突然、聞こえた叫び声に対して、困惑を隠せない俺達が見つめた先。
そこは、次々と木々を破壊しながら迫る何か。
「なんだっ、あれは」
木々の隙間から出てきたのは蛇。
巨大蛇の鱗は一枚一枚が金属板のように硬質で、黒紫の光沢を放っている。その表面を這う血管網は脈打ち、内部で沸騰する血液が透けて見える。鱗と鱗の隙間からは粘液が滲み出し、それが地面に垂れると酸のように土を溶かす。毒々しい瘴気が立ち上る様子は地獄の釜を思わせる。
蛇の瞳孔は縦長に裂けており、その奥には幾重にも連なる水晶体が蠢いている。獲物を見定める眼差しは科学装置のように冷徹で、温度差や電位のわずかな変化すら感知しているようだ。
口吻から伸びる牙は二列に並び、全て前方を向いている。
何よりも、恐ろしいのは、その蛇が1匹だけではないという事。次々と蛇が姿を現した事により、俺達は絶望的な状況となる。
そう考えている時。
蛇が口を開けて、俺を喰らおうとする。
その時。
『エキゾートフレイム!!』
グラウモンの口から炎が放たれると同時に空気が爆ぜた。高温の火球が炸裂し周囲の温度が一気に上昇する。鱗の表面が赤熱し焦げた匂いが立ち込める。
しかし──
蛇は身を翻し躱した。その巨体に見合わぬ俊敏さで炎を避けたのだ。代わりに近くの木々が炎上し黒煙が立ち上る。
「チッ……!」
舌打ちしながら次の行動を考える間もなく、別の方向から迫る影がある。
二体目……いや三体目だ。どうやら群れで狩りを行っているらしい。
グラウモンも必死に対応しようとするが数が多すぎる。一体を牽制すれば他の個体が死角から襲ってくるという厄介な連携を見せている。
氷室の分析が耳に飛び込んでくる。「待て……よく見ろ! 蛇の動きが妙だ」
確かに連中の動きには奇妙な統一感があった。別々に襲いかかっているようで実は精密なタイミングで動いている。
「そうだね。これは明らかに連携プレイだよ」
モニタモンが同意するように頷く。
「ただの野生動物じゃないよ。誰かが操っている」
ティアーユの顔から血の気が引いた。
「まさか……全部繋がっている?」
彼女の洞察に息を飲む。確かに各個体の動きには不自然な同期性があった。
「八岐大蛇……?」
ティアーユが震える声で呟く。
「神話に出てくる怪物がモデルなのかも」
その言葉に背筋が凍りつく。八つの頭を持つ神話上の怪物。もしそれが実在したらと考えただけで悪寒が走る。
「その中央には、ライオンなの、これは」
「・・・まさか」
あの時に出てきたレオモンが。
「だが、どんなに居場所が分かっても、このままじゃ」
死んでしまう。
まだ、死にたくない。
それと思い出したのは、この世界で味わった初めての快楽。
それを失いたくないと。
それに合わせるように、俺の腕が疼くと共に。
「死ねるかっ」
俺の叫びに合わせるように、グラウモンが咆哮する。
「えっ」「これは」
合わせて、グラウモンの身体がゆっくりと変化していく。
より巨大に。その両腕は巨大な刃が。この世界ではあり得ない鋼鉄の鎧を身に纏ったグラウモンが、そこにいた。
「メガログラウモン!」
そう、自身の名を叫んだ。