他人になった妹は、俺の裏垢調教志願者でした 作:ドン・ドナシアン
美咲は大きな浴槽の中心にある柱へ両腕を引き延ばされた格好で立たされていた。
手首の革枷がしっかりと両手首に嵌まっており、もう抵抗のしようはない。
膝のあたりまで満たされた湯の中で、片脚をわずかに曲げながら必死に姿勢を保つ。
「ふふふ、若いっていいわねえ」
そんな美咲を、目の前の女──ヒミコが面白そうな顔で眺めていた。
その口調が気に入らない。
見下している。
そんな響きが端々から伝わってくる。
「なによっ」
美咲は顔をしかめた。
気に入らない。
この女の存在そのものが気に入らない。
お兄ちゃんのセフレ──。
そう聞いたときから気に入らなかった。
それだけじゃない。
この女はお兄ちゃんの前でも平然としている。
お兄ちゃんもまた、この女を前にしてまるで動揺しない。
恥ずかしがる様子もない。
気を遣う様子もない。
まるでそれが当たり前みたいだった。
その慣れた関係が気に入らない。
「大悟を見捨てた馬鹿家族のひとりが、なんで大悟に絡んでいるのか知らないけどね」
ヒミコが笑う。
美咲は鼻を鳴らした。
そんなことを言われても関係ない。
いまここにいるのは自分だ。
お兄ちゃんの隣にいるのも自分だ。
「美咲、たった十五分間だ。ヒミコの相手をしてみろ。ご褒美に俺が陰毛を剃ってやろう。お前を俺の性奴隷一号だと認めてやる。これは試練だ。頑張れよ」
お兄ちゃんが笑って声を掛ける。
美咲は眼を大きく見開いた。
「本当ね、お兄ちゃん──。あたしが一号よ──。こんな年増なんて振っちゃってよ。お兄ちゃんにはあたしがいればいいんだから。あたし、どんなことでもするんだから」
思わず声が弾む。
一号──。
その言葉だけで嬉しかった。
ヒミコなんかに負けるか──。
お兄ちゃんの隣にいるのは自分だ。
永遠にだ──。
「だったら我慢してみるのね。でも、たった十五分も我慢できないようじゃあ、大悟の近くにいる資格なんてないわ」
そう言うと、ヒミコがすっと距離を詰めてくる。
美咲は反射的に身を引こうとした。
だが、腕は固定されている。
逃げられない。
「ち、近づくな──」
「あら、逃げないのよ」
ヒミコは楽しそうに笑う。
その顔を見ただけで腹が立つ。
なにもかも余裕そうで……。
自分の方が上だとわかっているみたいで……。
だから余計に気に入らなかった。
「いいから離れろ──」
美咲は必死に顔を背けた。
触れられたくない。
この女だけは嫌だった。
お兄ちゃんを取ろうとする女だから。
お兄ちゃんの知らない顔を知っている女だから。
お兄ちゃんの隣に平然と立つ女だから。
だから絶対に認めたくない。
まるで美咲が後から割り込んだみたいで、それも腹立たしい。
絶対に負けたくない。
ヒミコはそんな美咲の反応を見て、ますます面白そうに笑った。
「じゃあ、まずはキスから始めようか」
すると、ヒミコが美咲の唇に口を寄せてきた。
「うわっ」
びっくりした美咲は慌てて顔を伏せる。
ヒミコの顔が少しだけ愉しそうに歪んだ。
「あら、逃げないのよ.こっち向きなさい」
ヒミコが美咲の顎を掴んで、自分の顔を強引に向かせる。
「いやだったら──」
美咲は必死に顔を横に振って、ヒミコの指を顎から振りほどいた。
「あっ、そう……。十五分しかないんだから、ちょっとでも時間を稼いだ方がいいのに。じゃあ、すぐに責めるわね」
ヒミコが美咲の前にしゃがみ込み、美咲の両股をしっかりと両手で抱き込んできた。
「あっ、いや──。なにするのよ──」
「なにするのよじゃないわよ。そんなの決まっているでしょう」
ヒミコが笑いながら、美咲の股間に唇を重ねる。そして、舌先で美咲の股間をねっとりと舐めあげてくる。
舌先が亀裂を割るように入りこみ、クリトリスをくすぐるように動く。
「ひあああっ」
美咲は必死な声をあげて腰をうねらせて逃げようとした。
しかし、がっしりと両手に抱えられて、脚を閉じることができない。
「ひいっ、ひっ、いいいい──」
美咲は脚の筋肉を硬直させて、うなじをぐっとのけぞらせる。
衝撃が股間から全身を貫き、頭が真っ白になりかける。
「い、いやだあ──」
美咲が涙目になりながら、気力を振り絞るように膝を曲げて、ヒミコの身体を押し離した。
ヒミコが後ろに倒れて湯にばしゃんと尻もちを突く。
美咲は肩で息がする。
でも、胸がすっとした。
ざまあみろ。
お兄ちゃん以外になんか、絶対に好きにされてたまるか──。
「あんたねえ……。蹴るなんて反則でしょう」
ヒミコが唖然とした顔を美咲に向けた。
「なにが反則よ──。あ、あたしは、お兄ちゃんだけって言ってんでしょ──」
「もう怒ったわよ。そっちがその気なら、こっちも本気出そうかしら」
笑いながら一度湯から出たヒミコが、浴場に入るときに引っ張ってきたトレイに乗った箱から鎖付きの革枷を持って戻ってくる。枷を繋ぐ鎖はかなりの長さがある。
それを美咲の片足首に嵌めると、鎖を柱の後ろに回すようにして、反対側の足首にもかけてしまった。
「なにするのよ──。やめてっ」
美咲はヒミコの意図に気がついて声をあげた。
しかし、すでに両足首には枷が嵌まっている。
「これでもう、脚も動かせないわね」
ヒミコは枷にかかっている鎖部分の長さをがちゃがちゃと調整して短くしてしまった。足首が柱の後ろに引っ張られて、身体が傾き、下腹部を前に突き出すような格好になる。
「いやああっ」
美咲は悲鳴をあげた。
「あと十分だ」
そのときお兄ちゃんの暢気そうな声が響いた。
「それだけあれば、大丈夫よ。この小娘の陰毛は、わたしが剃り上げてやるわ」
「あたしの陰毛は、お兄ちゃんが剃るのよ──。ひあああっ」
ヒミコが舐めくすぐるように、再び美咲の股間に舌を這わせだす。
しかも、舌先を小さくして、奥深くまで探りだす。そのうえで、クリトリスにも唇で刺激され、美咲はあっという間に追い詰められそうになる。
五体は痺れきり、口から喘ぎ声は零れ出す。
脚が開脚で固定されて、今度こそ逃げようがない。
そして、ヒミコが舌を股間から抜き、クリトリスを口に含むと、口の中に含んで微妙な刺激を与えだしてきた。
「んんぐうううっ」
美咲は全身を突っ張らせた。
息の根も止まるかのような甘美感に、ぶるぶると腰から下を痙攣させた。
しかし、まさに絶頂する寸前で、すっとヒミコ箱間から口を離して立ちあがった。
「はい、いただきまーす」
ヒミコが両手を美咲の顎に巻きつかせて、唇をしっかりと重ねてきた。
もう抵抗の力はない。
むしろ、妖しい官能の痺れのままに、舌を舌に絡めてくる酔いに任せた、
すると、口づけをされながら、今度はヒミコの指が美咲の股間を這い動き始める。
「んんっ、んんん──」
身体に芯まで溶けるような口づけと愛撫に酔わされて、美咲は再び全身を突っ張らせた。
しかし、またしても、寸前でヒミコは指を離してしまう。
美咲ががっくりと身体を脱力させてしまう。
「あと五分だ」
お兄ちゃんの声が飛ぶ。
美咲は我に返る。
あと五分──それだけ、耐えれば、お兄ちゃんが美咲の陰毛を剃る──。恥ずかしいけど、美咲はお兄ちゃんになら、剃られたい──。
「はあ、はあ、はあ……、ま、負けない──。絶対に負けない──」
美咲は自分を鼓舞するために、必死に声をあげる。
「……ねえ、あんた、美咲ちゃんだっけ? そもそも、あんたって、大悟とほとんど口もきいてなかったんでしょ。そてがどうして、こっちに来たの? なにがあったのよ」
ヒミコが片手で胸を揉みはじめ、さらに片手で股間への責めを再開する。
びんと身体が突っ張る。
「くっ、くうっ、お、お兄ちゃんと……血が繋がってないことが……わ、わかったから──。あっ、いやあっ、いきたくない──うぐう──ううっ、んぐううっ──」
美咲は奥歯を噛みしめて絶息するような息を漏らした。
「それで?」
「それだけよ──」
「それだけ?」
ヒミコの愛撫がさらに激しくなる。
「それだけよ。決まっているでしょ──。あ、あああっ、待って──待ってええ──」
美咲は込みあがる衝撃に耐えられずに、身体を弓なりにして絶叫した。