この時、拓海は先日にしたムヴヴムとの会話を思い出していた。人は1回踏み越えてしまえば、後は簡単に乗り越えられるのだと。
だが、相手は男だ。しかも、守るべき年下の男子だ。このままどかせば良いだけなのだが、そんな気になれなかった。
「どかさない。ってことは、そういうことですよね?」
今馬の顔が目の前にあった。過度なスキンシップが多い面々には、普段からやられていることだ、今回は違う。止まらなかった。まさか、ファーストキスが同性の年下相手になるとは思わなかった。
しかも、唇だけが触れるライトな物ではない。ニュルリと舌が侵入して来た。ビックリして噛みそうになったが、何とか堪えた。
「(何時まで続くんだ……)」
先程から、口腔内の感触を確かめる様に、あるいは先程受けたマッサージの様に丁寧に触って行く。今馬も反応を楽しんでいる様だった。
口が塞がれて呼吸がし辛くなっている為か、あるいは快楽か。意識が遠のきそうになった所で、ようやく離れた。2人の間を伝う雫が落ちて、互いの衣服に染みを作っていた。
「先輩。今、良い顔していますよ」
今馬が差し出して来た手鏡には視線も定まらないまま、涎を垂らしている自分の顔が写し出されていた。あまりにみっともないが、体裁を整える気力も無くて視線を逸らした。
2人してベッドの傍に衣服を脱ぎ捨てた。下着も身に着けていない、正真正銘。生まれたままの姿だ。
「意外っすね。澄野先輩、皮被って無いんですね。てっきり、皮オナばっかりしているモンだと思っていたんで」
「放っておけ」
今馬のモノは特別大きいと言うことは無かったが、意外とアダルトな世界に身を置いている。という割には、綺麗な印象を受けた。
拓海が下になり、お互いの口元に股間を押し付ける体勢へと移った。いわゆる、シックスナインと言われる体位だが、モノを咥えたことが無いのでやり方なんて分からない。なので、半ば突っ込まれる形になっていた。
「(く、苦し……)」
そんなに大きい訳ではないにしても、噛まない様にと口を開けていたら疲れる。一方で下の方では確かな快感がある。
自分も真似する様にして舌を動かしてみたりすれば、今馬の動きが変わったりしたので、反応違いは面白くもあった。目の前には小ぶりな尻と肛門。よく見れば、穴周りには薄っすらと毛が生えている。
拓海は自分の爪が尖っていないことを確認すると、穴に挿入した。異物の侵入を拒むようにして、腸壁に締め付けられた。
「あっ、先輩。まだ、気ぃ早っ…」
先程までのサディズムぶりが一転して、喘ぎ声を漏らしたので調子に乗って2本目も入れた。締め付けて来る腸壁を押し広げる様にして指を動かしていた。
アナログの時計が時を刻む音、互いの喘ぎ声が混じった呼吸、互いのモノを咥えてストロークする音だけが響いていたが、果ては来た。
「あっ、イク……」
「オレも……」
出す。というより。漏れ出ると言った感覚だった。拓海の口内に熱い液体が吐き出されていた。栗の花粉の様な臭いが鼻へと昇って行く。今馬も口内に溜まった白濁液を見せて来た後、飲み込んだ。自分も同じ様にして嚥下した。喉に絡みつくようだった。
「さっき、先輩にケツの穴広げられたんで。埋めて貰えます? ホラ、そこにローションも用意してあるんで」
マッサージ用の道具を持って来た時についでに運び入れていたのか。段取りが良かった。言われた通り、今馬の肛門に垂らして指で塗りつけて行く。残った分はベッドのシーツで拭い取っていた。
「じゃあ、挿入るぞ……」
腹を見せている今馬に覆い被さった。一度出しているが、勃起が収まることはない。肛門へと持って行き、多少手間取りはしたが。拓海のモノが中に入った。
始めてと言う訳ではないが、まさか特防隊の中で初めて性交する相手が彼になるとは思っていなかった。
締め付けはヴェシネス達と比べてはるかに強い。本来、挿入るべきでない穴に入れているからか。身体が持つ防御機構を快楽の為に使っているのは、もはや倒錯しているという外ない。
「せんぱ…い」
首に回された手に力が籠る、背中に痛みが走る。それでも乱暴に動いた。
押し寄せる刺激に視界が明滅する。首元にも痛みが走る。噛みつかれたらしい。そのいじらしさも何もかも興奮する要素でしかなく、限界はやって来た。
「出る……」
イッた。年下の同性の尻穴でイッた。ふと、腹に熱い物を感じた。見れば、今馬も同時にイッていたらしい。体力を使い果たして、隣に並ぶようにして倒れ込んだ。
「澄野先輩。がっつき過ぎ……」
「思ったより興奮した」
どうやら、自分は思ったよりも性欲猿であるらしい。シーツに染み込んだ体液から、噎せ返る様な臭いが立ち込めていた。互いに全裸のまま抱き合っていた。疲れたので、瞼も重い。
「でも、良いのか? 過子になんか言われたりとかは?」
「そこは大丈夫っす。互いに同意の上なら問題無いって協定でも決まっているんで。でも、明日から澄野先輩も大変かも。そりゃもう、皆に伝わっていますから」
部屋の四隅を見上げる様にして呟いた。そうだった。この部屋は盗撮されているんだった。と思い出していた。
「……参考までに聞きたいけれど。そう言うTLってあったのか?」
「【肉欲】【ヤリチン】【薔薇】TLはありましたね。ひょっとしたら、肉欲TLに傾くかもですけど」
風紀も守れていない最終防衛学園に何を守れるというのか。とか、バカなことを考えていると、今馬に抱き寄せられた。
「先輩。こうして、抱きしめていて貰えませんか? 自分、過子以外にハグして欲しいと思った相手って、先輩が始めてなんで」
「……いいぞ」
自分より頭一つ小さい後輩を抱きしめた。まだ、外は明るかったが体力を使い果たしたので、2人は心地の良いまどろみの中に落ちて行った。