侯爵令嬢物語【完結】〜羞恥と快楽の果てに令嬢と女騎士の姉妹が選んだ甘美な隷従 作:ドン・ドナシアン
香茶サロン《ルミエール》の最奥、魔道ガラスで音も視線も遮断された個室だ。
その空間に、四人の姿がある。
椅子に深く腰掛けているのは、モントレフォール子爵──ルシアン。
給仕を装っていた妖艶な美女がルシアンの筆頭侍女のソニア。彼女は裁断鋏を持っていて、たったいま、容赦なくセリーヌの学園の制服のスカートを切り刻み、抵抗できないセリーヌからドロワーズまで脱がせてしまった。
そして、部屋の中央で立たされているのは、侯爵令嬢セリーヌだ。
両手は「指錠」と呼ばれる拘束型の魔道具で背中で拘束されている。
緊急信号用の魔道具だとクロエに騙されたのだということは、もはや、いまさら言うまでもない。
さらに、セリーヌの首元には細く優美な装飾の首輪があり、そこから伸びる銀鎖を傍らに立つ少女──クロエが手にしている。
クロエがセリーヌを裏切り、セリーヌへの陵辱に加担したのだ。
「いい格好になられましたね、お嬢様」
天井の細い鎖がカチリと音を立てて降ろされて、クロエが握っていたセリーヌの首輪に繋がる鎖に繋げる。
「くっ」
鎖が引きあがり、セリーヌが爪先立ちをしなければならないほどに、すぐに引きあがる。
ソファに腰掛けたまま、セリーヌたちを眺めるような態勢のルシアンが指輪に触れているので、魔道を流して鎖を引きあげているのは、彼なのだろう。
それにしても、このサロンにこんな仕掛けがあるということにはびっくりした。
いずれにしても、これで銀の首輪を通じて、侯爵令嬢セリーヌの身は完全に動きの自由を奪われたのだ。
改めて、恐怖がじわじわとセリーヌを包む。
セリーヌの両手は、手袋の中で親指に嵌まっている指輪が完全に接合されてしまったことで、後手拘束の状態だ。
また、制服のスカートは、侍女の持っている裁断鋏により、腿の半分くらいの丈で切断され、切れ端はセリーヌの足もとに散らばっている。
学園の平民生徒の中ではこういう丈の短い制服のスカート丈も流行っているが、侯爵令嬢のセリーヌはこれほどの短いスカート丈の服装などしたことがない。
しかも、下着のドロワーズは完全に脱がされて、テーブルの上に置かれている。
「どうかしら、ルシアン? もっと短くする?」
ソニアはセリーヌのスカートの裾を持ち、すっと持ちあげる。
だが、スカートの中はなにも身につけていないのだ。
「や、やめなさい──。わたしを誰だと思っているのです──。み、身の程をまきまえなさい」
思わず怒鳴りつけた。
すると、ちょっとだけスカートをつまみ上げていたソニアの手がとまり、ついで、彼女が爆笑する。
「あんたって、面白いわねえ。まさか、そんな返しができるなんてびっくりしたわ。ご褒美として、ショータイムの前にもっと短くしてあげるわね」
ソニアが再び裁断鋏をつかって、スカート切り始める。
「あっ、いや、やめて──。あぐっ」
さすがに暴れて抵抗しようとしたが、そうすると爪先立ちの身体が揺れて、セリーヌの首に嵌められている首輪が吊り上げられている鎖で絞まり、一瞬息がとまりそうになった。
慌てて、爪先立ちの足先を踏ん張って姿勢を戻す。
そのあいだに、セリーヌのスカートは、股間ぎりぎりまで切断されてしまった。
今度はしゃがめば下着のない股間が丸見えになるような丈だ。
こんなに短いスカートなど、娼婦でもありえないだろう。
セリーヌは羞恥で懸命に内腿を擦り寄せた。
なにしろ、セリーヌは、ずっと苛まれている妖しい身体の疼きのために、明らかに発情状態にある。ねっとりと股間が濡れているのも感じる。
そんな状態の股間を晒しそうになっている恐怖が襲う。
「ふふふ、恥ずかしそうですね、お嬢様。でも、しっかりと立ってくださいね。ああ、でも素敵……。いま、お嬢様のご貞操もお命も、わたしが握っているのですよね。こうやって、体重をかけるだけで、お嬢様は死んでしまうかもしれない……。素晴らしいです」
クロエだ。
後ろからセリーヌの身体を両手で抱きしめ、じわじわと体重をかける素振りをしてきた。
ぐんと身体を引き下げられて、首輪が絞まる。
「んぐうっ、がっ、や、やめっ」
セリーヌは悲鳴をあげた。
クロエはすぐに手を離して、セリーヌを解放する。
「かはっ、がはっ、がっ」
咳き込んでしまうとともに、荒くなった息を懸命に整える。
「そうそう、しっかりと立っているのよ。面白いことをしてあげるから」
ソニアがいつの間にか鋏の代わりに、小瓶に入れた油剤のようなものを指ですくっていた。
その指を短くなったスカートの中に差し入れてきた。
「あっ、いやっ」
思わず腰を引いて、指を避けようとした。
ソニアはセリーヌの指がどろどろに濡れている股の付け根に触れたからだ。
「だめですよ、お嬢様。逃げては……。また、体重をかけちゃいますよ」
すると、またもやクロエが背後から抱きつき、床方向に力を加えてくる。
「んぐっ、や、やめ……。あっ、ああっ、あんっ」
クロエに抑えられて前に腰を出すようにされる。
前からのソニアの指が容赦なく、セリーヌの股間の突起に触れて、ねっとりとした油剤を塗りたくってきた。
「んあああっ、あああっ」
半日以上も熱い疼きに襲われ続けていた身体のもっとも敏感な場所を刺激されて、セリーヌの頭に閃光のような衝撃が走り、セリーヌはクロエに身体を押しつけるようにして、今度は爪先立ちの身体を大きく反り返らせていた。
「まるでおしっこを漏らしたみたいにびしょびしょじゃないの、オナニー好きのお嬢様?」
ソニアが指をスカートから抜いて、その指をセリーヌの顔の前に持ってきた。
ねらねらと光るその指は、湯気を出しながら、セリーヌの愛液でねっとりと濡れていた。
「さて、セリーヌ=ド・ヴァランティーヌ嬢……。そろそろ、貴女に選択の機会を差し上げましょう。貴方が犯した罪に対し、償いとして、十日間を僕の性奴隷として徹底的に辱められることを約束しますか? 貴方の誇りにかけて誓ってもらえれば、貴方が犯した罪については水に流すことにします」
ルシアンだ。
彼は、セリーヌがソニアとクロエに辱められるあいだ、ずっと、ソファーに背もたれて紅茶を飲みながら、平然とセリーヌの痴態を眺めていた。
その態度にかっとなる。
「な、なにが償いですか──。う、恨みがあるのはわかりますけど、それを果たすために、こんな卑劣な手段で仕掛けた男がよく言えたものね……。屈辱に笑うような人間に、示す誇りなんてないわ」
セリーヌは怒鳴りあげた。
ルシアンが紅茶をテーブルに戻して微笑みかけてきた。
その態度に、さらに憤怒に込みあがってくる。
「あら、まだそんなに元気なの? クロエにポーションをたっぷりと飲まされて、本当は狂いそうなくらいに身体が疼いているのに、こうしていると大して効いていないように見えるわね。やっぱり、それは貴族の誇りというものなのかしら」
ソニアが手を伸ばして、制服のベストを左右に拡げてさらに、ブラウスを上からボタンをはずしてくる。
「ああ、もう、やめてっ」
じわじわと裸にされている羞恥が襲う。
だが、ソニアは全部はブラウスを外さず、胸の下までのボタンを外すと、またもや裁断鋏で内側のキャミソールだけを切断して取り去った。
乳首は辛うじてブラウスで隠れているものの、乳房の半分は剥き出しにされてしまった。
だが、それよりも、ソニアの言葉にはっとした。
背中側にいるクロエを振り返る。
「どういうこと、クロエ……。もしかして、媚薬を盛ったのもあなたなの?」
「今日だけじゃありませんよ。この一箇月、寝る前には薄めたものをずっと飲んでいただいてました。今朝にお飲みになっていたものは、完全な原液ですけど。わたしも、あんなに効き目があるとはびっくりです。なにしろ、学園の授業の合間に、自慰をされるなんて」
クロエがくすくすと笑った。
セリーヌは口惜しさで歯を噛みしめる。
「クロエ……なぜ、こんなことを──。なんの恨みで……」
セリーヌの震え声が室内に響く。
だが、彼女の怒りと混乱に対して、クロエの表情は驚くほど冷静のままだ。
彼女がセリーヌの前に出てくる。
「お嬢様自身を恨みに思ったことも、嫌いになったことも一度もありません。いまでも貴女が誰よりも気高く、美しいと……本当に、そう思っています。可愛らしいお嬢様だと……」
声は穏やかで、なおかつ深い執着を含んでいた。
「だ、だったら──」
「でも、お嬢様はずっと手の届かないお方でもありました。だから、お嬢様がわたしのところまで、もしかして墜ちてくれる……。こんな機会は願ってもないと思いました。だから、ルシアン様にご協力することにしたのです」
「な、なにを言ってるのよ」
「ふふふ、それにお嬢様には恨みはございませんけど。侯爵家には……許せないことがあるのは事実ですし……」
その声に、セリーヌは小さく息を呑んだ。
見知っていたはずの侍女の口調が突然に別人のように冷淡なものに感じられたのだ。
「う、恨みって……」
「わたしの実家……レナン男爵家が、借財で首が回らなくなったとき、侯爵家はわたしたちを見捨てました。なんの猶予も、情も与えずに……。父が土下座をして願った救済を侯爵閣下は無情に拒否なさいました。力のない分家に意味はないと」
クロエの指が、制服のブラウスのあいだに入ってくる。
いつの間にか、さっきソニアが指につけていた油剤を載せていた。
その指でセリーヌの乳首をくすぐるようにもみ上げてきた。
「はんっ」
身体が弾けて、思わず甘い声が出た。
じんと乳首が熱くなる。
そして、気がついたが、さっきソニアが触れた股間の部分が熱い──。
いや、これは痒みだ──。
痛いくらいに熱くて、疼いて、そして、痒い──。
意識してしまうと、猛烈な痒みが股間から襲いかかってきた。
「ああっ、なにこれ──。か、痒い──」
「痒いでしょうね。あんたに塗ったものは、自慰をするほどに身体が疼いたポーションの十倍は効果があるものよ。それをまたもや混ぜずに塗ったんだから、クリトリスも乳首も死ぬほどに痒くなるわ。簡単には効果は消えないから覚悟してね」
ソニアだ。
一方で、クロエはさらに油剤を指に足して、反対の乳首に塗ってからはだけているブラウスから手を抜く。
「さあ、お嬢様、早く屈服して、わたしのところまで墜ちてくてくださいね」
ソニアがくすくすと笑う。
「ああ、なんてことを……。ああ、痒い……、痒いわ、クロエ──。あああっ」
もはや、股間、そして、乳首に信じられないくらいに痒くなってきた。
セリーヌは耐えられずに、思わず身体を揺さぶる。
だが、乳首がブラウスの布に触れたり、内腿を擦りつけるくらいでは痒みはまったく癒やされない。
むしろ、刺激でさらに疼きが拡大する。
鼻声のようなものをあげてしゃがみそうになるが、首輪の鎖がセリーヌにそれを許さない。
「それよりも、さっきの話の続きですが、侯爵家には恨みはあります。なにしろ、レナン男爵家の危機に対して、容赦なく切り捨てようとなさったのですから。主家の足を引っ張る分家など不要だそうです」
クロエが言った。
「お、お父様が? そんな……。いえ、そんなことは……」
セリーヌは掻痒感に狂いそうになりながら、顔をあげてクロエを見る。
クロエは微笑んでいるが、目は冷淡だ。
「事実です。わたしもその場にいましたので」
彼女の声は静かだった。
だが、その静けさの奥には、凍てつくような怒りが潜んでいるように思えた。
「そのとき、わたしは初めて知ったんです。“貴族の絆”なんて、都合が悪くなればすぐに断ち切られる、薄いものでしかなかったんだって」
セリーヌは息を呑む。
クロエは続けた。
「……侯爵家は救済の代償として、わたしの“将来の嫁入り先”を差し出す証文を用意しました。それは、表向きには学業優秀な侍女を後見する名家の提携でしたが……。実際には、齢五十を超える商会長の妾も同然の“斡旋”でした」
セリーヌの顔から色が引いていく。
「そ、そんなこと……聞いてない……!」
「そうですね。言ってませんでしたね。でも、お嬢様もお気づきにならなかったのでは? もしも、お嬢様がちょっと様子がおかしいわね。なにかあったの、とでも訊ねていただければ、言っていたと思います。でも、お嬢様はわたしが追い詰められていることをお気づきにならなかったし、わたしも言いませんでした。それだけです」
微笑を浮かべながら、クロエは静かに言った。
その言葉は刃だった。
優しさを装った、容赦のない真実。
セリーヌは、なにも言えなかった。
「わたし……そんな話……全然──」
「とにかく、侯爵家にとって、わたしは“分家の娘”。一年前といえば、実は侯爵家そのものもかなり財政は厳しい状態だったようです。わたしをその財政を立て直すための駒にしようとしてたのです。しかも、それを受けたとしても、男爵家は一家離散が“少しだけ先延ばし”されるだけ。それだけの斡旋でした」
ソニアが、静かに言葉を添える。
「で、でも……それでも、一言くらい……」
「……どうせ、お嬢様には、なにもできないではありませんか。なにが、できたというのです?」
その言葉に、セリーヌの喉がひくりと震える。
声にならない反論が、唇の奥で消えていった。
なにができただろうか?
貴族学園で書物を読み、歴史を語り、礼儀作法を身につける……。それだけで“貴族令嬢”として何かを成していると錯覚していた自分に……。
ただの一言も返せなかった。
悔しさとも、怒りとも違う、もっと冷たい何かが胸の奥を満たしていく。
「お嬢様、ご存じですか? 賢くも、なんの取り柄もない貴族の娘が、突然“外”に放り出されたらどうなるのか」
その声には、責めるような色はなかった。むしろ諭すように穏やかだった。
「……えっ?」
「賢くもない貴族の娘が、働ける場所なんて限られているんです。娼館。もしくは、それに準ずる……見せ物のような場所。わたしの妹たちも、もしかしたら……そうなっていたかもしれません」
セリーヌの目が見開く。
一方で、こうやって会話をしているあいだも、痒みが股間と胸に襲い続ける。
もう我慢できない。
「そ、そんな……。と、ところで、痒いの──。ああ、助けて、痒いわっ」
そのとき、ソファに座っていたルシアンが静かに口を開いた。
「いや、クロエは……賢い子だよ。救済を、最も高く買ってくれそうな相手に自分を売った。君の家が、彼女の実家を見捨てようとしたときにね」
「な、にを……言って……?」
ルシアンは微笑を浮かべたまま、はっきりと告げる。
「彼女を“買った”のは、僕だ。──クロエは、僕の“契約対象”であり、代償を払って手に入れた忠義の証でもある」
「契約……っ?」
「そう。家族と名誉、未来を買い戻すために、彼女は自ら差し出したんだ。誰にも強制されずにね。もっと、わかりやすく言えば、実家とクロエを助ける代償として、君を裏切らせた。脅迫だ。だから、彼女を恨むんじゃない」
「こ、この、卑怯者……!」
セリーヌが吐き捨てるように叫んだ。
だが、クロエはそれに目を伏せることもなく、まっすぐな瞳でセリーヌを見つめた。
「いえ、脅迫されたとは思っておりません。むしろ、感謝しているんです。あのとき、ルシアン様に拾われなければ、家族も、わたし自身も、どうなっていたかわかりませんし」
「それに、愉快なのはいつの間にか、立ち直しができた男爵家がどうやって、それを成し遂げたのか。貴方の父上が気にした様子はなかったことだな。分家や家人はなにがあっても忠義を失わないと決めつけているみたいだね。お陰で入り込む隙があり過ぎて戸惑ったほどだ」
ルシアンが小さく笑う。
それにしても痒い。
もう耐えられない。
「ああ、もう許して」
ついにセリーヌは泣き声をあげた。
すると、ルシアンが座ったまま、クロエに向かって片手を差し伸べた。
クロエがルシアンの前に小走りに移動して、その手に縋るように両手を握った。
そして、ルシアンに促されるように、その場に両膝をつく。
セリーヌはちょっと驚いた。
侍女とはいえ、クロエも貴族令嬢のひとりだ。その彼女が両膝をついて跪くなど、相手が王侯でもあり得ないのだ。
「セリーヌ嬢、もう一度言う……。言い換えれば、クロエは金の力で僕に逆らえない立場になっている。彼女は君を裏切ったわけじゃない。命令をされて逆らえなかったんだ。むしろ、一年近くも彼女の苦悩に気がつかなかった、貴方が主人として失格だったと思うぞ」
すると、ルシアンが跪く、クロエの前に靴のままの足を差し出した。
驚愕することに、クロエがそれを両手に抱き、靴に口づけをしたのである。
さらに、愛おしむかのように舌を出して舐め始める。
セリーヌは唖然とした。
「さて、それはともかく、そろそろ痒みも限界だろう、セリーヌ嬢。場所を変えて、存分に愉しんでもらおうか。貴方が僕の奴隷となる誓いをする覚悟ができるようにね」
ルシアンがクロエから足を引いて立ちあがる。
すると、ソニアが個室のドアに向かい、大きくホールとのあいだの扉を開け放った。
「うそっ」
セリーヌは思わず叫んだ。