東方二次創作劇場「月と太陽」 - 太陽の章 - 作:俄かさん。
それは冷たい「水の中」。
沈んでいく。
冷酷な神にすべてを「否定され」。
胸を深く貫かれ抉られ。
愛する二人の娘も救えぬままに「力尽きて」。
ただ、沈んでいく。
かの「追憶」の記憶も。
決して忘れてはいけないその「記憶」さえも。
沈みゆくその過程で「あやふやになる」。
何も見えず。
何も感じられず。
そして。
(あ、あら、わたし?)
不意に紫は我に返るや、ぱちくりと瞬きをした。
目の前に開けるのは「真っ白な世界」。
そこへ横合いから聞き慣れた声が聞こえてくる。
「どうしたんだい、紫さん?」
「あ、あら、霖之助さん?どうしたの、その格好」
ふと目線を向ければ「香霖堂」の店主が立っていた。
何故かやけにこじゃれたタキシードに身を包んでいる。
その紫の驚き交じりの問いかけに森近霖之助は穏やかに笑う。
「式が終わったばかりだからね。疲れてるのかい?」
「え、ええ?」
困ったように告げられるその言葉と同時、目の前の景色は変わった。
「白」を基調とした「寝室内」。
壁には、今まで自分が着ていたと思しき「純白のウェディングドレス」がかけられていた。
(あ、あら?わたし、……どういうこと?)
よくよく我が身を顧みれば、「何も着てない」でキングサイズのベッドに半身を起こした状態で呆けているのに気付く。
(は、はだか!?)
これにはさすがの紫も慌てに慌て、ばっとシーツを引っ掴んでは頭からくるまる。
その左の薬指に煌めく小さな輝き。それは紛れもない「結婚指輪」。
「このときをずっと待っていたよ、僕はね?」
「……霖之助さん」
ギシっとベッドを軋ませ、その手をそっと両手で包み込みながら、霖之助は甘い声色で囁く。
狼狽え気味に紫は霖之助を見上げるが、やがて悲しげに目を伏せる。
「だめよ。こんなのは受け入れられないわ」
「どうしてだい?」
「まだ、わたしにはやらなければならないことが」
「紫さん」
その言葉を聞くなり、霖之助は緩やかに被りを振る。
「もう、『終わった』よ」
「終わった?」
「とにかく、終わったんだ」
「……終わった?それじゃあ」
有無を言わせぬその断言めいた物言いに紫はただ双眸を震わせる。
やがて声を押し殺しすすり泣くその嗚咽とともに、小刻みに震える背を霖之助は優しく撫でやる。
「もう、いいんだよ、紫さん」
いつしか左手を包んでいたその右手は、そっと細顎をしゃくり上げていた。
「終わり」を受け入れられないまま、紫はただ霖之助の顔を見つめやる。
そして何かを紡ごうとした瞬間、その唇は「奪われた」。
「っ、ン……」
不意の口づけを拒むように胸へと添えられていた両手は、いつしか力なく垂れ下がっていく。
その次の瞬間には、くるまっていたシーツを除けられ、そのまま仰向けに押し倒される。
さしたる抵抗もままならず、どこか怯えたように見上げる紫を諭すように霖之助は告げやる。
「式を終え、誓いを交わした二人がその夜にすること、分かってるよね?」
「……そんな、無理よ。わたしは。わたしだけ」
「なぜ」
「……?」
「なぜ、君だけがすべてを背負わなくちゃいけない?もう、いいだろう、もう十分じゃないか?」
「それは、もう、最初から分かりきったことじゃなくて?」
「……紫さん」
「っ、なにを!?」
しゅるりと外される赤いネクタイ。それが瞬く間に紫の両手首を捕らえる。
突然の行為に非難の声を上げるも、拘束された両手は頭の上へと掲げられ、やがて組み敷くように覆い被さられていく。
「ふ、ぁっ!?」
そこから始まる「愛撫」。
それは優しくも激しく。
無残にも貫かれ抉られた「はずの」胸を。頑なに閉ざしていた股座さえも解きほぐすように蠢く。
その愛撫に翻弄されるうちに、身体中がほだされ、久しく感じていなかった官能さえ芽生え始める。
でも、それでも。
紫は「受け入れられない」。「受け入れるわけにはいかない」。
その「愛」を。
「愛」を語りながら。語っていながら。
それを、受け止められない。
けれど。
「……っ」
気付けば大きく股を開かされていた。
その付け根は、それまでの手淫により解され、とろとろに蕩けていた。
そこから埋まるその指先は、内側から崩すように暴れのたうつ。
それに怯む間もなく、胸の頂きまで摘ままれ、強く弾かれる。
「ひぁ、あっ……」
瞬く間に迎える「絶頂」。
頭の先から爪先まで駆け巡るその刺激に小刻みに身体を震わせては、やがてくったりと脱力していく。
「紫さん。……もういいよね?」
「……あ。え、ええ」
屈伏を促すような言葉。
それに抗う余力は、「もう」紫にはなかった。
そしてそこから、深く深く貫かれ、「繋がる」。
それとともに解き放たれる「拘束」。
始まる「律動」。
軋むベッド。
たまらず紫は我を忘れ、夢中で目の前の相手にしがみつく。
「ふぁ、ああっ、り、霖之助さんっ、霖之助さんっ!」
夢と現ともつかぬ境地の中で、繰り返し「密やかに慕っていた男の名」を呼びかける。
幸せなはずなのに。そのはずなのに。
どうして「こんなに哀しい」のだろう?
蕩けきったその双眸からは、未だ、大粒の涙が溢れ出ていた。
紫は気付かない。
どこか「遠くから」、「誰かしら」が自分の名を呼ぶ声に。