東方二次創作劇場「月と太陽」 - 太陽の章 - 作:俄かさん。
真昼のような煌めきはやがて元の宵闇に搔き消され、穏やかな静寂が場を包み込む。
それはすべての収束を意味していた。
「……萃香」
紫は地面に仰向けに倒れる小さな鬼の元へと歩み寄る。
その足音に気付くや、萃香は力なく顔だけを上げた。
「おまえもとんだお節介焼きだな。もうあたしなんざ放っておきゃいいのに。どこまで世話を焼くつもりだよ?」
「それはもうとことん。あなたとはほんと長い付き合いだし、それにあなた含めた三人をこの郷に迎え入れた時から、ずっとそのつもりでいたわよ」
萃香の呆れたような問いかけに、はんなりとした笑みを浮かべながら答える紫。
その淀みのない笑みとその物言いにくすぐったいものを感じ、萃香は僅かに双眸を細めやる。
遥かなる昔に外の世界よりやって来た問題児三人組。
一人は無類の酒好きで。
一人は無類の喧嘩好きで。
一人は無類の祭好きで。
その三人、鬼という種族のさだめか、この郷に来てから方々でよく騒動を起こしてくれた。
そのたんびに駆り出されるじぶんとついでに付き合わされる博麗の巫女とその付き人。
それもいまとなっては遠い遠い懐かしい思い出のひとつだ。
「それに仮にわたしがそうでなくても、あの子があなたを放っておくわけないでしょ?」
「……ああ、そうだったな」
ふと二人が見上げた先に小さく見える二人の巫女。
二人の巫女は仲睦まじく手を繋いだまま、ゆっくりと此方に向かって舞い降りてくる。
だが。
突然と空気を引き裂かんばかりの銃声が立て続けに轟いた。
人里の方角から放たれた鉛玉の餌食となったのは言うまでもなく。
「霊夢ちゃん、早苗っ!?」
それはまるで悪夢を見ているかのようだった。
凶弾に仕留められた二人の巫女はぷっつりと糸が切れた人形のようにそのまま地面へと叩きつけられる。
程なくして聞こえる喧騒。ちらつく数多の「御用提灯」。
それは遅ればせながら事態の収拾に人里より駆け付けた「御用見廻り組」の面々だった。
彼らは未だ紫煙けぶる猟銃を携え、地に臥す獲物の元へ我先にと駆け寄っていく。
「……結局はこういうことなのさ、紫よ」
すべてを察したかのように萃香は諦念交じりの嘆息を漏らす。
「人と妖は相容れん。向こうからすれば結局あたしらは招かざる者に過ぎないのさ」
「……そう、そうね。でもそうだとしても」
声を震わせ、足元がふらつきそうになる中でそれでも紫は地に落ちた二人の少女の元へと向かおうとする。
けれど、その距離はあまりにも遠かった。
そしてすぐにその歩みも九尾の式に背後から取り押さえられるようにして止められる。
「なりません紫様」
「……藍、でもっ」
「なりません」
悶着する二人を他所に、瞬く間に遠目に臨む二人の巫女の姿は幾重にも連なる人の輪の中に隠れて見えなくなる。
もうこうなっては二人の生死を確認することなど不可能だった。
「……っ」
やむなく紫はスキマを展開する。
それを合図に蘭と橙は倒れたままの萃香をスキマの中へと押し込んでいく。
「紫様、早く!」
その声に押され紫はスキマの中へと潜り込む。
それに続く式ふたつ。
それと同時にスキマは締め切られる。
こうして紫は不本意な形で撤退を余儀なくされるのだった。
「……しぶといわね。まだ生きていたの?」
「へへ、そう簡単にお陀仏しちゃたまらないさ。けど。もうここには用がなくなったな」
既に虫の息の天人くずれ。
見るも無残なほどのずたぼろ満身創痍で潰れた蛙のようにひっくり返っている。
せめてもの情けに引導を渡してやろうと馬乗りになってスピアを突き付けるレミリア。
それを天人くずれは鼻先でせせら笑う。
「このままおっ死ぬのは癪だから、どうせならおまえらも道連れにしてやるよ」
「この期に及んで何を言っているの?下手な漫画みたく自爆でもするつもりかしら?」
「ちょっとおねえちゃん、それ地雷っ!」
「は?何言ってるのよフラン。この莫迦がそんな真似するわけ……」
横合いから突っ込むフランを横目にレミリアの呆れた物言いも途中で止まる。
二人の姉妹が目の当たりにしたのは、あからさまな「自爆スイッチ」を翳した莫迦のそれだった。
「ちょっ」
それを見たレミリアは慌てて飛び退る。
「へへ、へへへ、こいつはすごいぜー。ここら一帯きれいに消し飛ぶかもなー?」
莫迦はどこまでもどこまでも果てしなく莫迦であった。
乾いた笑みとともにその親指はドクロマークのスイッチに添えられる。
その次の瞬間。
ぱ ち ん 。
「ん?」
「え?」
二人して詰みを覚悟した矢先、耳にしたのは聞き慣れた指鳴りの音。
まじまじと改めて見た先には、スイッチを押す寸前で硬直した莫迦の姿があった。
それの意味するところは。
「お嬢さま。妹さま。お迎えに上がりました」
「咲夜?」
「さくやっ」
振り返れば魔導師を従えて迎えに来ていたメイドがいた。
そのメイド、「時間を操る程度の能力」の持ち主。
「お二人とも、咲夜が時間を停めてる間に早く此方へ」
「相変わらず手際がいいわね、副長。でもその前に?」
想定外の時間外労働でくったり顔の魔導師は、げっそりとなりながらも展開した転移用の魔法陣へと二人を招く。
それに頷くレミリアであったが、フランの方をチラ見する。
「あーはいはい、そういうことね、おねえちゃん?……うりゃっ!」
察したフランはそのちんまい身体からは想像もつかぬほどの怪力で、おもいっきり未だ硬直中の莫迦を天高く放り捨てる。
それを見た咲夜が指を鳴らすと同時に、レミリアらもまたこの場から即座に撤退する。
「へ、へへへっ(ぽちっ)」
そして夜空に汚い花火が打ち上がるのだった。
『……なえ。さなえ』
どこからかじぶんの名を呼ぶ声が聞こえた。
その声に促されるまま、早苗はうっすらと両目を開ける。
「ああ」
むくりと身体を起こすや、目の前に広がるのは果てしなく続く虚無の暗闇。
ここは諦めと絶望の織り成す「終わりの世界」。
その世界の只中に放り出されたことを察した早苗は、がっくりと力なく項垂れる。
「また」ここに流れてきてしまった。
今度は今度こそは。
そう思っていたのに。
なのに、それなのに。
地に両手つきて悲嘆に暮れる中、頭の奥底から聞こえるのはあの忌まわしき「天の声」。
『愚かな娘。一人では敵わぬと悟るや今度は陽の巫女をたぶらかしたか。だがそれも無駄なこと。どんなにおまえが抗いあがこうが辿る結末などすべて同じ。それが運命というものだ』
「……おとうさま」
『それにもう程なくすれば忠実なる我が下僕どもが我が元に献上してくれよう、おまえたちをな。必要なのは穢れなき乙女の血肉。それが巫女ならば尚良し。そもそも生死など問わぬよ』
「そ、そんな」
畳みかけるようなその言葉にその言霊に早苗の心は完膚なきまでに打ちのめされていく。
だがそれでも神の仕打ちは終わらない。
そこにはもはや慈悲の欠片など微塵もなかった。
『さあ、仕置きの時間だ。いつぞやは西行妖とやらの肥やしにしてやったが、それでも懲りぬというのならば』
その言葉が紡がれた途端、早苗は「また」さらなる奈落の底へと落とされていくのだった。
かくて世界は終焉に向かっていく。
信者という神の下僕の手により贄として捧げられし二人の巫女。
もはやそれを止める者など誰もいなかった。
そして「終末時計」は静かにその針を回し始める。
世界が終わるその時まで。
そ れ か ら 。
(……ん、ここ、は?)
不意に感じる肌寒さに早苗は「また」目覚めた。
うっすらと双眸を開き、呆けたように周りを見渡す。
しかし見渡せど見渡せど、目の前に広がるのはまたしても果てなき常闇。
(え。な、なに?)
気付けば何も身に着けていないままでふくよかなクッションの上に座らされていた。
その質感、妙に生々しくおまけに時折頭の上から荒々しい鼻息が吹きかかってくる。
それに驚き身を捩らせた途端、たわわな胸が思いきり掴まれた。
「ひあっ!?」
クッションだと思っていたのは見るだけでも吐き気を催すような醜悪な豚面の化け物の腹だった。
でっぷりと膨れた腹の上に座らされ、開かされた股の間には人間のソレとは比較にもならぬほどの巨大な魔羅が蠢いていた。
猛々しく反り返ったその極太の肉茎は身じろぐだけで股の付け根を否応なしに刺激する。
「いやっ、やめて放してっ!助けて、センパイッ!!」
それですべてを察した早苗は長い髪と胸を揺らしながら半狂乱になってなりふり構わず暴れ出す。
だがそれもすぐに目の前で展開される光景を前に止めざるを得なくなる。
「セ……」
早苗が目の当たりにしたのは変わり果てたあこがれの少女の姿だった。
髪を彩るリボンだけを残したあられもない格好で地に膝をつき。
その髪もその身体もぬめつく白濁に塗れ、穢され。
恍惚とした笑みを浮かべながら小さな舌を突き出して嬉々と豚面オークの逸物へと舐るような奉仕をしている。
細首にかけられた鉄製の首輪から伸びる鎖を手繰り寄せ、オークは膨れた下腹部を爪先で軽く蹴りつける。
その刺激に苦悶の表情を一瞬浮かべるも、霊夢は鼻先まで逸物にくっつけて懸命にむしゃぶりつく。
その扱いはもはや奴隷か家畜のそれだった。
『おまえの恋するセンパイとやらは畜生の娘。ならば畜生は畜生らしく扱ってやるのが筋だろう』
もう二度と聞きたくもない忌まわしきその声が頭の奥で響き渡ると同時、ひとりでに霊夢の前髪が煽られその下に隠れていた額に刻まれし焼印が露わになる。
士農工商・穢多非人。
忌まわしき封建時代の風習色濃く残るこの郷における、最底辺の身分である証が霊夢の額に深く刻まれていた。
当代の博麗の巫女は正統の血筋にあらず。
そしてまた人にもあらず。
それは愛読していた求聞史紀には一切記されていない隠された真実でもあった。
けれどそれでも早苗にとって、センパイはセンパイだった。
だからこそ目の前で展開されるその光景は何よりも耐え難い悪夢以外のなにものでもなかった。
「そ、そんな、センパイっ。だめっ目を覚まして!」
「ふぁ?」
その叫びに反応したかのように、霊夢は奉仕を止めて顔を離しきょとんとした顔で早苗を見つめる。
しかしすぐに主であるオークの逸物で頬をぶたれ、思い出したように顔を戻して奉仕を再開する。
そしてただただ目の前の主を満足させるだけの肉便器として、自ら四つん這いになって主の方へと尻を突き出すようにすれば、誘うように緩みきった「開通済み」の牝穴さえ指先で開いてのける。
もう早苗の言葉は言霊は霊夢の心には響かなかった。
どんなに叫んでもどんなに訴えてもあのときのような奇跡は二度と起こらない。
「おぅふっ」
不意にくぐもった声が霊夢の口先から迸った。
忠実な肉便器の誘いに乗るようにオークが先程の奉仕で漲りに漲らせたそれを勢いよくその穴に突き込んだからだ。
そこからこれみよがしに見せつけられるのは、けだものの交尾そのものだった。
「おひゅっ、ひゅっ、おふっ、おふっ」
叩きつけるような律動にその小さな身体は軋み、母乳を湛えたその胸まで揺れる。
その喘ぎすらもはや人を忘れたけだもののそれ。
「……やめて」
いまだかつてない絶望にうちのめされながらも、それでも早苗は声を絞り出す。
「もうやめてっ。これ以上センパイを、センパイの魂まで辱めないでっ!!」
だがそれもすぐに例の声によって一笑に付される。
『忘れていたか?次はおまえだぞ、早苗』
「……え?」
丸太のような二の腕に細腰を掴まれ、ふわりとした浮遊感を感じたのも一瞬のこと。
叩きつけるような鈍い衝撃とともに早苗の純潔もまた呆気なく散らされる。
「ひぁあああっ!?」
耐えがたい破瓜の激痛が早苗を襲った。
無残に穿たれたその結合部からは確かに破瓜の鮮血が滲み出ていた。
(あ。ああ、センパ、イ。ごめんなさい、ごめんなさいっ)
そこから始まる容赦なき律動に晒されながらも、早苗は涙交じりに詫びの言葉を胸の内に紡いでいく。
だがそれも長くは続かない。
「んぐううぅ!??」
唐突に横合いから唇を奪われ、無遠慮に咥内に潜り込んだ分厚い舌が蛭のように自身の舌を絡め取る。
そこから逃れようと身じろぐも、頭の後ろを抑え込まれてそれもままならなくなる。
程なくして喉奥にたっぷりと注ぎ込まれる唾液。
吐き出すことも適わずただ喉を動かしてそれを嚥下するしかない早苗。
そしてすぐにその身体から力が抜け、痺れるような官能が頭の先から爪先まで駆け巡るのを感じたと同時、爆ぜるように派手に潮をぶちまけていく。
それは初めて味わう絶頂。
たわわな胸の頂きまで尖らせに尖らせ、ただただ小刻みにその身体を痙攣させゆく。
『壊れる前に聞いておいてやるよ。改心するつもりはあるか』
それは悪魔の囁き。
それに抗う気力など、もはや早苗にはなかった。
(は、い。もう逆らいません。わたしはただの「依代」。生まれながらにしての神さまのどれい)
そう胸の内に告げるや、虚ろに瞬く涙交じりのその双眸からは光が完全に消え失せていく。
同時にこの身に受ける惨たらしき凌辱すら、甘美なる神の福音のように感じられた。
(ゆえにすべてを捧げます。この身もこの命も。すべてはおとうさまとおかあさまのために)
その筆舌尽くしがたい凌辱の果てに。
二人の巫女の魂もまた、贄として捧げられるのだった。
そしてそのころ。
(あー)
(あーあ)
(まいったね、ほーんとまいったね)
(まさか、あんなのでおっ死ぬなんて)
「……おい、おまえ、聞いているのか?閻魔様のご面前だぞ!もっとしゃきっとしろっ!!」
「いや、しゃきっとするにしてもな。てか、改めて聞くけど、このちっこいのが閻魔様?」
「おまえ、映姫さまになんてことを!」
「いいのですよ、小町。もう慣れてますから」
「だとよ」
「もう、映姫さまっ!」
「さて、重ねてあなたに聞きますが、死因は『腹上死』で間違いありませんね?」
「あー、みたいだな。そりゃもうこってりこってり絞られまくったからなー、じぶんでもびっくりなのぜ」
「なるほど、ではそのように記録に」
「残すんかいっ!」
「これも仕事ですので。……さて死因はともかく、生前のあなたの所業はろくなものではありませんね」
「あー、ま、まあ確かに」
「というわけで判決は『有罪』。投獄先は『地獄』にしましょうか」
「じ、地獄かよ、それも勘弁だな。なんとかならないのぜ?」
「なんとかっておまえ、がめついのにもほどがあるぞ!」
「まあまあ小町。こういう強欲の塊のような人材を私は欲していたのですよ」
「え?」
「というわけで、地獄行きを免除する代わりにひとつ特命を与えましょう」
「 霧 雨 魔 理 沙 、 あ な た に 」