非モテ童貞会社員におとずれた一夜限りのラッキーハプニング!

しがない会社員の鈴来大毅は25年間彼女ナシの真正チェリーボーイ。
このまま一生童貞は嫌だと焦った大毅は、人知れず女性経験を積もうとはじめてデリヘルを利用する。
ところが待ち合わせのラブホテルにあらわれたのは、同僚の事務職員・杜丘紗英香で……。

「デリヘル嬢」と「会社の同僚」のあいだで揺れる年上巨乳美女との、めくるめく一夜。


※本作は2025年7月18日よりDLsiteにて発売中の作品のサンプル版です。プレイ場面はありますが本編の途中までの内容となりますのであらかじめご了承ください。

DLsite 販売ページ
https://www.dlsite.com/maniax/work/=/product_id/RJ01424317.html

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DLsiteにて発売するノベル作品のサンプル版です。冒頭からの公開ですが、話の途中で切れておりますので予めご了承ください。


デリヘル呼んだら会社の同僚(事務員・28歳)に筆おろししてもらえた話《サンプル版》

   1

 

 週明けから立て込んだ仕事もなんとか片付き、上司からの飲みの誘いも断って、会社から二駅離れた繁華街にそびえたつラブホテルに足を踏み入れたのは、金曜日の午後九時前だった。

 シャンデリア風の照明に照らされた妙にオシャレな内装の部屋で、俺は「ななせ」さんの到着を今や遅しと待ち構えていた。

(ホ、ホントに来てくれるんだよな……)

 受付時に指定されたホテルの部屋に一人で入ってから、はや十分。俺は不安に駆られるあまり、キングサイズのベッドが面積の大半を占める室内をうろうろと歩き回っていた。さすがに防犯カメラとかはついていないだろうけど、完全に挙動不審だな、俺……。

 いや、仕方ないんだ、許してくれ。あと五分もしないうちに見知らぬ女性がこの部屋をたずねてきて、九十分をかけて俺と二人でエロい営みをおこなおうとしているのだ。落ち着きをなくすのも仕方がないってものだろう。

 ラブホテルの一室で俺が待っているのは、そう――デリヘル嬢の到着である。

 デリバリー・ヘルス――略してデリヘル。出張ヘルスなどと呼ばれることもあるが、要するにキャストの女性が自宅なりホテルの部屋なりにやってきて、客に性的なサービスを提供する風俗営業のことである。

 店舗型風俗店に対する規制が厳しくなった近年、店舗を構えず電話やインターネットでの受付のみで女性を派遣できるデリヘルは増加傾向にあるという。それゆえ他店との競合もなかなかに激しく、差別化をはかるためプレイ内容のオプションを増やしたり、「熟女」や「痴女」など女性キャストのキャラクター付けを明確にしたりと多様化も進んで……って、そんな雑学はどうでもいい。

 とにかく俺はいま、人生ではじめてデリヘルに電話し、指名したキャスト「ななせ」さんの到着を待っているのだ。

 人生初のデリヘル利用といったが、それはなにも俺が清く道徳的な生き方をしてきた聖人君子だからではない。というか、人並みにはスケベだと思う。AVもエロ漫画も大好きだし、オナニーも中一で覚えて以来、ほぼ一日も欠かすことなく続けている。

 ただし――ただし、である。女性とのセックスとなると、二十五年の人生において、その回数はゼロ。一人で黙々と鍛えつづけたおのれの逸物を女性の中に挿入したことは、一度たりともない。つまりは……童貞である。

 中学はともかく高校は理系クラスで女子が少なく、大学も三流私立の工学部に入ったせいでまわりはむさくるしい男ばかりだった。就職したら女の子との縁があるかもとひそかに期待していたが、そんなアテもあっさりと外れた。だいたい、非モテ街道まっしぐらで来た男が社会人になって急にモテだすなどという都合のいい話があるわけもない。マッチングアプリを活用して相手を見つけられるほどコミュニケーションスキルも高くないし、コンプライアンス遵守が叫ばれる昨今、会社の上司や先輩が女の子を紹介してくれたり風俗に連れていってくれたりなんて展開も期待できない。くそう、にくいぜ、令和。

 このままでは、まずい。このまま仕事とオナニーを繰り返しているだけでは、彼女もできないし、一生童貞のままだ。童貞は仕方ないにしても、一生は嫌すぎる。

 そこで俺は一念発起した――デリヘルである。日常生活で女性とお近づきになれないなら、もうお金を払って向こうから来ていただくしかない。「女性を買う」というと語弊もあろうが、法律が定める範囲内で営業がおこなわれ、女性もみずからの意志で性的サービスを提供する業務に従事しているのであれば、風俗を利用しても咎められる筋合いはないはずだ。

 もちろん、デリヘルでの本番行為は禁止されている。俺が今回利用した店のホームページにも本番禁止が注意事項として明記されていた。だから本当に童貞を捨てようと思えば違う業種――ソープランドなどに行くべきなのだろうが……そこはまあ、人生初の風俗だしさ。金銭的および心理的なハードルも考え、比較的利用しやすいデリヘルで手を打ったわけだ。それに、はじめての挿入くらいは「素人」で、という余地を残したかったのもある。

 それと、今回デリヘルを頼んだ理由が、もうひとつ。風俗を利用しようといろいろな店のホームページを見てまわる中で、偶然見つけた「ななせ」さんが、妙に気になったのだ。

 むろん風俗店キャストのプロフィール画像ゆえ、顔にはしっかりとボカシが入っていた。ほかの部分も綺麗に修正されているのかもしれない。それでも白い椅子にしなだれかかる彼女の姿に、俺は何ともいえない色気を感じたのだ。髪の毛は暗めのブラウンに染めたウェーブヘアー。ほどよく肉のついた体型も俺好み。お店の紹介コメントによると、年齢は俺と同じ二十五歳。身長一五四センチ、スリーサイズは上からB87、W56、H86のEカップ。普段は愛嬌たっぷりで気立てのよい性格ながら、プレイではほんのりとしたSっ気も見せ、特技は手コキ、か……。気づけば俺はホームページ左上に出ていた電話番号をプッシュし、意外に愛想のいい受付のお兄さんに「ななせ」さんの出勤状況をたずねていた。

 そして予約がとれたのが今日――金曜日の午後九時からの九十分コースだった。

(そ、そろそろかあ……?)

 無意味な室内巡回を終え、時刻を確認しようとソファに置いたスマートフォンを手にとった、その時だった。

 プルルルルーー。

「は、はひっ!」

 ベッドサイドに置かれていた電話が鳴り、俺は背中を矢で射抜かれたかのように硬直した。いや、電話の音にビビッてどうする。俺は呼吸を落ち着かせ、受話器をとった。

「も、もしもし」

「フロントです。お連れの方がお越しになられましたが、お通しして大丈夫ですか?」

「は、はい。お願いします」

 フロントからの、待ち合わせ確認の電話だった。ラブホテルの部屋はドアを閉めると自動でロックがかかるため、あとから来た客を室内に通すにはフロントでロック解除の操作をおこなう必要があるらしい。

 指定ラブホテル利用におけるこのあたりの流れについては受付時に案内も受けていたのだが、いざその時となると焦ってしまった。マジで童貞丸出しだな、俺……。

 はたしてガチャリと解錠音がするとほどなくして、来訪者を告げるドアベルの音が室内に鳴り響いた。

「は、はい!」

 来た! 俺は返事をするやいなや、きびすを返してドアに駆け寄った。向こう側に、たしかに人の気配がする。

「『MUDY』からまいりました、『ななせ』です。『スズキ』さん……でよろしかったですか?」

「は、はい、鈴来(すずき)です」

 ドア越しに掛けられた女性の声に、俺は素直に応じた。当然のごとく電話予約時に名前をたずねられたため、俺は正直に本名を伝えていた。下の名前の「大毅(だいき)」までは明かさなかったものの、ひょっとするとこの手の店を利用する際は偽名を使ってもよかったのかもしれない。

 まあ、そんなことをいってももう後の祭りだ。とにもかくにも、風俗嬢の「ななせ」さんは客である「スズキ」の元に来てくれた。届いてくれた。すげえな、デリバリー。

「いま、開けます」

 俺は逸る気持ちを抑えつつ、ドアレバーを引いた。分厚いドアが開き、部屋の入口に立つ女性の姿があらわれる。「ななせ」さんとの、待ちに待ったご対面だ。

「はじめまして。ご指名ありがとうございます、『ななせ』で――」

 小さめのトートバッグを両手で持ち、うやうやしくお辞儀をした「ななせ」さんは、しかし俺の顔を見て、はたとその笑みを固めた。

「え……? な、なせ……?」

 固まってしまったのは、彼女だけではない。俺も同様だった。目の前にあらわれた「ななせ」さんを見て、俺は困惑のあまり言葉を詰まらせた。

 俺がデリバリーを頼んだのは、まちがいなく「ななせ」さんだ。二十五歳で、バスト87センチEカップのデリバリー風俗嬢、「ななせ」さんのはずだ。

 しかし――、しかし、である。

 いま俺の目の前に立っているその女性は、どう見ても――。

「杜丘(もりおか)……さん?」

 状況の理解が追いつかない頭に、それでも否応なしに浮かんだその名を俺が口にすると、平素の落ちついた服装とはかけ離れた煽情的な衣服を身にまとった彼女は、とびきりにこやかな営業スマイルを浮かべて、俺にこう告げた。

「……チェンジで♪」

 

   2

 

 いうまでもなく、デリヘルで客がキャストをチェンジできるシステムはあっても、その逆はない。

「いわれなくても、わかってますよ、そんなこと! でも仕方ないじゃないですか。本気でびっくりしちゃったんだから……」

 ベッドの縁に腰掛け、混乱極まったか頭を抱えてしまった女性は、まちがいなく「ななせ」さんだ。

 お店のホームページで見たプロフィール画像のとおり、髪はゆるくウェーブのかかったミディアムヘアー。身長やスリーサイズもプロフィールの数字から受ける印象と大きな違いはなく、人違いということはありえない。

 しかし……である。ホームページではボカシで隠されていたその尊顔はどう見ても……。

「あのう、いまさらですけど……、杜丘さん……ですよね? 事務の……」

「う……」

 隣に座る俺からおそるおそる確認を求められると、彼女は気まずげに表情をゆがめた後、観念したかのように深いため息を落とした。

「身バレのリスクは覚悟してたけど、まさか会社の同僚に指名を入れられるなんて……」

 やはりか……。

 デリヘルを呼んだら知り合いとばったり鉢合わせ!

 AVとかエロ漫画とかネットのエッチ体験談とかだとわりとよく見聞きする設定ですけどねー、などと軽口を叩ける雰囲気では、もちろんない。

 本人が実質、白状したようなものなのでもう遠慮なく紹介させていただくけれども、彼女、「ななせ」さんこと杜丘紗英香(さえか)さんは、俺の会社の同僚である。

 たしか俺より三期先輩だから、歳は二十八だったはずだ。会社での担当はおもに事務と経理補助。営業担当の俺も何かにつけこまごまとした仕事をお願いすることもあり、おたがい知らない間柄ではない。

 平社員の俺がいうのもおこがましいけれど、杜丘さんの仕事ぶりは丁寧かつスピーディーで、社内でも評判がいい。人当たりがよく気遣いもでき、男性社員はもちろん、後輩の女子社員からも慕われているようだ。まあ、俺たち営業の人間がいいかげんな領収書を持っていった時はわりと容赦なく突き返してくるのだが……。

(でも杜丘さん、美人だから隠れファンも多いんだよな……)

 目鼻立ちの整った理知的な面立ちで、派手というわけではないにせよ、目を引く美女であることはたしかだ。平素の立ち居振る舞いも大人びており、ひそかに憧れを抱いている年下の男性社員も少なくない。かくいう俺も杜丘さんを陰ながらお慕い申し上げている一人である。

 ……といいつつ、俺は杜丘さんと仕事以外の話をした覚えがほとんどない。当然、こちらから積極的にアプローチを仕掛けられるわけもなく、ブラウスの裾から白い二の腕がふと覗いた時などにひそかにいやらしい目を向けるのが関の山。これぞ二十五歳童貞の悲しき限界である。

 そんな高嶺の花なはずの会社の同僚と、俺はいまラブホテルのベッドに腰掛けて肩を並べていた。もちろんおたがい遠慮がちに半人分くらいの間をあけてはいるが、それでも只事でないことはたしかである。

 杜丘さんはあいかわらずこめかみを押さえて難しい表情でうつむいていた。そういえば会社で無茶苦茶な領収書を回された際など、デスクで同じようなポーズをとっている姿を見かけたことがあった。その姿が、胸元が開けたワンピースドレスを着たいまの彼女と重なる。

(や、やべ、結構くるな、これは……)

 昼間は会社で真面目に働いている同僚女性の、夜の姿。それを意識しただけで股間に血液がどくりと流れ込み、俺はおもわず生唾を呑んだ。

 この状況で抱く感想ではないかもしれないが、杜丘さんは綺麗だった。

 会社ではコンサバ系の落ち着いたファッションが多い杜丘さんだから、こういうボディラインを強調する服装を身にまとう姿は新鮮だ。メイクも普段よりやや派手にしているのか、やけに色っぽく感じる。

 ……やばい。初風俗で期待に胸を膨らませていただけに、いろいろと心の整理がつかない。

「そ、それでその……、どう……しましょうね?」

 杜丘さんは俺からのなんとも要領を得ない問いかけに振り向くと、やや苦い表情を見せつつ目を泳がせた。

「とりあえず、会社には黙っておいてもらえると……」

 ……そりゃまあ、そうですよね。

 じつに的を射た回答に、よからぬ妄想を繰り広げていた俺はおもいきり冷や水を浴びせかけられた。

「もちろんいいふらしたりとかは絶対しませんけど……」

 いちおう弊社、副業は禁止されております。

 とはいえ、いまのご時世こっそり副業に精を出す社員はめずらしくなく、実際のところは黙認されていると思う。それに、上司に報告をするとなれば俺がデリヘルを利用したこともいわねばならず、そんな恥ずかしい思いをしてまでコンプライアンスを全うするメリットは何もない。

「でも、どうしてまた、風俗のお仕事を……?」

 踏み込んだ質問だったが、杜丘さんのほうもある程度は想定内だったのだろう。

「理由はまあ……ぶっちゃけていっちゃうと、お金ですね」

「お金……ですか」

 意外といえば意外……かな。

「あっ、べつに借金があるとか男に貢いでるとか、そういうのじゃないですよ! ただ、この先何があるかわからないし、働けるうちにすこしでも稼いでおきたいなぁ、と思いまして」

 それで風俗で働くというのも決して当たり前ではない気もするが、自分の会社の安月給ぶりを知っているだけに、返す言葉は特になかった。

 大胆といっていいのか、はたまた堅実というべきか。

 俺のほうはそんなふうに妙な納得をしたのだが、いっぽうの杜丘さんはここに至って深いため息を落とすと、難しい顔になって天井を見上げた。

「けど、そっかぁ……。見つかる時はこんなあっさり見つかっちゃうもんなんだぁ……。会社帰りでもすぐシフト入れるからって近場のお店を選んじゃったけど、やっぱりまずかったかあ……」

 そこは俺も近場で済ませようとしてたので、お互い様といいますか……。

 と、独り言にひそかに同調されたことを悟ったわけでもないだろうが、俺のほうへ顔を戻した杜丘さんが気遣わしげな目を向けてきた。

「というか、私より鈴来さんのほうが勘弁してくれって話ですよね……」

「え? な、何がですか?」

 おもいがけない気遣いを受け、俺は目を白黒させた。

「だってほら、せっかく息抜きに遊ぼうとしてたのに、よりにもよって会社の知り合いが来ちゃうとか……」

「あ、ああ……」

 息抜きというには切羽詰まった事情が俺のほうにはあったわけだが、たしかに会社の同僚に知られるのは想定外の事態ではあった。誰にも知られずこっそりと女性経験を積もうと思ってデリヘルを頼んだのに、これでは知り合いにヤラせてくれと頭を下げているのとさほど変わらない。

「や、やっぱり、マズイですよね、こういうのは……」

 俺はおずおずと訊き返した。不可抗力とはいえ、恋人でもない二人がラブホテルで密会しているのだ。もしも会社の誰かに知られて噂が広まれば、社内での居心地が悪くなることは目に見えている。もちろんラブホテルでの逢瀬を他人に知られる可能性は低いのだろうが、現に自分たちがいま思わぬ鉢合わせをしているだけに、万が一がないともいいきれない。ここはおとなしく、何もせずに帰るのが正解なのだろう。

 俺はそうやって自分を納得させようとした。

「でも、鈴来さんはきちんと料金も払ってるわけだし……」

 ところが杜丘さんは、俺の思惑とは反対に、眉間にしわを寄せて考え込みはじめた。

 責任感の強い彼女のこと、どうやら客である俺が規定のサービスを受けられなくなることを申し訳なく思っているらしい。

 こ、この流れはまさか……!

「あっ、お店に事情を話したら、代わりの子を寄こしてくれるかな?」

「えっ!」

 杜丘さんが予想外の妙案を口にしてスマホを手にとったものだから、俺はとっさに彼女の手を押さえてしまった。

(し、しまった!)

 俺はすぐに自分の失態に気づいた。これではまるで、彼女が気を利かせて提案してくれた「チェンジ」を俺が拒否したみたいではないか。

「す、鈴来さん? あの……」

 杜丘さんが困惑した目を向けてくる。俺はあわてて彼女から手を引いた。

「ち、違うんです! これはなんていうか……そ、そうだ! ここのお店ってたしか、指名で呼んだキャストのチェンジは認められてませんでしたよね?」

「たしかにそうですけど……、よくご存じですね、うちのお店のシステム……」

 なかなかうまい言い訳だと思ったのだが、杜丘さんの眉間のしわは深くなるばかり。考えてみれば、電話する前にお店のホームページやネット口コミを見まくり、はじめて利用するデリヘルのシステムに精通している客というのはかなり気持ちが悪い。

(うう……)

 これはもう……観念するしかないのか。

「……すみません、杜丘さん。俺……」

「ふふ……下調べ万全じゃないですか」

 情けなさのあまり目を伏せていると、小さな笑い声が聞こえた。

「え……?」

 目を上げると、おだやかに相好を崩した杜丘さんが俺を見つめていた。

「鈴来さん、新規のお客さんのところへ営業に行く前も、先方の趣味とか近くの美味しいお菓子屋さんとか、すごい調べてますもんね」

「そ、それは……」

 新人研修で初めて会う営業先の情報はなるべく細かく仕入れていけと習って以来、律儀にその教えを実行しているだけなのだが、まさか会社で必死にネット検索している姿を見られていたのか。

「でも、そこまで調べておいて、よりにもよってデリヘルで会社の同僚を指名します?」

「う……、そ、それは本当に偶然で……」

「ええ~? 本当かなぁ?」

 杜丘さんはからかうような笑みを浮かべながら、腰の位置をずらして俺に身を寄せてきた。

「あ、あの……」

 俺はいきなりのことにたじろいだが、彼女はかまわず俺の腿にそっと手を乗せた。

「やっぱり何もせず帰ってもらう、ってわけにはいきませんし、鈴来さんさえ嫌でなければ……ね?」

 熱っぽい瞳で見つめてくる彼女は、俺の知っている事務員の杜丘さんではなかった。

 今夜はじめて対面する夜の女性、「ななせ」さんだ。

「は、はい……」

 俺はごくりと息を呑みながらうなずいた。

 いうまでもなく、チェンジはなしだ。

 

   3

 

 デリヘルプレイの最初の一歩といえば、そう、シャワーである。

 お店やコースによっては女の子が来る前に一人でシャワーを済ませるよう求められる場合もあるようだが、今回利用したお店「MUDY」の九十分コースではシャワータイムもプレイ時間に含められていた。

 それはつまり、キャストの女の子――ななせさんと一緒にバスルームに入ることを意味する。むろん二人ともすべての衣服を脱ぎさった、全裸の状態で。

「それじゃあ、これでうがいしてください。あまった分は排水溝に流しちゃって大丈夫ですから」

「は、はい」

 バスルームに入ると、彼女がコップにうがい薬を入れて手渡してくれた。ポビドンヨードを配合した市販の殺菌消毒液である。所詮は市販の医薬品だから性病予防というより口臭除去の意味合いが強いらしいが、この後たがいの粘膜を接触させるのだから、うがい消毒は最低限のマナーだろう。ちなみに流行性ウイルス感染症を予防できるエビデンスはないそうなので、まちがっても飲んだりしてはいけない。

 俺はこげ茶色の消毒液を口に含むと、ガラガラ、クチュクチュと口内をすすぎ、排水溝に向けてペッと吐き出した。するとななせさんはすぐに水を入れたべつのコップを渡してくれる。口の中をすすぐ用の水だ。細かな心遣いが胸に染みるなあ。

 杜丘さん、会社での仕事ぶりも丁寧だけど、こっちの仕事でもきちんとしてるんだなあ。

「じゃあ、お体洗いますね。お湯、熱くないですか?」

「はい……大丈夫です」

 俺がうがいをしているあいだにお湯の温度を調節してくれていたようで、彼女が腿のあたりにあててくれるシャワーは熱すぎずぬるすぎず、ちょうどいい具合だった。胸のあたりまで軽くお湯をかけられるとじんわり体が温まってきて、それだけで心地よい気分になる。

 ある程度体を温めたところで、杜丘さんはお湯を止め、シャワーヘッドをホルダーにひっかけた。続いてボディーソープを手にとり、俺の胸のあたりから泡を広げはじめる。

「鈴来さん、細いけどわりと筋肉ついてますね。ジムで鍛えたりしてるんですか?」

「い、いやぁ、特には……。ジムに行くような余裕もないんで……」

「それでこれだけ体型維持できてるんですか? うらやましいなあ。私なんて最近太ってきちゃって、ジムとか行かないとなぁって思ってるんですよ」

「太ってるなんて、そんな……」

 このような他愛もない会話の流れの中で、彼女の裸体に目をやった俺をいったい誰が責められようか。

 まぁ……見事なプロポーションだ。全体的にしなやかで丸みを帯びた女性らしいボディラインだが、ウエストはきっちりとくびれており、腹回りにも余分なたるみなど一切ない。それでいて乳房はド迫力のEカップ。下乳にややボリュームが寄った釣鐘型で、乳輪と乳首の色味は茶色とピンクの中間といったところか。俺好みのエロいおっぱいだ。

 下方に目をやれば、股間では黒々とした茂みがお湯を滴らせていた。お手入れはされているようだが、Vゾーンの形は過度に作り込まれておらず、自然な印象を残していた。最近はデリケートゾーンを綺麗に脱毛してしまう女性も多いと聞くが、俺は陰毛があったほうがグッとくる派の男だ。不完全な美というか、綺麗な女性が恥部に毛を生やしているというギャップがいいんだよね。

 太腿やお尻などには程よく肉が乗っているが、これで太っているなどといったら世の女性から反感を買うのではなかろうか。

 もちろん人によって好みはあるだろうが、すくなくとも俺にとっては理想的といえる裸体だった。

「め、めちゃくちゃ綺麗ですよ、杜丘さん……」

 ここは歯の浮くような台詞のひとつでも言っておく場面だろうと、俺としては精一杯の褒め言葉を返したつもりでいたのだが。

「……名前」

 杜丘さんはちょっとむっとした顔つきになって、俺を見上げてきた。

「え?」

 思わぬ反応に俺は面食らう。え……俺、なんかマズイことを言った?

 杜丘さんは鈍い俺をじろりとねめつけてくる。

「だから、名前ですよ、名前! なんか当たり前のように本名で呼んでますけど……」

「……あっ!」

 ここに至ってようやく俺もみずからの失言に気がついた。

「す、すみません、つい……」

 無意識のうちに会社で仕事をしている時と同じように呼んでしまっていたが、たしかに「杜丘さん」はマズイよな……。ここはラブホテルで、俺たちはいま、風俗嬢と客の関係。もとより彼女は素性を隠して働いているわけだから、本名で呼ぶなどもってのほかだ。

「まあ、今回は『恋人コース』なので、名前で呼んでもらうのは全然ありなんですけど……」

「恋人コース……」

 そういえばあったな、そんなの。

 デリヘルではプレイ時間のほかにプレイの趣向などを客からリクエストできる場合もある。今回のお店「MUDY」でも、予約時に選べるいくつかのプレイコースが用意されていた。「恋人コース」はたぶんもっともスタンダードな設定で、その名のとおりキャストの女の子と恋人のようにいちゃいちゃしながらプレイを楽しめるというものである。ほかにも「痴漢コース」やら「夜這いコース」やら「逆夜這いコース」やらもあり、いろいろな性癖に幅広く対応しているようだ。もちろん痴漢にせよ夜這いにせよ、あるいは恋人にせよ、イメクラのようにガチでやるというより、なんとなくの雰囲気を味わう程度のものらしいが。

 杜丘さんがデリバリーされてきた衝撃ですっかり忘れていたが、俺は今回、「恋人コース」で予約を入れていたのだった。

「じゃあやっぱり……『ななせ』さん、ですか?」

 俺がおずおずとおうかかいをたてると、彼女のほうもそれで納得したようだ。

「……まあ、そうですね。それじゃあ私も恋人コースっぽく……『大毅君』、かな」

 杜丘さん……いや、ななせさんは、そう言ってはにかんだ。

 わずかに頬を紅潮させたその笑顔がやたらかわいく、俺はトクンと胸を高鳴らせた。

 ななせさんに、大毅君。

 まさか憧れの女性と、こんなふうに下の名前で呼び合える日がくるなんて……!

 神様……いや、デリヘル様、本当にありがとう!

「ところで、ずっと気になってたんだけど……」

 感激に打ち震える俺の意識を現実に引き戻したのは、ぽつりとつぶやかれた、ななせさんの一言だった。

「へ?」

 間抜けに応答した俺をよそに、ななせさんは下方に視線を落としていた。つられて俺も下を見る。視界に入ったのは、みずからの股間である。

「……おちんちん、もう大きくなってるよね?」

「あ……」

 ちょっとあきれた顔を向けてくるなんせさんに、俺は何も言い返せなかった。

 そのくらいごまかしようもなく、俺の股間の逸物は見事にそそり立って天を突いてしまっていたのだ。

「というか、お風呂に入った時から半分くらい勃ってたよね……?」

 これまた、そのとおりだった。

 というより、脱衣所でななせさんがワンピースを脱ぎ、下着姿になった段階で、俺は聞かん坊の息子をなだめるのに必死だったのだ。

「まあ、元気なのはいいと思いますけど……。それにしても、すごいビンビン……」

 節操のない男の生理が滑稽なのか、ひとりでに頭を揺らす屹立をななせさんはしげしげと眺める。

「そ、それは仕方ないですよ。だって、女の人の裸を生で見るのも、はじめてなんですから……」

「やだ、はじめて見るとかそんなおおげさな……って、え? はじめてって……え?」

 苦笑を浮かべかけたななせさんの表情が固まる。俺の顔色を見て、「はじめて」という言葉がおおげさでも冗談でもなく、たんなる真実であることを悟ったようだ。

 ここまで来ると下手にごまかすのもかえってみっともない気がしたので、俺も覚悟を決めて白状する。

「つまりその……、童貞、なんですよね、俺。じつはこういうお店に来るのも今日がはじめてで……」

「……ああ」

 俺の告白を聞き届けた杜丘さんは、目と口を開けながら大きくうなずいた。

 そんないろいろと納得いったみたいなリアクションをとられると、俺だって悲しくなるのだが……。

「やっぱり、いろいろ童貞くさかったですかね、俺……」

 女性は童貞を見抜けるという都市伝説を信じ、普段から言動には気をつけていたつもりなのだが……。

「あっ、いえいえ、違いますよ!」

 落ち込みかけた俺を見て、ななせさんは焦った様子で両手を胸の前で振った。

「むしろ意外だったっていうか! ほら、デリヘルで遊ぶくらいだから、てっきり女の子慣れしてるのかなって……」

 それは買いかぶりすぎもいいところだ。むしろすこしでも女の子に慣れたいがために勇気を出して風俗に頼った次第である。

 あらためて振り返ってみると、これも童貞をこじらせた行動だよなあ……。

「でも、そっかあ……。大毅君、童貞クンだったんだ」

 ななせさんがにんまりと目を細めて、俺を見上げてきた。

 股間のあたりに甘い刺激が走ったのは、その刹那だった。

「アッ」

 俺は情けない声を漏らして、反射的に腰を引いた。だが股間を襲う快電流から逃れることはできない。

 ななせさんは逆手で俺のペニスを握っていた。

「ふふ……、やっぱり、すごいカチコチ。私のカラダを見てこんなになっちゃったの?」

「う、うう……」

 ななせさんのイジワルな問いかけに、俺はコクコクとうなずくことしかできない。

 生まれてはじめて肉親以外の女性にペニスをいじられている。その衝撃と感激で、俺はもう呼吸をすることすら難しくなっていた。

「誰にだってはじめてはあるんだから、べつに恥ずかしがる必要はないわよ。それに私個人としては、変に女慣れしてる人より、経験がない男の人のほうがカワイイって思うし」

 さりげなく俺を励ます言葉をかけながら、ななせさんはその形を確かめるように肉棹に指を這わせる。

「おちんちん、けっこう大きいんだね。でも、半分くらい皮を被ってる」

「う……」

 ななせさんの指摘どおり、勃起状態にもかかわらず陰茎包皮は亀頭のなかほどまでを覆ったままだった。いわゆる仮性包茎なのだが、大人になりきれていない感じがして、見られるとやはり恥ずかしい。

「私は嫌じゃないけど、どうせなら全部キレイにしておきましょうか」

「え? あ、ちょっ!」

 驚く暇もなかった。ななせさんは包皮口に指を添えると、亀頭の根元まで皮をずるりと剥き下ろしてしまったのだ。

「は、はぅ!」

「痛くない?」

 おもわず顔をしかめた俺を、ななせさんが気遣うようにうかがってきた。

「だ、大丈夫ですけど……くあぁ……!」

 もとより包皮と亀頭が癒着しているわけではなかったから、剥かれても痛みは感じない。だが女性の手で包茎を矯正された衝撃が絶大だ。羞恥と悦楽がないまぜになった刺激に襲われ、一瞬だが危うく達しそうにすらなってしまった。

「それじゃあ洗っていくから、痛かったらすくに言ってね」

 唇を噛んで快感に耐える俺にそう言い含めると、ななせさんは泡立てたボディソープを完全露出した亀頭にまぶしつけた。カリ首や竿はもちろんのこと、陰嚢や陰毛、さらには会陰から肛門まわりまで、やさしく撫でるように泡を広げていく。

「ああ、気持ちいいです……」

 女性におのれの不浄を清めてもらうなんて、まるで古代の王様にでもなった気分だ。ななせさんの丁寧な手つきが、よりいっそう愉悦を深めてくれる。

「……おちんちんの先からエッチなおつゆが出てきちゃってる」

 ななせさんは泡まみれになった肉茎の先端を指でつついた。引き上げられた指先と鈴口のあいだで透明な粘液が糸を引いていた。

「そ、それはだって、さわられてるから……」

「おちんちんもパンパンで苦しそうだし……ねえ、もうここで一回、出しちゃおうか?」

 ななせさんが裏筋をやさしく撫で上げながら、俺を見つめてきた。

「え、でも、それは……」

 魅力的な誘惑に心を揺らしつつも、正直、ためらうところもあった。もちろん俺自身も射精欲求の高まりは自覚しているし、一度抜いてスッキリしたい気持ちもある。しかしいっぽうで、ベッドにさえ入っていない段階で早々と果ててしまうのは少々もったいない気もするというか……。

 俺のそんな内心を見てとったのか、ななせさんは頼もしげに胸を張った。

「大丈夫! 九十分コースなら発射無制限だし、私も何度出してもらっても平気ですから」

 そんなふうに言われてしまうと、断るわけにもいかなくなる。

「じゃ、じゃあ、ちょっとだけ……」

 俺がおずおずとうなずくと、ななせさんはにっこりと微笑み返して、俺に身を寄せてきた。脇腹に胸を密着させ、片手は腰に回す。

「は、はぅ……」

 柔らかな感触に全身を包まれただけで興奮する俺をよそに、ななせさんはもう片方の手で肉棒をつかみ、ゆっくりと手淫を開始した。

「うっ、あっ……!」

 ごくゆったりとしたストロークだったにもかかわらず、ななせさんの指で粘膜をこすられた途端、しびれるような快感が全身を駆け抜けた。体を洗われている時にもさわられてはいるのだが、しなやかな指を竿に巻きつけられたうえで上下に動かされると、やはり刺激は格段に強くなる。

「女の子におちんちんシコシコされるのもはじめてだよね? どう? 一人でする時より気持ちいい?」

「ぜ、全然違います……、こんなに気持ちいいの、マジで生まれてはじめてです……!」

 おおげさでなく、気を抜くと卒倒しかねないほどの快感だった。基本的には棒を手でこするだけの単純な動作なのに、他人にやってもらうというだけでこれほどまでに刺激が強まるものなのか。握り方や力加減を予測できないこともあるが、それ以上に大きいのはやはり、憧れの女性がしごいてくれているという点だろう。会社では真面目にキーボードをたたいている紗英香さんの指が、いまは俺のペニスにしなやかに巻きついている。にわかには信じがたい現実からもたらされる背徳感が、さらに興奮を高めているのだ。

「ふふ、よかった。イキそうになったら我慢せずに出しちゃっていいからね?」

 ななせさんは妖しく微笑むと、徐々に手の振りを速めはじめた。

「あっ、はぁ、ああ……」

 脳髄に響く快楽がいっそう強くなり、俺は即座に呼吸を乱した。

 ななせさんの手コキは、じつに巧妙だった。軽くスナップをきかせた右手の動きは正確で、力加減も絶妙。いつのまにか左手も前に回して、快感に縮み上がる陰嚢をやさしく揉みしだいていた。かと思えば今度は先端に手を伸ばし、鈴口から溢れる先走り汁を指で亀頭に塗りたくる。さらにおまけとばかりに先端へ唾まで垂らしてくれた。ボディソープの泡もついているからもとより滑りは充分なのだが、こういうのは気分の問題だ。

 自慰では到底味わえない、めくるめく快楽の連続に、雄肉の猛りもいよいよ尋常ならざるレベルに達しつつあった。

「ぐっ、ううぅ……っ! ななせさんっ! ホントにもう、ダメです! このままじゃ……!」

「ホントだ、おちんちん、もう破裂しそうになってる♪ いいよ、このまま気持ちよくなって……」

 俺が限界を訴えたにもかかわらず――いや訴えたがゆえに、ななせさんは手コキの速度をさらに上げてきた。しかも竿をこするだけでなく、指の腹を使って亀頭にまで刺激を与えてくるのだ。完全に射精をうながす巧みな手技に、童貞の俺が耐えられる余地など一ミリとてなかった。

「あああっ! で、出るっ!」

 その叫びが引き金となり、射精管を駆け抜けた雄欲が鈴口から一気に噴き出した。

「きゃっ! すごい!」

 ななせさんの手中で暴れまわる肉銃は、連射砲のごとく精をぶっ放した。一発目はバスタブの向こうの壁に着弾。二発目、三発目も勢い衰えずバスタブや風呂場の床に飛び散っていく。

「う、ぐうぅ……」

「やンっ、まだ出る」

 ななせさんの手による補助で絞り出された残滓も含めると、計五発の発射となっただろうか。樹液が鈴口を割るたびに頭をガツンと殴られたような衝撃に脳を揺さぶられ、、視界の中でチカチカと閃光が散った。

「く、はぁぁ……」

 さすがにすべて出しきった……。急激な気怠さに襲われ、俺は深く息を吐いた。心臓は早鐘のように激しく脈打っている。それほどまでに盛大な射精だった。

 ななせさんには申し訳ないけど、シャワーから上がったらやっぱりすこし休ませてもらおう。俺はぼんやりとそんなことを考えはじめていたのだが……。

「すっごいたくさん出たね。でも硬いままだから、まだ気持ちよくなれそう」

「え……? って、なっ!」

 いったん途切れたと思われた快感がふたたび股間に湧きあがる。

 何を思ったのか、ななせさんがまたペニスをしごきはじめたのだ。

「あはっ♪ すごい! やっぱりまた硬くなってる!」

「ちょっ……! な、何して……っ、ダ、ダメですって! イったばっかで……あああっ!」

 とてつもなく強烈な快感に全身を貫かれ、俺はたまらず咆哮を放った。

 射精直後の陰茎はきわめて敏感になっていた。そこに手コキを加えられた効果は絶大だった。身を引き裂かんばかりの強刺激に襲われ、気づけば俺はガクガクと膝を笑わせていた。

「やんっ、そんなに暴れちゃ危ないって。ほら、しっかり立って」

 そんなことを言われても、体が勝手に動いてしまうのだから仕方がない。ななせさんは体を添わせて俺を支えつつ、両手で陰茎を攻めはじめる。

「くあああっ! ホ、ホントに、こ、これ以上は……!」

「イったばっかりのおちんちん、すっごい敏感になってるよね? でも大丈夫だから、いっぱい気持ちよくなって! ほら、ほら!」

 ななせさんの手の動きはさきほどと同じように……いやそれ以上に苛烈だった。右手で竿を激しくしごきつつ、左の手のひらで亀頭をごしごしとこすってくるのだ。

 尿道に残った汁を絞り出すといった生易しい手技では到底ない。二度目の射精をうながそうとしているのか……いや、それも違う。

「あああっ! ダ、ダメです、なんか……、なんか……っ!」

 得体の知れない感覚が腰のあたりにのぼってくるのを感じ、俺はたまらず腰をよじらせた。射精感とも、あるいは尿意とも違う……いやむしろ、その両方が混ざったかのような、独特の感覚。自分の身に何が起きているのか見当もつかず、俺はせり上がってくるその感覚を無意識のうちに押しとどめようとしていた。

「出ちゃう? いいよ、出して!」

 しかしななせさんは苦悶の表情を浮かべる俺にかまわず、亀頭をこする手の動きをいっそう速めた。

 皮を剥かれ、体中でもっとも敏感になった部分だ。そこを激しく、それでいて繊細にこすりたおされては、たまらない。俺の我慢はあっさり決壊した。

「ぐあああっ!」

 ブッシャアアッ、と。

 大量の液体が鈴口を割ったのは、俺が獣じみた咆哮を浴室に響かせたのと、ほぼ同時だった。

「きゃあ、すごい! 吹いてる!」

 ななせさんは歓喜の声を上げながら、透明な液体を噴き上げるペニスをなおもしごきつづけた。

「あ、あ、あ……」

 ななせさんの執拗な手コキにうながされ、ペニスの先からビュッビュッと液体が噴出する。俺はそのさまを信じられない思いで眺めるほかなかった。

 見た目にはおしっこのようにさらさらとした液体だが、放尿のような体からじわじわ力が抜けていくような心地よさはない。尿道から液体が勢いよく飛び出していく感覚は、むしろ射精に近かった。「おしっこを射精する」という表現がいちばん的確だろうか。いずれにしても射精にも劣らない気持ちよさで、おもわず腰が抜けそうになる。

 おびただしい量の射出は十何秒ほども続いただろうか。気がつけば浴室の床には俺の体液の水たまりができていた。

「はぁ、はぁ……。な、なんだ、いまの……?」

 射出が終わっても膝と腰の震えがおさまらず困惑していると、ななせさんが労わるようにやさしく背中をさすってくれた。

「ごめんね。手で出してもらった時、大毅君、吹きそうだなって思ったから、そのまま続けちゃった。男の子の潮吹き……一人の時はさすがにしないよね?」

「あ、これが……」

 俺は足元にできた水たまりに目を落とし、ようやく自分の身に起きたことを理解した。

 いわゆる、男の潮吹きってやつだ。射精直後の陰茎をさらに刺激することで精液とは異なる液体を射出させるプレイである。AVでMっ気のある男優が女優に吹かされているシーンは何度か見たことがあったが……。

「潮を吹くの、はじめてだった?」

「は、はい……。めちゃくちゃ気持ちよかったです……!」

「ふふ、よかった。なかなか吹かない人もいるんだけど、一度体験すると、男の人もやみつきになっちゃうみたい。絶対に吹かしてほしいってお客さん、けっこう多いもん」

 そうなのか。いや、気持ちはとてもよくわかる。射精直後の亀頭を攻められるのは刺激が強くて悶絶ものだが、精液とも違う液体を水鉄砲のごとく放出する快感はほかに代えがたい。独特の解放感と背徳感が、癖になるというか。

 ホームページのプロフィール情報によると、ななせさんは手コキが得意とのことだったが、まさか潮まで吹かせられるとは……。

「あっ、でもこれ、基本プレイに入ってませんでしたよね?」

 もちろんオプションでつけた覚えもない。というか、男の潮吹きなんてお店のオプションで用意されていただろうか?

「そこはほら、サービスですよ、サービス。だって、ねえ……」

 ななせさんはいたずらっぽく目を細めると、俺の股間へ視線を落とした。

「あんなにいっぱい精液を出したのに硬いままのおちんちん、放っておけないじゃない。ていうか、お潮もいっぱい吹いたのに、まだ大きいし……」

「あ……」

 視線を下げると、節操のない我が息子と目が合った。大量射精と潮吹きでこってり絞られてもなお、悪びれることもしなびることもなくエヘンと反りかえっている我が息子。さすがに自重しろよ。

「ふふ、いいよ。まだまだ時間はあるから。でも続きはベッドで……ね?」

 魅惑的に片目を閉じたななせさんに、俺と息子は同時にこくりとうなずいたのだった。

 

   4

 

 浴室の後始末はななせさんお任せすることになった。

 自分の精液と潮で汚してしまった負い目もあり、俺も手伝うと言ったのだが、こういうのも自分の仕事だからと、彼女が譲らなかったのだ。申し訳なさもあったのだが、ここは彼女のお言葉に甘え、俺は一人で先に部屋へ戻った。

 バスタオルを腰にまきつけただけの格好でベッドに腰掛けると、ぼんやりとしていた頭もようやくすこし冴えてきた。

(むちゃくちゃ気持ちよかったな……)

 ななせさんの手で射精まで導いてもらった、あの感覚。得も言われぬあの快感を思い出すと、それだけで股間が熱くなってくる。

 相当な量の射精にくわえ、なんと潮まで吹かされてしまった……。潮吹きなんてもちろんはじめての経験だった。それだけななせさんの手技が巧みだったということである。「特技は手コキ」と書かれたホームページの紹介文に嘘はなかったわけだ。

(それにしてもあのプロフィール……スリーサイズなどもほぼ過少申告していないようだし、どれだけ精巧に作り込まれているんだ?)

 風俗嬢のプロフィールなら多少は脚色というか、話を盛るものだと思うのだが……。お店の方針なのか、はたまたななせさんが正直すぎるだけなのか――あれ? でも。

「たしか年齢は二十五歳って……」

「やだ、気づいちゃった……?」

 横合いから声がして、俺は振り向いた。

 見れば、浴室から戻ってきたななせさんが、部屋の入口のところで苦笑を浮かべていた。裸身にバスタオルを巻きつけた姿のななせさんは、俺のいるベッドへゆっくりと近づいてくる。

「べつに……読みたくてサバを読んでるわけじゃないんだよ?」

 ななせさんはすこし湿った髪を耳にかけながら、俺の隣に腰を下ろした。

「ただ、入店した時に、まだ熟女売りをする歳でもないからプロフィールはすこし若めの年齢にしとくからって言われて、なんとなくそのままに……」

 やや早口になって弁明を口にするななせさんは、ちょっとだけ気まずそうだ。

 なるほど……。賛否両論はあろうが、世の男性のあいだで若い女性を好む風潮があることは否定できない。いくらプロフィールを盛らない方針といっても、そのあたりはお店側もきちんと売り出し方を考えているのだろう。ななせさんの美貌をもってすれば、実年齢と三歳程度の違いなど大半の客には気づかれまい。

 もっとも、客のほうが彼女の実年齢を知っている場合は、話がべつだ。

「す、すみません。そういうつもりで言ったわけじゃないんですけど……」

「やっぱり、大毅君も年上は嫌……?」

「い、いえいえ! とんでもない!」

 不安げに顔色をうかがってきたななせさんに、俺は全力でかぶりを振った。この点だけははっきりと否定しておきたい。

「嫌なわけがないですよ! むしろ年上の綺麗なお姉さんに童貞を捧げるなんて、男にとっては夢のシチュエーションのひとつですって!」

 いささか主語が大きくなってしまったものの、年上を好む性癖が俺にあることは嘘ではない。ましてやななせさんくらい美人の年上となれば、こちらから頭を下げてお願いしてもまだ足りないくらいだろう。

 頭を下げるというか、実際にお金を支払ってはいるのだが。

「……ふふ、夢ってそんな、お世辞にしたっておおげさだよ」

 ななせさんは俺の言葉で失笑すると、おかしそうに肩を揺すった。焦ってわざわざ言わなくてもいい性癖まで告白してしまった気もするが、ななせさんの不安が解消されたのなら恥ずかしい思いをするだけの甲斐はある。

「あっでも、わかってるとは思うけど、本番はできないからね」

「それは……はい」

 うやむやにしようとしたわけではなかったが、しっかり釘を刺されてしまった。俺は居住まいを正しつつ、しかとうなずく。

 そこは、お金を払っているからこそ、というべきか。

 デリヘルでは本番、つまり挿入行為は厳禁だ。そこは今回利用している「MUDY」でも「本番行為は罰金」などと物々しく警告されている。ネット上では「あそこの店で本番ができた!」などという怪情報も飛び交いがちだが、きちんとしたお店ほどその一線はきちんと守っているはずだ。

「挿入以外ならいろいろしてあげられるから……ね?」

 童貞を捨てる見込みのない俺を憐れんで、というわけでもなかろうが、ななせさんがやさしく微笑みながら身を寄せてきた。

 湯上がりのしっとりとした手で胸板を撫でられ、俺はごくりと生唾を呑んだ。

「い、いろいろ、とは……?」

「したいこと、遠慮せずに言ってくれていいよ?」

 ついさっき、オプションにもない潮吹き手コキをしてくれたばかりだ。「いろいろしてあげられる」という言葉もあながちリップサービスといえず、否が応でも期待に胸が膨らんでしまう。




サンプル版は以上です。
ご興味を持たれた方はぜひDLsiteの作品ページもご覧ください。

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