ギルモンと並んで歩く。
彼岸花の道が蛇行する森の中を。
足取りは重い。
さっきまでの平和な課外授業とは違いすぎる。
汗がこめかみを伝うのに寒気が止まらない。
ふと横を見れば、炎を纏った蜥蜴は無邪気に首を傾げる。その仕草があまりにも自然で違和感がないことに愕然とする。
(こんな生き物がいる時点で自然ではないのに)内心で毒づく俺の沈黙を察したかのように、彼がぽつりと呟いた。
「あの石のやつ……ケモノガミだよ」
「ケモノガミ?」
思わず足を止めてしまった。
「君達みたいなのが?」
「そうだと思うよ?僕もケモノガミ!僕はギルモンだよ!」
むっと膨れるギルモンを見て少し救われる。この得体の知れない生物だけが今頼れる存在だという事実が滑稽だった。
「じゃあさっきの石像は……」
「あれもケモノガミで、ゴツモンらしい?」
「ゴツモン?」
「うん、詳しい事は分からないけど」
ギルモンは空を見上げながら続ける。
「ここはね、そういうケモノガミがいっぱいいる場所なんだよ」
彼の目がほんの少し細くなった。
「人間を見つけたらすぐに襲ってくるの」
俺は息を飲んだ。背筋に冷たいものが走る。それってつまり……
「殺されるということか」
「食べられるかも?」
あっけらかんとした口調に胃袋が縮む思いだった。先程の石塊が脳裏によみがえる。あの鋭い牙のような欠片が喉元を貫く感触までリアルに想像できた。
「……なぜだ」
自分でも訳のわからない言葉が漏れた。
「どうして人間を狙うんだ?」
問い詰めるつもりはない。ただ混乱と恐怖から出た疑問だった。
ギルモンは立ち止まり、こちらをじっと見た。
その大きな瞳には深い水底のような暗がりが見える。
そして彼は言った。
「分からない。けれど、僕は君を待っていた。それだけしか分からなくて」
そう落ち込んだ様子から、ギルモンは続ける。
そのとき地面が揺れた。
轟音と共に近くの茂みが押し倒され、現れたのは巨岩の塊だった。
いや、よく見れば岩石が組み合わさった異形の巨人だ。
表面には不気味な笑顔が刻まれており、丸太のような腕を振り回す度に地面が爆ぜる。
(こいつも……ケモノガミなのか?)
腰が抜けて動けない俺の耳に女の叫び声が届いた。
「くそっ……なんで私がこんな目に!」
青黒い長い髪を乱し、制服姿の少女が駆けてくる。
肩に抱えたのは……
「犬なのかっ?」
白い犬もケモノガミなのか。
そのふくよかなボディが苦しげに上下している。
彼女はゴーレモンと呼ばれるであろう巨岩に追い立てられていた。
「やばいぞっギルモン!あの人を助けに行かないとっ!!」
少女の足元に石つぶてが飛来しスカートの裾が裂けた。
彼女の瞳が涙に潤む──次の瞬間。
「このままじゃっ」
恐怖で凍りつく俺の脇腹を何かが激しく押す。
「ギルモン」
「逃げるのっ、それとも」
その言葉に対して、俺は。
「・・・怖いっけれど!このまま、何もしないよりはずっと!」
俺は既に走り出していた。
次に、少女に向かって、走り出す。
「あなたたちっ!」
女子高生が振り返る。
「早く逃げてっ!私は大丈夫だからっ!!」
強がっているが声は震えている。
その腕の中で息をする犬――ぐったりとしている。
「だめだよっ君を置いていくわけにはいかないっ!!」
ケモノガミの巨大な拳が振り下ろされる寸前、ギルモンが前に躍り出た。
炎が放たれる
「ギャオオォッ!」
衝撃で巨体が傾ぎ隙が生まれた。
「今のうち!」
少女と犬を担いで俺は全力疾走する。
背後で追ってくる破壊音。
「ありがとうっ」
「今はっとにかく逃げないと」
そう言っていると、そのケモノガミがこちらに迫る。
ケモノガミが迫る攻撃。
それに対して、俺は守るように前に出る。
自分から死にに行くような行動だって分かっている。
それでも、後悔したくない。
その気持ちが一番始めに出ると共に。
「ギルモンっ進化!」
迫ったケモノガミを吹き飛ばした巨大な赤い影。
見つめると、そこには、ギルモンによく似た巨大な恐竜がいた。
「グラウモン!!」