姉の行方、そしてこの狂ったゲームの謎を解き明かすために。
黒塗りのリムジン。
明らかに田舎の住宅街を走るようなものではない高級感を放ちながら、町の外に向かって走っている。
「……確認だけど、姉さんは本当に、このゲームの参加者だったの?」
「ええ、参加者でしたよ」
「……今、どうしてるの?」
「私からは教えられません。ゲームを勝ち進んでいただければ、わかるかもしれませんよ」
そんなリムジンの中で、二人の美少女が話している。
「……二年前、失踪した姉さんがどこにいるのか全く分からなかった。あなたが私を見た時、明らかに表情が変わった。このゲームに参加すると決めたのも、それが理由だからね?」
まだあどけなさが残る顔立ちだが、正直、モデル、アイドル、タレントなどなど、とにかく、『顔がよければ食える』と言える業界のスカウトがまず声をかけるだろう。
いや、仮に何も仕事ができないとしても、大企業の重役が傍に置くために秘書にしたといっても納得できるレベルの、長い黒髪の美少女だ。
キャメルのブレザー制服と、チェック柄のミニスカートで包んだ体は相当なクオリティであり、Fはありそうな実った胸。くびれた腰と育ったお尻。
外見の価値は、あまりにも高いといえる。
「表情は変えないようにしていたはずですが、よく見ていますね」
そんな少女に話しかけているのは、同年代と思われる、茶髪をショートカットにした美少女だ。
黒スーツとタイトなマイクロミニスカートであり、Eはありそうな胸のラインと、魅力的な肉がついた足がわかるようになっている。
「とはいえ、そんなあなただからこそ、招待状を送ることができた。ともいえるでしょう。申し遅れました。私は『
「……」
満面に笑顔を張り付けたまま。と言っていい様子の光里の言葉に、哀遊は怪訝な顔をする。
もっとも、哀遊の顔立ちが整いすぎていて、怪訝な顔も綺麗だが。
「さて、ゲームに関して、簡単に説明しましょう。$OUL WAR$。端的に言えば、『莫大な報酬を得るか、厳しいお仕置きが待っているデュエル』となります」
「莫大な報酬って?」
「主に金銭になりますが、連勝を重ねれば、社会的なステータスを得ることも可能ですよ」
光里はリモコンを操作すると、近くのテレビが付いた。
アイドルグループが歌っている番組のようで、センターの美少女は、紛れもなく、隙のないダンスと確かな歌声を持っている。
「センターの子ですが、ゲームの現役プレイヤーです。プラチナランク……上から二番目のランクであり、ゲーム運営から絶大なバックアップを受けて、あのステージに立っています」
「……プラチナで上から二番目? まるでクレジットカードみたいだけど」
「わかりやすいので採用しています。次に……」
リモコンを操作する。
次に映ったのは、何かの議会で、まだ若い美人の政治家が、大物政治家相手に啖呵を切っているところだった。
「こちらの美人さんですが、現役プレイヤーであり、ランクはゴールドですが連勝中。我々が用意した『票田』を使い、選挙を勝ち取りました」
「票田まで操作できるの?」
「選挙システムに干渉はしていませんよ? まぁ、『技術があるゆえの力技』だと思っていただければ」
そういって、光里はテレビを消した。
「こうした『社会的なステータス』すらも与えられるほど、我々のゲームは可能性に満ちています。これが勝者の特典です」
「……厳しいお仕置きって、何なの? さっきのアイドルの人、ゴールドランクとは言ってたけど連勝とは言ってない。なんどか負けてるはず。衣装にしては肌の露出があったけど、肌はどこも傷がないどころか綺麗すぎるから、苦痛はなさそうだけど」
「すさまじい観察眼ですね。あなたのお姉さんもそうでしたよ」
「……」
「まぁ確かに、苦痛はありませんよ。それよりももっとすごいものが待っています」
光里は、タブレットを哀遊に渡した。
「あなた専用のタブレットになります。起動してみてください」
言われて起動してみると、『$OUL WAR$』のトップ画面が出てきた。
「初期設定。を押してください」
押してみると、『50000円ゲット!』と表示された。
「えっ?」
「とりあえず参加賞で5万円プレゼントします」
「……次に、デッキ選択って出てきたけど」
「フフッ、いくつかのデッキプランがあるんですよ」
① フリープラン
固定で39枚セット。本部で『身体検査』後にオリジナルカードを1枚プレゼント。
完全無料
② 月額プラン
安定的。とりあえず選んでおけば間違いなし。
月額5000円
③ 高額買い切りプラン
防御面はちょっと弱いかも。だけど、ワンターンキルが狙えるかも!
一括50000円
「……」
最初に5万円を受け取ったわけだが、哀遊としても言葉に困る。
「ちなみに……フリープランで勝利した場合、『大きな特典』を受け取ることができますよ」
光里はニコニコしながらそう言った。
「最初にそれを勧めてくるってことは、『私の目的のためにはフリープランが最適』って言いたいの?」
「さあ、どうでしょう?」
「……これだけは正直に答えて。勧めてきたのは、あなたの独断?」
「いえ、上の指示です」
「……あくまでも、選択権は私にあると?」
「それも事実です」
光里がニコニコしながら即答する。
「……何が待っているのかわからないけど、でもこれだけは言える。あなたたち運営は、ルールの違反や逸脱を認めない。あなただって、私の味方じゃなくて、ただの進行役」
「素晴らしいですね。では、どうします?」
「フリープランにする。けど、この『身体検査』って何? わざわざ身体検査後にオリジナルカードが貰えるってことは、脳波の検出とか?」
「それもありますよ♪」
「……わかった」
哀遊は頷くと、フリープランを選択した。
「フフッ、そろそろ、車のカーテンを閉めさせていただきますね」
カーテンが閉められて、外が見えなくなる。
車はそのまま、どこかに向かっていった。
★
車はそれから、どれほどの時間走っただろうか。
揺れはほとんどなく、エンジン音も聞こえない。
まるで、現実から切り離されたまま、静かな虚無の中を滑っているかのようだ。
光里はそれ以上、何も話さなかった。
ただ、あのニコニコとした笑顔を浮かべたまま、正面を向いている。
哀遊は、窓の外にあった日常の風景を思い出しながら、これから向かう非日常に心を固めていた。
やがて、車は静かに停止した。
ドアが外から開けられると、そこは日の光が一切差し込まない、だだっ広い地下駐車場だった。
(外が見られないように連れてこられたんだし、到着場所は地下と相場が決まってるか……)
なんとなく納得した様子の哀遊。
「哀遊さん。こちらへどうぞ」
光里に促され、哀遊は車を降りる。
彼女たちが向かった先にあったのは、重厚な観音開きの扉。光里が、その扉に軽く手を触れると、音もなく内側へと開かれた。
その瞬間、哀遊の世界は再び塗り替えられる。
目に飛び込んできたのは、現実離れしたほどに豪奢なホテルのロビーだった。
天井には巨大なシャンデリアが輝き、磨き上げられた大理石の床は、哀遊の姿を鏡のように映し出す。クラシック音楽の柔らかな音色が、空間全体を支配していた。
しかし、その場に満ちているのは、優雅さとは程遠い、剥き出しの緊張感と、選民意識、そして諦観だった。
ソファには、美しい少女たちが十数人。
取り巻きを連れて女王然と振る舞う者、不安げに爪を噛む者、そして、全てを達観したように虚空を見つめる者……。
その誰もが、この異常な空間に相応しい、あるいは、相応しくあろうと努めているように見えた。
哀遊は、その中に姉の面影を探したが、見つけることはできない。
その異様な空間を、完璧な所作で飲み物を運ぶ、美しい女性スタッフたちが滑るように行き交う。
彼女たちの顔には、感情というものが一切浮かんでいなかった。ただ、完璧な笑顔だけが貼り付けられている。
ただただおかしい。
目に映る少女たちは、十六歳である哀遊とほぼ同年代、いや、下の子もいそうだ。
だが、感じられる精神性が、まるで、作られたような統一感を持っている。
「圧倒されましたか? ここが、あなたたちがこれから魂を賭して戦う舞台、『$OUL WAR$』のロビーです」
光里は、そんな哀遊の様子を楽しげに眺めながら言った。
「さて、哀遊さん。あなたはフリープランを選ばれました。まずは、あなただけの『魂の形』を、我々に教えていただく必要があります」
「……身体検査のこと?」
「ええ。あなただけの特別なカードをお作りするための、大切な儀式ですよ」
光里は哀遊を先導し、ロビーの喧騒から離れ、奥に続く白い廊下へと歩を進める。
豪華絢爛だったロビーの装飾は次第に姿を消し、壁も床も、全てが継ぎ目のない白い無機質な素材へと変わっていく。
聞こえていたクラシック音楽も遠ざかり、今は、低く響く空調の音だけが耳についた。
やがて、光里は一つの扉の前で立ち止まった。
廊下の壁と同化するような、何の飾り気もない、ただの白い扉。
「さあ、着きましたよ。ここが、あなたの全てが始まる場所です」
光里は、いつもの笑顔で、その扉を指し示した。
「……」
哀遊は扉を開けて、中に入る。
中では、白衣を着た美少女スタッフたちが待っていた。
「お待ちしていました。哀遊さんですね。ここでは身体検査をして、あなただけのエースモンスターを作成します」
「……脳波の検出でもやるんでしょ? ヘッドセットはどこ?」
「いえ……」
話しかけてきた美少女が、指をパチンと鳴らす。
すると、傍にいた少女たちが、哀遊の傍に集まってきた。
「……はぁ、全員の視線が、ブレザーとブラウスのボタンか。自分で脱ぐから待ってなさい」
哀遊はある程度、予想はしていたのか、服を脱ぎ始めた。
ブレザー、ブラウス、スカート……下着や靴下も。
それらを、美少女が持ってきたカゴに入れる。
「……これでいい?」
「覚悟が決まってますね。フフッ、ありがたいです」
生まれたままの姿をさらす哀遊。
Fの巨乳も、くびれた腰も、形のいいお尻も、すべて、汚れ一つない、綺麗で滑らかな白さを持っている。
「では、こちらの椅子に座ってください」
椅子。と言われたが、実際は寝台と言えるほど、体が上に向くものだ。
座ると、スタッフが膝を支脚に載せて固定し、足が大きく開いた状態になる。
「そういえば、下の毛が……」
「生まれつきこうです」
「そうですか。可愛らしい股ですね」
そういいながらも、哀遊の腕や手首、腰や胸の下にベルトを通して、固定する。
「フフッ、隠しても無駄ですよ? 心拍数が多くなっているのは、この部屋にあるセンサーでしっかりわかってますから」
「……」
「えい♪」
「ん……」
ローションを手になじませた手が、クチュクチュと、哀遊の股間を刺激する。
「良い反応ですね。指を入れていきますよ。乳首も揉んであげます」
「あっ、ああっ」
指がズブズブ入って、乳首をカリカリ。
「んっ、はっ♡ ああっ♡ そ、そこダメっ」
「Gスポットがダメなんですね。ではそこを重点的に」
「あっ、あああっ、い、いきそう……」
「イっていただけないと、エースモンスターを作れませんよ」
「そ、んな、バカな話が……」
「まあ安心してください。強制的に絶頂させます」
哀遊の顔に、目隠しがかぶせされる。
これで、何も見えなくなった。
「んっ♡ あっ、わ、私の中に、何を入れて――」
「一番小さいバイブですよ。直径4センチ、挿入部は20センチです。イボイボがしっかり並んでいます」
「あ、ああっ!」
ヴィイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!
「いっぐうううううっ!」
体をガクガクっと震わせて、哀遊は盛大にイった。
だが、バイブの振動は止まらない。
「い、イった、ばかりだから、ぐうぅ!」
「耐えていますね。では、強力な電マを下腹部に当てましょうか。これで子宮が震えますよ」
「あああああああああああっ!」
「可愛らしく、スタイルの良い子が、こんな元気に跳ね回るなんて、今日はなんていい日なのでしょうね」
「ふ、ふざけっ、い、いっくううううっ!」
「バイブをピストンしますね。乳首にもローターを固定しましょう」
「あっ、あっ、あっ! ああっ!」
膣をバイブでピストンされて、哀遊は悶える。
「な、なんで、わ、私、こんな……」
「感じるわけがない。フフッ、それは自分の体のことをしっかりわかってないからですよ。ここにある機材はすごくて、初見でも、気持ちいい方法がしっかりわかるんです」
「い、いぐっ、いっぐううううううううっ!」
また盛大にイった哀遊。
白衣を着た美少女たちは、楽しそうに、哀遊の体で遊んでいる。
……20分後。
「はぁ、はぁ」
盛大にイき続けて、深呼吸する哀遊。
白衣を着た美少女たちは、何かのモニターを見て満足しているため、どうやら『カード』は作れたのだろう。
「あの、哀遊さん」
「……何?」
「検査は終わりですが、とても楽しいんです。哀遊さんには何のメリットもないんですけど、続けても良いですか?」
「さっさと外しなさい」
即答だった。
★
受け取ったデッキケースに、エースカードと、39枚のカードを入れて検査室を出る。
光里が、まるでずっとそこで待っていたかのように、変わらない笑顔で立っていた。
「お疲れ様でした、哀遊さん。あなただけのエースモンスター、手に入れられましたか?」
その言葉の裏に隠された悪意に、哀遊は内心で舌打ちする。
手の中にある、冷たくて安っぽいプラスチック製のデッキケースを、強く握りしめた。
屈辱と尊厳と引き換えに手に入れた、たった一枚の切り札。そして、これから共に戦う39枚の仲間たち。
デッキは確認した。
フリープラン。の意味も理解した。
哀遊にできるのは、これで戦うことだけ。
「ええ。とても、良いカードよ」
哀遊が皮肉を込めて返すと、光里は楽しそうに目を細めた。
「素晴らしい。では、ロビーへ戻りましょう。あなたの最初の『お相手』が、もう決まっている頃かもしれません」
再び、白い無機質な廊下を歩き、豪奢なロビーへと戻る。
先ほどまで感じていた圧倒されるような感覚は、今はもうない。
あの儀式を経て、哀遊の心は、冷たい決意で満たされていた。
ロビーのソファに座る少女たちの何人かが、哀遊の姿を認め、ひそひそと囁きあう。
その視線が、哀遊の持つデッキケースに向けられていることにすぐに気づいた。
(……なるほど。この安っぽさが、フリープランの印か)
彼女たちの視線には、憐憫と、そして隠しようのない侮蔑が混じっている。自分たちは違う、自分たちは「払って」いるのだ、という優越感。
哀遊は、そんな視線を気にも留めず、ロビーの中央にある巨大なディスプレイを見上げた。
その時、軽やかな電子音が鳴り響き、ディスプレイの表示が切り替わる。黒い背景に、金色の文字が踊り、本日のデュエルのマッチングが次々と表示されていく。
そして、ひときわ大きく、一つの対戦カードが映し出された。
【
その名前と顔が表示された瞬間、ロビーの空気が変わった。
さっきまで哀遊を憐れんでいた少女たちの囁きが、今度は興奮と恐怖の入り混じったものへと変化する。
「鳳様だ……!」
「うそ、もう5戦目なの?」
「相手、可哀想に。新人みたい……しかも、あのデッキケース……フリープランよ」
「これは……一方的な『お仕置き』が見られるだけね」
囁き声が津波のように押し寄せる中、人垣が割れるようにして、一人の少女が取り巻きを連れて歩いてきた。
波打つような美しい金髪に、気の強そうな青い瞳。
月額プランの特典であろう、金の刺繍が施された、洗練されたデザインのデュエルディスクを腕につけている。
鳳麗奈。
彼女が、哀遊の目の前で足を止め、値踏みするように、上から下まで視線を走らせた。その視線は、哀遊の持つプラスチックのデッキケースで、ぴたりと止まる。
「あなたが、わたくしの記念すべき5勝目の相手ですのね」
鈴を転がすような、美しい声。しかし、その響きには、ダイヤモンドの硬度にも似た、冷たい侮蔑が込められていた。
「プラスチックケース……このわたくしの相手が、あなたのような『持たざる者』だなんて。少し、退屈ですわね」
「……」
「何も言い返せないのかしら? それとも、恐怖で声も出ない? いいでしょう。デュエルはすぐに終わらせて差し上げますわ。このゲームの洗礼は、あまり手荒ではない方が、あなたのためでしょうから」
哀遊は、何も答えなかった。ただ、その青い瞳を、静かに、そして真っ直ぐに見つめ返す。
その瞳の奥に宿る光の強さに、麗奈は一瞬だけ、眉をひそめた。
「さあ、お二人とも。ステージの準備が整いましたよ」
完璧なタイミングで、光里が二人の間に割って入る。
「観客の皆様も、お待ちかねです。どうぞ、こちらのエレベーターへ」
光里に導かれ、哀遊と麗奈は、ロビーの奥にある特別なエレベーターへと向かう。
乗り込むと、扉は静かに閉まり、ゆっくりと下降を始めた。華やかなロビーの喧騒が遠ざかり、重低音が身体に響く。地獄へと降りていくような、錯覚。
到着したのは、だだっ広い、薄暗い空間だった。
むき出しのパイプが走る高い天井。その中央に、スポットライトに照らされた円形のデュエルステージが、まるで祭壇のように浮かび上がっている。
ステージの周囲には、暗闇に溶け込むようにして、ガラス張りのVIP観客席がいくつも設置されていた。その中で、葉巻の先のような、赤い光が点滅しているのが見える。
「それでは、星宮哀遊さん、鳳麗奈さん。各々のポジションへ」
アナウンスに従い、二人はステージの両端へと歩を進める。対峙した二人の間には、これから始まる闘争を予感させる、張り詰めた空気が満ちていた。
「「デュエル!」」
哀遊 LP4000
麗奈 LP4000
「先攻は……私」
デュエルディスクのターンランプがついたのは哀遊。
「私は手札から魔法カード『忘れられた讃美歌』を発動。デッキから『ステラレリック・チャイルド』を手札に加える。そのまま、通常召喚」
ステラレリック・チャイルド ATK1200 ☆3
出現したのは、小さな権を握る子供だ。
「ステラレリック……フェイクでプラスチックケースに入れていたのではなく、本当にそんなデッキを使うとは、このゲームのことを何も理解していませんわね」
「……チャイルドの効果発動。デッキから『ステラレリック・シスター』を手札に加える。チャイルドの効果で手札に加わったシスターは、特殊召喚できる」
ステラレリック・シスター DEF1500 ☆4
「シスターの効果。自身の効果による特殊召喚成功時、デッキから『忘れられた讃美歌』を手札に加える。私は2枚目を手札に」
「フフッ、お金を払ったデッキであれば、ここからリンク召喚につなげるはずですわ」
「……エクストラデッキは、ない」
「ですわよねぇ。ほんと、お遊びできたとしか思えませんわ。そういう人間に、洗礼を加えるのが楽しいのも事実ですが」
「さらに、手札から『ステラレリック・ガーディアン』の効果発動。シスターが存在する場合、手札から特殊召喚できる」
ステラレリック・ガーディアン DEF1900 ☆4
「ガーディアンがいる場合、チャイルドは効果で破壊されない。私はカードを1枚セット、ターンエンド」
「フフッ、あははははっ! 私のターン。ドロー!」
喜色満面で、麗奈はカードをドローする。
「ステラレリック。『名称指定』でつながる、何の拡張性もない無課金デッキ。何が貰えるのかまったく想像もつかないエースカード1枚に、尊厳を払わなければならない。そんな馬鹿な選択をするなんて」
「……デッキの選択は、私の自由」
「ええ、そうですわね。だからこそ、このデュエルで敗北の道をたどるのも、あなたの選択というわけですわ」
手札のカードを1枚つかんだ。
「月額コースを払えば、多種多様なデッキの中から選ぶことが可能。そのうちの一つ、見せてあげますわ。手札から『ゴールドレス・ペイジ』を召喚」
ゴールドレス・ペイジ ATK1900 ☆4
出現したのは、黄金のドレスを身にまとい、金色のレイピアを握る美女。
「ペイジの効果により、デッキから『ゴールドレス』魔法罠を手札に加えられます。私は『ゴールドレス・カウンター』を手札に。手札に『ゴールドレス・スクワイア』は、自分フィールドにゴールドレスモンスターがいれば、特殊召喚できる」
ゴールドレス・スクワイア ATK1800 ☆4
黄金の剣を構える美女が並んだ。
「魔法カード『ゴールドレス・チケット』を発動。コストは5000円ですわ」
「!」
「私は『借金』しますわ。これにより、自分フィールドのゴールドレスモンスター1体を選択し、そのモンスターと同名モンスターを2体まで、デッキから特殊召喚」
麗奈 借金額0→5000
ゴールドレス・スクワイア ATK1800 ☆4
ゴールドレス・スクワイア ATK1800 ☆4
「……借金」
「$OUL WAR$では、金を払うことで強い効果を発揮するカードもあります。1つ目、所有クレジットから支払う。2つ目、クレジットと借金から半々。3つ目、借金から。この三つのプランから選択が可能となる」
「……」
「借金を抱えたまま敗北すると、『お仕置き』も厳しくなりますわ。ただ、デュエル中に発生した借金は、そのデュエルに勝てば帳消しになるのがルール。まぁ要するに……あなたの負けということです」
「
「ふふ、そんなことを言えるのも今の内です。私はレベル4のペイジとスクワイア3体を、2体ずつオーバーレイ!」
渦に美女が飛び込んでいく。
「エクシーズ召喚! ランク4『ゴールドレス・パラディン』!」
ゴールドレス・パラディン ATK2600 ★4
ゴールドレス・パラディン ATK2600 ★4
腕輪で障壁を出している金色のドレスの美女が二人出現。
「フフッ、ゴールドレス・パラディンは、素材を一つ使い、相手モンスター1体の効果をターン終了時まで無効にする効果がありますわ。ただ……こういう効果もあります。私は2万円を借金し、パラディンの効果を発動!相手のカードを1枚破壊しますわ!」
「チャイルドは、ガーディアンの効果で効果破壊されない」
「なら、そのガーディアンを破壊しますわ!」
麗奈 借金額5000→25000
パラディンが腕輪を掲げると、レーザーが飛んでくる。
無課金デッキなど、効果破壊を飛ばせる課金効果で吹き飛ばせばいい。
その思惑は……。
「罠カード『三重星の守り』を発動! 自分フィールドに、チャイルド、シスター、ガーディアンがいる場合、相手の効果の発動を無効にして、破壊する!」
「なっ!?」
レーザーはパラディンに向かって跳ね返り、そのまま爆散した。
「ぐっ……速攻魔法、『ゴールドレス・リボーン』を発動! 自分の墓地から『ゴールドレス』エクシーズモンスターをこのターン攻撃不可で特殊召喚しますわ。ただ、5000円払えば、リボーンをそのまま素材にできます」
麗奈 借金額25000→30000
ゴールドレス・パラディン ATK2600 ★4
「……」
「蘇生したパラディンの効果! 2万円を借金し、再び、ガーディアンを破壊!」
「ぐっ……」
麗奈 借金額30000→50000
「さらに、もう1体のパラディンの効果。2万円借金し、シスターを破壊!」
麗奈 借金額50000→70000
「バトルフェイズ。私はパラディンで、ステラレリック・チャイルドを攻撃!」
レーザーが子供を貫いた。
「くぅ……」
哀遊 LP4000→2600
「……チッ、さっきの罠がなければ、このターンで勝ててましたわ。運がいいですわね」
「……そう思うなら、それでいい」
「っ! 私はカードを1枚セット、ターンエンド!」
哀遊は伏せカードを見る。
(先ほど、『ゴールドレス・カウンター』というカードをサーチしていた。おそらく、汎用の無効罠カード)
分析しつつ……。
「私のターン。ドロー」
哀遊はカードを引いて確認。4枚になった手札……1枚は『忘れられた讃美歌』であり、瞬時に組み立てていく。
「手札から永続魔法『星々の揺りかご』を発動。効果処理として、墓地から『ステラレリック・シスター』を特殊召喚」
ステラレリック・シスター DEF1500 ☆4
「さらに手札から、2枚目のガーディアンの効果。フィールドにシスターがいることで、特殊召喚!」
ステラレリック・ガーディアン DEF1900 ☆4
「星々の揺りかごの効果により、フィールドにガーディアンがいれば、1ターンに1度、デッキから1枚ドロー」
「……」
「カウンター。どこで打つか迷ってる?」
「だったらなんですの?」
「別に? 私は手札から、『忘れられた讃美歌』を発動。デッキからチャイルドを――」
「カウンター罠『ゴールドレス・カウンター』発動ですわ! 自分フィールドにゴールドレスモンスターが存在する場合、相手のカードの発動を無効にして破壊!」
忘れられた讃美歌が砕け散った。
「どうですの? この汎用的な力は――」
「私はシスターとガーディアンをリリース。『ステラレリック・キング』をアドバンス召喚」
ステラレリック・キング ATK2600 ☆7
「……はぁ!?」
「ステラレリック・キングは、『ステラレリック・ナイト』をリリースして、手札から特殊召喚することも出来るけど、まぁ今回は普通にアドバンス召喚でいい」
「で、ですが……」
「1体と相打ちで済むと? 手札から装備魔法『
「で、ですが、それでも1体と相打ちに変わりは……」
「キングの効果、1ターンに1度、相手モンスター1体の表示形式を守備にできる。この効果を発動した時にシスターが場にいれば、デッキからカードを1枚ドローできる」
ゴールドレス・パラディン ATK2600→DEF2000
「バトル。キングで、守備表示のパラディンを破壊し、攻撃表示のパラディンと相打ち」
パラディンが両方とも破壊され、ステラレリック・キングもいなくなった。
「私はカードを1枚セット。ターンエンド」
伏せカード1枚。
モンスターもいなければ、手札もない。
場には『星々の揺りかご』があるが、その発動条件を次のターンで満たせるかどうかは、運次第だ。
「……お、おかしいですわ」
「何が?」
「私のフィールドが全滅? あり得ませんわ。月額5000円に加えて、カードも購入してデッキを強化している私が、ここまで……」
「勘違いしている」
「はっ?」
「ステラレリックは、拡張性がない無課金デッキだけど、別に、サンドバッグにしかならないほど弱いわけじゃない。それだけのこと」
「調子に乗るなああああああああああああああああああああああっ!」
麗奈はカードを勢いよくドロー。
「チッ、私は手札から『ゴールドレス・フェンサー』をリリースなしで召喚!」
ゴールドレス・フェンサー ATK2400 ☆6
「このモンスターは、相手フィールドの方がモンスターが多い場合、または自分フィールドにモンスターがいない場合、リリースなしで召喚できますわ」
「……」
「さらに、墓地から『ゴールドレス・スクワイア』を除外して効果発動。自分フィールドのゴールドレスモンスター1体の攻撃力を、ターン終了時まで1000ポイント上昇する!」
ゴールドレス・フェンサー ATK2400→3400
「これで、あなたのライフ2600を上回った。バトル! ゴールドレス・フェンサーでダイレクトアタック!」
「……残念、相手モンスターの直接攻撃宣言時、罠カード『運命の逆光』を発動。その攻撃を無効にする」
「なっ……」
「さらに、デッキから『ステラレリック・プリースト』を1体。墓地に送る」
「バカな……た、ターンエンド」
ゴールドレス・フェンサー ATK3400→2400
「……」
デッキトップを見る哀遊。
「……ふ、フフッ、そうですわ。あなたのデッキは、名称指定でしかつながりのないゴミデッキ。ドローカード1枚で逆転できるはずがない。そう、そうですわ。次のターンになったら勝てますわ」
「……私のターン。ドロー!」
哀遊は勢いよくカードを引いた。
「私は……『ステラレリック・ナイト』を召喚!」
ステラレリック・ナイト ATK1500 ☆4
「そんな雑魚モンスター1体で、何ができるというんですの?」
「ナイトの効果、墓地のガーディアンを除外することで、墓地から『ステラレリック・キング』を手札に!」
「なっ……」
「ナイトをリリース。手札から『ステラレリック・キング』を特殊召喚!」
ステラレリック・キング ATK2600 ☆7
「バトル! ステラレリック・キングで、ゴールドレス・フェンサーを攻撃!」
ステラレリック・キングが、剣でフェンサーを袈裟斬りにした。
「ぐっ……」
麗奈 LP4000→3800
「私はターンエンド」
「わ、私のターン。ドロー……チッ、モンスターをセット。ターンエンドですわ」
「私のターン。ドロー」
カードを確認。
ステラレリックデッキは、名称指定でしかつながらないため、基本的に一方通行。
自分のデッキがどこに向かうのかを瞬時に判断しなければ、勝機はない。
「キングの効果。セットモンスターを表側守備表示に」
「あっ……」
表になって出てきたのは……。
ゴールドレス・コーチ DEF2000 ☆4
哀遊はテキストを確認する。
「……戦闘破壊された時に、相手の手札1枚を捨てさせるモンスター」
とのことだ。
「カードをセット。バトル、キングで攻撃」
「チッ……」
ゴールドレス・コーチも粉砕された。
「ターンエンド」
「わ、私のターン。ドロー!」
気合と共にドローする。
「……フフッ、あはははははっ! 良いカードですわ。魔法カード『プレミアムチケット』を発動。4万円を借金して、デッキから2枚ドロー!」
麗奈 借金額 70000→110000
さらにドローしたカードを確認。
「魔法カード、『黄金の宴会』を発動! 5万円を借金して、墓地から、レベルを持つゴールドレスモンスターを3体、特殊召喚しますわ」
「!」
麗奈 借金額 110000→160000
ゴールドレス・スクワイア ATK1800 ☆4
ゴールドレス・スクワイア ATK1800 ☆4
ゴールドレス・フェンサー ATK2400 ☆6
「一気に、モンスターが3体……」
「これが課金デッキの力ですわ。さらにフェンサーの効果発動。フィールドの全てのゴールドレスのレベルを6に変更」
ゴールドレス・スクワイア ☆4→6
ゴールドレス・スクワイア ☆4→6
「これで、レベル6が3体」
「その通り。私はレベル6のスクワイア2体と、フェンサーでオーバーレイ!」
3体が渦に飲み込まれていく。
「エクシーズ召喚! ランク6『ゴールドレス・ツヴァイ』!」
ゴールドレス・ツヴァイ ATK2700 ★6
次に現れたのは、二本のレイピアを持つ金色ドレスの美女。
「ツヴァイのオーバーレイユニットを一つ使い、効果発動。2回攻撃が可能になりますわ」
「……」
「そのセットカード、何度も何度も、この場に適したものが出るわけがない。バトル! ゴールドレス・ツヴァイで、ステラレリック・キングを攻撃!」
レイピアの剣技で、キングがバラバラになった。
哀遊 LP2600→2500
「これで――」
「罠カード『王の憤慨』を発動。ステラレリック・キングが相手によって破壊された場合、相手フィールドの、最も攻撃力の高いモンスター1体を破壊する」
「そんな馬鹿な!?」
キングの怨念が、ツヴァイを貫いて、そのまま破壊する。
「……カードを1枚セット。ターンエンドですわ」
「私のターン。ドロー」
哀遊はドローしたカードを確認して……。
「私は……モンスターをセット。ターンエンド」
細い線をたどるようなデュエルだ。
ただ、何を引いても、哀遊は一切、表情を変えない。
「私のターン。ドロー!」
麗奈はカードをドロー。
「私は2枚目の『プレミアムチケット』を発動。4万円を借金して、2枚ドロー」
麗奈 借金額160000→200000
「手札から『ゴールドレス・リボーン』を発動。墓地のツヴァイを特殊召喚。5000円借金して、リボーンをそのまま素材に」
麗奈 借金額200000→205000
ゴールドレス・ツヴァイ ATK2700 ★6
「ツヴァイは攻撃できませんわ。ただ、魔法カード、『サンダー・ボルト』と『ハーピィの羽根帚』っを発動!」
「!」
セットモンスター、『ステラレリック・スピリット』と、これまでフィールドに残っていた『星々の揺りかご』が破壊された。
「私はターンエンドですわ」
「……」
「フフッ、デュエルの流れは私にありますわ。本当に、正真正銘、1枚のカードでひっくり返せるはずもありません。他のカードを組み合わせて、ようやく勝ち筋をギリギリでつかむデッキ」
麗奈は歪んだ笑みを見せる。
「あなたは食らいついているだけですわ。確かに運がいい。もし、あなたが月学デッキや買い切りデッキを使っていたらと思うとゾッとしますわ。ただ、そのデッキなら、そのデッキを使っているなら、私は負けませんわ!」
「……私のターン。ドロー」
デュエルディスクからカードをドロー。
確認して……。
「引いた」
「はっ?」
「私の、エースカード」
「えっ?」
「このモンスターは、自分の墓地に、ステラレリックモンスターが3体以上いる場合、手札から特殊召喚できる」
哀遊はデュエルディスクに、ドローしたカードを置く。
「現れろ。『ステラレリック・プロミスリッカー』!」
ステラレリック・プロミスリッカー ATK2500 ☆7
出現したのは、銀色の鎧を身に着けた、金髪碧眼の美女。
まるで星空をそのまま映しとったような刀身の剣を構えて、フィールドに降り立った。
「そ、それが、エースモンスター……」
「プロミスリッカーには、課金効果と、すさまじい発動条件の起動効果がある」
「えっ?」
「課金効果は、30000円を払うことで、このターン、直接攻撃できる。ただし、直接攻撃せずにモンスターを攻撃した場合、相手モンスターを破壊したら、続けてもう1度攻撃できる」
「なるほど、私のライフは削り切れませんが、それでも大ダメージですわね」
「起動効果だけど……今から見せてあげる」
「!」
「ステラレリック・プロミスリッカーの効果コストで、墓地の、ステラレリックカードを13種類。デッキに戻す」
「はぁ!? え、13種類!?」
「私が使った魔法罠カードは全て、ステラレリックカードとしても扱われる。よって……」
チャイルド。シスター。ガーディアン。プリースト。ナイト。キング。スピリット。
忘れられた讃美歌。星々の揺りかご。王錫のレプリカ。三重星の守り。運命の逆光。王の憤慨。
「13種類。1枚ずつ。デッキに戻す」
「一体、何が……」
「プロミスリッカーの攻撃力は、倍になる」
ステラレリック・プロミスリッカー ATK2500→5000
「こ、攻撃力5000」
「バトル。ステラレリック・プロミスリッカーで、ゴールドレス・ツヴァイを攻撃!」
「……ふっ、ふふふっ、アハハハハハハッ! 残念ですわねぇ。罠カード『ゴールドレス・バンクラプト』を発動! 5万円を借金して、ツヴァイの攻撃力を倍に……」
プロミスリッカーが剣を構えて、ツヴァイに切りかかる。
黄金のドレスの美女は、袈裟斬りにされて、そのまま散っていった。
麗奈 借金額205000→255000
麗奈 LP3800→1500
「なっ!?」
「プロミスリッカーの起動効果。2つ目。相手モンスターを攻撃する場合、相手はダメージステップ終了時まで、発動したカードが無効になる」
「なら、攻撃前に発動していれば……」
「そう。だから、召喚してすぐに攻撃宣言を行った」
「こ、小賢しいですわ」
「私はターンエンド」
「私のターン。ドロー! フフッ、そんな強い効果。どうでもいいことですわ」
麗奈はプロミスリッカーを見る。
ステラレリック・プロミスリッカー ATK5000
「……そ、その起動効果。いつまでですの?」
「ずっと。永続。フィールドを離れるまで」
「……わ、私はモンスターをセット」
「……それから。あと2つある」
「ま、まだ2つも?」
「端的に言えば、『守備貫通』と『完全耐性』」
麗奈の血の気が引いた。
「……う、嘘ですわ」
「嘘をつく意味がない」
麗奈は膝を震わせた。
「て、提案がありますわ」
「何?」
「か、勝ちは、まだ、譲っても構いません。ただ、そのモンスターの、課金効果を使ってくれません?」
「何故? 無課金で勝てば、特典も多い。さすがにこんなデッキ。何度も使って勝てるほど甘くはないとわかってる。このデュエル。このデュエルだけが、『無改造の無課金デッキ』での勝利になるとわかり切ってる。何故、提案を受ける必要がある?」
「し、知りませんの? 無課金デッキに負けたら、お仕置きが厳しくなりますわ。そ、そんな無慈悲なことが、許されると思ってますの?」
「……関係ない」
「ぐっ……えっ?」
デュエルディスクのターンランプが、麗奈から消えた。
哀遊のディスクで点滅し始める。
「使えるカードはなかったみたい」
「ま、待って……」
「私のターン。ドロー。バトル。ステラレリック・プロミスリッカーで、セットモンスターを攻撃」
セットモンスターは、ゴールドレス・コーチ。
守備力は、2000。
「い、嫌ですわ。あああああああああああああああああああああああああああああああっ!」
麗奈 LP1500→0
『デュエルが決着。勝者。哀遊選手です。敗者は麗奈選手。借金額255000円に加えて、完全無課金敗北によりペナルティが加算されます』
「い、嫌ですわ!」
麗奈は勢いよく、ステージから走り出した。
だが、光里がすぐに彼女に接近して、捕縛する。
「麗奈様。楽しい楽しいお仕置きが待っていますよ」
「は、放しなさい! こ、こんなことが、こんなことが!」
「フフフッ。まぁ、そんなところがあなたの可愛らしい部分でもありますが、さて、準備しましょう。観客席の出資者たちも、待ちきれないご様子です」
光里が指を鳴らすと、他にも黒スーツの美少女が何人か出てきて、麗奈の服を脱がしていく。
「や、やめなさい!」
止めようとする麗奈だが、服を脱がすことに関してもプロなのか、あっという間に裸になる。
紛れもなく、スタイルの良い美少女。
スポットライトを浴びるその肢体は、紛れもなく、商品価値が高い。
「……」
あまりの手際の良さに、哀遊も茫然としている。
「さて、主役の登場です」
光里がそういうと、ステージ中央が開いて、何かの板が出てきた。
その中央では、太くて長いバイブ……直径5センチ。挿入部25センチの棒が、真上に向かって伸びている。
「ま、まさかそれで……」
「ええ、もちろん」
いつの間にか、麗奈の腕は、背中側に回され、革の枷で固定されている。
黒スーツの美少女たちが、麗奈を無理やり移動させて、バイブの上に股が来るように立たせた。
「ぐっ……」
「では、お仕置き。スタート♪」
光里が朗らかに言うと、バイブの下の棒が伸びて、挿入部がせりあがってくる。
「こ、こんなの入りませんわ。や、やめっ」
「実は入るんですよ。フフッ、楽しんでください」
バイブがどんどん上がってきて、先端が、股間に触れる。
「んっ……」
当然止まらず、まだまだ上がっていく。
「あっ、あっ♡」
ズブズブと上がっていき……先端がポルチオに到達したのか、一際、体がびくっと震える。
バイブはまだ止まらない。
つま先だけで立って、バイブが入るのを逃れようとするが……ついに、つま先が床から離れた。
「あっ、ああっ、い……」
全体重を子宮で支えるような体勢になり、全身を強張らせて耐えている。
「ではバイブレーションも起動しますね」
ヴィヴィヴィヴィヴィヴィヴィヴィヴィヴィヴィイヴィ!
「ああああああああああああああああああああああああああっ!」
少し離れた哀遊からもはっきりわかるほどの強振動。
だが、そのバイブに全体重がかかる以上、逃れることは絶対にできない。
「い、いぐいぐ、や、やめっ、はぁ、はぁ♡」
「いいですよ。良い顔ですよ麗奈さん。我慢しなくていいので絶頂してください」
「だ、誰がっ、あああっ!」
体がガクガクっと震える。
明らかにイったが、それでも、強振動は止まらない。
「さて、まだまだこのステージは使いますから、いつまでも麗奈さんを置いておくわけにはいきません」
光里はそう言いながら、指を鳴らす。
別のスタッフが、台車を押して入ってきた。
「なっ、あっ……」
バイブが備わった頑丈な板だが、側面には窪みがあり、持ち上げやすいようになっている。
何人かで、ゆっくり、板を持ち上げる。
「う、動かさないで、ぐ、グリグリされ……」
浮いた板の下に、台車が入って……ガンッ!!
「あがっ、いっぐううううううっ!」
勢いよく台車に板が落とされて、子宮が潰れるような衝撃が、股から脳に貫通した。
「フフフッ、このまま『長時間インテリアルーム』に移動しましょうか」
「ちょ、長時間って……」
「このまま三時間ですから」
「そ、そんなっ、ああ、いぐ、いぎまずわああああっ!」
「何度でも言ってください。だからこそお仕置きなのですから」
光里が合図を出すと、別のスタッフが台車を押し始めた。
「ぎっ、う、動くと、バイブが、あああ……」
「早く動かしましょうか? ゆっくり動かしましょうか? ガタガタの道も用意していますよ? エレベーターではなく階段を使うという方法もありますね。あ、ちゃんと支えておくので怪我の心配はありませんよ♪」
「や、やめて、やめて!」
「安心してください。全部やってあげますし、モニタールームで今も生中継です。あ、ここの関係者とバレると少々面倒になる人もいらっしゃいますし、あなたもバイブに集中したいでしょう。目隠ししてあげますね」
「いや、いやあああああああああああっ!」
台車を動かしながらも、麗奈の目に目隠しが付けられる。
頭を振る抵抗は何の意味もなさず、そのまま、ステージから消えていった。
「こ、こんなことが……」
「フフッ、これがお仕置きです。人間にはできないレベルの快楽で、望まぬ絶頂を繰り返す。これがこのゲームの敗者です」
光里はニコニコしながら、哀遊に近づく。
「そして勝者には、報酬を」
光里は1枚のプラスチックのカードを見せてきた。
「デュエルディスクで読み込んでください」
「……」
哀遊がディスクにカードを読み込むと、『100万円ゲット!』と表示された。
「……このデュエル1回だけで、100万円?」
「フフッ、このお金は、このホテルの『プレイヤーフロア』専用の電子マネーです。まだノーマルランクの方には金銭での報酬のみとなっています」
光里はポケットから、1枚包装のクッキーを取り出した。
「カードや飲食をはじめ、様々なものがプレイヤーフロアにそろっていますよ。売店で10円で売っているクッキーです。プレゼントですよ」
「……」
受け取って、食べてみる。
「……美味しい」
「そうでしょう」
「こんなクッキー、食べたことがない」
「フフッ、10円のクッキーでこの感動。もっと美味しいものも売ってますよ」
「……」
「さて……これからどうしますか? 一度、家に帰りますか?」
「えっ?」
哀遊の口から珍しく、とぼけた声が漏れた。
「このホテルにも哀遊様のお部屋は用意していますが、別に帰っていただいても構いませんよ?」
「……車の中で確認したタブレットでは、確かに帰れるって書いてたけど、本当なの?」
「もちろんです。定期的なデュエルノルマはありますが、我々は、プレイヤーの皆様の『日常』まで手出ししません。このまま、次に呼ぶまで帰るもよし、ホテルの中を散策するのもよし……といっても、ノーマルランクですと大したものはありませんが」
「……帰る」
「畏まりました。車を用意しますので、このまま地下駐車場に行きましょう」
表情を全く変えない。
光里は、ずっと、ニコニコしたまま。
「……麗奈さんって、どうなるの?」
「どうなるとは?」
「いや、何十万も借金が……」
「デュエル中の借金は、勝てば帳消し、負ければ、それにふさわしいお仕置きでなくなります。負けた場合、お仕置きが終わるまで口座が凍結されるため、どれだけお金を持っていても免れることはできません」
「……」
「3時間のお仕置きが終わり次第、解放します」
「……そう」
「フフッ、それでは、移動しましょうか。まだまだこのステージを使うといったのは、本当なので」
光里が先導し、エレベーターに乗って、そのまま地下駐車場に入る。
「デュエルディスクはこちらでお預かりしますね」
「……」
デュエルディスクを光里に渡す。
傍でリムジンが停車し、扉が開いた。
哀遊は中に入って座る。
「……ねぇ」
「なんでしょう」
「プレイヤーの情報って、どれくらいわかるの?」
「……フフッ、それは、『今、表社会で、ゲームによって、どんな人が成功者になったのか』という意味ですね。ノーマルランクでは大した情報はアクセスできませんが、『無課金デッキ勝利』の特典で、ある程度見えるでしょう」
タブレットを取り出して、いくつか操作をする光里。
「どうぞ」
わたしてきたタブレットを見て、確認する。
「料理人、科学者、アスリート、小説家、ニュースキャスター……プロデュエリスト。幅広いところに、成功者がいる」
「ええ、ゲーム運営のバックアップで、皆さん。ご活躍されています」
「……」
「哀遊さんが見ている方は、全員が現役プレイヤーです。そして……現役プレイヤーの中で、負けなしの人はいません。皆、どこかのタイミングで、あの厳しいお仕置きを受けています」
「……そう」
タブレットを光里に返した。
「姉さんの情報はなかった」
「フフッ、そうでしょうね」
「……あなたたちは、今の姉さんの情報を持ってるの?」
「それはまだ教えられません。ただ、私から保証できるのは……我々は参加者のモチベーションを、いつでも細かく分析していますよ」
「……今は、それで構わない」
尊厳を払って手に入れた、絶大なスタートダッシュ。
それは、きっと大きなもののはず。
もう、『純正ステラレリック』で、この先勝つことはかなわないだろう。
買い切りデッキや月額デッキは多種多様であり、シングルカードもかなり幅広い。
だが、フリープランは、ステラレリックで固定だ。
調べれば、誰だって、いつでもわかる。
エースに関しては、プレイヤー目線で、持ち主である哀遊と、デュエルした麗奈しかわからないとして。
他の39枚すべてが露見した状態で勝てるほど、デュエルは甘くない。
ただ、それでも……。
尊厳を払ってまで手に入れた、自分だけの力。
条件さえ整えば、圧倒的な力を発揮するモンスター。
(長い付き合いになりそうね)
そんなことを思いながら、哀遊は、これからの戦いに思いを馳せた。