東方二次創作劇場「月と太陽」 - 太陽の章 - 作:俄かさん。
「……パイ、センパイ」
「また」聞こえる、「その声」。
嗚咽交じりのその声に導かれるようにして「わたし」は「また」目覚めた。
うっすらと目を開けて呆けたように見上げた先には、「彼女」がいた。
(夢、か)
それでわたしは「また」夢を見ていたことに気付く。
そう、わたしは夢を見ていた。
束の間の覚醒を挟んでの長い長い「いま」に至るまでの「追憶の夢」を。
不思議なことに涙交じりにわたしを見つめる彼女は「とても霞んで見えた」。
美しいその肢体も。
悲嘆にくれたその顔も。
何もかも「透けて」奥の景色が見えてしまうほどに。
「センパイ、わたし、わたしっ」
何度も何度もしゃくり上げながら呼びかけ、何かを告げようとする彼女を制するようにわたしは手を伸ばす。
そうしなければきっと彼女は悲しい言葉を紡いでいたかもしれないから。
「いいんだよ、さなえ。もう自分を責めないでいいんだよ」
差し伸ばしたじぶんの手も「透けていた」。
それで理解した。
「わたしたちに残された時間はもう僅かしかないこと」を。
それでもわたしはそっとその手で彼女の頬を伝う涙を拭い取ってあげる。
それに驚いたように双眸を見開く彼女だったが、やがて愛おし気にその手を自分の両手で包み込んだ。
そこから伝わる「温もり」も。
きっと「これが最後」。
やがてわたしたちは「消えてなくなる」。
「終わりゆくこの世界とともに」。
それはきっと彼女とはじめて出会ったその日から紐づけられていた「さだめ」かもしれない。
たとえそうだとしても。
「 わたしはあなたに出会えてよかった。
ありがとう、わたしと出会ってくれて 」
それは嘘偽りないあるがままの言葉。
この期に及んでの遅まきながらの告白は、まさしく月並みなもの。
言ってちょっとばかり恥ずかしくなった。
だけどそれでも彼女にはじゅうぶんに「伝わった」、ようだ。
「……センパイ、わたしも」
ややあって共感じみたその返しと同時にゆっくりと彼女の顔が近づいてくる。
それに委ねるようにそっと目を閉じかけた矢先だった。
(……ん、あれ?)
不意に閉じかけた視界に飛び込むのはただただ眩いばかりの光。
それに彼女も気付いたようだ。
それからわたしたちは慌ててベッドから出て窓に向かうと、それまで締め切っていたカーテンを二人して開け放った。
そしてわたしたちは見た。
遥かなる地平線の彼方。
長い長い「常夜」を越えた先にある「夜明け」を。
そう、確かに。
終わりゆく「はずの」この世界にも。
「 陽 は ま た 昇 り 始 め て い た 」 。