侯爵令嬢物語【完結】〜羞恥と快楽の果てに令嬢と女騎士の姉妹が選んだ甘美な隷従 作:ドン・ドナシアン
走り出した馬車の中を沈黙が包む。
だが、静かではない。
「はあ……、あっ……、ああ……」
轍の揺れが不規則にセリーヌの身体を揺さぶり、そのたびに甘い喘ぎ声が口からこぼれてしまう。
その吐息混じりの声だけが馬車という密室に響いている。
あの香茶サロンのホールで受けた悪夢のあと、セリーヌは今度は香茶サロンの奥の部屋に連れ込まれ、いまの「支度」をされたのだ。
そのときに知ったことだが、あの香茶サロンそのものが、ルシアンの息のかかった場所であり、彼はあの香茶サロンだけでなく、ルシアンやその一派が好き勝手のできる「隠れ処」のような施設を王都内にたくさん確保しているらしい。
表の名義をいくつも用意し、関係者を巧妙に分散させ、誰にも本体を掴ませないまま、いくつもの「隠れ処」を王都に築いているようだ。
あの「ルミエール」など、名は隠しているが、そもそも表の経営者を操る存在がルシアンである気配だ。
馬車の中で、セリーヌは侍女姿のソニアと、学園の制服姿のクロエに挟まれて座っていて、ルシアンはセリーヌたち三人と、向かい合うように腰掛けている。このルシアンがただの子爵だとは、もはやセリーヌは思えない。
──ルシアン=モントレフォール。
表向きは、中規模の商会を経営するただの新興の子爵家……。
だが、おそらく仮面なのだろう。
あの香茶サロンでの一件で、セリーヌは思い知らされた。
この男がただの小貴族ではないことを……。
あの優美で上品なサロン──ルミエールは、王都でも若い貴族令嬢に大変人気のある店だ。そのルミエールすら、彼は簡単に淫靡で退廃的なショーを行う「舞台装置」にすることができるのだ。
セリーヌの専属侍女のクロエもまた、いつの間にかルシアンの手の者となっていたが、クロエだけでなく、多分、多くの諜者を侯爵家にも入り込ませている……。
彼ら、彼女たちを通じて、セリーヌもずっと「観察」されていたのだろう。
侯爵家の中でさえ、ルシアンは手を触れることができるのだ……。
そもそも、香茶サロンから出るとき、外で待機をさせていた護衛の気配がないことを訝しんだとき、セリーヌの護衛については、今日の「任務」が終わったして、すでに帰還するように指示したと笑って教えられた。
すでに、忠誠心が高いはずの侯爵家の護衛たちにまで手を伸ばしている?
そのときに、セリーヌに告げたルシアンの言葉は、”金で買えないものもあるが──残念ながら、貴族の誇りも、令嬢の貞操も、家人の忠誠心も、そのほとんどは値札がつく”だった。
セリーヌは、自分のいた世界の脆さにめまいを覚えてしまった。
この馬車がどこに向かっているのかさえもわからない。侯爵家の王都屋敷に向かうわけではもちろんなさそうだ。
学園からの帰宅が遅くなれば家人も騒ぐだろうし、帰宅用の侯爵家の馬車も学園で待機を指示したままだ。それについても、すでに手を回していると告げられた。
まったく動じていないルシアンたちの様子からも、セリーヌが帰宅しなくても侯爵家が動かないように工作しているのは、おそらく事実なのだろう。
いずれにしても……。
──馬車の中で苦悶するセリーヌを静かに見ている目の前の男は、「ただの子爵」などではない。
人を服従させ、心を縛り、静かに支配する者──。
財力……。
組織力……。
情報……。
──この男は、きっと……それらを自在に使いこなしている。
表に立たずとも、影から貴族すら操れる力を持つ……。
ヴァランティーヌ侯爵家の屋敷内でさえ、手を伸ばせるのだ。
「あんっ」
馬車が大きく弾み、妖しい衝撃が全身を貫き、セリーヌは思わず大きな嬌声をあげてしまった。
羞恥で慌てて口をつぐむが、横に座るソニアがくすくすと笑った。
「随分と"レコル"が気に入ったようね」
「き、気にいってなど……いません……」
ソニアの
馬車に乗り込む前に施された「支度」により、まだ幾らも進んでいないというのに、すでにセリーヌは完全に追い詰められていた。
「支度」について……。
まず、セリーヌは、ただ一枚の外套を纏っただけの姿だ。
下着はもちろん、衣服の類はすべて剥がされている。
外套もまた、セリーヌの裸身を隠すためではなく、拷問具として機能していた。
裏地にはびっしりと羽毛が縫い込まれていて、そこには身体を過敏にする媚薬──イルヴィア液が塗布されているのだ。
その柔らかな羽先が、馬車の揺れに合わせて乳房を、腹を、太腿を、くすぐり、撫で回す。
セリーヌは、馬車が揺れるたびに、悶えるような仕草と甘い息を我慢することができなかった。
動けば擦れ、擦れれば熱を持ち、熱はすぐに肌を疼かせる。
また、両手は外套の中で後手に拘束されている。
親指に嵌めてある魔道具の指錠で親指同士を接合されて離すことができないのだ。香茶サロンの奥に戻されたあと、セリーヌが魔道を注いでも外れないことを確認させられ、しかも、無理に力を入れると、強い電撃が迸ることも体験させられた。
怖くて、とてもじゃないが、無理矢理に外してしまおうなどと思えない。
そして、セリーヌの乳房と股間には、それぞれ銀の拘束具──ソニアが言及した「レコル」が装着されていた。
レコルは、小さな銀製の細い環だ。
そのレコルが乳首の根元にきつく嵌められ、血の巡りをわずかにとめ、張り詰めた感覚を生む。その状態で羽毛が撫でれば、ひと刷けごとに乳首はびくんと跳ね、羞恥と快感が入り混じった呻きが喉の奥で湧いた。
股間のレコルは、より凶悪だった。
馬車に乗り込む前に、あの香茶サロンの奥で乳首へのレコルとともに装着されたものであり、股間のレコルは、鈍く光るその環がクリトリスの根元に喰い込むだけでなく、さらに微少の突起部分が絶えずクリトリスを押し潰すように包んでもいるのだ。
クリトリスをぴたりと押さえつけ、馬車の微振動と共に甘く、狂おしい疼きを与え続けている。
「ん……くっ……」
唇をかみしめて耐えるも、腰が勝手にわずかに揺れてしまう。
すると羽毛が乳首を撫で、レコルがまた擦れて……。
「あんっ、いやっ」
またも、馬車が大きく揺れて、強い衝撃が三個のレコルから加わったのだ。
思わず大きな声をあげてしまい慌てて口を閉じる。
座席全体は馬車の振動を小さくするソファー張りの座席になっているが、セリーヌの座る位置だけは、同じ革張りではあるものの、振動を逆に受けやすいように細工が施されるらしい。
だから、馬車が動くあいだ、延々と刺激を受けてしまうのだ。
全身が淫らな連動に支配されていく……。
それを自覚せずにはいられない。
「うっ、うくっ、はんっ」
そして、また馬車が大きく揺れ、耐えられない刺激が全身を貫く。
声を我慢できない。
身じろぎするたびに、レコルがクリトリスを妖しく刺激し、いまも馬車の揺れに合わせて、その刺激がわずかに変化する。
一定でない。
だから、予測できない。
それが、どれほどの焦燥と羞恥を呼ぶのか、ほんの短い時間だけで、セリーヌの脳裏にはすでに焼き付かさせられた。
「とにかく、早く声を漏らさないですむように慣れることよ。明日からは、それを装着したまま学園に通ってもらう予定だし」
ソニアだ。
セリーヌはびっくりした。
「ま、まさか……あ……ありえません……。こ、これを装着したまま、学園など……」
唖然としてソニア、ルシアンを見る。
だが、ふたりとも微笑んだまま沈黙してしまう。
ふたりの態度により、セリーヌは、すでにこれは「決定事項」なのだと悟り、愕然としてしまった。
「大丈夫ですよ、お嬢様。明日まで時間はあります。しっかりと練習すれば、絶頂なさるのを隠すことができるようになります。頑張りましょう」
すると、ソニアの反対側のクロエが外套の中のセリーヌの腕を掴むようにしながら、制服のジャケットの胸の内側から一枚のカードを取り出した。
表面に魔道紋様が刻まれている。クロエがカードを持っている側に指で表面に触れた。
「ふんっ、あああっ、な、なにっ──?」
セリーヌは狼狽して鼻にかかった悲鳴をあげてしまった。
淫らな刺激でセリーヌを悩ましているレコルが、激しく振動をしながら揉み動くように動き出したのだ。
しかも、膜のようなものが覆った感触がして、柔らかくくすぐってくる。次いで、それが人間の舌で舐めるような刺激に変化した。
鋭敏な乳首の先と、クリトリス全体を舐められる感覚に、セリーヌはすぐに追い詰められた。
「あっ、いやっ、あああっ」
淫らな刺激に、セリーヌは口をつぐもうとしたが、三点に加えられる刺激は、舐められるような刺激だけでなく、指で揉まれ、筆でくすぐられるような刺激も混じっている。それが重なっていて、常識ではあり得ない感覚だ。対処など不可能だった。
セリーヌは悩ましく身体をくねらせながら、ぶるぶると身体を震わせるしかなかった。
そうすると、外套の内側の羽根がさらにイルヴィア液をまき散らしながら、セリーヌの肌を刺激し、甘い疼きが一気に増幅する。
「とめてっ、とめて、クロエ──。だめええっ」
「でも気持ちよさそうですよ、お嬢様。だったら、とめなくていいじゃありませんか」
クロエがカードにまた指を触れさせた。
乳首とクリトリスへの刺激がさらに強くなる。
振動もあるが、それとともに与えられる刺激が強烈で気持ちいいのだ。
まるで、身体の外からではなく、レコルを装着されている部位を通じて、直接に頭に快感を送り込まれている感覚だ。
そして、強烈な痒みも襲ってきた。
その痒みが、レコルの刺激により癒やされる──。
「いやあっ、か、痒いいい──、ああ、で、でも気持ちよくて……。あああっ」
自分でもなにを口走っているかわからない。
一気に快感が飛翔していく。
我慢できない──。
「痒みを感じるのであれば、ルミエールにおける痒み責めがやみつきになりかけているのかもしれないな……。レコルは単なる淫具ではない。魔道を駆使して、装着された女がもっとも快感を感じる刺激を探して与えてくる。責めながらでも覚えるが、使えば使い込むほどに、レコル自身が的確に弱点を記憶する。レコルの責めから逃れるのは不可能だ」
向かい側のルシアンが静かな口調で語るのが聞こえた。
だが、内容の半分も頭に入らない。
「んんんんっ」
狂おしいばかりの愉悦に、セリーヌは全身を突っ張らせて、一気にオルガニズムに達してしまった。
しかも、外套の中でおしっこのような小水が股間から迸る。
なに、これ──?
「あら、勝手に達したの? クロエ、レコルをとめないで。しっかりと、奴隷の躾を覚えてもらわないと……。ルシアンの前で勝手にいくのは禁止よ。許可を受けてから絶頂すること。頭ではなく、身体で覚えるの。最後には、許可なく達することができない身体になることが理想ね」
ソニアだ。
「ああっ。許して──。く、クロエ、とめてえ──」
セリーヌは悲鳴をあげた。
レコルの振動と刺激がとまらないのだ。
達したばかりの身体がさらに絶頂感に包まれる。
「遠慮せずに、何度でもいってください、お嬢様。馬車の中で潮を噴くほどに、お気持ちがよかったですよね。お漏らしをなさったのはわかりましたよ」
クロエが掴んでいたセリーヌの腕を放し、外套の中に手を差し込んできて、強引にお尻の下に手を差し込んできた。
そして、指をアナルに挿入してきた。
潤滑油のようなものを塗っているのだろう。簡単にクロエの指はセリーヌのお尻の中に入りこんでしまっている。
そのクロエの指がセリーヌのお尻の中で揉み動く。
「ああ、いくううっ」
お尻の中の気持ちのいい場所を圧迫され、レコルの刺激と合わさり、またしてもセリーヌは馬車の中で達してしまった。
「覚えの悪い令嬢ねえ──。ルシアンに許可をもらってからと言っているでしょう──」
ソニアが怒鳴りあげた。
「まあまあ……。まだ初日だ。僕の恋人として十年以上のソニアにようにはいかないさ……。でも、罰として、今日からの調教では"アルフェ"も味わってもらおう。アナルがセリーヌ嬢の快楽の壺であることはわかったからね。だが、その前に"セリュース"で洗浄だ。研修施設に到着する前に、王都内をゆっくりと回ってもらうか……。時間をかけた方が効き目がある」
ルシアンが事も無げに言った。
研修施設……?
この馬車は、どこかの研修施設に向かっている?
それにしても、"アルフェ"にしろ、"セリュース"にしろ、まったく耳にしたこともない言葉だ。いまからなにをされるのか見当もつかない。
だが、このレコルのように、得体の知れない淫具であるということは予想がつく。しかも、魔道具だろう。
それはともかく、クロエはいまだにレコルを作動させたままだ。早くも三度目の絶頂が近づいていて、セリーヌはそれ以上、なにも考えれなかった。
「い、いきそうっ、し、子爵閣下、ご、ご許可を──。あぐうっ、んぐううっ」
セリーヌは声をあげた。
「ルシアンでいい。そう呼ぶのを許可する」
「ひいっ、ひっ、ル、ルシアン様──。い、いかせて……。いかせてくださいませ──」
セリーヌは必死に歯を喰いしばって絶頂を喰いとめようとした。
だが、できなかった。
またしても、セリーヌは息むような声をあげて、全身を震わせて達してしまった。
すでにいき癖がついているのか、我慢しようと思っても、襲いかかる快感が大きすぎて、まったくとめることができなかったのだ。
「やっと許可を求めたのはいいけど、ルシアンがまだ許可してなかったわよ」
ソニアが呆れた声をあげる。
「まあ、まだ一日目だ。許してやろう。レコルをとめてやれ……。そして、セリーヌ嬢にアルフェとセリュースを施せ」
ルシアンが言った。
「はい」
「わかったわ」
クロエがセリーヌのお尻の穴から指を抜き、やっとレコルの振動と刺激がとまる。
ほっとしたが、続けざまに三回連続で絶頂させられ、身体が脱力して動くこともできない。
そのセリーヌの身体をクロエが抱えあげて膝に載せ、馬車の座席にセリーヌを両膝をついて横向きに乗る体勢にした。座席の上で上半身をクロエに預けて、膝をついてソニアに向かってお尻を向ける格好だ。
すると、ソニアがセリーヌの外套を捲り、セリーヌのお尻を剥き出しにしてしまった。
「なにをなさるのです──」
さすがに逃げようとしたが、クロエとソニアがセリーヌの身体をがっしりと固めており動けない。両手も後手に拘束されているので、なんの抵抗もできない。
すると、お尻にいきなり圧迫感が襲った。
驚いて、必死に顔を向けてソニアを見る。
唖然とすることに、細長い棒状のものをセリーヌのお尻の穴に挿入しようとしている。
しかも、挿入をしているのは、ただ棒状の器具ではなく、球体を縦に繋げたような形状のものだ。少し見ただけだが、先端から根元に近づくにつれて、だんだんと球体の大きさも増している感じである。
それを挿入されている──。
なにかを塗っているのか、あまり抵抗することなく、ずんずんと衝撃をセリーヌに与えながら、根元まで押し込まれていく。
そんなところを──。
「ああっ、な、なんてことをなさるのです──。おやめください──」
暴れて逃げようとするが、やはり逃げられない。
そのあいだにも、棒状のものがお尻の中に沈められていく。
「ああっ、あああっ」
鈍痛とともに、痺れるような疼きが拡がり、セリーヌは反射的に背筋を弓なりに反り返していた。
「いや……そこは……っ」
呼吸が乱れる。足元からじわじわと、氷のような冷気が這い上がってくる錯覚が襲う。
「大丈夫よ。痛みはもうないはずよ。あんたが店でも味わったセルア膏を潤滑油代わりに表面に大量に塗っているわ。あれは、筋肉を一時的に緩める効果もあるから、初めてでもちゃんと、このアルフェをアナルに受けれることができるから……。ほら、全部入った」
「お、お許しを……。も、もう……お許しを……」
セリーヌの抗議の声は弱く、恥辱と混乱の中で震えている。
「令嬢には、まだ知らぬ悦びがあるのだよ。もっとも、貴方はそこで愉しむことをすでに知っていたようだけどね……。いずれにしても、僕の奴隷になることを誓ったセリーヌ嬢には、お尻の穴も存分に開発してあげよう。愉しみにしていい」
見守っているかたちのルシアンが言った。
また、ちらりと見えた球体を連ねた棒状の淫具──アルフェとソニアが呼んだもの──が全部入ったらしく、かちんという魔道音が鳴ったのが聞こえた。
肛門が異物に噛まれたような異様な感触がセリーヌを襲う。
「ふううっ」
羞恥とともに、自身が“調律”されていくのをセリーヌは感じていた。
すると、次いで、冷たいものがアルフェという棒状のものを通じて、お尻の奥に流れ込まれていく。
もう一度振り返る。
ソニアは革袋のようなものをセリーヌのお尻に押しつけている。どうやら、さっきのアルフェに接続しているようであり、革袋の中のものがアルフェを通して入ってきしているのだ。
おそらく、なにかの液剤だ。
液剤が注ぎ入れられるにつれ、セリーヌのお腹がぐるぐるという異音を奏でたのがわかった。
「つっ……お、お腹が……なにか、入ってきて……。これ……これは……っ、いったい、なんのつもりですの……? お、お願い……もうやめてください……」
セリーヌは狼狽の声をあげる。
「終わったわよ。全部、セリュースを注ぎ込んだわ。お尻の中を洗浄する薬液よ。毒ではないわ。安心しなさい」
ソニアが捲りあげていたセリーヌの外套を戻して、ぱんとお尻を叩く。
「さあ、お嬢様、元のようにお座りください。ちょっと苦しくなるかもしれませんが、その分、大量の排便が出ますので我慢です。一度で完全に洗浄できますし、しっかりとわたしがお世話をいたしますのでご心配にならないでください」
クロエにより、再び馬車の座席に普通に座り直させられる。
身じろぎすると、レコル……特に、股間のレコルが強い刺激を与えてきて、セリーヌは恥ずかしい反応を引き出す。
なんとか座り直すが、またしても馬車の振動で快感が迸り、セリーヌは歯を喰いしばって、それに耐えた。
だが、すぐに痒みが襲ってきた。
お尻が痒い──。
アナルに挿入された棒状の淫具──アルフェに塗ったと教えられた"セルア膏"だと思った。
あの強い掻痒感は、身に沁てる覚えている。
「うう……。な、なんなのです……。か、痒い……。くっ」
お尻の奥まで痒くなるなど、信じられない。
セリーヌはお尻を悶えさせた。
だが、その動きにより、レコルがクリトリスを苛み、泣くような快感が身体に走る。
セリーヌは狼狽えた。
しかし、さらに別の苦悶がセリーヌを襲った。
激しい排泄感が突如として沸き起こったのだ。
それはあっという間に、セリーヌに襲いかかった。
「ああ、な、なんなのです──。なにをしたのですか。教えてください」
セリーヌはどんどんと拡大する排泄感に狼狽して叫んだ。
「セリュースだ。貴方の肛門に挿入させたアルフェの淫具を通じて注入した、排便をもよおす薬液だ。だが、アルフェは特別な魔道波を与えないと外れることはない。従って、馬車の中で漏らすことはないから、安心していい」
ルシアンが静かに言った。
セリーヌは絶望に声をあげた。
「な、なんてことを……。どうして、こんなことをなさるのです──?」
セリーヌは羞恥に濡れた瞳でルシアンを睨む。
「それが、貴女が受ける“調教”だ」
ルシアンは冷ややかに笑う。まるで決まりきった儀式でも語るように。
「ちょ、調教って……」
「十日間──約束の“調律の
「あらゆる……」
「身につけるものも、食べるものも、眠る時間も、そして……快楽も排泄も。すべて、僕が決める。排泄も自由にならないよ。常に誰かに見られながら排泄をしてもらう」
「そ、そんな……っ。まさか……そんなことまで……」
「そう。“そんなところ”こそが大事なのだ。貴族の誇りも、令嬢の矜持も──排泄ひとつ自分で決められぬとき、人は初めて、自分の在り方を問い始める」
ルシアンの声は静かだった。それだけに恐ろしく響いた。
「貴女は、命令されることでしか生きられなくなる。十日間でそうする。そうして初めて、“真の令嬢”として完成するのだよ、セリーヌ嬢。約束の十日後に、貴方がする選択が愉しみだ」
「……わたしは、貴方の……奴隷になど……なりません。や、約束は十日だけです……。あなたも、貴族の矜恃として守ってください」
「誓うよ。貴方が望むなら、必ず解放する。だが、僕の本質は貴族ではなく商人だ。覚えておき給え」
ルシアンが笑った。
しかし、そんなことよりも、セリーヌにいよいよ絶望的な苦悶が襲ってきていた。
馬車の振動による増幅されるレコルの締めつけ──。
外套の内側の羽根のくすぐり──。
お尻の穴に挿入されているアルフェという淫具の刺激──。
アルフェの表面に塗られているセルア膏という掻痒剤が引き起こす強烈な痒み──。
さらに、セリュース液による強い便意──。
快楽と羞恥と屈辱が幾重にも絡みつき、抗えば抗うほど深く沈んでいくような絶望の渦の中で、セリーヌは自分がなにに泣き、なにに喘いでいるのかすらわからなくなっていた。
【作品内の用語解説】
■ヴェールス:「マゾ」を意味する言葉
■セルア膏:掻痒剤(粘性)、植物「セルファリア(架空植物)」から作られた薬草
■イルヴィア液:掻痒剤(液状)。南方のイルヴィア草(架空植物)から精製された薬剤
■オルフェ:バイブレーター(未登場)
■アルフェ:アナルバイブ
■シルファ:ローター(未登場)
■レコル:リング状の振動具の魔道淫具
■セリュース:浣腸液。アルフェとともに使用
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《ご感想・高い評価をいただけますと、次の執筆の力になります。どうか応援よろしくお願いいたします。》