侯爵令嬢物語【完結】〜羞恥と快楽の果てに令嬢と女騎士の姉妹が選んだ甘美な隷従 作:ドン・ドナシアン
「次の部屋では、全員が認識阻害具の《ヴィサリエ》を着けておりませんので。──これは、外しますね」
クロエの指が、セリーヌのこめかみにふわりと触れた。
装着されていた小さな金属の髪飾り──それは、相手の《ヴィサリエ》の効力を打ち消す魔道具。
前の部屋で、公爵家の顔ぶれを見極められたのも、この細工の恩恵だった。
小さな金属音とともに髪飾りが外れ、房の一束がさらりと揺れた。
また、セリーヌ自身は、すでに《ヴィサリエ》を着けていない。
つまり、どの部屋に入ろうと、誰に見られようと──彼女の素顔と身元は、無防備に晒されているということだ。
クロエは声をかけることなく歩き出す。
手には、セリーヌのチョーカーから延びた細い鎖がある。
「あっ」
慌てて、セリーヌはその後を追った。
クロエが引く鎖は、チョーカーの環を経由し、レコルへと続く構造だ。
張力がかかれば、レコルに電流が走る──。わかっているので、反射的に恐怖で脚が前に出る。
セリーヌは、必死に四つん這いで前進する。
掌と爪先で床を捉え、膝は浮かせたまま。背を張り、腰を高く突き出す、羞恥と苦痛の姿勢。
だが、体力の消耗は限界に近い。
どれだけの距離を這わされたのか、もう覚えていない。
ただ、石畳に鳴るクロエの足音だけが、冷たく耳に届いていた。
「んっ……」
小さな動きが引き金だった。
尻に深く挿入されたアルフェに連なる尻尾が、ぶるんと跳ねた。
わざと振れやすく設計されたその尾は、動くたびに振動を増幅し、膣奥のオルフェと肛門のアルフェにいやらしく共鳴する。
一度揺れれば、しばらくは痙攣するように震え続ける仕掛けである。神経の奥をひたひたと舐め回す疼きが、執拗に押し寄せる。
新しい愛液が、またオルフェの縁から滲み出して、内腿を伝って足元を濡らしていくのを感じた。
羞恥、疼き、被支配の悦び。すべてが渾然と混ざり合い、セリーヌの内側をぐつぐつと煮立たせていた。
「ふふ、お嬢様。腰が、また下がっておりますよ」
クロエが意地悪く、鎖を引いた。
その瞬間、レコルにぴりっと電流が走る。
「あんっ……」
尖った刺激がクリトリスを貫き、セリーヌは甘く呻く。
けれど、その激痛と疼きすらも支えにして、彼女は必死に腰を引き上げ、前へと身体を伸ばす。
這うたびに、淫具が揺れ、疼きが肉を揺らす。
一歩ごとに、前と後ろの粘膜が、順繰りに痺れ、灼ける。
やがて、クロエの足音が止まった。
顔を上げれば、そこには黒漆塗りの重厚な扉。
クロエが静かにその表面を叩く。また、同時に、クロエの耳にしている認識阻害具の《ヴェサリエ》も自ら外していた。
すぐに、内側で機構が作動する音。
そして──ゆっくりと、扉が開かれていった──。
扉の向こうから、微かな熱気が流れ込んできた。
けれど、それは不快なものではなかった。
部屋の中には、柔らかな香が満ちている。薔薇と
調度は美しく、まるで王族の家のようでありながら、その壁際には緊縛台、吊り具、皮製の鞭、様々な調教器具が整然と揃えられていた。
高級な拷問室──そう言って差し支えのない、淫靡にして豪奢な空間だった。
クロエはその敷居を跨がず、手にしていた鎖を前方へ放り出した。
「咥えて、進んでください」
その命令に、セリーヌの心がきしんだ。
人としての尊厳が、ひとつひとつ剥がされていくような気がした。
それでも、セリーヌはおとなしく顎を落とし、鎖の先を唇に挟んだ。
冷たい金属の味が舌に触れる。
わたし……犬、みたい……。
四つん這いのまま、鎖を咥え、部屋の中へ進む。艶やかな石の床に、己の掌と足の爪先で跪く音が、濡れたように響いた。
部屋の中央──頭部分のない木馬台に、ひとりの女が拘束されていた。
女は前傾姿勢で木馬の背に上半身を固定され、四肢を広げられ、膝を伸ばして、股を開くように脚を木馬に拘束されている。
その臀部と脚だけがセリーヌの目に入る。年の頃は、二十代後半から三十にかけて。
白く、張りのある尻。
太腿はなめらかで、艶やかだった。
周囲には四人の男がいた。
いずれも《ヴィサリエ》は着けていない。
その顔立ちも、表情も、はっきりと見える。
年齢はばらばらだった。五十代と思しき落ち着いた初老の男、三十代の洒落者風、二十代半ばの快活な青年、そして、そのさらに少し上──精悍な顎をした男が一人。
彼らはいずれも上半身裸。筋骨隆々とは言いがたいが、贅肉もなく、生活感を纏った肉体だった。
「ちょ、ちょっとクロエ……。オプセリカの奉仕調教って話じゃなかったのか?」
青年が声を上げた。
どうやら、男たちとクロエは顔見知りみたいだ。
しかし、その視線が、セリーヌの顔に届くと、目を見開いて動きを止めた。
──ぎょっとしたように。
「おや、もしかして……」
「うそ……まさか、侯爵令嬢の……」
男たちは互いに顔を見合わせ、混乱と驚愕が広がっていく。
「ご挨拶を」
クロエが促す。
セリーヌは、咥えていた鎖をゆっくりと床に落とし、深く頭を下げた。
「セリーヌ=ド・ヴァレンティーヌです。……どうぞ、よろしくお願いいたします」
声は震えていた。
だが、逃げることはしなかった。
男たちは、息を呑んだように沈黙した。
やがて、その沈黙を破ったのは、先ほど最初に驚いた青年だった。
「……まさか、本当に……。クロエ、お前……」
「問題ありません」
クロエはさらりと言い切った。
「ここでは彼女は、ただのセリーヌです。そのように、扱いください。ただし──この館の主人の愛人でもありますので、そのつもりで」
「ヴィサリエ、外していいのかい?」
別の男が確認するように問いかけた。
セリーヌは四つん這いのまま頷く。
「はい。ルシアン様に、そうするよう命じられています」
そのやり取りが交わされる中、木馬に拘束されていた女が、突如として声を荒げた。
「ふざけるなよ、てめえら──。早く、わたしを犯すんだよ──。なに、もたもたしてんだ、お前ら。承知しないからねっ」
声は甲高く、怒気に満ちていた。
その物言いに、セリーヌは目を瞬かせた。
──女が、求めている?
男たちは、少しだけ困ったように顔を見合わせ、ひとりが苦笑した。
「ああ、どうやらイルヴィナが塗り足りなかったようだな」
「もう少し、足してやるか。なあ、諸君」
他の三人がうなずいた。
男たちは女のもとに歩み寄り、手に取った小瓶から、指先で粘液をすくい取る。
「やめろ……やめろって、言ってんでしょ……っ」
女の声は、もう、震えていた。
だが、男たちは構わず、女の膣口と肛門に、その粘液を塗り足していく。
イルヴィナ液──。
セリーヌも、その名をよく覚えていた。
耐えがたい痒みを生む粘性の薬液。
重ね塗りされれば、その刺激は倍にも三倍にもなる。
「くうっ……くそ、くそっ……っ」
拘束された女は、歯ぎしりをしながら身体を捩った。
だが、革と縄でがっちりと固定されたその身体は、わずかに震えるだけだった。
男たちが木馬に拘束された女の局部と肛門にイルヴィナ液を塗り足しているあいだ、クロエがすっとセリーヌのそばに寄った。視線は前方の様子を見据えたまま、声だけを落とす。
「さっきの部屋の夫人たちは、最初はともかく、皆さん、いまでは納得のうえで、自らこの館を訪れております。ですが……この部屋の女性は、まだ違います」
クロエの吐息が耳朶にかかるほどの距離で、囁きが続く。
「彼女は、王宮の女性官吏。かなり男遊びが激しかったそうです。しかも、貢がせるだけ貢がせては、捨てる──ということを繰り返していたとか。その報復として、騙され、この館に連れ込まれたのです。……彼女を囲んでいるこの四人は、いずれもその被害者たちですね」
クロエの言葉に押され、セリーヌはふたたび、チョーカーから垂れた鎖を咥えた。犬のように這い進む。その先には、木馬台の上、拘束された女性の下半身。
顔は見えない。だが、前方に回り込んだとき、セリーヌははっと息を呑んだ。
……知ってる。
あの顔。記憶にある。王宮で見かけたことのある女性官吏だった。名は思い出せないが、確かに、あまりよい評判は聞かなかった。
だが、いま目前にいるその女は──苦痛に歪められながらも、なお整った顔立ちを保ち、肌も白く、唇の形も美しい。否応なく目を引く美貌だった。
また、彼女のオプセリカとしてのチョーカーは、新人のノヴァを意味する「白色」だ。
「畜生……っ、痒いよお……」
女が泣いた。歯を食いしばって耐えていた顔が、ついに崩れ、涙とともに呻き声が漏れる。
イルヴィナ液の効果が、確実に彼女の理性を蝕んでいた。
彼女は木馬の上で拘束され、裸身のまま、痒みと疼きに耐えていた。
官吏とは思えない口調で、悪態をつきながら、全身をよじらせている。
「ふざけるな……っ、早く、早くわたしを犯せっ──。お前たち、承知しないからね……っ」
咽喉が焼けるような怒声。だが、その語尾は震えていた。
女は、全身を真っ赤にして大量の脂汗をかき、歯を喰いしばりながら、木馬の上でのたうつが、拘束はびくともしない。
「ちくしょう……か、痒いよぉ……っ。も、もう、いい加減に、しろよおぉ……っ……っ……」
涙を流し、鼻をすすりながら、女は泣き叫んだ。
男たちは女の局部を筆でなぶりながら笑っている。
ひとりが、わざとらしく女の耳元で言った。
「どうだい、もう降参かね? 少しは、貢がせてくれた代金分、楽しませてもらわないとなあ」
「お前らなんかに、わたしの苦しみのなにがわかるのよ……っ。ちくしょう……っ、痒い、痒いのよ……っ。かいて、かいてってば……」
女の叫びは、怒りと絶望と、なにより猛烈な痒みによって歪んでいた。
涙がこぼれ、よだれが垂れ、全身を暴れさせようとするが、木馬の拘束はびくともしない。
筆の毛先が、膣口の襞の隙間を、肛門の縁を、ゆっくりと撫でていく。
そこに塗り込まれたイルヴィナ液が、すでに二重、三重に重ね塗りされている。
「ひい、ああ、あああっ……もうやだあ……っ、かゆい、かゆいの……っ、お願い、かいて、そこを、かいてぇ……っ」
女は悪態と哀願を交互に繰り返していた。
だが、相手の男たちは、それを嘲りの対象にしかしていない。
そして、クロエは、そっとセリーヌに囁いた。
「──あなたが、慰めてあげなさい」
その声に従い、セリーヌは一歩前に進んだ。
今日は、オプセリカの部屋を周り、女への奉仕を実習をするというのは言われていた。
覚悟しているので躊躇いはない。
女の姿がいま目の前にある。だが、こちらには気づいていないようだった。
痒みの熱に、意識を焼かれているのだ。
クロエが、ひとつの淫具を取り出す。
「これはルオノス。口枷と一体化した奉仕具です。──あなたの唇で、この方を慰めてさしあげて」
クロエは、セリーヌの口元に淫具を押し当てた。
セリーヌは、ためらいながらも、それを咥える。
口枷の前方には、小さなペニスのような突起がついていた。口枷についている革紐を頭の後ろで結ばれ、外れないようにされる。
それを女の秘裂に当てるようにと、クロエが命じる。
セリーヌは、這うようにして、女の後ろに再び移動する。口枷があるので、今度は鎖は引きずるしかない。張力がかからないように注意して進んだ。
女の真後ろに着く。
四つん這いのセリーヌのために、台が階段状に置かれた。それにあがるようにして、女の腰の後ろに顔を密着させる。
愛液で濡れ、赤く腫れ上がった膣口。
痒みによる熱が、皮膚ごしにも伝わってくる。
顔をさらに前に出す。
そして、突起をそっと触れさせた瞬間──。
ルオノスの内部が震え、アルフェとオルフェ、さらにミューゼットの内側の胴体の全部に、刺激が伝導された。
「んくっ」
すぐに仕組みがわかった。
これもまた、共鳴淫具だ。尻尾の動きに連動してアルフェとオルフェが共鳴するように、口の外のペニス部に刺激を加えると、いまセリーヌがつけている全部の淫具が刺激の共鳴を起こすのだ。
でも、やめるわけにはいかない。
覚悟をして、顔を女の局部にぶつけるようにして、再びペニスを抽送する。
「んん……っ」
セリーヌの腰が跳ねた。
すかさず、快楽の電流が、背筋を這い、神経を貫いたのだ。
なんのことはない。セリーヌが口のペニスで女を責めることで、セリーヌはそれ以上の刺激を受けてしまうのだから、凝った自慰をさせられているようなものだ。
思わず顔を逸らし、肩で息をつく。
「なにやってんのよ……っ。やめんじゃないわよ……っ」
女が怒鳴る。
命令口調だったが、もはや哀願に近かった。
セリーヌは、再び顔を寄せる。だが、刺激は強すぎる。
触れれば、快楽の震えが身体を貫き、腰が砕けそうになる。
セリーヌは、何度も挑み、そして、また顔を背け──。
そのたび、女が、痒みと怒りと焦燥に満ちた声を上げた──。
セリーヌは、何度も何度も、ルオノスの突起を女の股間に押し当てた。
痒みにただれて熱を帯びた膣口が、触れるたびに痙攣する。
愛液がしたたり落ち、口枷の前端を濡らす。
だが、セリーヌ自身の身体が、どうしても反応してしまう。
突起の振動は、ルオノスを通じて、ミューゼットへ、アルフェへ、そしてオルフェへと連鎖的に伝わる。
腰の奥が、喉の奥が、同時に震え──。
ついに、セリーヌは、そのまま達していた。
「ん、あ、あっ……」
膝が震え、腕で階段を支え、なんとか姿勢を保つ。
けれど、女がわめく。
「なにやってんのよ──。やめるなって言ってるでしょうがっ」
その怒声に押され、セリーヌは再び奉仕を始める。
だが、すぐにまた、耐えきれずに顔を背けてしまった。
──駄目。続けたいのに、できない……。
「ふざけんじゃないわよっ。あんた、殺すわよ、ほんとにっ」
悪態と痒みで、女は泣き声になっている。
セリーヌはもう一度、ルオノスを膣口へと当て、奉仕を再開する。
けれど、ふたたび、腰が抜けるような感覚が襲い──。
腰が震え、全身が突っ張り、頭が白くなる。
「あ、ん、く……ぅ……」
目の前が白く染まり、セリーヌは小さく震えながらまたもや絶頂していた。
喉の奥から甘い声が洩れ、股間から熱い液がとろりと流れ落ちる。
さらに、尻尾の揺れが連続絶頂したセリーヌに、追い打ちをかける。腰が砕けて姿勢を保ってられない。
なんのか踏ん張る。
「はあ? また止まったの? この役立たずがっ。ふざけんなあっ」
女の怒声が、空気を裂いた。
セリーヌは、必死に姿勢を立て直し、もう一度奉仕を始める。
だが、そのたびに、自身の性感が暴れ出し、ルオノスを通して快感が駆け抜け──。
もうこうなってしまったら、セリーヌは自分の身体を制御できない。
──あっという間に三度目。
四度目──。
五度目……。
敏感すぎるセリーヌの身体は、もはや震えることしかできなかった。
手も足も力が入らず、崩れ落ちそうになるのを、ぎりぎりでこらえる。
「ちっ……。なんなんだよ、このメス豚は……。まともにかいてもくれないとか、頭きて死にそう」
女の悪態にも、もう応えられなかった。
セリーヌは、ぐったりとその場に伏せていた。
その様子を見ていた男たちのひとりが、声をあげた。
「はは……けど、あんな可愛らしいオプセリカなら、優しくしてやりたくなるよな」
「ああ。たまには、いたわる側にまわるのも悪くねえ」
男たちがくすくすと笑う。
「クロエさん、もういいだろ。お嬢様を下げてやんなよ」
クロエは静かに頷くと、口枷を外してから、セリーヌの鎖を手に取った。
ぐったりとしたセリーヌの耳元に口を寄せる。
「──よく、頑張りましたね。さあ、戻りましょう」
セリーヌは、息も絶え絶えだった。
喉は乾き、肩で荒く呼吸を繰り返しながら、崩れるようにクロエの脚元に身を寄せる。
取り出した布で、クロエが女の愛液だらけになったセリーヌの顔を拭いてくれる。
さらに、水筒を出して水を飲ませてくれた。
四つん這い疲労と連続絶頂の脱力でぎりぎりだったセリーヌは、貪るように、その水を飲んだ。美味しい……。とても、美味しい……。
やっと、ひとごこちがついたところで、顔をクロエに向けて、口を開く。
「ああ、クロエ……。ごめんなさい……。最後までできなくて……」
「いいんです。健気な奉仕でしたよ。一生懸命なのがわかりました」
そんな彼女に、クロエはふっと笑いかけた。
そして、手にしていた鎖を、そっと下ろす。
「──もう、鎖は要りませんね。お嬢様、いまのあなたなら、きっと、ちゃんと歩けます。咥えてお歩きください」
その声には、珍しく柔らかな響きがあった。
セリーヌは、潤んだ目でクロエを見上げると、小さく頷き、鎖を口に咥えて、ふらふらと四つん這いの身体を前に出す。
開いた扉から、ふたりは部屋の外へと出る。
連続絶頂の余韻で、セリーヌは脱力していたし、脚はまだ震えていたが、クロエは無理に急かすことはしなかった。
「……ああいう依頼、実は、けっこう多いそうです」
廊下に出るなり、クロエがぽつりと言う。
「彼ら四人、ドミエンヌに高額を支払って依頼したそうです。あの女を、徹底的に辱めて、屈服させたいって。ドミアンヌは場と手段を貸しました。彼らはドミナ研修を修了して、あそこにいます」
セリーヌは、わずかに眉を寄せた。
息を整えながら、先ほどの女の顔を思い出す。
痒みによって歪み、怒りに染まり、それでもなお、美しかった表情──。
「……いまは、あんなに激しく反抗していますが、研修の終えたドミナ四人がかりの責めに耐えられるわけはありません。きっと、館を出る頃には、ヴェールスの首輪を自ら望む、従順なオプセリカになっているはずです……。間違いなく、彼女もここを解放されても戻ります。そうするしかなくなってますから……」
クロエは笑みを深める。
「……依頼主の満足、本人の満足、そして……館の利益。全部が、うまくいくようになっているんですよ」
そして、軽く手を差し出した。
「……さあ──次の部屋に行きましょう。きっと、また素敵な体験が待っています」
セリーヌは、震える脚を一歩前に出し、クロエの背について歩き出した。鎖を口に咥えて。
その背筋には、疲労とともに、微かな昂ぶりと緊張が混ざり合っていた。