侯爵令嬢物語【完結】〜羞恥と快楽の果てに令嬢と女騎士の姉妹が選んだ甘美な隷従 作:ドン・ドナシアン
蝋燭の灯りが、寝台の天蓋に影を揺らしていた。
ルシアンの私室──あの夜と同じ場所だった。けれど今夜、ここにいるのは、ジャンヌとセリーヌ、そしてルシアンだけ。
三人とも全裸だ。ただし、ジャンヌとセリーヌは、背中で両手を縛られていた。
ジャンヌの両腕は、肩の後ろ高くまで引き上げられ、手首が固く結ばれている。肘も寄せられて、肩甲骨が突き出ていた。胸は自然と張る格好になり、乳房の上下には、縄が食い込んでいる。
無理に動けば、縄が筋を締めつける。
けれど、そんな感じではなかった。むしろ──縄に包まれているという、奇妙な安心感があった。
縄の感触が、肌の上に、じわじわと沁みていく。
ルシアンに言わせれば、これを“縄酔い”と呼ぶらしい。
「今日もセリーヌと一緒に奉仕か」
ジャンヌは、努めて平静に言った。
乾いた笑いを混ぜたつもりだったが、声はどこか喉の奥で震えていた。
やっぱり、姉妹で一緒に抱かれるというのは、どうしても緊張する。
「前のときには、あまりにもジャンヌが不甲斐なかったからな。汚名挽回の機会だ」
寝台の真ん中でヘッドボードに背中をつけて脚を拡げて座っているルシアンが皮肉っぽく笑う。
ジャンヌとセリーヌは、その両側でルシアンに半身を預けるかたちで横たわっているのだが、ルシアンの言葉にかっと羞恥が湧く。
前のときというのは、今夜と同じように、前回、セリーヌと一緒にルシアンに抱かれたときだ。
そのときには、ルシアンに連続絶頂を味わわされ、ジャンヌは何度目かの絶頂のときに、ここで失禁をしてしまったのだ。そのときの羞恥が蘇る。
「……あ、あれは……我ながら……。途中で……ああなるとは、自分でも思わなくて……」
ジャンヌは、顔が火照るのを感じながら俯いてしまう。
すると、セリーヌがそっと顔を上げて、かすかに首を横に振る。
「ジャンヌお姉さまは……悪くないです。……あれは、誰でも、そうなってしまうような……」
セリーヌの声は、やわらかく、静かだった。感情を大きく波立たせることなく、それでも真剣な思いがこもっていた。
「慰めてくれるのは嬉しいけど、次はちゃんとするよ。……ちゃんと役目を果たすさ」
そう言ったものの、自分の声が少し強がっているように聞こえた。ジャンヌは思わず苦笑した。
蝋燭の炎が、ぱちりと音を立てた。
その微かな揺れに、セリーヌのまつげがかすかに震える。けれど、彼女は目を伏せたまま、微動だにしなかった。縄に身を預けたまま、まるで、眠っている人形のように。
ルシアンは寝台の背にもたれて、長い脚を伸ばしたまま。その横顔には、どこか遠くを眺めているような気配がある。なにも言わず、なにも急かさず、ただ蝋燭の灯りが揺れるままに時間を泳がせていた。
「──なあ、ルシアン」
声を発したのは、ジャンヌだった。すこしだけ喉の奥に力を込めていた。
「んっ、なんだ?」
「セリーヌを、しばらく学園に通わせないって……なにかあったのか?」
ルシアンはすぐには答えなかった。
やや間を置いてから、ようやく視線だけをジャンヌに向けた。
ルシアンから決定事項として、それを伝えられたのは、夕食のときだ。しかし、そのときには、理由は教えられなかった。
「気になるのか?」
「気になるよ。……なあ、セリーヌ?」
ジャンヌの声は穏やかだったが、その奥にはかすかな苛立ちが滲んでいた。なにか危険な状況でもあるなら、知らせるべきだ。だが、最近やっとわかってきたが、このルシアンには、自分の心情をなかなか表に出さない傾向がある。
まあ、それは、まだまだジャンヌたちが、ルシアンの信頼を十分に得てないというのがあるのだろうが、ジャンヌにはそれを苛立たしく感じる。
「い、いえ……わたしは……。ルシアン様にお従いするだけですので……」
一方、セリーヌはちょっと控えめな感じで応じる。
「──少し様子を見ているだけだ。なにかを疑ってるわけじゃない」
「じゃあ、財閥にまた圧力が?」
「そういう動きがある。直接的なものじゃないが……些細な揺らぎが、少しずつ表に出てきている」
「純血派の仕業か? ベルモント伯がなにかの動きを?」
そのジャンヌの言葉に、ルシアンは鼻で笑った。
「ベルモント伯? あの大物を気取った小者か? あいつらは、所詮、小悪党集団に過ぎない。僕は、あれらを敵として認識したこともない」
「……じゃあ、ほんとうに誰が?」
「まあ、いいだろう。いまは言葉にするほどでもない」
ルシアンの声は、ふっと煙のように消えていくようだった。
ジャンヌは、それ以上なにも言わなかった。
ただ、緊縛された両腕が、わずかに肩の後ろで痙攣した。
セリーヌは寝台の上で、小さく頭を垂れたまま、なにも言わなかった。
静寂の中、ルシアンがふと笑みを浮かべた。
焔のゆらぎが、頬の輪郭をかすかに照らす。
「ところで……ジャンヌは、あれから上達したのか?」
ルシアンだ。
声に悪意はない。だが、その響きは妙に艶を帯びていた。
“あれから”……。その言葉の意味を理解するのに、一瞬だけ時間がかかった。いや──わかっていたのだ。ただ、認めたくなかっただけ。
「な、なんの話だよ」
跳ね返すように口をついたが、言葉が舌に乗るより先に、耳が熱くなっていた。
ルシアンは目を細めたまま、くすりと笑った。
「フェラチオだ」
その言葉が、寝台の上に落ちる。
蝋燭の火が揺れた。
「……ばか。言い方というものがあるだろう」
「なら、“口で男の性器を咥えて奉仕する行為”と言い直そうか」
皮肉のきいた声だった。だが、それに乗じて、セリーヌが小さく首をかしげた。
「ジャンヌお姉さま……あまり慣れていらっしゃらないんです……。でも、お姉さまは、なんでもお出来になるので、すぐに上手になられると思います」
その言葉には、侮蔑も見下しもない。ただ、昔から思っていたが、セリーヌには、ジャンヌを理由なく盲信している傾向がある気がする。いくらなんでも、男女の営みについては、ジャンヌもまったく自信はないし、“なんでもお出来になる”なんて、思ってもいない。
だからこそ、余計に堪えた。
「……見て学ぶだけじゃ無理ってことだよね」
ジャンヌはつぶやくように言った。
実際、前の夜──セリーヌが、ルシアンに対してどれだけ自然に、滑らかに振る舞っていたか。あのときの舌の動き、喉の使い方、なにもかもが、ひとつの儀式のようだった。
「セリーヌについては、クロエが厳しく教えているらしいからな。じゃあ、セリーヌ、次はジャンヌに教えてやれ」
ルシアンの声は低く、そして確かだった。
拒絶も拒否も、もはやできる空気ではなかった。
「……わかりました。じゃあ、お姉さま、ご一緒に……」
セリーヌがゆっくりと身を起こす。縄に締められた両腕は背中で固定されたまま。だが、その身のこなしは驚くほど柔らかく、まるで緊縛されたことすら忘れてしまったような自然さだった。
ジャンヌは、喉の奥がごくりと鳴るのを感じた。
そして、ゆっくりと視線を、ルシアンの下腹部へと向けた──。
「お手並み拝見だな、ジャンヌ」
ルシアンは寝台に深く背を預けたまま笑う。
ちょっと、その余裕に腹がたつ。
いまに見てろ……。
「ジャンヌお姉さま、始めて、よろしいですか?」
「あ、ああ」
セリーヌはすでに両膝をついて、ルシアンの股間に顔を伸ばすようにしていて、ジャンヌも慌てて反対側から同じ体勢になる。
「では……お姉さま。まずは、先端に口づけを」
静かな声音だった。命令ではない。けれど、断る余地など、最初からないのだという確信を帯びていた。
ジャンヌは、喉を鳴らした。縄に引かれる肩に熱を感じながら、さらに身を起こす。
セリーヌがそっと身体をずらす。
ジャンヌは、顔をさらにルシアンの下腹に近づいていく。
それは、見慣れぬ角度から見る男の姿だった。
形、色、わずかな脈動、そして──匂い。
羞恥とともに、喉の奥がきゅっと締まる。だが、視線を上げると、ルシアンがじっとこちらを見ていた。いつものように、冷たい瞳。けれど、どこかに微かな期待の色が混じっているようにも見えた。
ルシアンの男根はまだ固くはなってない。
ジャンヌは、顔を伏せるようにして、その先端に唇を当てた。
触れた。熱かった。わずかに塩気を帯びた皮膚の感触が唇の内側に残る。
「……はい。今度は、舌を出して、先端の裏側を舐めてください。そう……そのまま、優しくです」
セリーヌの声が横から響く。
言われた通りに、舌を伸ばす。舌先が、敏感そうな部分に触れた瞬間、ルシアンの肩が、かすかに動いた。
そして、眼の前のルシアンの男根が大きくなり、固くなっていく。
「いま……反応されました。お姉さま、そこを念入りに」
セリーヌの声が、少しだけ嬉しそうだった。
ジャンヌは、その箇所をもう一度舐めた。すでに、もう怒張だ。
指は使えない。だから、首の角度を調整し、舌を横に滑らせる。緊縛された両腕が背中で揺れる。
セリーヌが身体を寄せ、今度は自分の舌で、袋のあたりをやさしく撫でた。
「ここも……すごく敏感です。焦らずに、優しく……です。ときどき、息とかを使って温度を変えると、もっと感じてくださいます」
それは、まるで授業だな、と思った。
六歳も年下の妹からの淫靡な授業……。
考えてみると、とても倒錯的な光景なのではないだとうか。
とにかく、ジャンヌは、否応なく身体を預ける。
「次は、口を大きく開けて──できるだけ、奥まで……」
「奥……か……」
セリーヌの声は、やわらかい。
それでいて、恐ろしいほどに確信に満ちていた。
ジャンヌは、喉に力を込めて、限界まで口を開いた。
頬の内側に、熱が伝わる。
喉の奥まで届かせることは、まだできなかった。けれど、唇を押し当て、舌を器用に動かすことで、少しずつ、ルシアンの表情が変わっていくのがわかる。
セリーヌが、また囁いた。
「お姉さま、眼はそらさないで……。ルシアン様の顔だけ、見つめて」
言われるままに、眼を向けた。
その瞬間、ルシアンと視線が交わった。
微笑んでいる。
でも、感じている。
──心臓が、跳ねた。
見られている。自分が、いま、こうして、男の一物を咥え、舌で愛撫していることを、ルシアンがすべて見ている。
そして、ルシアンもまた、これに興奮を示してくれている。
羞恥ではない。
いや、羞恥はある。
けれど、それ以上に、なにか違うものが身体を支配していた。
「……うまいぞ、ジャンヌ……。前回とは大違いだ……。気持ちいい」
ルシアンが、ぽつりと呟いた。
褒められた──。
それだけで、胸の奥に火がついた。焼けるような熱が背中の縄にまで染み渡り、指の先まで疼くようだった。
唇を開き、もう一度ゆっくりと咥え込む。
角度を変えて舌を這わせると、ルシアンの喉がかすかに鳴った。
「……そこだ。さっきと同じ場所……少し強めに」
ルシアンの声は低く、どこか熱を帯びていた。
ジャンヌは、舌の力をわずかに強める。背中に回された腕が震えるたび、胸の奥でなにかがざわめく。羞恥のはずだった。だが、それはいつの間にか、奇妙な悦びに変わっていた。
「お姉さま……少しだけ、上下に……そうです。そのまま、リズムを刻んで……」
セリーヌが横から支えるように囁く。その声音が、ジャンヌの耳朶を撫でていく。
言われたとおり、顎を使って、ゆっくりと前後の動きを重ねる。最初はぎこちなかったが、すぐに馴染んだ。
肉の弾力、温度、わずかな鼓動。舌で感じるすべてが、妙に生々しかった。
視線を上げる。ルシアンがこちらを見ていた。
その目に、明らかな愉悦が浮かんでいる。
見られている。褒められている。
「そのまま、果てたい。いいか?」
ルシアンの手がわずかに動いた。
「もちろんです、ルシアン様……。ジャンヌお姉さま、そのまま、お続けください」
セリーヌが勢いよく応じる。
──来る。
ジャンヌの口のなかで、ルシアンの怒張がさらに太さと熱さを増すのがはっきりとわかった。
ジャンヌは、反射的に目を閉じかけた。
けれど、すぐにセリーヌの声が、かすかに耳元でささやく。
「お姉さま……来たら、そのまま呑み込んで……。ルシアン様のこと、全部です……」
その声は、まるで祈りのようだった。
口のなかに、熱が広がっていく。
次の瞬間、喉の奥に突き上げるような熱が奔った。
重たく、濃密な感触が口の中いっぱいに噴射して拡がった。
男の精──。
強い匂い……。
拒絶感は……ない……。
喉の奥が、自然に動いた。
唇を閉じ、顎をゆっくりと引いて、静かに呑み下していく。
濃密な熱が、咽を過ぎ、胸の内側に降りていった。
そこには、苦痛も、嫌悪も、なかった。
むしろ──。
どこか、安堵に似たものがあった。
身体の奥に、なにかを与えられたという実感。
役目を“果たした”という感覚。
そして、喉の奥にまだ残る余韻を感じながら、ジャンヌは、自分の呼吸が、かすかに乱れているのに気づいた。
肩が揺れている。胸が波打っている。
全身が火照っていた。
興奮している。
とてつもなく。
信じられないくらいに……。
「……すごいです……お姉さま、ちゃんと……最後まで、できました……」
セリーヌの声が、どこか誇らしげだった。
ジャンヌは、ゆっくりと顔を上げる。
視線を向ければ、ルシアンの顔がそこにあった。
いつものように冷淡な仮面──。けれど、その奥に、わずかな悦びの色が滲んでいた。
「……なかなか、やる……。まいった。もっと意地悪をするつもりだったが……」
それだけ言って、ルシアンはまた背をヘッドボードに預けた。
ジャンヌは、背中の縄がまだ緩んでいないのに気づいた。けれど、そこに不満はなかった。
腕が縛られたままなのに、まるで、自分の全身が自由になったような気がしていた。
自分は、受け入れたのだ。
ルシアンを、セリーヌを、そして──この夜を。
寝台の上で、ルシアンが静かに立ち上がった。
蝋燭の炎が、その影を長く引きずる。
「お前たち……今日はずいぶん、愉しませてくれたな」
その声に、セリーヌがはっと身体を伸ばし、静かに頷く。ジャンヌもまた、肩の後ろに引かれた腕のまま、背筋を強張らせるように姿勢を正した。
ルシアンはふたりの脚側に回り込むと、顎をわずかにしゃくって示した。
「ふたり並んで、うつ伏せに。尻を高く上げろ」
命令は短かったが、その響きには逆らえない力が宿っていた。
ジャンヌは息を呑み、セリーヌと視線を交わした。縄で縛られたまま、ふたり並んで、ゆっくりと身を沈める。頬が寝台に触れ、肩が沈み、膝を折り、腰を高く突き出す──。
羞恥と緊張の中に、奇妙な昂ぶりが混ざっていた。
セリーヌの横顔がちらりと視界に入り、その頬の赤みに、思わず胸が熱くなる。
「あんっ」
「うわっ」
次の瞬間、ルシアンの両手が、ふたりの尻を同時に撫でた。
親指と手のひらが、下腹部から腰へ、そして臀部の曲線をなぞっていく。ふたりの身体が、左右に揃って反応する。
「どちらが先に感じるか……愉しみだな」
ルシアンの手は交互に、そして時に同時に愛撫を続ける。
指先が内腿を這い、臀の谷間をなぞる。そこにはいやらしさよりも、圧倒的な支配の気配があった。
呼吸が早くなる。羞恥とともに、鼓動が強くなる。
「くっ、ああっ、あっ」
セリーヌが小さく息を呑む音がした。
「んんんっ、んああっ、ああ……」
その直後、ジャンヌもまた、自分の奥から熱が立ち上がってくるのを感じた。
「あああっ、ああっ──。そこは──」
セリーヌの声が漏れた。
押し殺したような吐息が、寝台に落ちる。
ジャンヌは、反射的に首を向ける。
だが、縛られた肩が動きに抗って、胸の奥にじんとした痛みを走らせた。
その痛みすらも、いまはなぜか、意識を鋭くさせるだけの刺激になる。
──ルシアンが指から男根に変えて、セリーヌの奥を探っている。
そう、わかった。
直接は見えない。だが、ルシアンがどのように動いているか、触れられている位置がどこか──セリーヌの身体がすべてを語っていた。
「んあああ……あああっ……あああ──」
喉を震わせながら、セリーヌが喘ぐ。
同じように腰を上げている自分にも、ルシアンの左手が触れてきてはいる。
すると、その指が引かれる。
次の瞬間──太くて熱いルシアンの肉棒がジャンヌのお尻の下から、一気に滑り込んできた。
「んああああっ、あああ──」
ひやりとした感触だった。だが、その冷たさが、熱に変わるのに時間はかからなかった。
烈しい律動が続けられる
ジャンヌは、寝台に額を押しつけた。
唇が、熱く濡れていた。
自分の声が出るのを、かろうじて抑え込んだ。
そのときだった──。
すっと、男根が抜かれていった。
「……やあああっ……あああん……ああああっ」
セリーヌの裸身がびくんと反応して、大きく仰け反った。
今度はセリーヌ──。
なにをしているかわかった。
ルシアンは、多分、交互にジャンヌとセリーヌを貫いている。
セリーヌから始まり──ジャンヌを貫き──また、セリーヌ──。
「ああんっ」
セリーヌが脱力した。
また、ジャンヌが戻ってきた。
後ろから貫かれる。
「あああっ」
ジャンヌの口から淫靡な声が迸る。ジャンヌがセリーヌの乱れる声を聞いていたように、セリーヌもまた、ジャンヌの喘ぎ声を耳にしているだろう。
そう思うと、羞恥の熱が背中に走り、縄の締めつけが意識を焦がす。
いま、自分もセリーヌも、同じように弄ばれ、同じように高められている──。
また、ルシアンの怒張が離れた。
そして、次の瞬間──セリーヌの身体がわずかに跳ねた。
──いまはセリーヌの番。
セリーヌが突かれている。
その動きが、寝台の上を伝ってきた。
肉が打ちつけられる小さな音と、セリーヌの声──。
快楽と羞恥の混じったその嬌声は、ジャンヌの脳に直接火を灯した。
「んっ……う、ぅ……あ……」
セリーヌの声が震え、脚がわずかに開かれていく。
そして、それが急に止んだ──。
──交代。
その言葉が脳裏をよぎった瞬間、ジャンヌの腰にも、硬いものが当たった。
「……あああっ──」
声が漏れた。
ルシアンの律動が、数度、自分の内を打つ。
荒く、だが決して乱雑ではない。
研ぎ澄まされた支配のリズム。
──また、離れる。
セリーヌへ。
そして再び、ジャンヌへ。
交互に律動され、快楽が擦り込まれていく。
自分ではどうにもできない。
ただ受け入れるしかない身体。
それが、こんなにも敏感に、快感を拾い上げている。
セリーヌの声に自分の喘ぎが重なる。
ふたりの息が重なり、ひとつの旋律のように空間に満ちていく。
──ルシアンが、ふたりを操っている。
羞恥ではない。
いや、羞恥は確かにある。
だが、それ以上に、そこにあったのは、底なしの悦びだった。
ふたりの肩が、同じリズムで揺れていた。
ルシアンの怒張が、セリーヌに律動する。
しばらくすると、ジャンヌの膣口にも、ためらいなくルシアンの肉棒が沈んでくる。
けれど、焦らすわけでも、いたずらに乱すわけでもなかった。
ただ、届くべきところに、的確に届く。
「ああ、ああ、ああああ──。いくうっ、い、いきたい──。いっていいですか──ああああ」
セリーヌはかすれた声で嬌声を漏らし、絶頂を懇願して震える。ジャンヌの耳にその声が流れ込むたび、全身が脈打つ。背中の縄が擦れて、そこからもまた微細な刺激が背骨を駆けあがってくる。
「いつでもいい──。ジャンヌもだ」
ルシアンがセリーヌを突きながら言う。
「……お、お姉さま……いま、ルシアン様、すごくっ……」
途切れがちな言葉のなかで、それでもセリーヌの声は甘く柔らかく、どこまでも従順だった。
すると、今度はジャンヌの股間をルシアンの指が再び襲った。
「ひゃああ、あああっ」
ジャンヌは大きく喘ぐ。
多分、いまはルシアンはセリーヌを男根で貫いている。それをしながら、ジャンヌに指の愛撫を加えてきたのだ。
「ああああっ。ああ」
「あっ、ああっ、だめ、だええっ、我慢、で、できない──」
ジャンヌは返事をする余裕すらなかった。両脚が勝手に震え、腰が浮き、ルシアンの指を逃れようとして──そのたびに、逆に深く突かれてしまう。
時間の感覚が曖昧になっていた。
何度か、寸前まで連れていかれて、そこで解き放たれずに戻される。それを繰り返すうちに、ふたりの呼吸はどんどん浅く、激しく、そして甘く熱を帯びていった。
「──そろそろ、いいな」
低く、乾いたルシアンの声。
それだけだった。
次の瞬間、ジャンヌを襲うのが指から怒張に、また変わった。
思い切り突きあげられる。
「ひゃああ、ひゃあああ、あああ──」
ジャンヌと同じように、セリーヌも烈しく上下に腰を動かしている。
セリーヌについては、さっきとは逆で指で最奥を突きあげるようにされているのかも──。
そして、大きな波がジャンヌを包んでいく。
「──っ、あああ、あああっ……」
「んああ、ああっ……」
ふたりの身体が同時に跳ねた。
細く、長く、ひとつの声になって天蓋の布を揺らすような、震えの絶頂。
「くはああっ」
セリーヌが先に果てた。跳ねるように身体をのけぞらせ、口を開けたまま音にならない吐息を漏らし続けていた。
その隣で、ジャンヌは──。
口を開いたまま、言葉にならないうめきを喉の奥に押し込め、ひときわ大きく息を吸い込んだ。そして、ゆっくりと──。
果てた。
背筋が反り、汗に濡れた乳房が震え、全身の筋肉が一斉に弾けるように躍動した。
そのジャンヌに、ルシアンが熱い精を注いでいた。
一射、二射、三射──。ジャンヌのなかに熱いものが繰り返し迸る。
縄に締めつけられたままなのに、どこか自由だった。
ルシアンが怒張を抜く。
ジャンヌはすでに倒れ込んでいるセリーヌの横に、自分も身体を脱力させて崩れた。
「仲良く昇天か。随分と気が合うようになったものだ」
ルシアンが倒れているジャンヌとセリーヌのあいだに、仰向けに入りこんで寝そべった。
視界の端に、ルシアンの顔があった。表情はほとんど変わらない。けれど、ジャンヌにはわかった。あの仮面の奥で、確かに──喜びのようなものが、静かに揺れていることを。
ジャンヌは緊縛のまま、ルシアンの胸に身体をすり寄せる。
反対側を見ると、セリーヌも同じようなことをしていた。
三人の果てたあとの余韻が、長く、やさしく、寝台の上に漂っているかのようだった。