました。

 

 ──確かに、そうかもしれない。

 口づけだけで果てたことも、さっきの吸引でほとんど達しかけたことも、すべてが“縛られていたから”だと、そう思えてしまう。

 

 ルシアンが、視線だけで問いを続けてきた。

 

「変わっていくのが怖いか?」

 

 問いかけに、セリーヌはゆっくりと頷いた。

 けれど、その直後、目を伏せながらも、はっきりと口を開いた。

 

「……怖いけど、変わりたいです」

 

 その言葉を聞いたルシアンの瞳に、わずかな光が宿る。

 だが、それを感情と呼べるかはわからなかった。

 

「……いいだろう。寝台に向かえ」

 

 短く告げて、ルシアンは腕を解いた。

 

 セリーヌは、わずかに揺れながらも、身体を起こす。

 けれど、股縄は──まだ、ついたままだった。

 

 歩けば、それが擦れる。

 濡れた粘膜を、縦にきつく締めあげる。

 刺激はわずかでも、いまの身体には鋭すぎた。

 

 それでも、セリーヌは脚を閉じ、太腿の内側に力を込めて一歩を踏み出す。

 内股のまま、ゆっくりと、ルシアンに背を向け、寝台に向かった。

 

 脚を出すたび、粘膜が結び目を押し返し、きゅうきゅうと疼く。

 痛みではなかった。

 けれど、すぐにでも果ててしまいそうな感覚だった。

 

 ──命じられたのだから。

 

 ただ、それだけが支えだった。

 

 一歩。

 また一歩。

 

 寝台が近づくたびに、快感と羞恥が体内で螺旋を描いていく。

 

 そのすべてを引き受けながら──セリーヌは、静かに、寝台へと歩みを進めていた。




《ご感想・高い評価をいただけますと、次の執筆の力になります。どうか応援よろしくお願いいたします。》

 また、拙作『異世界で淫魔師ハレム』がカドコミ・ニコニコ漫画でコミカライズ中です。エロチックで迫力のあるイラストで製作して頂いています。合わせて応援お願いします。
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