俺たち三人は村の出口で集まり、再び森へ足を踏み入れた。朝靄が立ち込める森は静謐だったが、それが不気味さを際立たせていた。
「やっぱりこうやって歩くと落ち着くな〜」
太田が周囲を見回しながら呑気に言った。彼の肩に停まっていたピヨモンも小さく鳴き声をあげる。
「遊びに来てるんじゃないわよ」
アヤノの声は氷のように冷たかった。刀の柄に添えた左手が微かに震えている。彼女の目の下には隈ができており、眠れていないのが明らかだった。
「だってさ、こうでもしないと緊張で押し潰されちゃいそうじゃない?」
太田の軽口にもアヤノは無反応だった。ただ前だけを見て歩を進める姿勢は機械的でさえある。
俺は二人の後ろを歩きながら考えていた。ムジナ──怠惰の象徴。彼女が何故人々を惹きつけるのか。本当にただの悪意なのか。それとも別の……
「ねえ」
太田が急に振り返った。その顔には珍しく真剣な表情が浮かんでいる。
「ムジナってさ……本当に悪いやつなのかな?」
アヤノがぴくりと肩を揺らすのが見えた。
「どういう意味?」
俺が問いかけると、太田は少し考えてから答えた。
「だってさ……『怠惰』って人間の本質じゃないか。働かないで寝て過ごせたら最高って感じかもしれない」
「何を言っているの。あいつが最初に会った事は覚えているの!」
その言葉に対して、俺は腕を組む。
「敵対するつもりがなかったんなら、最初にこっちを殺すつもりはないでしょ!」
アヤノは怒りながら、更に強く歩いて行った。
それに合わせる様に、俺と太田も追いかける。
「あの時はきっと油断していたんだと思うけどな〜」
太田はぼやきながら歩を速めた。彼の足音は枯れ葉を踏みしめる音を立てる。しかしアヤノは一切振り返らず森の奥へと進んでいく。
「あなたがそんな事だから!あいつの罠に引っかかったんじゃない」
苛立ちを隠せない声色でアヤノが吐き捨てる。彼女の髪が風になびく度、刀の鍔が陽光を反射した。
そんな会話をしていると、ギルモンが唸りだした。
「ギルモン」
「・・・来ているよ」
その言葉の意味を、俺もまた理解した。
同時に、俺もまた構えてしまう。
そして。
「狐封札」
聞こえて来た声。
それと共に、俺は。
「メガログラウモン!」
叫びと共に、ギルモンはすぐに進化していた。
ギルモンはメガログラウモンへと進化すると共に、こちらに迫った攻撃を全て防いだ。
「・・・この前とは、まるで違うわね」
「ムジナ」
見つめた先に立っていたのは、キュウビモンに似たケモノガミと、そのケモノガミを従えるムジナがいた。