許嫁になったダウナーギャルが毎週ヤられにくる話 作:月見ハク
一週間というのは長いようで短い。
いつにも増してやる気をみなぎらせている俺は、仕事を爆速でこなした。
新しい発注がなく、以前納品したシステムのチェックくらいしかやることがなかったのも大きい。
おかげで木曜には手持ち無沙汰になれたし、その夜にはしっかり睡眠も取った。
そして今日は金曜日。
金曜だが残念なことに美玖はやってこない。
代わりに明日、デートをする。
つまり今日は一日、その準備に専念できるのだ。
佐原美玖。
実家の決めた俺の許嫁。
モデルと見紛うほどに綺麗な顔をしたダウナーギャルで、いつもクールで淡々としているが、ふとしたときに見せる微笑が魂を奪われるほどに可愛い。
彼女が毎週金曜、俺に中出しセックスをされに来るようになってから、もともと巨乳好きじゃなかったのに美玖のGカップの味を知ってしまい巨乳フェチとなり、彼女がいつも穿いているからストッキングフェチになってしまった。
三十路のおっさんなんかにはもったいないほどの、奇跡の美少女JKだ。
明日、美玖が来ることになったときのために朝から家中を掃除し、昼にはヘアサロンに行って髪をちょっと切ってもらった。
デートのためにいろいろとネットで購入したものも全部届いた。
日課のウォーキングも筋トレもチントレもすべて午前中に終わらせている。
準備は万端だ。
(……てか今日はもうやることないな)
いつも寝てるか仕事してるかの生活をしていたから、オフの過ごし方が分からない。飲みに行ける友人もいないし趣味もない。
強いていえばオナニーだが、それも美玖と出会ってからはしなくなった。
俺は精子のすべてを彼女の子宮に注ぎ込みたい。
「あ、ノーパソ修理出すか」
昔使っていたノートパソコンの画面にヒビが入っていたのを思い出す。
今は仕事で使っていないので用無しなのだが、美玖がこの先、進学したとき必要になるかもしれない。
彼女の家は母子家庭で裕福とはいえない。ノーパソを買うのも結構な出費だろう。
あとはどうやってプレゼントするかだが、それはそのとき考えればいい。
「よし」
美玖のためだと思うと、億劫な外出も俄然やる気が出てくる。
俺は棚の中でほこりを被っていたノーパソをリュックに詰めると、さっそく外へ出かけた。
パソコン修理屋は、バスでちょっと行ったところのショッピングモール内にある。
郊外にありがちな大規模商業施設。
都心の喧騒よりはマシだが、それでも田舎暮らしだった俺にはハードルの高い場所だ。
金曜だからか、平日午後にも関わらず人でごった返していた。
子どもを連れた家族連れや中年の男女、制服を着た学生の姿もある。
施設内で無限ループするBGMもやたらとうるさく感じる。
(とっとと修理に出して退散しよう)
1階フロアの奥まったところにある修理屋にノーパソを預けると、出口へ引き返す。
フロアの曲がり角に差し掛かったところで、美玖の声が聞こえた気がした。
咄嗟に壁の裏へ隠れる。
おそるおそる顔を出してみると、すぐ近くの休憩スペースのベンチに制服姿の美玖が座っていた。
(マジか……!)
こちらに背を向けていて、隣には黒髪の女の子が座っている。
背が低くて、ツインテールっぽい髪型。よく見ると黒髪にはメッシュが入っていて、耳にはピンク色のピアスが付いていた。美玖とはまた別種のギャルだ。
(そういえばあの子)
以前、散歩中に学校の正門から出てきた美玖を目撃したとき、親しげに話していた子だ。友だちだろうか。
今も、二人は肩を近づけて楽しげに話している。
俺のいるところから距離が近く、黒髪の子の声がやたらと大きいので会話の内容がなんとなく聞こえてきた。
「——てかさ~、ゆーたってまだ美玖のこと好きだよねぇ? 未練タラタラっていうかさぁ」
いきなりの衝撃的な内容に心臓が跳ねる。
ゆーたくん。
美玖の元カレで、バイトが一緒の男の子。黒髪短髪で長身の韓流アイドルばりのイケメンだ。
俺も前に、美玖のバイト先——ケフィディシャで話したことがある。確かに美玖に未練のある様子だった。
(これ……俺が聞いていい話なのか?)
そう思いつつも、気になってつい聞き耳を立ててしまう。
美玖が淡々とした表情で、小さく口を開いた。
「別に、どーでもいーよ」
意外なことに彼女のつぶやくような声がここまではっきり聞こえた。
そういえば、うるさい場所で会話したことがなかったので考えてもみなかったが、美玖の低音はポツリと口にした言葉でもよく通る。
考えてみると彼女は元バスケ部で、大きな返事や応援の掛け声が必須だったのだろう。
いやそんなことより美玖の返答だ。
ゆーたくんのことはどうでもいい。
その言葉に、内心でほっとしている自分がいた。
「え~、でもさぁ、いまだにバイトのシフトとか被せてくんでしょ? ヨリ戻す気がないんなら、フツーにめんどくない?」
「私は気になんないし」
「うっひゃ~、相変わらず美玖はドライだねぇ~。ならさっ、あたしがビシっと言ってあげよーか? オメーにはもうチャンスねーよって」
「ううん大丈夫。それに私今、相手の人いるから」
「えッ……うぇッ!? え、うそダレ? あたしの知ってる人!?」
「コハルは知らない人」
なるほどあの黒髪の子はコハルちゃんというらしい。
言葉はギャルギャルしいが、美玖のことを本気で心配しているのが伝わってくる。多分、いい友だちなのだろう。なんというか自分のことのように嬉しい。
いやそれよりも会話の内容だ。
美玖がいう相手というのは間違いなく俺のこと。
誰かに、それも意中の子に自分のことを話題にされることなんて今までなかったので、心臓の鼓動がますます速くなる。
「え、えっ、どんな人? 美玖のことだからどーせイケメンなんでしょ!?」
「なんで私だとそうなの。……まあ、優しい人だよ」
「う~ん……ダイジョブかなぁ~。その人って、あたしが前言った美玖にふさわしー男の条件に当てはまってる? ちゃんと」
「……うん。当てはまってるよ」
美玖の横顔がふっと柔らかくなった。
美玖に相応しい男の条件というのがめちゃくちゃ気になる。本当に当てはまっているのだろうか。
自分をあまり卑下したくないが、こうしてあらためて客観的に彼女を見ると、つくづく俺なんかとは住む世界が違うのだと実感する。
今も、通り過ぎる男の何割かは美玖をチラ見していく。
後ろ姿でも引きつけられてしまうオーラがあるというか、まるで街で芸能人を見かけたときのような他者とは違う存在感を放っている。
普段あんなに近づきがたい雰囲気を纏っているのに、それでも頻繁にナンパされてしまうくらいだ。
そんな彼女に、果たして俺は釣り合っているのだろうか。
(いやそんなの考えても無駄だろ、俺!)
美玖からはもっと自信を持てと言われたのだし。
そもそも釣り合おうが合わなかろうが、俺は彼女の許嫁で、何度も種付けセックスをしている仲なのだ。
「そっかぁ~、美玖がそう言うんならそうなんだろ~なぁ~、いいなぁ~美玖はモテモテで! てか今度あたしにもその人ショーカイしてよ、直で見定めてあげるからさ!」
「そうだね。コハルにはいつか紹介する、かも」
「かも、かよぉ~!」
「うん、かも。でも……コハルも気に入ってくれると思う」
「そうかなぁ~、美玖って感性ズレてるとこあっからなぁ~」
うん、それは俺もコハルちゃんに同意だ。美玖は感性が普通と違うというか、だいぶ不思議な子だと思う。
気に入ってくれるかは自信ないが、少なくともコハルちゃんとは気が合いそうだ。
「……私、そんなにズレてる?」
「あきらめな」
「……」
美玖が腑に落ちないといった様子で無言になる。
するとコハルちゃんが急に「あ!」と叫んだ。周囲の視線が集まったのに気づいたっぽいが、それでもそこそこ大きな声で話し出す。
「てかさ、さっき買った服ってもしやその人とのデート用? 当たり?」
「よく分かったね」
「ほらやっぱりだぁ~、オカシーと思ったんだよねぇ、あの美玖が服選ぶのにこんな時間かかるのって」
「選ぶの手伝ってくれて、ありがとね」
「いいってことよぉ~! いっつもあたしの選ぶの手伝ってもらってるんだし。てかさ、美玖が金曜ヒマって珍しいね。いつもは用事あるってソッコー帰っちゃうのに」
「うん、今日はヒマになっちゃったから」
美玖の横顔がなんとなく寂しそうに見えた。
少なくとも俺は、ものすごく寂しい。こんなことなら土日だけでなく今日も会おうと言えばよかった。
いやでも、友人皆無な俺と違って、彼女にしてみたらコハルちゃんと過ごす時間もかけがえのないものだ。その邪魔はしたくないなとも思う。
「あーならさ、ドーナツ食い行かん? モールに新しくオープンしたとこ」
「いいけど、あんまり糖分とると太っちゃうよ。コハルせっかく細いんだし」
「美玖に言われたくねぇ~……どうしたらその体型維持できんの?」
「……バイト?」
「バイトかぁ~、あたしもやろっかな~。いやバイトなんぞでそーなれるんなら苦労しないって!」
「そうかな」
二人が立ち上がり、おそらくドーナツショップに向かって歩き出す。
彼女たちの背中を見送ってから、俺も帰路についた。
というか、いくら住んでいる地域が同じとはいえ平日のこんな場所でばったり美玖と会うなんて、これはもう運命というやつではないだろうか。
(……いやいや、発想がキモいぞ)
三十路過ぎのおっさんが何を考えているのか。こんなのはもはやストーカーの発想だ。
考えてみれば彼女の通う学校もそんなに離れていない。週末に友だちとモールへ来るなんて普通のこと。だからあくまで偶然の範疇。
そもそも物陰に隠れて彼女たちの会話を盗み聞きするなんて、いよいよストーカーの所業だろう。
(美玖にはぜったい黙っとこ……)
俺は後ろめたい気持ちになりながら家路を急いだ。
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年内には4巻も出せればいいなと思っていますので、ぜひぜひダウナーギャルを応援のほどよろしくお願いいたします…!