数日間バスに揺られていた体臭が汗と共に流れ落ちて、2人の体臭が空間を支配していた。既に何度目になるか分からない同性とのキスを交わしていたが、今までの物と比べて異質であることは直ぐに分かった。
「(意識が……)」
疲労のせいか、あるいは鼻腔がおかしくなっているせいか。
今までに交わして来た物は恍惚感に包まれる物だったが、蒼月の舌はまるで脳を直接刺激するかのように蠢いていた。口腔での遣り取りを通して、全身を掌握されているかの様な錯覚すら覚えた。
「もっと、僕を見て」
胸元に走る痛みで意識を取り戻した。見れば、乳首を抓られていた。あまりにきつく握られたので赤く腫れ上がっていた。
「痛ぅ……」
「すっかり、開発されちゃって。それだけ膨れていたら、僕のも挟めるよね」
戻って来たばかりの頃は、拓海の胸板は逞しかったが、爛れた学園生活を送って来た代償か。今では、肉付きも良くなっていた。それこそ、寄せた胸で蒼月の物を辛うじて挟み込める位には。
いわゆる『パイズリ』と呼ばれるプレイだが、少なくとも男性が行う物ではない。あまりに倒錯していると言わざるを得ない。
挟み込むと言っても、実際は殆ど拓海の胸元に擦り付けているだけだったが、蒼月がピストン運動する度、何度も亀頭が拓海の乳頭を突いていた。
「(乳首が擦れて痛い……)」
「出すよ!」
眼前に見えた鈴口から勢いよく精液が放たれた。顔面に放たれ、勢いが収まるまで塗り付ける様にして、ペニスを押し付けられた。
「綺麗だよ。拓海クン、凄く綺麗だよ」
無駄撃ちの産物など汚物でしかないが、蒼月は拓海の顔に掛った精液を舐め取り、唾液と一緒に彼の口腔へと流しこんで嚥下させていた。
喉に絡みつき、生臭さが鼻へと昇って行く。やられていることに反して、拓海の陰茎は屹立していた。一度も出していないので、張っているのを見て蒼月は笑っていた。
「ごめん、ごめん。僕ばっかり楽しんで、拓海クンも辛いよね」
蒼月はベッドの傍に落ちていた自分の服のポケットから尿道プラグと潤滑剤を取り出していた。プラグの先端に液体を垂らし、馴染ませ、拓海の尿道に突き入れた。
「お…あ、が……」
「間口を広げたら、沢山出せる様になると思うんだよね」
まるで、アリの巣に水を流し入れる様な無邪気さと残酷さを兼ね合わせた笑顔を浮かべながら、尿道プラグを動かしていた。
ペニスに異物を挿入されたというのに、不思議なことに痛みはない。それ所か、内部から刺激され、今までに体験したことのない快楽が全身を駆け巡る。間もなく、限界は来た。プラグが引き抜かれる。と、同時に精液でも小便でもない液体が噴出していた。
「あ、潮吹いている。本当に女の子みたい」
蒼月は心底楽しそうに笑っているが、拓海の目は焦点が合って無かった。口から涎を垂らして、意味のないうめき声を上げているが、蒼月は彼に覆い被さっていた。
今まで、同性とするときはローションや潤滑剤を使った上で挿入が行われていたが、蒼月はそう言った物を使わず。自らのモノを拓海の中にねじ込んでいた。
「痛い!!」
あまりの痛さに立ち上がろうとするが、蒼月が覆い被さって拘束しているので身じろぎが出来なかった。
「凄いよ。拓海クンのお尻に、僕のが食いちぎられそうだよ」
「抜いてくれ、頼む……抜いて……」
体格と膂力も相まって拓海に出来る抵抗は無かった。ただ、涙と共にか細い声で懇願する位しか出来なかった。
だが、蒼月の動きは止まらない。もはや快楽を貪るというよりも人体を破壊するが如く、乱暴に動いていた。彼もまた冷や汗を流している所から、真っ当な性交渉をしている訳ではなさそうだった。
「痛い?」
「いたい」
「僕もだよ。でも、今。僕達は1つになっているんだ。同じ、苦痛の中で」
意味が分からなかった。ただ、痛くて苦しいだけなのに。やはり、自分のことを恨んでいるのだろうか? 背中に回された手に力がこもり過ぎて、拓海の背中から血が浮き出ていた。シーツが赤く染まる。
蒼月の動きは乱暴だった。力任せに前後に動くので、快楽よりも先に痛みが先んじた。途中から喘ぎ声じゃなく、悲鳴を上げていた。
「い……く……」
ようやく、終わりが来た。今までの誰よりも長く濃い時間だった。引き抜かれた蒼月のペニスには血が付いていたし、拓海もまた肛門がズキズキと痛んでいた。裂傷が生じているのかもしれない。
先程までは逃げようとしていたのに、もう移動する体力も残されていなかった。四肢を投げ出して、うつろな目で天井を見上げていた。
「拓海クン」
青白い顔をした蒼月が這い寄って来た。このまま殺されるんじゃないかとすら思えたが、次に出てきた言葉は。
「大好きだよ」
本当に素直で着飾ることのない言葉だった。不意に涙が出てきた。
どうして1周目で自分達を裏切ったのか。人類を憎んでいるのか。霧藤を蔑ろにしているのか。……どうして、そんな捨てられた子犬の様な目をしているのか。
「だったら、もっと優しくしろよ……」
「次からね」
特防隊メンバーの中で唯一、最初から敵だった男。今もきっと、好意だけではない屈折した感情も抱かれているのだろう。
応え方が憎悪であるべきか。愛であるべきかは自分も分からない。だが、やるべきことはあった。
「じゃあ、少しでもオレの痛みを味合わせてやるからな」
「あの。拓海クン? 尿道プラグはちゃんと潤滑液を垂らして……」
「うるせぇ」
自分に使われた尿道プラグを蒼月のペニスに刺し込んだ。世にも悍ましい、尿道間接セックスが行われていた。蒼月が上げた嬌声を川奈の怒号が掻き消す、数分前の出来事であった。