戦災孤児となった私は今日も弟を養うために拳を振るう。穴の開いたボロ小屋に吊された、たった一つのカンテラの下で。
 装備は闇夜の様に黒いグローブとブーツ、そして殆ど紐の様なお情け程度のパンツのみ。当然、胸元を隠す物は無い。リング下に犇めく鼻の下を伸ばした男達を前に、私は乳を振り乱しながら自分と同じ様にあられもない格好をした対戦相手を殴り潰す。それが男であれ女であれ、老人であれ子供であれ……。
 私と同じ戦災孤児に夫を失った未亡人、片腕を失い除隊された兵士から裸の女を殴りたいと大金をはたいた変態おやじ。千差万別の対戦相手達をリングに沈めた私はいつしかこう呼ばれていた、『鋼の女帝』……と。
 他人が私をどう呼ぶかはどうでもよかった。大切な、ただ一人残った家族のためなら、私は『鋼の女帝』にでもなろうと思ったから。
 さて、今日殴り倒す相手は一体どんな人間だろうか……

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鋼鉄の女ボクサーが実弟ボディーブローに完全敗北する話

「シュッ!」

 

 薄ぼんやりと焚かれた小さなカンテラの下で、光沢が人目を引く漆黒のグローブが疾駆した。直後、ぐちゃりという異音と共に人面を殴り潰した感触が固めた拳を通して右腕を伝ってくる。

 一秒、二秒……そして、十秒。右拳を直撃させた対戦相手の両腕がだらんと垂れ下がり、ファイティングポーズを取る気配を見せないのを確かめて、振り抜いた腕を引く。にちゃっという粘音が鳴り、グローブと対戦相手の顔面だったものの間に赤黒い体液の橋が架けられた。

 私が拳を戻しファイティングポーズを取ると、顔の潰れた対戦相手は鼻血と唾液で編まれた糸に引っ張られたマリオネットの様にぐらりと体勢を崩し、ドシャァン!というけたたましい音を上げながら四角いリングへと沈んだのだった。

 ぐっしょりと汗を吸った薄布のパンティに包まれたお尻を天井に突き上げて、うつ伏せのままピクッ……ピクッ……と全身を痙攣させるブロンドヘアの少女。

 今更顧みるものでもないが、試合前に見た自信ありげな表情を思い出しながら、私はそんな彼女の顔面を破壊したばかりの右腕を突き上げる。

 カンカンカンッ!!と打ち鳴らされたゴングの音と、オオオオオッ!!という野蛮な歓声に晒されながら、私は誰にも気付かれることなく自分の胸の先に目をやった。

 先の対戦相手が繰り出したスナッピーなジャブ。その引っ掻く様な連撃によって散々に弄ばれた乳輪が、一般的に見ても大ぶりな私の乳房の先でぷっくりと膨らんでいたのだった。

 

 

 

 

     ■

 

 

 

 

 人魔戦争と呼ばれる人間と魔族の生存を賭けた戦争が終結して既に数十年が経っていた。最終的に“勇者の末裔”と呼ばれた一人の男が魔族の王の首を取り人間の勝利に終わった訳だが、それで平和で豊かな理想世界が築かれるのかといえば、そんな都合よく行くわけがない。

 魔族が滅びた後にあったのは戦争によって傷付いた国土と終戦によってお払い箱となった徴発兵、そして、そんな状況で皆が皆明日のパンを奪い合うというなんとも世知辛い現実なのだった。

 私もそんな人魔戦争で行く当てを失った一人でしかなかったのだが、運の良いことに小さな見世物小屋に拾われる事になる。どうやら、小屋の主は私が持つ“勇者の末裔”という肩書に目を付けたらしかった。実際には極めて多くの妻を娶った初代勇者の子孫などというのは珍しくもなかったのだが、人魔戦争が長引くにつれて自然と珍重されるようになったその肩書は最終的に同じ“勇者の末裔”が魔王を仕留めたことで再び大きな価値を持つようになったらしく、話を聞いた私はこれ幸いとばかりに話を受けることにしたのだった。もっとも、その話を全て馬鹿正直に信じた訳でもなく、仮に騙されても現状より悪くなるわけではないというひねた考えや、戦中にも私腹を肥やすことに成功した誰かしらの愛人として紹介されるなら儲けものだという打算も多分にあったのだが……。

 が、意外なことに私を拾った見世物小屋は私に本気で見世物―ボクシング―をさせるつもりだったのだ。

 小屋裏に仕切りを付けただけの簡素なジムで、私はトレーナーの指示に従いボクサーになるためのトレーニングを受ける事になる。

 そして、どうやら私にはある種の才能があったらしかった。トレーニングを始めて数ヶ月、日に日に筋肉質になっていく自分の身体に生まれて初めてご先祖様(初代勇者)に感謝したりもした。

 やがて迎えたデビュー戦、私は似たような年格好の女の子と殴り合うことになる。

 今思えば素人に毛が生えた程度の随分と不格好な試合だったが、幸いにもKO勝ちをおさめた私は御祝儀分を上乗せされたファイトマネーを受け取り、以降この見世物小屋で拳を振るうことになる。

 もっとも、こういった場所なので試合形式はかなりマチマチで、同じ女性でも見るからにベテランの風格を醸し出す相手の前に突然放り出されてボコボコにされたこともあれば、見るからにデビュー仕立ての少女を上の命令でサンドバッグにして甚振ったこともあった。

 興行の頭数が足りない日には男性相手に試合を組まれることもあったが勝率は悪くない。

 もちろん、全戦全勝とはいかなかったけれど試合は見れるものになっていたと思うし、レイプマッチ―要するに試合に負けた女ボクサーを対戦相手がレイプして見せるこの小屋の名物では火事場の馬鹿力が働くのか未だ無敗で、こんな胸を丸出しにして殴り合うような仕事をしているにも拘らず、私は処女を守り通していた。正直、この件に関しては柄にもなく教会の絵画でしか見たことのないご先祖様に感謝をしていたりもする。で、なぜそんなことをといえばだ、今丁度目の前にとある一枚の紙片が置かれているのだった。

 それは見慣れた契約書。レイプマッチの前に必ず女性ボクサーが名前を書かされるものだ。どうやら、この小屋の主人は見世物ボクシングなどというアングラな興行を催している割に遵法意識が確からしい。

 そんな契約書に、私は躊躇うことなくサインを入れる。小屋のボクサーの中にはこの契約書を前に泣き出してしまう者も珍しくないが、ここでゴネては試合に呼ばれなくなってしまう。そうなれば、今度は飯の食い上げという極めて現実的な問題と対峙しなくてはいけなくなる。守るものがある私としてはそれだけは絶対に避けなければならないし何より、

 

 

試合に勝利すれば、何も問題はないのだ

 

 

内心そう独り言ちながら名前を記入した書類を小屋の主人に渡すと、慣れた手つきでそれを検めた主人が頷いた。手続きが完了して、私は装備を整えに小屋の外のテントに向かうのだった。

 

 

 

 

     ■

 

 

 

 

 ガヤガヤとタバコ臭い熱気を巻き上げる立ち見客が犇めいた花道を、私はリングコスチューム姿でゆっくりと歩いていく。

 周囲の声援に反応することはしない。これは私の意志というよりは見世物小屋からの指示だった。

どうやら、私は自分で言うのも何だが一般的な女性と違いあまり愛嬌のある顔つきをしていないらしい。だが、その分ヒールー悪役としてリングに立つには申し分ないほどに鋭い顔つきをしているとか。うら若き乙女に対して言う言葉なのかと思わないでもないのだが、いわゆるファンサービスみたいな行為を苦手としている私には小屋の主人の指示は正直有難かった。

 いわゆる非道や卑劣はせずとも、震える新米ファイターを容赦なく甚振る非情のファイター。それがこの見世物小屋で私に与えられた役割だった。

 花道を通ると、方々から鼻の下を伸ばしたおやじ達の手が伸びてきてピタピタと私の身体に触れてくるが、ある程度はしたいがままにさせておく。

 もちろん思うところがないではないが、この時代にしては安くない観戦料を払って見物に来てくれる観客というのは大切な金づるだ。多少のおいた(・・・)は駄賃の内だろう。特に私は一般的な女性よりもかなり乳が大きいせいか、歩くたびに胸元が弾むのもあってどうしてもそういった手に晒されやすい傾向にある。まあ、おかげで私のレイプマッチは一度のセックスもなく満員御礼な訳だから、行く手を遮るほどに鷲掴みにでもされない限りは自分なりのファンサービスの一環と割り切ってもいる。

 

「赤コーナー! 鋼の女帝、アリアアアアアアアアア!! フレイムハァトオオオオオオオ!!!」

 

「……」

 

 そうして、リングに入ると周囲から湧き立つ歓声に拳で応えながらリング中央に立つと、グローブでも簡単に取れる様に甘く結んでおいた革製のブラに手を掛けて一気に脱ぎ捨てる。

 

「うおおおおおおおおおおおお!!!!!」

 

一気に沸き立つ観客の声援。これから始まる試合への昂揚感にムクムクと乳首が膨らむのを感じながら、私は脱ぎ捨てた安物のブラジャーを観客席へと投げ込んだ。

 最低限の支えを失って、ぷるぷると震える私のバスト。じんわりと汗が滲んでカンテラに艶光するそれを見せ付ける様に胸を張りながら、私は反対側のコーナーから現れた今日の対戦相手に目を向けた。

 

「え?」

 

その光景に、私は絶句していた。

 反対側のコーナーから現れたのは、まだ精通もしていないであろう小柄な少年。けれど、これは問題ではない。そういった相手と拳を交わしたことも幾度かあったし、中には衆目に晒した金玉を右ストレートで殴り潰すパフォーマンスを見せたこともあった。そう、問題はそこではなかった。この相手が問題だったのは他でもない、

 

「ルルン?」

 

その、恐々と花道を歩む少年がルルンー他でもない、この世で何よりも大切な最愛の弟―私の宝に違いないということなのだった。

 一瞬、自分の目を疑った私だったが、私がルルンのことを見間違えるはずがない。そして、それはルルンもおなじだったのだろう。カンテラに照らされたリングが近付くと同時に大きく見開かれる両目は明らかに私の姿に絶句しているものだった。

 

「っ!」

 

思わずリングサイドを見ると、小屋の主が素知らぬ顔で煙草をふかしている。

 

(タヌキオヤジめ!!!)

 

どうやら、全てがあの主人の掌の上ということだったのだろう。戸惑うルルンと私は審判に呼ばれてリング中央で対峙する。

 私が見世物ボクシングを始めたのを機に、このことを悟られないよう自然と見せることの少なくなったバストを前に、ルルンが両目を丸くしてコクリと唾を飲んだのが分かった。

 女にしては大柄な私と男の子にしてはまだ小柄なルルンの身長差は大きく、自然とルルンが私の胸の谷間越しに私の方を見上げてくる姿勢になる。そうして、おっぱいの間越しに視線を交わし合う私達姉弟だったが、私の内心はそれどころではなかった。

 降って湧いたこの状況。どうしても知られたくなかった弟に胸を曝しての見世物ボクシングをしているというショッキングな事実を悟らせてしまい、あまつさえその弟とリングの中で殴り合うという契約まで結んでしまっているのだ。どうする?どうする?????

 

(このまま殴り合うことなく降参を宣言する……いや、ダメだ。そんなことをすれば試合はぶち壊しで、次回の興行どころか即刻罰金を請求されかねない)

 

結論の出ぬままグルグルと思考が堂々巡りする中、「ファイッ!」というレフェリーの号令を合図にカーンとゴングの音が鳴り響く。そして、その音に合わせて湧き立つ歓声の中、私は一息にルルンとの距離を詰めに掛かったのだった。

 ルルンをサンドバッグにすることは出来ない。だが、本気で殴り合いをしない訳にはいかない。そうなると、私に取れる選択肢は限られていた。

 

(痛いかもしれないが、我慢してくれ!)

 

まだ幼いルルンには酷かもしれないが、本気で殴らなければファイトマネーに困ることになるのだ。

 

「シュッ!」

 

 私は内心で最愛の弟に謝罪しながら右の拳を突き出す。せめて苦しまないよう一撃でノックアウトとなるようにと。が、

 

「えっ?」

 

私が放った渾身の右ストレートは風鳴りだけをあげて空を切った。そして、その拳の内に居たはずのルルンはいつの間にか私の拳からほんの僅か先に移動していたのだった。

 

「シュッ!」

 

私はすぐさまルルンを追いかける様に踏み込んで二撃目を放つ。だが、

 

(これも!?)

 

再び放った右ストレートはまたしても空を切ることになった。しかも今度はハッキリとルルンの動きが見えた。

 軽やかなステップと柔らかな体重移動。まるで熟練のボクサーのような体捌きで、ルルンの身体が軽やかにリングを舞ったのだった。

 

「シッ! シッ!! シッ!!!」

 

困惑を抱きながらも、それでも何とか拳を振り回す。初志は貫徹、いや、ここまで来たら最早意地だった。

 ブンブンと吹き荒れる豪風のような私の拳。その勢いに乗って胸元の乳房もブオンブオンと風を切る。だが、その連撃のフィニッシュであるストレートを放った瞬間、目の前でひらひらと舞っていたルルンの姿が不意に忽然と消えたのだった。

 

「どこっ!?」

 

直後、ズドンッ!と小屋一杯に響く音。その出所が鍛え上げた私の腹筋であることに気付いたのは、一拍遅れて襲ってきた衝撃に体を折られてその場に崩れ落ちてからだった。

 

「ぐ、ふっ!?!?」

 

思わずその場に手を突いて床を見下すが、脂汗が滲んでボタボタと踏み固められた土の床に水滴の染みを作っていく。両の手足が震えて呼吸もそぞろになる。

 

「はっ……はっ……」

 

必死に息を整えるが、中々上手くいかない。途中、周りの観客達がついに私のレイプが見られると思ったのか明らかに毛色の違う歓声を上げ始めた。

 

「くっ……!!!」

 

だが、それが逆に私を奮い立たせた。いくら大切な弟とはいえ、私にもこれまで殴り合いで生きてきた者としての意地があった。しょせんは見世物小屋の胸見せボクシングでしかないがそれでも私はこれまで数多の敵に勝利をおさめてきたのだ。

 

「ふーっ……ふーっ……」

 

なんとか立ち上がってファイティングポーズを取ると、コーナーで心配そうにしていたルルンが少し安心した様に胸を撫で下ろしていた。

 

(すまないな、ルルン)

 

情けないお姉ちゃんで。だが、安心してくれ。私は……お姉ちゃんは強いんだ。だから、お前がこんなところに来なくても大丈夫なんだ!

 

「ふーっ……」

 

 左拳を顎に、右拳を柱時計の振り子のように腰前に。左右の腕で急所を防御する構えでステップを踏む。この小屋に来てはじめの頃、トレーナーに教わった基本の構えでルルンを迎え撃つ。

 腕の間でおっぱいが揺れて、滲んだ汗が乳首の先から雫になって飛ぶと、その光景に観客が色めき立ったのが分かった。だが、対峙するルルンは真剣な表情でいないいないばあをするように両拳を顔の前に掲げた。

 

(そうか、お前にはこの構えの意味が分かるんだな……)

 

この基本の構えこそ、私が最も得意とする構えだった。胸を大きく振らない関係上、小屋の主人からはあまり使うなと指示されていたが、それでも大事な試合の最後は常にこの構えだった。そして、目の前にいるルルンは私がこの構えを出すに足る、それほどに強大な対戦相手に違いなかった。

 私の空気が変わったのを察したのか、常連の数人が僅かに無言になる。

 

「「……」」

 

対峙する私とルルンの間の空気が張り詰めて、熱された糸の様に引き絞られていく。

 

(!)

 

同時に、ルルンの身体が大きく左右に揺れてまるで∞のような軌跡を描く。

 

(これはっ!?)

 

今まで見たことの無い鋭いムービング。その軌跡に目を見開いた瞬間、フッと視界からルルンの姿が消え去った。

 

(どこに?)

 

一瞬疑問符が浮かぶが、内心は落ち着いていた。

 左右の腕で急所をガードした状態。さらに、この構えにはもう一つ大きな秘密があった。

 

「!」

 

果たして、私がルルンを見失った一拍後、ゴウッ!と荒れ狂う竜巻のような威圧感が突如私の側面から襲い掛かって来た。

 

(来るっ!)

 

私はすぐさま両腕を脇腹と顎下に貼り付けてガードをガチガチに固める。これでルルンは私の急所を撃ち抜けない。撃ち抜けたとしてもノックアウトまでは持っていく事が出来ない。けれど、ルルンの突貫はそれで止まることなく、私の方に押し寄せてくる。

 

(掛かった!)

 

まるで時間そのものがゆっくりになったかのような感覚に陥りながら、私は内心で拳を握った。ルルンが押し寄せてくる最後の隙、それは他でもない私の胸元だった。いくら顎と脇腹を守っているとはいえ、腕の幅に限度がある以上、胴体を完全に覆い隠すことは出来ない。だからこそ、ルルンは全力で私の唯一開いた胸元を狙ったのだろう。

 

そして、それこそが私の狙いだった。

 

自慢ではないが私は胸が大きい。それも、一般的な大人の女性と比べても遜色のない大ぶりなおっぱいをしている。それゆえに、私の乳房は立派な防御の一つとして機能している。

 

(このおっぱいでルルンの一撃を耐える。耐えて、返す刀でカウンターだ!)

 

そう思い定めてルルンからの一撃を……一撃を……

 

「っ!?」

 

襲い来る衝撃の予感に、痛いほどに固くなる乳首。だが、ツブツブとなった乳輪と勃起した乳首の感触とは裏腹に、ルルンの気配は再びフッと掻き消える。

 

(まさか、方向転換!?)

 

そう思い、咄嗟に身を捩ろうとしたその瞬間、腰元よりも更に下段―おっぱいの―下からそれは襲い掛かって来た。

 

「たあああああああああああああ!!!!!」

 

「ぎっ!?」

 

ズドンと突き刺さる小さな拳の感触。弾け飛ぶおっぱいに引っ張られた根本の鋭い痛み。まるで乳房が引き千切られるかのような感覚に思わず胸を搔き抱いた私の顎を、

 

 

 

「だあああああああああああああ!!!!!」

 

「ぐっ!?」

 

 

 

ルルンの拳が正確に撃ち抜いたのだった。

 

「あ、ああ……」

 

ぞわりと全身を蟲が這いのぼる様な感触に襲われ、四肢の力が抜けていく。震える両脚に力を込めようとしても左右のそれは共に揺れるだけで風にながれればそれだけで掻き消えてしまいそうなほどに頼りなくて……

 

「あ……」

 

やがてほの黄色いカンテラの明かりを見上げると同時に、私の意識はフッと途切れてしまったのだった。

 

 

 

 

     ■

 

 

 

 

「ファーイブ、シックス」

 

「はっ!?」

 

 不意に耳に届いた声に、私はハッと両目を見開いた。見上げた先にあるカンテラは周囲の大歓声に揺られたのかきぃ……きぃ……と音を立てている。

 聞こえてくるのは間延びしたレフェリーのカウントダウン。それがテンを告げた瞬間、私の敗北が確定する。

 

「くっ!」

 

慌ててうつ伏せになると、何とか拳を床に突き立てて上体を起こす。見れば、コーナーに下がったルルンが心配そうに私の方を見下していた。

 

「っつぅ……」

 

正直に言えば辛い。辛いが、大切な弟にこんな試合をさせ、あまつさえあんな顔をさせることの方が何倍も辛かった。

 

(何のために鍛えた? 何のために闘ってきた!?)

 

自分を叱咤しながら、両の脚を叩いて立ち上がる。既に一度意識を失った人間のそれ。プルプルと震え通しで生まれたての小鹿よりも頼りない。だが、それでも私が立ち上がると予想していなかったのか周囲からどよめきが上がる。が、

 

「あっ」

 

力の籠らない両脚では立ち上がれても踏ん張ることが出来ない。僅かに飛び散った汗の雫に足を取られ、バランスを崩すと、そのまま一直線にリングへと尻もちをついてしまう。そして、

 

「テンッ!!!」

 

私が無様にドスンと尻をついたのと同時に、無情にもテンのカウントが告げられたのだった。

 

「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」」」」」

 

狭い小屋内が大歓声に押し潰される。当然と言えば当然だろう。デビューから数年、一度もレイプマッチに敗北したことの無い私が初めてその痴態を晒す事になるのだ。観客の中には早漏なのか「お・か・せ! お・か・せ!!」と叫んでいる者までいる。

 

「……」

 

見れば、レフェリーの方はこれから行われる本番(・・)に向けた準備を始めたのか、対角線上にいるルルンに何事かを告げているようだった。

 その内容に戸惑ったように視線を走らせるルルン。だが、その視線が一瞬胸に向かったのを私は見逃さなかった。

 

(そうか、ルルンもそういう年頃か……)

 

そう考えると、自然と今の状況を飲み込むことが出来ていた。これまで私が一方的に守る側だったルルンが立派な男になろうとしている。ならば、姉として敗者として、その手助けをするのは望むところだ。

 そう考えていると、おずおずと歩み寄って来たルルンが「あ、あの、お姉ちゃん」と言った。

 

「ルルン」

 

「! お姉ちゃん」

 

「ルルン……これから大事な仕上げだ。やり方は知っているか?」

 

「う、うん。今までに何回かやったから」

 

「そうか……そうなのか!?」

 

なんか、聞き捨てならない言葉が聞こえた気がしたのだが。

 思わず目を丸くする私の前で、ルルンが困った様に支給品のトランクスから左右の脚を引き抜いた。

 

「なっ!?」

 

その光景に、私は思わず絶句していた。

 ルルンの、弟の股間でそそり立つのはピンッとした子供のそれではなく赤黒く充血してビクビクと震える正真正銘の巨大な男根。時折、女ボクサーの裸に耐え切れず自分でしごき始める観客はおろか、これまでのレイプマッチで私を犯すことを夢想しテントを作っていた腑抜け達とは比べ物にならない、ロンググラスほどもある巨大なちんぽがドクドクと脈打っていたのだった。

 ツンと鼻を抜ける酸っぱいような汗ばんだ臭い。ツーッと零れ落ちてリングを汚す先走り液の糸、生臭く淫水焼けしたそれは今まさに私を犯さんとする大人の雄ちんぽだった。

 

「っ!!!!!」

 

そんな光景に思わず身が竦む。だが、そんな弟の雄ちんぽを前に私の身体が感じたのは、全身を覆う筋肉の鎧に秘められた“女”の疼きだった。

 

「お姉ちゃん?」

 

「ルルン……」

 

未だ男を知らぬ私は本能的に弟のペニスに服従していたのだった。

 

「あっ……」

 

「ふふっ」

 

ルルンが差し出す勃起ちんぽ。微かに震えるその陰茎をグローブで握ると、ぎゅっと目を瞑ったルルンが小さく喘いだ。そのあどけない所作と大人の様に勃起するちんぽのギャップに、私は自然と顔がほころぶのを抑えられなかった。

 分厚いボクシンググローブでは握り切れないほどにごん太な勃起ちんぽ。そのルルンの勃起ちんぽをシュッ……シュッ……と扱きながら、私は先っぽからトロトロと溢れ出る透明な体液に舌を這わせた。

 

「ひゃいっ!?」

 

「んぶっ!?♥♥♥」

 

鼻を抜ける生臭くも癖になる臭いを堪能しようとしていると、ルルンが腰を跳ねさせた拍子に巨大なちんぽが口を割って喉奥に捻じ込まれてしまう。その肉厚で固い感触にびゅるっ!!と噴き出る粘性の体液。それが、ルルンのザーメンであることに気が付くと、私は堪らず反対の手でパンツ越しに自分の股間をまさぐっていた。

 

「あっ♥ あっ♥ あっ♥」

 

「ふっ♥ んふっ♥ んぶっ♥♥♥」

 

私の唇がルルンのちんぽを咥えてジュポジュポッと音を奏で、股間をまさぐるグローブがジュッジュッとハーモニーを紡ぐ。その間も時折身動ぎする弟の小さな喘ぎ声が何よりも心地よかった。

 

「ふふっ、次はこっち(・・・)でしてやろう」

 

 そうして、しばらくフェラチオを楽しんでいた私は一度ルルンのペニスから口を離すと、寂しそうにこちらを見上げるルルンを横たえながら、見せ付ける様に私はおっぱいを揺らした。

 先の攻防でルルンのパンチに貫かれ赤くなった左右の乳房。それをぶらんぶらんと揺らすと、ルルンはまたも生唾を飲み込む様な仕草を見せた。

 

(うん。ルルンももう立派な男なんだな……)

 

そんなルルンの反応におかしさを感じながら、私はビンッとそそり立ったルルンのちんぽを左右のおっぱいで挟み込む。そして、拳を突き立てる様にルルンのちんぽを押し潰すと、そのままシュッシュッと扱いてルルンのおちんちんに刺激を与えていくのだった。

 

「あっ♥ ああっ♥ おねえちゃ♥」

 

「どうだルルン。気持ちいいか? 私のおっぱいでちんぽを扱かれて気持ちいいか?」

 

「気持ちいい! すっごい気持ちいい!!♥」

 

「そうか。じゃあ、もっと扱いてやるぞ♥」

 

頷くルルンが更に気持ちよくなるよう、私は左右の拳を互い違いに押し込んでグネグネと胸の谷間がうねる様にルルンのちんぽをマッサージしていく。私のおっぱいにもみくちゃにされたせいか、顔を抑えて首を横に振るルルンの姿が堪らなく愛おしかった。

 

「あ、ダメっ! で、出ちゃう! 何か出ちゃう!!!」

 

「よしっ! 好きなだけ射精せっ!! 私のおっぱいに思いっきりぶちまけて見せろ!!!」

 

「で、出るうううううううう!!!!!♥♥♥♥」

 

「!!!!!!!!」

 

ぶびゅるるるるるるるるるる!!!と音を立ててルルンのちんぽの先から噴き出る粘性の体液。その白く生臭い体液に顔面を汚されながらも私は何とか先っぽを咥えた。途端に口内に広がるえぐみのあるザーメンの味。だが、それが弟の物だと思うだけで、とても愛おしく思えてならなかった。

 射精中も気持ちよくなれるよう、おっぱいを押し潰しながらも、ルルンの精液を一滴たりとも逃すまいと唇をすぼめてルルンのちんぽに吸い付く。ぶびゅっ!ぶぴっ!と噴き上げるダマになったザーメンをも逃さず咥えてから、おっぱいでペニスを押し潰しつつ尿道に残った最後の一滴までもを吸い上げる。

 

「んふっ♥」

 

「あ……」

 

ジュプッと音を立てて唇を亀頭から離すと、固いザーメンを舌でたっぷりと転がしてからゆっくりと嚥下する。

 

「はぁ……ごちそうさま♥」

 

「あ、う、うん……」

 

そうして綺麗におちんぽミルクを食べ終えた口の中を見せると、なぜかルルンは恥ずかしそうに顔を赤らめたのだった。あんな立派なちんぽを持っていながら、変わらず私の弟のルルンのままの仕草に、私は愛おしさが胸を満たして止まなかった。

 

「じゃあ、今度は本番だな♥」

 

「えっ?」

 

私の言葉に一瞬首を傾げるルルン。そんなルルンの前で私は寝転がると、脚を開いて紐のような頼りないパンツを毟り取った。黒光りするそれはにちゃりと音を立てて汗と愛液の綯交ぜになった糸を引きながら雫を落とす。その奥には見ないでも分かるくらいヒクヒクっと蠢くヴァギナが弟のちんぽを今か今かと待ち望んでいた。

 

「あっ」

 

「さ、たっぷりと楽しむといい」

 

「お姉ちゃん!!!」

 

ぶぶっ!! ぶぢゅっっっっ!!!! ずぢゅっっっっ!!!!

 

「お、おおおおおおおおおっ!?!?!?♥♥♥♥」

 

ルルンのちんぽが挿入された瞬間、私は目から火花が出たのを感じた。

 

「お姉ちゃん!♥ お姉ちゃん!!♥ お姉ちゃん!!!♥」

 

「おっ!?♥ ほぉっ!?♥ んほぉおぉ!?!?!?♥♥♥」

 

 ちかちかと揺らめくカンテラの下、私を呼びながら一心不乱に腰を振るうルルン。その巨大なちんぽの感触にポルチオパンチを食らい、私の意識は一瞬でグロッキーに持っていかれる。

 

ぬ”ぢゅっっっっ!!!! ばぢゅっっっっ!!!! ずり”ゅり”ゅり”ゅっっっっ!!!! ぶぢゅんっっっっ!!!!

 

「うおっ!? ぬぐおっ!? はおっ!?!?!?!?!?」

 

このリングで殴り倒した女ボクサーを大人のボクサー顔負けの腰使いで捻じ込まれるルルンの抽挿に翻弄され、私は最早まともに喘ぐことすらできないでいる。まるで猛獣のような色気の無い嬌声だったが、そんな私の胸の中で一つの欲望がむくりと首をもたげた。

 

「はっ! はっ! はっ!「ル、ルルン!」お姉ちゃ、ひゃっ!?」

 

その欲望に突き動かされる様に、私は私の上で一生懸命にちんぽを上下させていたルルンを力任せに押し倒した。

 

「あ、え?」

 

「ル、ルルン」

 

上下が入れ替わり、天井を見上げながら目を白黒させるルルン。そんなルルンに向けて見せ付ける様に、見せびらかす様に、頭の後ろに手を回した私は六つに割れた腹筋を突き出しながらその欲望を口にしたのだった。

 

「殴ってくれ!」

 

「え? え?」

 

混乱するルルン。そんなルルンに腹を突き出しながら、私はもう一度「殴ってくれ!」と欲望を口にする。

 

「私の腹筋をルルンのパンチでぶち破ってくれ! おちんぽパンチとで挟み撃ちにして、私の卵子を吐き出させてくれぇ!!!♥♥♥♥♥」

 

「!!!」

 

私が悲鳴混じりの懇願を叫んだ瞬間、全てを理解したルルンが私に犯されながら右腕を突き出した

 

(き、来たぁ♥♥♥♥)

 

「うぐぇっほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!♥♥♥♥♥♥♥」

 

じゅどんっ!!!!!とシックスパックを撃ち抜くパンチに子宮を貫かれて、私は一瞬で絶頂を迎える。

 

「えいっ!!!」

 

「い、ぎいいいいいいいいいいいいいいいい!?!?!?!?!?♥♥♥♥♥」

 

直後、今度はアッパーカットでフルスイングされたおっぱいが弾け飛んで、固く充血した先端からぶびゅるるるるるるるる!!!!!と白濁の母乳がザーメンの様に噴き出た。

 

ずどんっ!!!! ずじゅんっ!!!!! ばちんっ!!!!! ぶじゅんっ!!!!!!!

 

パンチとチンポのコンビネーションにおまんこと腹筋とおっぱいを挟み撃ちにされて、私は最早全身から愛液が噴き出ているような錯覚にすら陥った。

 

「「「「「「う、うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」」」」」」

 

傍からは歓声が上がった気もしたが、そんなことももうどうでもよかった。

 

「ショタちんぽ最高!♥ 弟ちんぽ最高!♥ ショタちんぽ最高!♥ 弟ちんぽ最高!!!♥♥♥」

 

最早ボディブローとおっぱいブロー、そして必殺のおまんこブローにサンドバッグにされることしか私の頭にはない。その全てがどうでもいい。ただ、ルルンのおちんぽさえあれば良かった。

 

「お、お姉ちゃ、出」

 

「来い!!! 私のおまんこに全部ぶち込め!!!! くそ雑魚筋肉女ボクサーの実姉肉便器にルルンの強強雄ちんぽミルク流し込んで、姉を一生お前に勝てないメスブタ肉便器サンドバッグに変身させてくれええええええええ!!!!!♥♥♥♥♥♥♥♥」

 

「~~~~~~~!!!!!!!」

 

どびゅびゅびゅびゅびゅっっっっ!!!!! ぼびゅびゅっっっ、びゅるるるるるっっっっ!!!! びゅるるる──────────っっっっ!!!!

 

「んほおおおおおお!!!!♥♥♥♥ イグッ!!♥ イグイグイグ!!!!♥♥♥ 圧倒的強者の弟ちんぽに屈服して、メスブタサンドバッグまんこイッぐうううううううううううう!!!!!!!!♥♥♥♥♥♥♥ 」

 

腹の中で爆発したザーメンの感触に脳天までもを貫かれながら、私は全身の筋肉という筋肉を痙攣させて、固いリングの上に崩れ落ちたのだった。

 

 

 

 

     ■

 

 

 

 

「ふぅ……」

 

 暗くなった夜道を歩きながら、私は自分の腹を摩った。

 あの後、しばらく気絶していた私達姉弟は小屋の奥のテントに寝かせられていたらしく、気が付いた時には辺りはすっかり静まり返っていた。

 小屋の方に顔を出せば、今日のアガリを数えていた主が「最高の出来だったぜ」と上機嫌で今日のファイトマネーに色(・)を付けてくれた。もっとも、あの店主の財布のひもの固さを考えれば、節約のために断っていた避妊ポーションの値段にはまず足りないだろう。つまり、どう算盤を弾いても私はルルンの赤ん坊を妊娠しているということになる。

 見世物小屋最強の女ボクサー。そんな私に初めて男を刻み込んだ雄はといえば、実に心地よさそうに私の背中ですーすーと寝息を立てていた。聞けば、今まで幾度かレイプマッチは行ったものの、同程度の体格のボクサーではちんぽが入りきらず、射精に至ることなく幕となっていたらしい。つまり、ルルンにとっても私のお腹の子が初めての実子となる訳だ。

 

「ん、あ、お姉……ちゃん?」

 

「おお、ルルン。起きたのか?」

 

「うん……」

 

コクリと頷いたルルンがコシコシと眠気眼を擦る。そして少しすっきりしたのか二度三度と目を瞬かせると、ふるふると顔を横に振ってから心配そうに眉尻を落とした。

 

「ねえ、お姉ちゃん」

 

「どうした? ルルン」

 

「お腹、痛くない? 大丈夫?」

 

「ああ、問題無いとも」

 

「そっか」

 

「ルルンは大丈夫か?」

 

「うん……ちょっとちんちんがヒリヒリするけどへーき」

 

「そうか……」

 

どうやら、初めてのことだったのもあって力加減を誤ったらしい。

 

(次はもっとうまくやらないと……ああ、そうだな)

 

「? お姉ちゃん?」

 

「なあ、ルルン」

 

「なあに?」

 

心配そうに小首を傾げたルルンの方を振り向きながら、私は今思い付いたお願いを口にしてみることにした。

 

「私のスパーリングパートナーになってくれないか?」

 

「すぱーりんぐぱーとなー?」

 

「ああ。ボクシングの練習相手ということだ」

 

「お姉ちゃんと一緒に練習?」

 

「そうだ」

 

「うん、する! ぼく、お姉ちゃんのスパーリングパートナーになる!!!」

 

「そうか。ありがとう、ルルン」

 

両眼をきらきらと輝かせて頷くルルンにお礼を伝え、「じゃあ、よろしく頼む」と頷く。

 

「今日は一蹴されたが、次の対戦では私が勝つからな。簡単にエッチが出来るとは思うなよ?」

 

「むー次もぼくが勝つもん! お姉ちゃんに勝って、れいぷまっちするもん!!!」

 

「ふふっ。その意気だ。私の弟なのだから、それくらいでなくてはな」

 

まだレイプマッチの意味もよく分かっていないであろうルルンに頷きながら、私は背中越しの弟に頬を寄せた。

 

「二人で強くなろうな。強くなって、二人で一緒に生きていこう」

 

「うん!」

 

力強く頷いたルルンは少しだけ男らしくなったように見えた。

 

 

 

 

ちなみに

 

 

 

「お゛ぐぉっっほおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!♥♥♥♥♥♥」

 

「完敗! 完敗です!! 鋼鉄の女王改めメス豚のグロリア、なんとこれで姉弟戦十連敗!!!

 

ルルンは本当の天才だったらしく、私は筋肉サンドバッグとして長いこと無様セックスを晒すことになるのだった。

 

 

 

 

 




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