「よし、片付け終わった……」
朝起きてぶちまけてしまった精液を全部片づけた。
棚の上にたくさんタオルが置いてあったので、それでできるだけ精液を拭いて、証拠を隠滅した。
よく考えたらここはそういう宿屋なのだから、ほっといてもたぶん宿の人が片付けてくれるはずなんだけど……。
なんとなく落ち着かないので、というかアンナに見られたらいろいろとまずいので片付けた。
……すごい量が出てしまったな……
というか、まだ悶々としている。もう、一晩中、気絶するまでやったはずなのに、さっきも一回抜いたはずなのに。
いや、そろそろ切り替えなきゃ。
とりあえず部屋から出て、アンナを見つけないと。
×
「あっ」
「あ、メルア」
「ら、ランジュ……」
部屋を出たところですぐにランジュと鉢合わせてしまった。
彼女にしてはかなりの軽装だった。いつも着ている白を基調とした衣装ではなく、キャミソールの下着だけを身に着けていた。
思わずドキドキしてしまった。
まずい。このままだと、また……。
いやっ、だめだ。僕の相手はアンナだけ。そう決めたのに、無差別にパーティの別の仲間にまで手を出すなんて、あっちゃだめだ。
目をぎゅっとつむって、彼女の官能的な姿から目を背けた。
「どうしたの?」
「そっ、その……おはよう」
「うん、おはよう、メルア」
「う、うん……」
すると、すぐに向こうへ歩いて行ってしまう。
ここは二階だから、階段の方に向かっているのだろう。僕もそれについて行った。
「っ!」
今度は、うすい布地の向こうにある、彼女の白く細い腰と、そこからきれいな線を描いて、たたずんでいるきれいなおしりがあった。
どくん、と心臓が波打つ。
ぐっ、と体の中心が熱くなる感じがする。
ダメだ駄目だ。
必死に目を背けた。
ランジュの相手は僕じゃないんだ……。みんなで決めたことなんだ。
僕を選んでくれたアンナにも失礼だ……。
ていうか、いくらそういう宿屋とはいえ、僕相手に無防備すぎじゃないだろうか……。ランジュから見たら僕なんて子供みたいなものなんだろうけど、僕にもそういう本能があるのは彼女も知っているはずだ。
「あの、ランジュ……」
「何?」
そっけない返事だった。ランジュはいつもこんな感じだ。
そんなに情熱的な格好をしているように見えるのに、彼女にそんな意識は全くない。それは、彼女のその態度から感じられる。
顔もこっちに向けない。二ヶ月一緒に旅をしているはずなんだけれど、ずっとこんな調子だ。
でも、その長くて大きな耳だけはこっちを向こうとしている。
話は聞こうとしてくれているみたいだ。
「あの、ライゼンは……?」
ぴくりとランジュの耳が動いた。
ライゼンはランジュのことが好きなのか、ずっと一緒にいるはず。
ライゼンとランジュが一緒の部屋になったのは当然の成り行きだったし、ライゼンもものすごくうれしそうにしてた。
ライゼンは僕よりも年上で、ものすごく強いけど、ドワーフの血が入ってるからか、背は結構小さい。だからライゼンとランジュが一緒に並ぶと、まるで親子に見えるのだ。
だから、一緒に部屋から出てくる、というかライゼンが付いて行くと思っていたんだけれど。
「………」
ランジュが答えない。
少し冷汗が走った。
何か、あったのだろうか。
「だ、大丈夫だった?」
「大丈夫じゃないよ」
階段を降りかけたところで、ランジュが素早くこっちを向いた。
「えっ……」
ランジュが、見たことのない顔をしていた。
その眉が少し危険な方向に曲がっている。
いつも感情を全くと言っていいほど見せないランジュにしては、珍しすぎることだった。
「性欲強すぎるよ、あの戦士」
「えっ……」
そうだろうとは思っていたから、びっくりしたのはライゼンの性欲が強いということじゃない。
問題は、ランジュがライゼンのことを『戦士』と呼んだことだった。
明らかにその言い方には軽蔑の意味合いが籠っていた。
ランジュがライゼンのことが好きかどうかはわからないけど、それでもそんなに嫌う仲じゃなかったはず……。
「な、何かあったの……?」
「…………来て」
「えっ……うん」
ランジュが階段を下りるのについて行って、僕らは一階に来た。
もう時刻は昼下がり……。
一階には、かなりの人がいた。
「っ…………」
僕は思わず目を伏せた。
刺激が強すぎた。
かなり広い一階、そこはテーブルと椅子が並ぶ食事の場所だ。
でも、それだけじゃない。
多くの人々が、そこでは皆、肌を大きく露出している。
おなかの下が熱くなってくる……。
胸を支える下着とショーツしか着ていない長い髪の官能的な体型をしている女性、まだ成人(この国では十六歳)したばかりで、下着としてのキャミソールしか身にまとっていない金髪の女の子…………
それだけならまだいい。問題は……
「ッ、あっ、はあっ、もっと……♡」
ぱんっ、ぱんっ、ぱんっ、ぱんっ
「はあっ、いいっ、もっと、ふか、くっ……!」
一階の端の方で、もう熱い絡み合いをしている大人の男女がいるということだった。
「っ…………!」
もう限界だった。
さっき濃いのを一発出したはずの僕の肉棒は、もうズボンを突き破らんばかりに巨大化していた。
階段を降りてすぐのところで、僕は立ち尽くした。
「……メルア?」
ランジュが振り返ってくる。
「ッ……ごめっ……」
「…………」
ああっ……ランジュがこっちをじっと見てくる。
彼女の目を直視できない。でも、彼女の視線が……ぼくの下腹部に向けられていることは、見ずとも分かった。
びくびく、とズボンの下で痙攣しているそれが、布とこすれてさらに刺激されて、もう止まらなかった。
「………メルア」
「ッ! ごめっ……!」
体が勝手に震えてしまう。
「…………とりあえず座って」
「え…………?」
顔を上げると、ランジュがそこで椅子を引いて、指をさしていた。
「座って。落ち着いてよ」
「っ、うん…………」
言われたとおりに、僕はその座席に腰を下ろした。
その対面に、ランジュも座る。
その間、矯正と、肉のぶつかり合う声が高らかに響いていた。
「はあっ、あっ、あぐっ、ッ!!」
もう声も出ないほどに高まっている女の人。
男の人の快楽がひとしおではないのだろう。声を漏らし、しかしそのまま腰を振り続けている。
「はあっ、いくぞっ、いくぞっ……!」
「ッ、あッッ、ッッッ~~~~~~♡♡♡」
僕は目をつむった。
最後に達する声が、一階のフロア中に響き渡った。
「あああ――――――――ッッ―――――――♡♡♡」
「ッがあっ――――――!!」
僕はぎゅっとひざの上で手を握った。
何も言えなかった。
頭がぼーっとした。
それでも、おなかの上の肉棒は、その音を聞いたせいで、ギシギシと痛いくらいに震えていた。
「ら、ランジュっ……!」
「店員さん、お昼のおまかせ料理二つ」
「はーい、しばらくお待ちください」
ぜ、全然動じてない……!
気にするどころか、ただの雑音としているかのように、店員さんに注文までしていた。
女の店員さんの方も慣れた調子で、下着同然のひらひらのついた服を着て仕事をしていた。
どうしても、慣れない。
というか、昨日、僕はここに来たばかり。
それ以前にもその存在は知っていた。
ここは、そういう宿屋なのだ。
冒険者用の、慰安宿…………。
冒険と言う、常に命の危険と言うスリルと隣り合わせの行為。
その中で、常に体を動かし、常に高いストレスと共に冒険する冒険者たち。
そんな中で、どうしたって、いや、当たり前のこととして……人間の生殖本能が、強く活性化するのだ。
そんな本能が、一人で満たせるなら苦労はしない。
冒険をしたことのない人にとっては、その気持ちが分からない。
『死』という危険を前にすると、人間の本能は、強くうなり声をたてるものなのだ。
それは、たった一人で、簡単に満たせるものでは決してない。
僕も、冒険者になってから。
その気持ちが、嫌と言うほどに分かってしまった。
今、自分のいきり立っている肉棒が、それを証明している。
冒険者用の慰安宿、多くの場合はギルドによって運営されているそれは、その空間の中でのみ、すべての本能をさらけ出して過ごせることができるように、そこから出た時に一つの憂いもなく冒険者に戻ることができるように……あらゆることが自由に、作られているのだった。
「あのっ……ランジュッ……」
自分の声が上ずっているのを感じる。
自分たちの生殖行為どころか、他人の生殖行為なんて、この宿屋に来てから初めて見た。
それで正常で居れる人間なんているのだろうか。少なくとも僕は無理だ。
「ん、どうしたの?」
対面に座るランジュは、本当に全く、何の動揺もない。
「なんでそんなに平気なの……?」
「慣れてるからね」
「このパーティに入る前も、来たことあるの……?」
すると、ランジュは腕組をした。
彼女の僕の手に納まるくらいのサイズのおっぱいが、キャミソールの中で、むにゅっと形を変えた。
っ……それですら、今の僕には過ぎた刺激だった。
僕は目をぎゅっとつむり、彼女の返答を待った。
「うーん、来たことはあるよ。パーティとして来たのは結構前だけど、それでもほかの宿屋が開いてない時にここを使ったことはたくさんあるよ」
「そ、そうなんだ……一人、で……?」
「言ったでしょ。エルフは人間みたいに万年発情期じゃないからね……」
「まんねん…………」
ランジュの口からそんな言葉が出るのがびっくりだった。
「今もメルア、発情してるでしょ」
「っ………そんあっ、つもりは……」
噛んでしまった……。
「発情ってそんなものだよ。意識と関係ない生理現象だからね。こんなお店まで作らなきゃ対処できないって、人間ってやっぱり相当だね……そりゃ数がこんなに多くなるよ。それに避妊までしないといけないって言うんだから……エルフが数増やすのに苦労してるってのに」
はあっ、とため息をついて、ランジュは机に頬杖をついた。
「ど、どうしよう……」
「ん、なにが?」
「この先……全然、収まらなくてっ…………」
「ああ………」
ランジュが呆れたような顔をしてくる。
「十六だよ……。人間でも種馬にぴったりな時期だよ。なんでこの国の人はそうなんだろうね……どの年よりも性欲強いのに、子供みたいに育てるんだか……」
「わ、わかんないよ、そんなの……。昨日、あんなにアンナと、その、したのにっ……ぜんぜんっ、収まらなくって…………今日で全部一回すっきりしようって、この先しばらく大丈夫なようにしようって言ったのに…………」
一昨日、この宿に来るという決断をしたときに、皆で決めたのに。
この先、みんなちゃんと冒険ができるように、って……。
なのに、こんな調子じゃ、いつちゃんとできるようになるか……。
ランジュのため息がまた聞こえた。
「収まるわけないでしょそんなの。ほんとに、人間はさ…………女の味知っちゃったオスはもう戻れないよ……しかもそんなに早くに食べちゃったらね……」
呆れた風に、ランジュがまたため息をついた。
人間の性欲って、そんなに強いものなのだろうか。今まで、そんなものとは全く縁がなかったのに。十六年間、ずっと大丈夫だったのに。
なんで、冒険を始めたら、一回やっちゃったら、こんなになっちゃうんだろう。
「わたしは言い出しっぺだけどね、でもいずれこうなるはずだったんだよ。だからこれから向き合ってかなきゃ。あ、来た」
「料理長のお昼のお任せメニューでーす、ごゆっくりどうぞ!」
あのひらひらした下着の服装の店員さんが、二人分の料理を持ってきて、それを机に乗せてくれた。
「あっ、ありがとうございます……」
「おー、おいしそうだね。いただきまーす」
ランジュは何の戸惑いもなく、料理に手を付け始めた。
運ばれてきたのはオムレツだった。赤いケチャップがかけられたふんわりとした黄色い卵からは、とてもいい匂いがする。そのそばに添えられた新鮮なキャベツもとてもおいしそうだった。
……ただし、こんな状況じゃなければ。
食事が喉を通るとは思えなかった。
「んー、おいし」
目の前のランジュはおいしそうに頬をほころばせている。
なんでこんな状況で食べられるんだろう……。
一階のフロアも、人間のみだらなにおいでいっぱいだった。
こんな状況で何かを食べるなんて、とてもじゃないけどできそうになかった。
ぐぎゅるるる……
「あ……」
おなかが鳴った。
「ほら、食べなきゃ。昨日の夜、結構熱かったみたいだね。たくさん運動しておなか空いてるでしょ」
「ランジュ、なんで知って……」
「歩き方見たらわかるよ。腰筋肉痛でしょ」
「っ…………いただきます」
僕はオムレツに手を付けた。
とってもおいしかった。
でも人としての何かが失われて行っているような感じがした……。
何せ、周りでは相変わらずみだらな行為でいっぱいだったんだから。
どうやらみんな、なぜか……いや、理由はわかってるんだけども、昼に起きてくるらしく、食べ始めてすぐにフロアは人でいっぱいになった……嬌声でもいっぱいになった。
なんでみんなこんなにこだわりがないんだろうか…………。
でもそういう僕も、机の下では今にも暴れだしそうなものがいきり立っている。
何も言えなかった……。
「ご、ごちそうさまでした」
「ふう、おいしかったね」
「うん……」
くやしいくらいに、本当においしかった。
満たしてくれるのは性欲だけじゃないらしい。けどももうっちょっと、なんというか……少しで良いから分離してほしかった。性と食を。
周りの空間はもう目も当てられないほどハートでいっぱいだった。
一緒にくっついてご飯を食べているカップルもいれば……男の上に乗って、一緒にご飯を食べている女の人もいた……何をしているかは一目瞭然だった。
そんな行為を見るたびに、もうただでさえ、痛いくらいに限界な僕の下半身は、もうはち切れそうなくらいになっていた。
「………大丈夫?」
「ッ……だいじょうぶじゃ、ない……」
「……抜いてあげようか?」
「っ………!」
僕は思わずランジュの顔を見た。
でもその顔は、本当に心配するような顔だった。
ランジュの方にいやらしい気持ちは本当にないらしく、半ば慈しむかのような顔だった。
「いやっ、僕は……っ!」
がたっ、と席を立った。
僕にはアンナがいる……。そんなことはできない!
もちろんランジュも良い人だし、嫌いなわけじゃないけど……みんなで決めたことだ。
でも僕は気が付いていなかった。
頭がいっぱいいっぱいなっていたからかもしれない。
それに、こんな異常な状況が感覚を麻痺させていたのかもしれない。
普通、自分の中心がこんなにいきり立っていたのならば、いきなり立ち上がったりはしないだろう。ふつうは慎重になって、ゆっくり動くはずなのだ。
でもこんな状況で、それを気にする人はいなかった。僕もそうなってしまっていた。
だから、いきなり立ち上がったことで、僕のさきっぽが机に引っかかることは、全く予期していないことだった。
「あっ――――――――」
やばっ、こんなところで――――
後悔は一瞬、すぐに耐えがたいほどの感覚の波が背筋を襲い、脳を埋め尽くした。
ぐるんっ
目が一番上を向いた。
頭が真っ白になった。
限界までいきり立っていたそれは、もう限界も限界で、はやく刺激をくれと叫んでいたそれは、最後の一押しで、すべては決壊した。
「ッッ~~~~~~~~~~♡♡♡」
びゅるるるるるるるるる――――――――ぅぅっ
ガクガクガクッ
腰が震えた。
体全身の筋肉がピンと張った。
意識が一瞬飛んだ。
僕は目の前の仲間に向けて、勢いよく射精していた。
びゅるるっ! どくどくっ! びゅぶっ……っ!
「はあっ、はあっ――――」
一瞬、戻った視界で、僕は目の前の状況を垣間見た。
薄いズボンの布を貫通して発射された白い液体は、そのおかげで広範囲に散らばって、目の前の机をまんべんなく濡らしていた。
そして、その奥に座るランジュ。
彼女は片目をつむり、もう片方の目を細めて、今の状況を処理しようと動揺している様子だった。
そんな中で、僕は脚からは力が抜けた。
僕は床に、崩れるように後ろへと倒れた。
×
「はっ!」
き、気絶してた……!?
まっ、まずい、ぼっ、僕は……!?
あろうことか、ランジュに向かって射精して……!?
「おおっ、起きたぞ!!」
「えっ……?」
お、男の人の声……。
たぶんその声の主が、僕の顔を覗き込んでくる。
「おい兄ちゃん、大丈夫か!?」
豪快に伸びっぱなしの髭を生やした男の人だった。
「すっ、すみませんっ!」
思わず飛ぶように置きあがった。
見回すと、一回のフロアの端の方だった。
「僕、一体……ら、ランジュは……」
「ここだよ」
「うわっ!?」
す、すぐ隣だった。びっくりした。
ていうか、僕はとんでもないことを……!
全身から血の気が引く。謝らなくちゃ。
「ごっ、ごめんランジュ、大丈夫!? いっ、いきなりあんなことしちゃって」
「いいって。びっくりしたけど」
ランジュは僕を手で制して、ふるふると首を横に振った。
よく見ると、彼女の顔には、かかっているはずの精液は一つもなかった。
もう拭いた後なのだろう。
すると、ランジュは自身のキャミソールの胸の部分をつまんで、すんすんと匂いを嗅いで見せた。
「んー……匂いこびりついちゃってるな。あとで洗うか」
「ご、ごめん………!」
本当にとんでもないことをしてしまった……!
しかも公衆の面前で、自分の仲間に、射精するなんて……!
ばしんっ、と背中に衝撃が走った。
「うわっ!?」
「がっはっは! 兄ちゃんやるじゃねえか! かわいい顔してツレの女にあんなことするなんてよお!?」
振り返ると、さっきの豪快な男が豪快に背をそらして豪快に笑っていた。
「えっ、僕はわざとじゃ……」
ていうか、この人上裸だった。
いや、ていうかこの人……!?
さっき、端っこの方で思いっきり、女の人とやってた……!?
「いやあ、尊敬するぜ。そんな若い年でこんなやりようとは……将来が楽しみだ!」
「だ、だから、ぼくは……」
「ちょっと、そこら辺にしときなさい、ルギィ」
あっ……別の女の人が止めに来た。
あ、さっき、この人と一緒に……やってた人……。
って、当然のように胸を隠してない……!
反射的に目を背けてしまった。
すごい美人な人だった。
そして冒険者なんだろう。焼けた肌で、背が高くて、とても引きしまった体だった。
でも、こんなにきれいなのに、すごい性欲が……。
「あら、ウブね、この子。あんなことしてたのに」
くいっ、とその人が眉をつり上げる。
「えっ、僕は……」
「だろぉ!? サライア!? 将来有望じゃないか、しかも無自覚とは!」
すると、ノリノリの男の人に対して、女の人はため息をついた。
「はあ……いいから、もう。ていうかそろそろ行くわよ。もう三日もずっと籠ってるじゃない。そろそろ出ないと人間にもどれなくなるわよ!」
衝撃が走った。
えっ……!? 三日……!?
みっ、三日もずっと……してたってこと!?
「おう! そうかぁ、もう三日か! 行くか! はっはっは!」
ルギィ、と呼ばれた豪快な男の人は、サライアって呼ばれた女の人が差し出した手を取って、立ち上がった。
「じゃあな、兄ちゃん! またどこかであったらな! がっはっはっはっは!」
と、そのまま歩いて行ってしまった。
す、すっごい人だった……。ていうかお礼を言う暇もなかった。
いい人……ではあるんだろうな。でもなんでこんないい人なのに……。
「メルア」
「あっ……ご、ごめんっ」
「いいから。びっくりしたけど嫌とかじゃないから。いや、嫌だったけど、怒ってないから。早く着替えてきた方がいいよ。ズボンがすごいことになってる」
えっ……。
ズボンを見下ろしてみる。
うわっ!
すごいことになってた。おもらししたみたいに、べっとりと、染みが張り付いていた。
ていうか、匂いがすごかった。
そもそも匂いのすごい空間だったから気が付かなかったけど、たぶん普通のところでこうなってたらひどい匂いだったと思う。
ていうかこんなところじゃなかったら僕は今頃牢屋行きだろう。
この空間のせいで助かったんだか悪かったんだか。
「部屋にそれもどしといて。あとで生活魔法で洗ってあげるから。アンナを探してるんでしょ?」
「あっ、うん」
「たぶん教会にいるから」
「あ、ありがとう……ランジュはどうするの?」
「ああ……それは……」
ランジュが目をそらして、憂鬱そうな顔をした。
「ど、どうしたの?」
「あのサル……じゃなくてライゼンの後始末があるから」
「さ、サル……!?」
ランジュがそんな呼び方をするなんて……。
思いもよらなかった。
さっき戦士って他人行儀な呼び方をしていたし、やっぱりなにかあったのだろうか。
「ど、どうしたの……!?」
「いや、ほんとに気にしないで。わたしの気持ちをわかりたいなら……あのサルに、じゃないライゼンに一晩中しがみつかれて朝まで腰振られてみて。嫌でしょ? じゃあ聞かないで」
「えっ!? 一晩中……!?」
「いいから。そもそもここに来る提案したのわたしだし。文句言うつもりもないから。ほら、行って来て」
「うっ、うん……」
とりあえず、その場から離れて、僕は二階に向かった。
他にもいろんな人が降りてくるところだったから、目を背けながら階段を上らなきゃいけなかった……すれ違う女のたちみんな裸同然の姿をしていた。匂いもすごかった。みんな、昨夜、ずっと……してたんだろう。
僕もまったく同族だったから、なにも言えないけど……。
また、せっかく収まってくれたものが大きくならないうちに、階段を上って、僕は自分の部屋に戻った。
部屋の様子は変わっていなかった。
そして、タンスに手をかけて、自分のすごくなってしまったズボンを脱いで、着替える。
それにしても、ライゼン……あのライゼンが、一体何をしたんだろう。
すごく強いけど優しくて、ランジュが大好きだったライゼンが……。
ランジュが嫌がるぐらいに……それに、一晩中も……?
僕でも……あんまり思い出したくないけど、途中で気絶したのに……。
いや……今、考えるのはやめよう。
ランジュも、ああ言っていたし。彼女が何かを言っているときは、それに従ったほうが良い。
僕は頭を横に振った。
今は、アンナだ。
大好きなアンナに、会いに行かなきゃ。
そして、昨晩のことを、ちゃんと言わなきゃ。