牛鬼を用いた実験は、どのような結末に至るのでしょうか……。
「はっ、あっ、あぁんっ……!」
豊かな霊地の地下には牢獄のごとき空間が広がっている。
もちろん自然のものではない。妖怪の生態を調査する研究所にして、妖怪姦を提供する保養所。その施設が造りあげた場所だ。
ここでは今、四人の巫女が過ごしている。彼女らは連日連夜、淫宴を開いていた。
ぶちゅッ! ぐちゅっ、ぶちゅっ!
「んっ、んむっ、んんぅ……っ!」
グラマーな美肢体には、醜い獣蟲がたかっていた。
嵐山いぶきを犯すのは牛鬼の仔どもだ。仰向けに寝転んだ彼女の黒髪にも白肌にも、獣蟲の脚が覆いかぶさっている。
妖怪は欲望を滾らせ、美少女の穴という穴に牡性器を突きこむ。
「んむぅっ……ああ゛っ」
この中には、彼女自身が生んだものも混じっているはずだ。しかし巫女も妖怪もそんなことなど気にしない。母仔相姦の禁忌さえ、ここでは悦のひとつに過ぎない。
他の巫女もまた、各々が邪淫に耽っていた。
「ふぅっ、う、うぅぅっ!」
杜崎莉音は今まさに、出産に臨もうとしている。
麗しい美少女は地面に尻をぺたりと着き、脚を大きく広げている。秘するべき淫処が丸見えだった。小さな膣口もその上にあるさらに小さな尿口も、ひくひくと蠢く。
びゅっ、びゅるっ。
「はっ、あぁっ、はあっ」
両の孔から体液が噴きだした。蜜と潮だ。妖怪の分娩には強い快感が伴う。彼女はその事実を、身をもって証明していた。
「はぁっ、あぁぁ……!」
秘部を晒し、浅ましい悦を貪る。しかし莉音の表情に羞恥の色はない。それを感じる余裕などないからだ。
胎を占領する妖怪は、まだ産まれてすらいない。それでもすでに、女を苛む力を持っている。
ぐぐぐっ!
「あっ……はぁっ、あぁっ!」
莉音の大きな目が見開かれた。同時に桃唇からも艶叫が迸る。胎児が子宮口を潜った合図だった。
彼女の腹で芽吹き、育った胤。牛鬼の仔が産道を這いすすみだす。
ずるっ、ずるっ、ずるっ!
「は、ひぃぃっ……! あがぁぁあっ!」
膣腔は強い締まりを維持している。しかし剛妖はそれをものともしない。ヒダを掻きわけながら陰唇へ進んだ。
莉音は首を反らし、黒髪を激しく舞わせる。まるで天に向かって許しを乞うているようだ。しかし慈悲をかけるものはなにもない。
ぶちゅんっ!
「ああ゛……! はぁぁあっ!」
高い水音が岩壁に反響する。それは新たな妖怪が誕生した合図だった。
莉音の脚間に、牛鬼の仔が転がりおちた。ヒトから産まれたのに、彼奴はヒトではない。純粋な妖怪は産声を上げることもなかった。
「はぁっ、はぁっ」
母はまだ息を切らしている。しかし羊水を被った嬰児は目を細く開くと、六本脚を動かす。さっそく這いまわりだした。
ぶちっ!
「あっ! ぐぅぅ……!」
へその緒がぶつりと千切られた。胎にまで衝撃が響く。神経をピィンと弾かれ、産悦の余韻が長引いた。
妖仔は母の悩乱になど構わない。目的地を真っ直ぐ目指す。滋養を蓄えこんだ、乳房だ。
ぢゅうっ、ぢゅるっ、ぢゅじっ!
「はぁッ! あ、あぁんっ!」
豊かに膨らんだ双房は莉音の性感帯である。先端の桃飾も、みっしりと重い柔肉も、悦楽を多大に生みだすことができる。
乳首を容赦なく食まれ、乳腺を乱暴に掴まれ、ミルクを押しだされる。我が仔への授乳で、莉音は絶頂に至るほど感じてしまう。
「りっちゃん。ちゃんと産めたねぇ」
「い、いぶきさん……」
分娩を終えて赤仔を抱く莉音に近づく者がいた。嵐山いぶきである。
退魔巫女としても研究所の参加者としても、彼女はずっとベテランだ。つい先ほどまで、仔牛鬼どもと交わっていたというのに。へばった様子は全くない。
「どう? もう慣れた?」
「は……はいぃ……」
言葉だけでない。莉音の表情もまた、蕩けきっていた。
彼女が牛鬼の仔を産むのは、これで三度目である。一度目はあまりの痛苦と悍ましさに泣きさけんだものだが……二度目にはすっかり、その虜となっていた。
「はっ、はぁっ……!」
産悦と乳悦により、下半身はがくがくと震えていた。それでも無理を押して立ちあがる。胸房にしがみついていた嬰児がぽろりと落ちた。そのままどこかへ行ってしまう。
莉音の心に今あるのは、次なる異種姦と異種出産のことだけだ。それをもたらしてくれる妖怪に焦点を合わせたが……。
「あ。おっきい牛鬼やけど。今は所長さんとさっちゃんがなんかやっとうみたいやで」
「え……?」
いぶきの言葉は正しかった。剛妖のところにはすでに、黒髪と銀髪の巫女たちがなにかを行っている。
◇
霊脈を汚染し、炎岳神社の周辺に多数の妖怪を呼んだ。そんな悪行を行った牛鬼は捕獲され、研究所の実験に供されていた。
封じられた牛鬼の元にいるのは、ふたりの巫女だ。
この研究所の長、烏丸千景。雉杜神社出身の新人、東雲沙月である。
「ゥオッ……オォ……」
強大な剛妖はその巨躯に似合わぬ、弱々しい鳴き声を発している。それも無理はない。数えきれないほど胤汁を発射させられたのだ。その身は少し縮んだようにすら見える。
ぶちゅっ! ぐちゅっ! ぶぢゅんッ!
それなのに彼奴は巨体をかくつかせ、蟲腹を豊尻に叩きつける。
抽送を受けるのは千景だった。四つん這いになった彼女の胸乳は、牡性器の抜き挿しに合わせてぶるんぶるんと揺れる。
「ふっ、ふぅ……、ふっ」
羞恥と邪悦を覚えて然るべきだろう。しかし美女は朱唇をわずかに尖らせ、短い息を吐くに留めている。
それでも、その身に巡る官能の大きさは隠しがたい。愛蜜の甘い香りが実験場に漂う。
牛鬼の身体を操って強制的に交尾を行わせる。その術を行うのは、沙月だった。
「ウウウ……! オォッ……」
初日は新人巫女たちを弄ぶ側だったのに。すっかり立場は逆転している。
その事実に沙月は妙な昂揚を覚えてしまう。心のまま、さらに段階を進める。
どくっ! どくっ! どくんっ!
「ウ……ォォォオンッ……」
全ては沙月の操作どおりだった。牛鬼はピストンのペースを上げると、千景のナカに精液をぶち撒けた。無理な性運動を課せられ、剛妖の人面には苦痛の表情が浮かぶ。
「ふっ……んん、ん……」
しかしやはり、銀髪の巫女からは……微かな吐息しか漏れることはなかった。
「使役はほぼ可能になったようですね」
「は、はい」
千景は牛鬼の脚下から這いだした。ナカに出された精液が膝まで垂れおちている。しかし彼女はやはり、平静そのものだ。
駆け出しの自分でも、剛妖をコントロールできる。驚くべき技術だ。この研究所の……いや。千景の技量に、沙月は改めて驚嘆する。
「術者が平静を欠いていても、使役可能か確かめたいので……。次は沙月さんが種付けを受けてみてください」
「わかりました」
妖物は人語を理解している。ふたりの会話からまだ搾られると知り、人面が青ざめた。そこに沙月はやはり、ほの暗い悦を覚えてしまう。
実験期間はまだ充分にある。無法を働いた牛鬼には、償いの時間がまだまだたっぷりと残されていた。
◇
この実験で彼女らに求められる役割は簡単だ。牛鬼と交わり、胤汁を受けとり、子宮で育てて……。膣口から産みおとす。これを出来るだけ多くこなせばよい。
妖怪姦の虜となった三人には特段、難しい課題ではなかった。しかし別の問題が生じる。牛鬼の仔を増やすばかりだと、地下の広間はいずれいっぱいになってしまう。
「所長。回収に参りました」
「えぇ。ご苦労さま」
そこで定期的に職員巫女たちが訪れ、牛鬼の仔どもを回収する。すでに使役の術は実用に至っている。武器も箱檻も必要ない。彼奴らは指示に従い、自らの脚で出ていく。
しかし決して、全ての幼妖をここから追いださない。それにはもちろん理由がある。
妖怪は成長が早い。実験初期に産まれた仔どもはすでに精成熟を果たしている。この地下窟では母仔相姦さえ茶飯事だ。
「はっ、はぁ……きてぇ……」
まとわりつく仔妖に向かって、莉音は尻を掲げる。淫裂はすでに開いている。垂れおちる蜜の香が牛鬼どもを引きよせた。
ずずずっ!
「あ、あぁっ!」
そして四つん這いの体勢で、牡性器の挿入を受けた。かわいらしい顔貌に似合わぬ巨乳がぶるんっ! と揺れる。
波打つのは胸房だけでなかった。
ずぷっ、ずちゅっ、ずんっ!
「はっ、あぁっ、あ゛ッ!」
莉音はすでに妊娠していた。下を向いたぼて腹がピストン運動の度に震える。ナカにいるのは妖怪の仔である。この程度で異常が起こることはない。すでにしっかりと学習済みだ。
「今日も励んでくれていますね」
「ち、千景さん……」
悦酒に酔う彼女に、冷静な言葉がかけられた。この実験を主催する烏丸千景である。
平時のような落ち着いた声音。それは莉音の心も鎮めた。邪淫に耽る己を振りかえり、つい恥じ入ってしまう。
「…………」
しかし千景は何も言わない。黙って莉音の隣に掌と膝を着いた。美女もまた、妖怪の仔を孕んでいる。下を向いたぼて腹が重たげに揺れた。
丸見えとなった淫花に、獣蟲どもはすぐに群がりだす。
ずちゅんっ!
「んっ……、ふぅっ……」
交尾の最中にあっても、高い挿入音な莉音の耳に届いた。冷静な態度とは裏腹に、千景の膣腔も湧きだしている。それがよくわかった。
「ここでは、こう振る舞うのが正解です。愉しんでくださいね」
「……! はい!」
妖怪との姦淫。それを思うままに貪るのはまだ、どこかで後ろめたいと思っていた。
しかし今、はっきりした肯定を受けた。新人退魔巫女の心は完全に、邪悦へ耽溺していく。
◇
沙月もまた、未熟な退魔巫女である。己の群がる仔妖たちの突進を捌くことはできなかった。
「す、少し待ってください……んんっ!」
彼女は授乳中だった。ふっくらと柔らかな胸に嬰児を抱いている。それなのにお構いなしだ。そんな彼女に助け船を出す者が現れた。
「ほぉ~ら。おっぱいはこっちにもあるで~」
いぶきはそう言うと、自ら乳房を搾る。巨膨の下部を支える五指に力を入れると、薄桃色の突端からミルクが溢れでた。
言葉と甘香。ふたつに釣られた仔牛鬼は何頭か、沙月の元を離れる。
「はぁ、はぁ……。いぶきさん、ありがとうございます」
「ええってええって!」
仔牛鬼に授乳しながら、いぶきは鷹揚に微笑む。
ミルクが必要な齢であっても妖怪に変わりはない。腹を膨らませた彼奴らは次に、肉欲を満たそうとする。
ぶちゅっ! じゅぶんっ!
「ん、んんっ!」
「はぁっ……!」
いぶきも沙月も押したおされ、魔羅を突きこまれる。
柔らかな床材は少女たちの背を優しく受けとめる。激しい抽送を受けてもなお、身体が痛むことはない。
母としても女としても満たされる。背徳の味は沙月をますます、妖怪姦へと駆りたてた。
巫女たちの胎が空くとすぐさま、次の仔が仕込まれていく。いや……。すでに妊娠していても妖怪どもはお構いなしだ。淫宴のボルテージは、天井知らずに上がっていった。
◇
剛妖から精を搾りとり、腹を痛めて産んだ我が仔と交わる。清らかな霊地の地下窟では、畜生界さながらの光景が繰りひろげられる。
いかに道理を外れた快楽を貪っても、巫女は決して妖怪に堕ちない。しかし代わって、別の傾向が見られだしていた。
「はぁっ、はぁっ、あはぁッ!」
長い黒髪と、清らかな白肌。巫女の見本とも呼べるような美少女たちは皆、邪淫に耽りきっている。
相手を問わずに交尾を挑み、花貌には艶朱が焼きついて離れないほどだ。
(淫乱化の症状がはっきり出だしたわね)
千景の青瞳だけが、その事態を冷静に捉えていた。
彼女らにはまだまだ牛鬼の仔を産んでもらいたい。ゆえに喜ばしい出来事だった。
「さて……」
そして自分自身も妖怪姦を行う。視線の先には、自らが捕獲と縛鎖をかけた剛妖がいた。
「ウ、ウゥッ……!」
目を合わせた牛鬼は、身をびくりと震わせた。
彼奴の巨体は再びひっくり返されていた。無防備な腹を守るように、六脚の先がきゅぅと縮こまる。
怯えきった反応を示しているのに。魔羅だけは力強く天を指していた。
「無駄ですよ。あなたはもう完全に、使役対象になっていますから」
太茎に指を這わせながら、千景は冷然と言った。
彼奴は女を犯したくて性器をいきらせているのではない。強制的に勃起を強いられている過ぎなかった。
ずずずずずっ!
「ふ……ぅ、ぅう……!」
そしてまた、巫女洞が邪根を呑みこむ。ここには淫の気に溢れている。それでも彼女は正気を失うことはない。
かといって全く影響がないわけではなかった。怜悧な美貌には早くも、朱が浮かびあがっている。
たんっ、たんっ、たんっ。
それにも構わず千景は腰を動かしだした。一定のリズムを守り、豊かな胸と白銀の髪が踊るように跳ねる。熟練の巫女の体幹は毫も揺るがない。ただただ淡々と、牛鬼の魔羅に悦を与えつづける。
「ウォッ! オォォン……ッ」
強牡とは思えぬ情けない声が響いた。いかに強請られても、これ以上は胤を出せぬ。そんな訴えにも聞こえた。
そんな妖怪に、美女はそっと朱唇を寄せる。
「あなたもこの研究所に住みませんか?」
千景はぽつりと囁いた。
「あなたほどの大妖怪なら、厚遇はお約束します。優秀なメスをいくらでもあてがいます。悪い話ではないでしょう? それに……」
牛鬼の身体がびくりと震えた。
「生きのこるにはそれしかないと、わかっているはずです」
天頂青の瞳がじっと覗きこむ。異形の人面からはおびただしい汗が噴きだしはじめた。彼奴は力なく目を伏せた。それは同意の合図に他ならない。
調教の末の降伏。千景は牛鬼の調伏に至った。
(こちらも無事に堕とせたわね)
成果を実感し、内心で頷く。
参加者たちの様子に目を遣る。相変わらず邪悦を貪っている。実験はおおむね順調に進んでいる。
普段の千景ならあり得まい。しかし濃密な淫の気はやはり、彼女の心をも蕩かしている。
「ふふふ……」
自身さえも知らぬ内に、美麗の朱唇は吊りあがりだしていた。
◇
千景の言葉を受けいれた牛鬼は、職員巫女により別のところへ移送された。しかし実験に支障はないし、参加者たちからも不満はあがらない。
なぜなら交尾可能な幼体がたくさんいるからだ。
「はっ、はぁ……!
研究所常連のいぶきは言うまもでなく。莉音と沙月も完全に、妖怪姦に魅了されている。それは千景の青瞳を持って見なくても明らかだった。
「あぅっ! うぅぅ……! はぁっ!」
莉音のかわいらしい顔には悩乱の表情が浮かぶ。体勢も、女孔と菊座を晒した四つん這いだ。しかし彼女にはもはや、羞恥も躊躇もない。
ぱんっ! ぱんっ! ぱんっ!
「もっと……もっと、揺らしてぇっ! あぁっ!」
バック姦により、大きな胸房がぶるんぶるんと揺れる。彼女はそれがお気に入りらしい。先端の桃飾をぷっくりと膨らませ、乳悦をも貪っている。
ず……ずちゅんっ……!
「はぁっ、はぁ……!」
沙月はたった今、出産を終えた。
M字を象る脚の間。そこに現れた牛鬼の角は常よりも一本、多かった。角の多寡は妖力と比例する。通常のものよりも強力なことがわかった。
孕み腹にさらに精液が注がれると、胎児に変異が起こることがある。今回の実験を通じて、その条件も整理できそうだ。
(これで、半妖も誕生してくれるといいのだけれど)
自らも淫宴に参加している。しかしやはり千景だけは、冷静さを保っていた。
◇
牛鬼と交わり、その仔を増やす。三人の退魔巫女と研究所の長が参加した実験も、そろそろ終了の刻限を迎えようとしていた。
優れた資質を持つ巫女たちは、剛妖の仔を実に多くこしらえてくれた。成果は上々と言えるだろう。
(半妖が産まれなかったのは、少し残念ね)
良質なサンプルとデータを取ることはできた。しかしもうひとつの目標。半妖の誕生だけは未達成である。
仕方あるまい。長く研究しているが、その条件はいまだ不明なのだから。
それは十分にわかっているのに……。千景の青瞳はつい、虚空を睨みつけてしまう。
心を切りかえて大広間に向かう。今日もそこでは、仔牛鬼と巫女たちの乱交が繰りひろげられて……いなかった。
三人の実験参加者はひとところに固まると、なにやら首を傾げている。
「どうかしましたか?」
「千景さん。牛鬼たちの様子が、なにかおかしくて……」
いつもは女体を貪るばかりなのに。今日に限って剛妖の仔らは、巫女たちに見向きもしなかった。
彼奴らは一か所に集まっていた。前脚を振りあげ、身体を揺らす。そんな動作を皆でくり返している。
「なにやっとるんやろ?」
ベテラン退魔巫女であるいぶきがわからないのだ。莉音と沙月には見当もつかない様子だ。
「……!」
そんな中、千景だけがその理由がわかったようだった。実験参加者たちを素早く見回す。
「ここを出て! 急いで!」
その警告は少しばかり遅かった。空が見えぬはずの地下窟なのに、水滴がぽつぽつと降りだした。雨だ。その勢いは徐々に増していく。
「え? あ……! あぁぁあっ!?」
あり得ない現象である。三人の巫女はしばし呆然とした。しかし幾ばくもなく、揃って倒れ伏す。なにかを察した千景ももちろん、例外ではない。
緑がかった妖水は以前、容赦なく彼女らを叩きつづける。
「はっ、あっ、あ゛っ!」
四つの女体は痙攣のごとくに震える。異変は体内からも起こっていた。小陰唇はぷっくりと充血し、女身のナカをつまびらかに晒す。
誰かの尻がびくりと跳ねた。淫裂が蠢きながら開き、濃い愛蜜を垂れながす。絶頂の証に他ならなかった。
仔どもたちが降らせたもの。それは猛毒の雨だった。一滴が肌に付着するだけで性感を狂わせ、女体を鳴かせる。強力無比の媚毒である。
「あうっ、あぁっ! はぁぁぁあッ!」
凄腕のいぶきでさえ、完全に正体を失くしている。身をよじると、艶やかな黒髪が床面をのたくった。白い裸体が艶めかしくくねり、妖水をますます受けとめてしまう。
「はっ、はっ、はぁっ……」
まだ未熟な莉音と沙月は身動きすら取れない。ただ、がたがたと身体を震わすばかりだ。頬にも肌にも朱色が灼けついている。誰が見ても危険な状態である。
毒雨は牛鬼が備えている妖技だ。地下では発生させられぬはずだが……。仔どもが力を合わせることで使用できるとは思えなかった。
そして発動に時間と頭数をかけたことで、本来より格段に威力が上がっていた。
(た、たすけを……)
完全に想定外の事態だ。千景は所長として実験の中止を判断する。待機中の職員巫女に連絡するため、緊急の呼び出しボタンに向かって這いずりだした。
どすっ! どすんっ!
「あッ!? あ゛がぁッ!!」
その背に仔牛鬼どもが飛びのる。動きが封じられた。それだけに留まらない。
「あひっ、あ、あぁぁあ゛っ!」
彼奴らの身はまだ軽く、衝撃も大したものではなかった。しかし千景はその接触だけで絶頂に達してしまう。地面におびただしい量のイキ潮が噴きだす。
白肌も、その奥に張りめぐらされた神経も。全てが異常を来たしている。どんな刺激でも悦感を覚えてしまうのだ。
ずぶっ!
「ッ!! あ、あぁぁぁあ゛ッ!!」
危惧も覚悟も抱く暇はなかった。牡性器にひと突きされる。たったそれだけで絶頂に押しあげられた。
なんとかしなければと考えていた。しかし圧倒的な邪悦に、美女の知性は呆気なく吹きとばされる。
ずぶっ! ずぶっ! ずちゅっ!
「あ゛っ! おごっ! お゛ぉっ!」
子宮口まで突きこまれ、膣口まで引かれる。一往復ごとに二度、法悦の世界に放りだされた。常に落ち着いていた声音も、すっかりひび割れている。
牛鬼どもに襲われるのは、もちろん千景だけではない。
「はぁっ、はぁっ! きて、きてぇ……!」
いぶきは両脚を大きく広げる。股関節が外れてもおかしくないほどの、無理な開脚だ。
もし仮に脱臼しても。彼女は悦ぶばかりだっただろう。媚毒の雨は全ての刺激を快楽に変える。激痛であっても例外ではない。
ずぶンッ!
「あひッ……! ひ、ひぃぃい……ッ!」
叶えられた途端、引き攣れたような艶叫を発する。耳まで裂けんばかりに吊りあがった桃唇から、涎がだらだらと零れた。
「はっ、はっ……はぁっ!」
莉音はうずくまった身体を、牛鬼の鉤脚でひっくり返された。巨乳がぶるんと揺すりたてられる。
乱暴な動作である。しかしそれだけで、目も眩むような邪悦に襲われる。
「はひぃ……ッ、ひ、ひぃ、ぃぃイッ!」
抵抗などできないところに、牡性器の挿入が待っていた。
桃唇は盛んに開くが、意味のある言葉を発することができない。なぜなら彼女の頭がそれを紡げないからだ。許容量以上の情報……暴力的な邪悦を注がれつづけ、少女の脳はさらに焼け焦げていく。
「おねえちゃんッ! おねえちゃんたすけて! たすけてぇッ!」
沙月はひたすら、姉に助けを乞うていた。
剛妖と交わり、その仔を産み、乳を吸わせる。苛烈な妖悦に晒された時でも、弱音を吐くことはなかった。
しかし今はまるで力なき童女のごとく、ひたすらに泣きさけぶ。
「おねえぢゃ……あぁぁあ゛ッ! あぐぅぅんッ!」
間もなく、莉音のようにただひたすら絶叫するだけになってしまった。
喉が裂けるほど声を上げても、当然、牛鬼どもの性暴が止まることはなかった。
「あぁっ! はぁっ、あぁぁぁあ゛ッ!」
もはや誰の悲鳴かもわからない。
巫女たちの神経は毒雨で狂わされた。邪悦は焦熱のごとく、肌だけでなく脳をも灼く。
牛鬼の仔どもはたっぷりといる。このまま終わることのない、淫虐に晒される……ことはなかった。
実験期間が終了間際だったことが、彼女らに幸いした。定刻を過ぎても帰還して来ない所長たちを心配し、職員巫女が様子を確かめに来たのだ。
四人とも無事に救助されたが……。猛媚毒に冒された彼女たちの治療に、まる三日を費やすこととなった。
◇
最後の最後でアクシデントはあったものの、実験は終了した。
「おなか、重い……」
「あれでも孕んだみたいですね」
強烈な媚毒を浴びながらの交尾だったのだ。四人はもちろん妊娠していた。しかも妙に成長が早い。あの雨の作用なのだろうか。
腹中の仔を出産して、実験は終わり。新人たちはそう思っていたようだが……。
「えっ?! さ、撮影……?」
職員から受けた説明に、莉音と沙月は仰天する。
「そうそう。締めのインタビューも恒例やねんで」
常連のいぶきがつけ加える。
研究所から提供された妖怪姦コース。その感想や体験を語る場が設けられるのだ。
今回もそうだったとおり、巫女は期限ギリギリまで犯されることとなる。ゆえに大抵、ぼて腹を晒しながらの受け答えとなる。
「…………」
まだ義務は終わっていない。ふたりは充分に理解した。そしてそれが、異種姦とはまた違う恥辱に満ちていることも。
ふたりの思いとは裏腹に、会場の設営はテキパキと進められていく。
「準備できました。それでは皆さん、分娩台へどうぞ」
いぶきと千景はなんの躊躇もなく脱衣する。乳房もぼて腹も、全てを露わにしていった。新人たちはちょっと躊躇したが、無言のまま続く。
四人もの妊婦とその身を預ける分娩台を収めるのだ。部屋はもちろん、カメラも大型のものを用意されていた。
「うぅ……」
「は、恥ずかしいです……」
莉音と沙月は身をよじる。レンズから少しでも遠ざかろうとするが、うまくいかない。
分娩台は研究所の特注品だ。足首だけでなく手首も拘束している。産まれるのは妖怪の仔なのだ。産悦で母体が弾きおとされないよう、固定はしっかりとする必要があった。
職員巫女たちも準備を整え、いよいよインタビューが行われる。
「それでは、いぶきさんからお願いします。今回の実験はいかがでしたか?」
「は~い」
大開脚で秘所を晒し、これから淫行を述べるというのに。いぶきに気負いは見られない。研究所の実験に何度も参加しているだけある。
「ウチらが倒した牛鬼がおったのはビックリしたけど……。めっちゃ気持ちよかったで!」
いぶきは明るく言いはなつ。溌剌とした発声には、淫靡な雰囲気の欠片もなかった。
しかし彼女もまた、分娩台に身を預けているのだ。みっしりと実った双房、その先の乳首。ぼて腹の下で見えづらいが、女孔さえ露わにしている。
この映像を鑑賞する者がいたら、発言と格好のギャップにぞくりとはずだ。
「実験対象の妖怪の、どんなところが印象的でしたか?」
「動けなくされて、オチンチンがビクビクってさせてるのが、ちょっとかわいくて……。たまにはああいうのもええねぇ」
明るい美少女には似つかわしくない、嗜虐的な表情が覗いた。
体験を思いだしている内に興奮も再生されたようだ。いぶきの花貌には朱が広がっていく。股間にもその証が現れた。淫裂から垂れた愛蜜が早くも、分娩台を濡れひからせた。
「ありがとうございました。次は、莉音さん。お願いできますか」
「はっ、はい!」
呼名を受けて、莉音は大きな声で返事をする。
「初めてこの研究所に参加して、ちょっとだけ不安でしたけど……いぶきさんや千景さん。沙月さんのおかげで、なんとか乗りきることができました」
模範的な答えである。もちろんこれでは、職員たちは納得しない。
「それでは、一番きもちよかった体験をお聞かせください」
「えっ!?」
莉音は答えに詰まる。しかしごくりと唾を飲みくだすと、意を決したように唇を開く。
「妖怪の仔どもに、後ろからオチンチンを挿入られて……。胸もお腹も揺らされるのが……一番、良かったです……」
母仔相姦という禁忌と、性感帯への刺激。そのふたつを同時に味わって邪悦を覚えぬわけはない。とても納得できる答えだった。
「別の実験の際に、お声がけするかもしれませんが……。次回も、参加していただけるでしょうか?」
「っ……。は、はい。また、お願いしたいです……」
やはり少し逡巡した。しかし莉音は研究所の活動に対し、さらなる協力を申しでる。
職員はこれ見よがしにメモを取る。少女の頬はますます赤く、熱くなってしまった。
「ありがとうございました。次は沙月さん。お願いします」
沙月は小さく頷いた。覚悟の時間は十分にあった。すぐさま桃唇を開く。
「牛鬼を使役して、精液を搾りだすのが……なぜか愉しくて。夢中になってしまいました」
彼女の得物は弓だ。調伏の際は召喚した妖怪に前衛を任せることが多い。それゆえ、使役を用いた交尾も水が合ったのかもしれない。
「それで、私も……また、機会があれば参加すると思います」
沙月は自ら研究所の再訪を表明した。職員たちも色めき立つ。そして別の角度から、その意思を深掘りしだした。
「沙月さんにはお姉さんがおられますよね。お姉さんにも……オススメしてくれますか?」
「ッ! そ、それは……。……はい。今度は、お姉ちゃんも誘って……」
最愛の姉である、沙耶。彼女にも妖怪姦の邪悦を与えたいと言ってしまった。
沙月は知らないようだった。沙耶はすでにこの研究所を訪ねており、鵺との仔獣を幾体も産んでいた。妹がそれを知ったらどんな顔をするのだろうか。職員たちはこっそり、含み笑いを交わしあう。
「最後は……烏丸所長。お願いします」
インタビューのトリを任されたのはやはり、この研究所の長だった。千景は頷く。白銀の髪がさらりと揺れた。それから朱唇を開く。
「まずは、この実験に協力してくださった御三方に感謝を。ありがとうございました」
所長の言葉である。職員たちも従った。分娩台に縛りつけられた巫女たちに向かって、深々と頭を下げる。新人たちの狼狽もしっかりと記録に残された。
「多くのサンプルを得られた結果、牛鬼使役の技術普及も目途が立ちました。素晴らしい成果です」
記録を取る者たちもうんうんと頷く。退魔巫女が妖怪姦に魅せられているように、職員巫女は研究に魅せられているのだ。
「牛鬼の幼体たちが協力して、淫毒の雨を降らす。これは想定外でしたが……」
莉音や沙月だけでなく、いぶきの身体も強張った。いかに邪淫の虜になっていても……あの酷悦は、なかなか耐えられるものではない。
「非常に有意義な実験でした。関わった全ての方に、改めてお礼を申しあげます」
彼女のインタビューは感謝をもって終わった。
当然だが……。千景の姿も他の参加者たちと変わらない。レッグレストで両脚を開かされ、その付け根の淫裂もぼて腹も、あますところなくレンズに収められている。
それでもついぞ、彼女から羞恥の揺らぎが生じることはなかった。
「う、うぅっ!?」
しかしその表情は突如、痛苦に歪みだす。それは彼女だけでなかった。分娩台に縛りつけられた四人の巫女は揃って、陣痛に襲われだす。
◇
「はぁっ、あぁっ、あはぁっ!」
まるで生娘のような声があがる。それを発したのは莉音でも沙月でもなく、いぶきだった。
(な、なに? これ……?)
インタビューの時に見せた余裕はすっかり崩れていた。異常な悦が下腹から湧きあがる。それを堪えるのに必死だった。
どくんっ!
「あ、あ゛ぁっ?!」
内側から子宮口を押された。胎児が産道に降りようとしているのだ。
もはや何度も味わった感覚のはずなのに。今回は明らかになにかが違う。ポルチオも膣腔も依然、強烈な快楽を伝えてくる。
「お、おぉ……っ、おッ……?」
いつの間にか下腹に猛烈な力がこもっていた。内腿と淫裂がひくひくと痙攣する。邪悦に耐えるためではない。封じこめるためだと直感する。
これは産んではいけないものだ。
そんな言葉がふと頭に浮かんだ。しかし激流のごとき悦楽が、いぶきの脳から全てを押しながしてしまった。
◇
「うぐぅっ……うぅッ!」
「あがぁぁ! あぁぁあ゛!」
ベテランのいぶきさえ産苦に喘いでいる。莉音と沙月は細首を振り、黒髪を乱し、獣じみた声をあげるしかない。
彼女らの仔はともに産道に降りてきていた。胎児はミリ単位の歩みで膣口に近づいてくる。まるで母を苛むことが目的のようだった。
「は、はやく……ぅおッ、おぉッ!」
「お、お゛ぉッ……、ほぉお……っ!」
莉音はかろうじて、人語を保っていた。しかし沙月ともども、産みの悦と苦に流される。
Oの字型に開いた唇からは、聞くに耐えない嬌声があがった。汗、涙、涎に鼻水。ありとあらゆる体液が花貌を汚す。
「!!」
「ぐあ゛っ……ぁあ゛……!」
硬く大きな頭部が膣口に嵌まった。陰唇がごりごりと拡げられる。最後の産悦は、これまでよりもさらに強大だった。
◇
(これは……この感覚は……)
異常を感じるのは、千景も同じだった。しかし三人とは違う点もある。彼女にはとある確信があった。
ずちゅんっ!
「はぁっ、はぁ……がはっ!」
限界まで開いた膣口が胎児を吐きだした。解放された産道がわななくように震える。産悦の余韻がいやに長引いた。
千景の耳ははっきりと捉えていた。水音は自分のものも含め、四つ鳴った。
横に目を遣る。数か月もの実験に参加してくれた巫女たち。彼女らは揃って、白目を向いて失神していた。莉音と沙月に至っては失禁までしている。
分娩台の補助台に乗った彼女らの仔は、産湯のごとく小水を浴びている。その姿は、間違いなく……。
「は……はは……はははは!」
千景は哄笑をあげた。美女の濁声に、四つの産声が重なる。
「は、はぁ……! ちゃんと、撮った……!? あなたたち!」
前方に視線を送る。正面から照明が当てられ、千景の目は職員たちの顔をぼんやりとしか捉えられない。
しかしそこに浮かぶ表情は読みとれた。多大な興奮と、幾ばくかの恐怖。
「牛鬼の、半妖が……! これで……」
彼女らは業務を中断することはなかった。四人の巫女たちの股間。そこに横たわるヒト型の赤仔に、じっとカメラのレンズを向けつづけていた。
◇
実験とその記録は全て終了した。参加した退魔巫女たちはここで解散することとなる。
「皆様、ありがとうございました。最後まで有用なデータを取ることができました」
千景は深々と頭を下げる。つい先ほどまで分娩台で秘所と産悦を晒していたとは思えぬ落ち着きようだった。
「わわっ……!」
「あ、ありがとうございます」
職員たちが報酬を持ってきた。業物の武具に、希少な呪符。退魔巫女として活動するなら、心強い装備の数々が大盤振る舞いされた。
いぶきもそれらを受けとると、千景に視線を向ける。
「なぁ……所長さん。なんでこんな研究しとうの?」
「退魔巫女への安全な慰安と、戦力増強のため……ですが」
「そう、そこや」
マニュアルを音読するように千景は即答した。対するいぶきもすぐさま新しい質問を投げかける。
緋袴の下、膣口はまだひくついていた。そこは禁忌に触れたと訴えてくる。それが追求を駆りたてた。
「強い妖怪の使役とか、半妖をつくるとか……。そこまでする必要、あるんか?」
今回の実験で、牛鬼の召喚すら実用化の目途が立った。妖怪の調伏は大変な任務である。それでも明らかに過剰な戦力といえる。
そしていぶきもわかっていた。自分は最後の出産で、半妖を誕生させた。本能が警鐘を鳴らす出来事さえ踏みこえて……どんな意義があるというのだろうか。
「もちろんご存じでしょうが……。妖怪の中には、際立って強力なものが存在します」
多数の退魔巫女もものともせず、愉悦のための殺傷をくり返すもの。調伏しても妖気を高めて復活するもの。いぶきに膝をつかせるほどの牛鬼も、ここに当てはまるだろう。
そしてそんな脅威は時に、徒党を組むことすらある。
「どんな妖怪がどれだけ現れても、対処できるようにするため……ですか?」
「それももちろんあります」
沙月の言葉に千景は頷く。しかし理由の半分でしかないようだった。
「所長……」
眼鏡の職員巫女が割ってはいる。眉を落とした表情には不安があった。千景は軽く頷く。
無言のやりとりであるが、三人にもわかった。今から告げられることはここのトップシークレットなのだ。
いぶきの後ろ、莉音と沙月はごくりと唾を飲みこんだ。
「戦力の増強を目指すのは、海外から侵攻に対抗するためです」
「か、海外?」
思いもよらぬ答えだった。いぶきは仰天してしまう。
「海外の妖怪……というと、ドラキュラとか、ゾンビとか?」
「そんなものも存在しますね」
莉音の言葉に千景は軽く頷いた。
外国にも退魔巫女に似た存在はいるらしい。しかし抑えこめていないのが現状だ。溢れた脅威はすでに、日本に侵入りこんでいるという。
「こうなれば余所から何を言われようと、我らが対策するしかありません」
「まぁ、そうなるな……」
妖怪との戦いに自信はある。しかし海外の……妖魔や魔族といった相手にどれほど対抗できるかは、まるで未知数だった。
「そういった理由があるから、この施設は妖怪殲滅派の神社からも黙認されているのです」
「あっ!」
殲滅派と聞いていぶきは思いだした。霞ノ杜神社に出向いていたなずなに対し、書置きも伝言も残していなかった。
それなのに数か月もの実験に参加してしまった。彼女の怒り顔が目に浮かぶ。
「戦力増強は急務です。少なくとも、在野の妖怪程度は楽に対処できるようにならなければ……」
千景にそんな意図はないだろう。しかし莉音と沙月が縮こまったことがわかった。
彼女らは愉悦や報酬のためだけに来たのではない。妖怪に敗北し、陵辱され、溜まった淫の気を発散させるためでもあった。不甲斐なさを指摘されたと感じても仕方ない。
「海外妖怪の襲撃。我らはそれを、絶対に許してはなりません」
千景はそのように締めくくった。
しかし何故だろう。所長の言葉は未来だけでなく、過去にも向けられている気がした。
いぶきの連想は続く。研究所東端には広大な地下空間があったが……。西端にはなにが隠されているのだろうか、と。
◇
山のような報酬を携えて、いぶきは研究所から拠点の神社へと帰還した。
「ただいまぁ」
玄関の引き戸を開ける。三和土には草履が揃えて置かれていた。なずなのものである。
「あっ! いぶき!」
がらがらという音を聞きつけ、その主がやって来た。久しぶりに会う親友であるが、全く変わりない。つり目の碧眼を尖らせ、ぷりぷりと怒ってくる。
「アンタ、あの研究所に行ってたって? 帰ったらいないから、心配したじゃない!」
「堪忍なぁ、なっちゃん」
長い付き合いである。いぶきの態度や声音に、なずなは違和感を覚えたようだった。
「……なにかあったの?」
「うん。ちょっとな」
それでもいかに親友といえど、研究所の秘密を明かすことはできない。
海外妖怪と戦うとなれば、なずなの力は必要になる。いずれ知ることになるだろう。それでも千景はまだ、本当の目的を出来るだけ伏せておきたいはずだ。
「……ま、いいわ」
なずなは意を汲んでくれた。あっさりと話題を打ち切る。
「おおきに」
いぶきも短く礼を述べた。それからは努めて、いつもの調子に戻す。
「次は絶対になっちゃんも誘うから~。あんま怒らんといて、な?」
「あ、アタシは別に……。アンタが行くから、しょうがなく……」
教科書に載るようなツンデレ台詞である。いぶきは思わず吹きだしてしまう。
妖怪姦は楽しい。理外の悦をもたらしてくれるからだ。友人と一緒ならなおさらである。
それでもやはり己は、根っから退魔巫女なのだ。いぶきはそう自覚する。平和が脅かされつつあると知って、黙っていられるわけがない。
「よーし。ウチ、ちょっと鍛錬してくるわ! なんか霊力あがった気ぃするし!」
「アンタ、ほんとに大丈夫? さすがに心配なんだけど……」
荷物を置いて早々、いぶきは出かけようとする。そこになずなもついてきた。なんだかんだで今回も、付き合ってくれるらしい。
研究所での交歓により英気は十分に養われた。隣には親友もいる。新たな戦いにも未知の相手にも決して負けはしない。いぶきは心から、そう思うのだった。