侯爵令嬢物語【完結】〜羞恥と快楽の果てに令嬢と女騎士の姉妹が選んだ甘美な隷従 作:ドン・ドナシアン
ホール側に繋がる個室の扉がソニアによって、大きく開かれた。
「うそっ」
セリーヌは目を疑った。
なにしろ、セリーヌは、ソニアとクロエによって、制服の内衣のキャミソールを奪い去られ、制服のジャケットとブラウスをはだけられている。胸は両方とも乳房の内側半分を剥き出しされていて、乳首が辛うじてブラウスに隠れているだけだ。
さらに、スカートは腿の付け根まで切断されて短くされ、スカートの中にはなにも身につけていない。
そして、ここに入る前に、ホールには十数人の男客がいることを確認している。
まさか、本当にこの格好のセリーヌをホールに連れ出そうというの──?
一方でやっと違和感を感じた。
そういえば、最初にこの香茶サロンのホールを通り抜けたとき、店にいた客はある程度の年配の男だけだったと思う。
しかし、この香茶サロンは、セリーヌが学園の女性友人たちと利用するくらいなので、どちらかというと、客層は若い女性だ。
それにも関わらず、男しかいなかったというのは、変じゃないだろうか?
もしかして、これは偶然ではなく、最初からセリーヌを辱めるために、男だけを集めていた?
「あら、そんな小さな悲鳴でいいの? 大きな声で叫んだらいいじゃない。”助けて”ってね」
ソニアが戻ってきてセリーヌの後ろに回り、スカートの中に手を入れ、お尻の亀裂を下から上に、すっと一度だけ指で撫であげる。
「いやっ」
思わず悲鳴をあげてしまい、はっとして慌てて口を閉じた。
注目されれば、むしろ何事と誰かが覗きに来るかもしれない。
そうすれば、こんな姿を見られてしまう。
恐怖がセリーヌを包んだのだ。
すると、首輪に繋がれた鎖によって爪先立ちの姿勢を強いられているセリーヌの前に、ルシアンが静かに歩み寄ってきた。
「口を開けるんだよ。侯爵家の令嬢だとばれたくないだろう?」
ルシアンがセリーヌの鼻を摘まみ、思わず開いたセリーヌの口の中に強引に球体を押し込んだ。
口の中に押し込まれる瞬間にちらりと見たが、球体の表面には無数の穴が開いていて、その穴のひとつを利用して、なにかがぶら下げていた。
球体はそれなりに大きいので、完全には口を閉じられず、セリーヌは大きく口を開いて球体の半分を外に出しているかたちになる。
その外に出ている球体側に、イヤリングがぶら下がっている状態だ。
「ボールギャグという口枷だ。さっきの認識阻害のイヤリングがぶら下げてある。すでに魔道を通して作動させているので、しっかりと咥えていれば、貴方の正体がばれなくてすむ。ただし、うっかりと口から吐き出してしまうと、顔がばれてしまうからしっかりと咥えておくんだよ」
ルシアンが微笑む。
慌てて口の中の球体をしっかりと咥え直した。
だが、緊張と羞恥で息が荒くなっており、涎が息とともに球体に流れて、涎が球体の表面の穴から出そうだ。
慌てて顔をあげて、涎が垂れ落ちるのを防ぐようにした。
しかし、それでもだらりと涎が球体の穴を通して顎に流れてしまう。
「お嬢様、ご心配には及びませんよ。そのようなボールギャグを咥えさせられれば涎は垂れ流しになるものです。お嬢様の恥ずかしい姿を皆様にご披露いたしましょう」
クロエが首輪に繋がっている鎖と天井からの鎖の接合を外して、手に持つ。
爪先立ちからは解放されたが、それだけだ。
クロエが鎖をぐんと引っ張り、解放されている扉側にセリーヌを連れて行こうとする。
「んんんっ」
さすがに、抵抗しようとして首を横に振りながら、懸命に足を踏ん張ってこらえる。
しかし、思いのほかクロエの力が強く、二歩、三歩と引きずられるように扉に向かわされてしまう。
セリーヌは必死に腰を引いて足に力を入れる。
「暴れると、可愛いお尻が丸見えになるわよ。痛い思いをしたくなかったら聞き分けなさい。さもないと、その認識障害具をとりあげて、素っ裸でホールに引っ張るわよ──。あんたを従わせる手段なんかいくらでもあるんだから」
ソニアだ。
彼女が後ろ側から、ぱんとセリーヌのお尻を張った。
スカート越しではない。
短いスカートをめくりあげてから、思い切り平手で生尻を叩かれたのだ。
「んぐうっ」
思わぬ痛みに、セリーヌは呻き声をあげる。
「まあ、待て、ソニア。乱暴はやめてやれ。深窓のご令嬢だ……」
ルシアンが歩みを抵抗するセリーヌの前に立つ。
そして、微笑む。
「……さて、セリーヌ嬢、すでに理解しているとは思うが、ソニアが口にしたとおり、貴方を無理矢理に従わせる手段などいくらでもある。でも、できればご自分の足で歩いて欲しいと思う。それとも、手だけでなく足も縛られ、顔さえも晒されて、ヴァランティーヌ侯爵家のご令嬢と堂々と喧伝しながら、招待客の前に向かうのがお好みかな?」
すると、ルシアンがはだけているセリーヌのブラウスの上から乳首を探り当てて指の腹でなで始めた。また、反対の手をスカートの中に入れ、クリトリスを同じように指の腹でなぶってきた。
「んんっ」
痒みの襲われている場所を指でいじられて掻痒感が癒やされるだけでなく、あまりにも愛撫が気持ちよくて、甘い衝撃に腰が抜けそうになる。
すると、下からセリーヌの膣にルシアンの一歩の指が挿入してきて、ぐいと腰全体が押しあげられた。
「んああっ、んんっ」
衝撃で口の中の球体を吐き出しそうになり、慌てて噛みしめる。
いきなり指を挿入されたが、なぜか痛みはなかった。
それよりも、狂いそうな痒みが束の間癒やされた感じになり、むしろ、気持ちがいい。
声さえ出そうになる。
しかし、個室の扉はすでに解放されている。いま、このあいだにも誰かがここを覗かないとも限らないのだ。
懸命に声を耐える。
「痛みはないはずだ。そういうように指を貫かせた……。痛みで支配するのではなく、快感で支配してあげよう。淫乱の癖のある貴方にはそれが相応しい」
すると、ルシアンが後手拘束で抵抗できないセリーヌの腰を胸への悪戯をしていた手で抱くようにしてきて、すでに挿入している指をゆっくりと抽送し始めた。
しかも、膣の入口に近い上側を揉み擦るように刺激してきて、セリーヌに得体の知れない衝撃が貫いた。しかも、一度だけじゃない。
その衝撃がルシアンの指が股間の中を抽送するために、続けざまに脳天に響き抜ける。
そこはだめえっ──。
「んんんっ」
気がつくとセリーヌは、ルシアンに身を預けるようなかたちで、全身を突っ張らせながら太腿を小刻みに痙攣させていた。
なにが起きたのか理解できない。
ただ、一瞬頭が白くなり、途轍もない甘美感が貫いたのだけはわかった。
次いで、全身が脱力して、大きな高揚感に襲われる。
「あら、もういっちゃったの? いくらルシアンの愛撫が上手で、あんたが媚薬におかされているとしても、早すぎじゃないの」
セリーヌが逃げないように後ろから押す感じだったソニアが脱力しかけているセリーヌを背後から支えながらくすくすと笑う。
いく……?
つまり、達したということ?
あんなに簡単に……?
しかも、あっという間に?
セリーヌは自分の身体に起きたことに唖然としてしまった。
ルシアンがセリーヌの股間から指を抜き、その手でセリーヌの顎を掴んであげさせる。
彼の眼に貫かれたとき、ぞっとするほどの恐怖がセリーヌを包んだ。同時に圧倒するような幸福感が拡がる気がした。
慌てて、おかしな感情を振り払う。
「わかるかな? 同意がなくても支配はできる。そして、貴方はすでに支配されている。無理矢理に従わせてもいいし、どうしても反発したいならそれでもいい。結果は変わらない。だが、貴方が心からの謝罪として、僕たちの奴隷になる覚悟を示すなら、その代わりに、これまで想像もしていなかったような快楽を貴方の身体と心に刻み込んでやろう。支配を受け入れた方が、貴方にとって受虐の快楽は大きなものになる……」
ルシアンの眼差しは、まるで光の届かぬ湖底のようだった。
深く、冷ややかでありながら、なぜか視線を逸らせない。
獲物を捕らえる猛禽のようでもあり、理を見透かす占術師のようでもある──。そんな双眸に、セリーヌは自分の呼吸がどんどんと荒くなっていくのを感じた。
また、それにより、またもや涎が口枷の表面から流れ落ちる。
すでに、セリーヌが垂らしている涎はかなりの量が顎を濡らしている感じだ。ルシアンが顎を掴んでいる指も汚しているだろう。
羞恥と屈辱が走る。
でも、この男の目は……なぜ、こんなにも……。
睨み返してやろうとした。だが、できない。
むしろ、見つめられているだけで、胸の奥が冷たく、そして熱くなる。
その感覚は、恐怖に似ている。けれどそれだけではない。
あまりに静かで、あまりに圧倒的な“何か”が、セリーヌの中の境界をゆっくりと、確実に踏み越えてくる。
怖い……。
なのに──。
言葉にできないざらついた感情が、心の奥底でうごめいた。
羞恥か、怒りか、それとも別の何かか。
彼女はそれを認めまいと、口枷を咥えている唇をきゅっと結ぶ。
だが、確かに強い感情がそこにあった。
胸の内で、微かに脈打っている。
ルシアンはしばらくのあいだ、ただ静かに微笑んだままでいた。
その仕草さえも、セリーヌにとっては挑発のように映る
「……貴方の心には、誰にも触れられたことのない扉がある。鍵のかかった内側からも見えない扉がね。仮初めの婚約者だったとはいっても、対面するのは今日が初めてだ。だが、実はしばらく前から観察はしていた。侯爵家全体のついでに君自身のこともね……。一向に婚約者である娘に合わせようとしない貴方のお父上に腹がたったからね。そのときから報復を考えていた」
ルシアンの言葉に目を見開く。
ひそかに観察していた?
「それでわかったが、君には被虐の血が流れている。支配され、侮辱され、望まぬ快感に大きな悦びを感じてしまう淫乱の性分がね」
セリーヌはかっとなった。
馬鹿にされたと思ったのだ。
否定しようとするが、口枷が言葉を阻んでいる。
「……いまは認めなくてもいい。でも、すぐに自覚するだろう。貴方は命じられることに慣れている。否、慣れすぎている。それを拒めるという発想すら、どこか遠くに置き去りにしてしまったように見える」
その言葉は、ただの皮肉でも哀れみでもなかった。
まるで、自分でも知らない自分の心を代弁されたようで、セリーヌは身じろぎする。
「だが、命じられることに身を任せながら、その内側では、かすかな疼きがあったのではないか? 誰かに全てを見透かされ、導かれ、無様な自分すら許されたいと……」
……違う、そんなことは。
否、と叫びたいができない。
「君は優等生だった。侯爵家の娘らしく、誰からも咎められぬ振る舞いをしてきた。けれど、君の中には、それとは別に、情欲への渇きがある。しかも、支配されることによってしか救われぬ領域が……。僕ならば、その扉を開ける鍵になれる。君の知らない君自身を、見つけさせてあげられる……。これは儀式だ。貴方が貴方の中の羞恥と対面するための」
ルシアンの眼差しは、ただ深く静かだった。
やっと、ルシアンがセリーヌの顎から手を離す。
「さて、ショータームの時間よ」
ソニアがクロエが持っていた首輪の鎖を受け取り、ぐんと引っ張る。
「んぐっ」
クロエとは違う容赦のない力がセリーヌをホールに向かって歩かせた。
そもそも、さっき軽く達したためか、腰に力も入らない。
抵抗の心は、いつの間にか消滅してしまったみたいだ。
また、ソニアはいつの間にか、目の周りを覆う羽根飾りのついたマスカレードマスクをしていた。
すると、クロエもそれを嵌め、一方でルシアンは、最初につけていた認識阻害具のイヤリングを両耳に嵌め直している。
ただ、顔の半分をマスクで隠しているソニアとクロエとは異なり、ルシアンはイヤリングを装着しても、最初のときのようの顔がぼやけるということはなかった。
「この《認識阻害具》の何よりの利点は、いったん相手が正体を理解し、認知したならば、以後、その者に対しては効力を及ぼさぬという点にある。ゆえに、僕だと認識しているあなたにはこの顔が“見えてしまう”というわけだ」
ルシアンが言った。
「わかった──? 下手に抵抗しようとしたら、大声であんたの正体をばらすわよ。それとしっかりとボールギャグを口に咥えてなさい」
ソニアが鎖を持ったまま進み出す。
「んんんっ」
ついに、ホールに連れ出されて、セリーヌはほかの客たちのいる場所に連行されてしまった。
わっと歓声があがって、さすがにセリーヌは身体が竦んだ。
なにしろ、いつの間にか、まったくホールが様変わりをしており、中央にテーブルを集めたステージのようなものができあがっていたのである。
テーブルを幾つか合わせた「簡易ステージ」には、簡易階段も取り付けられていて、ソニアはそこにセリーヌを向かわせようとしている。
「ステージ」の周りには椅子に座っている年輩の男たちが取り囲んでおり、全員が好色な視線をセリーヌに向けてきた。
「さあ、行きましょう、お嬢様」
階段の手前につくと、さすがに躊躇して足がとまる。階段近くには、短すぎるスカート丈の内側を簡単に見あげられる位置に男が数名いるのだ。
「ふふ、お嬢様、とまってはいけませんよ。スカートをめくってしまいますわよ」
すると、クロエがセリーヌを押し出すようにする。
しかも、後ろからスカートの裾を持って、ちょっとだけたくし上げるような仕草をした。
「んんっ」
慌てて階段に足を進ませる。
わっと歓声があがる。
階段の横の男がスカートの中が覗くように上体を傾けさせていることに気がついた。
見られている──。
火の出るような羞恥に、セリーヌは思わず顔を俯かてしまった。
すると、ボールギャグの穴からまとまった涎が垂れ落ちて、客の男たちの何人かがそれを指摘するのが耳に入り、情けなさに涙が出そうになる。
ステージとなっているテーブルにあがらされる。
男の客は二十人くらだろうか。
ここにも天井から垂らされていて、ソニアが握っていたセリーヌの首輪の鎖を接続した。
鎖が引きあがり、セリーヌが真っ直ぐに姿勢を伸ばす程度に長さが調整される。
台の上は、数名があがれるほどのスペースがあり、クロエもソニアとセリーヌとともに台にあがってきている。
一方で、ルシアンはいない。どこに行ったのかわからなかった。
また、客の男たちは、自分で椅子を移動させてきて、セリーヌが立っている正面に位置を取り直している。
それで気がついたが、セリーヌには客たちの顔がぼんやりとしか認識できないでいた。表情もわかるし、顔が見えないわけじゃない。ただ、記憶することだけができない
ふと見ると、全員の耳に、ルシアンがしていたようなイヤリングが装着されていた。
認識阻害具だ──。
「……気がついた? ここに集まっているのは、今日のショーのためにルシアンが集めた特別なお客さんたちよ。もしかしたら、知っている相手もいるのかもね。彼らにあんたの正体を晒してみる?」
ソニアがセリーヌが口に咥えているボールギャグにぶらさがっているイヤリングを引っ張るような仕草をした。
「んんんっ」
びっくりして、慌ててボールギャグを噛む口に力を入れる。
「だったら、足を開きなさい」
ソニアが手で持って、固く閉じ合わしていたセリーヌの両脚を開かせようと力を入れてきた。
「さあ、お嬢様、抵抗しないでくださいね」
また、テーブルのステージの隅は小さなワゴンがあり、そこに木箱や得体の知れない器具が置いてあって、クロエはそこから両端に革ベルトがある金属棒を持ってきていた。
セリーヌが開かされた両脚の膝に入れて、金属棒の両端の革ベルトを繋げようとしている。
「んんんっ」
さすがに首を振って抵抗しようとする。
しかし、ふたり掛かりで無理矢理に両膝を金属棒に入れられて固定されてしまった。金属棒は肩幅よりもやや広い長さであり、セリーヌはかなりの開脚を強要されてしまっている。
ただでさえ短いスカートがさらにあがり、もうほとんど恥毛が覗けるような感じだ。
客たちが再び歓声をあげた。
あまりもの羞恥で気が遠くなりそうだ。
だが、同時にぞくぞくと心が震えるような熱いものが沸き起こってもきた。
もういい──。
見たければ、見ればいいのだ。
そんな捨て鉢のような感情が沸き起こった。
「さて、それよりも、まだ痒いでしょう? なんとかして欲しい、淫乱お嬢様?」
ソニアだ。
台上の置き台には小さな車輪がついていたみたいで、それをセリーヌの横に引き寄せていた。
そのとおり、気が狂いそうな痒みは、まだ股間と乳首に襲い続けている。
さっきのように愛撫されているあいだは、凄まじい程の高揚感に襲われるのだが、なくなれば、また地獄のような痒みの再開である。
全身から脂汗が噴き出すとともに、いつの間にか身体を痒みでぶるぶると震えさせてしまう。
一方で、ソニアは台の上の箱から、小さなバケツとともに、先端に刷毛のついた短い柄のついた道具を取り出した。彼女は、同じ刷毛付きの道具をもうひとり取り出して、セリーヌの反対側のクロエに手渡す。
訝しんだが、ソニアが握り手部分にある色のついた丸い部分に触れると、無音のまま刷毛の部分だけが動きだした。
前後左右、または回転と無秩序に刷毛だけが暴れるように動く。
魔道具だ。
セリーヌは目を見張った。
「ねっ、便利なものでしょう? あたしのような魔道を持たぬ平民でも、こうして魔道結晶の力を借りれば魔道具を扱える時代になったのよ」
ソニアは笑みを浮かべて、今度は刷毛の振動を停止させた。
──平民のくせに、という怒りは、不思議と湧かなかった。
けれど、心の奥に冷たい不安がゆっくりと沈殿していくのを、セリーヌは自覚していた。
魔道とは、魔道具を扱える能力の源であり、魔道こそが貴族の血統の証で政治と支配の正統性を支える力だ──。
それは侯爵家の娘として育てられた彼女にとって、空気のように当然の前提である。
幼い頃から父に何度も聞かされていた、「力なき者に治世は任せられぬ」「下賤が扱う魔道具など、猿に刃物」……そんな言葉の数々の言葉だ。
だが今、目の前で魔道具を軽々と操る平民のソニアの姿を改めて見て、かつての確信が揺らぐのを改めて感じる。
原因はわかっていた。
レヴィニア財閥──不安定な魔道結晶の安定化を実現して世界を変えたとされるこの新興の巨大商会が市場に流したもうひとつの革命……。高純度で安価な精製魔結晶を使用した一群の魔道具だ──。
これまで貴族だけのものであった魔道具の世界が、一気に“誰にでも手の届く道具”へと変わっていったのだ。
「魔道なき者、政治に関与すべからず」──第一王国憲章の第四条は、魔道を持つ貴族の特権を守る金剛の掟であるはずだった。
けれど今や、その“魔道”が平民の掌にも灯る時代。
侯爵の娘として育てられたセリーヌには、それが何を意味するのか、痛いほど理解できた。
父がレヴィニアを口にするたび、決まって吐き捨てるように言うのだ。
──「商人風情が、我ら貴族に並ぶとでも思っているのか。愚か者どもめ」
セリーヌは、それにうなずいてみせていた。
家の令嬢として、ふさわしく──そう、振る舞わねばならなかったから。
でも──本心は、少し違う。
魔道具が誰の手にも届くようになることで、王都の生活がどれほど便利になったか、彼女は肌で知っている。
平民の子供たちが、小さな照明結晶を手に笑い合っている姿を、ふとした街角で見たとき。
それは、決して悪いことだとは思えなかった。
だが、その感情を父に伝えたことは一度もない。
──セリーヌは、侯爵家の娘。その立場は変えられないのだ。これを自ら手放すわけにはいかない。
だからこそ、平民のソニアが、貴族と同じように魔道具を操る姿に、強い反感も賛美も抱けなかった。
ただ、どこにも吐き出せない矛盾が胸に絡まり、呼吸を詰まらせた。
それが──いま、彼女の心を静かに締め付けている。
だが、はっとした。
ソニアと、さらにクロエが起こした行動が、セリーヌの思念を中断させたのだ。
ふたりは手にしていた振動のできる刷毛を、小さなバケツの中のどろりとした液剤に浸してから、刷毛の先をセリーヌに近づけてきたのである。
しかも、ふたりの持っている刷毛が振動を開始している。
「んんっ」
びっくりして腰を思い切り引く。
「あら、逃げてはいけませんわ、お嬢様」
すると、クロエがセリーヌの腰に反対の手を伸ばして、スカートのフックを外してしまった。
フックが外れたことで締めつける手段を失ったスカートがずり落ち、腰の膨らんでいる部分で辛うじてとまるだけになった。
「んんんっ」
びっくりしてボールギャグを噛みしめたまま、抗議の声をあげる。
張りを失って完全に緩んでいるスカートが足もとに落ちそうだ。慌てて背中側でスカートの落下を押さえる。
「手で押さえるのは反則よ。腰と拡げている脚だけで、スカートが落ちるのを防ぐのよ」
しかし、ソニアがどこからか取り出した紐を指錠をされている手首に巻き、首輪の後ろの金具に紐を通して引きあげてしまう。
後手の手がスカートから離される。
セリーヌの短い制服のスカートがさらにさがった。
腰を懸命に浮かせるような姿勢をすることで、スカートがなんとか落下させないことができた。
「んんっ」
セリーヌは泣きそうになった。
「暴れれば、今度こそ、スカートが脱げてしまいますわね。それに、ブラウスもお嬢様の勃起なさっている乳首にとまっているだけなので、はだけてしまいますかも」
「だから、できるだけじっとしていた方がいいわね」
クロエとソニアだ。
そして、クロエが振動する刷毛先をセリーヌの胸の裾野に……。ソニアがスカートの中に刷毛を下から差し込んで内腿の付け根近くに当てた。
無秩序だが激しく動く刷毛の先が、容赦のないくすぐりをセリーヌに与えてくる。
「んぐううっ」
襲いかかってきた異様な感触に、セリーヌは全身を硬直させて、吠えるような声をあげてしまった。
「お嬢様、そんなに動かれてはあっという間に裸になってしまいますわ」
クロエがじわじわと刷毛を乳首に向かって近づけながら、揶揄うようにささやく。
「それとも見せつけたいのかしら? それから、言っておくけど、刷毛にはあなたに塗ってあげた媚薬をもっと活性化させる液剤を塗っているわ。イルヴィア液よ。すぐに、痒みが数倍になるから覚悟してね」
一方でソニアがちょんとクリトリスに刷毛先を当てる。
「んふうううっ」
これまでに味わったことのない衝撃に、セリーヌが大きく首を仰け反らせる。
見物の男たちの卑猥な歓声がわっと部屋に響き渡った。