「メガログラウモン!!」
俺の叫びと同時にギルモンの体が爆ぜる。光と熱の嵐が周囲を焼き尽くした。木々が根こそぎ吹き飛び地面が抉れる。その中心で鋼鉄の巨躯が隆起してゆく——メガログラウモン。進化した仲間の背に乗った俺の視界が一気に高さを増した。
「ギギィッ!」
メガログラウモンが金属製の爪を剥き出して吼える。奴の装甲が日光を反射して鈍く輝く。その眼光は鋭く、獲物であるタオモンを捉えていた。
ムジナの傍らに立つ九尾の狐型デジモンは動かない。しかし森の中の空気が変わった。四方八方から枝葉を踏む音。木々の間を影が閃く。タオモンは姿を消していた——否、隠れただけだ。
「来るぞッ!」
俺が警告するより早く右側面の木立から青白い光弾が飛来した。メガログラウモンの胸甲に直撃する衝撃——金属が歪む音!
「グオオッ!」
猛獣じみた咆哮が森に響く。メガログラウモンが前傾し耐える姿勢をとった。装甲が歪んでもなお堅牢さを誇る体躯。タオモンの一撃程度では致命傷には程遠い。
「甘いわ」
ムジナの嘲笑が聞こえた。森の奥から第二第三の攻撃が来る。今度は全方位同時多発——左斜め前! 後方! 上空! 九尾の力による分身攻撃だろうか?
「全部受け止めろメガログラウモン!」
俺の命令に応じてメガログラウモンが四つん這いに体勢を変えた。装甲を最大限防御に回す構えだ。青白い光弾が雨のように降り注ぐ。金属と金属が激突する轟音。火花が散り煙が立ち込める。奴の巨体が痙攣するように震えた。
「ダメージ蓄積しているな……」
冷静に判断しながらも歯噛みする。このまま耐久戦になれば不利だ。メガログラウモンの鋼鉄装甲も永久ではない。
「アヤノ! 太田!」
俺は振り返らず叫んだ。二人の気配はまだ遠い。今は単独戦闘しかない。
「いい加減にしろ……!」
苛立ちが頂点に達した刹那。背後から鋭い風切り音。反射的に振り向いた俺の眼前をメガログラウモンの尻尾が横切る。巨大なブレード状の尾が一閃——木立の中から飛び出してきたタオモンの本体を薙ぎ払った!
「シャアッ!!」
悲鳴じみた電子音。タオモンが宙を舞い落下する。しかし空中で体勢を立て直すや否や再び森の影に溶け込んだ。
「逃げる気か!」
俺が追い討ちを命じる前に森がざわめいた。異常な数の気配が一斉に俺たちを取り囲む。十体? 二十体? 分身が増えている!?
「これが九尾の力よ」
ムジナの声が四方から多重に響く。幻術か否か判別つかない。俺の視界が揺らいだ瞬間——突然背後から衝撃。
「ぐっ!?」
メガログラウモンの背中を強く押された感覚と共に投げ出される俺の身体。回転しながら地面に叩きつけられ肺から空気が抜ける。痛みで視界が霞む中で見上げた先では——メガログラウモンが完全に分身軍団に包囲されていた。
「やばい……!」
立ち上がろうとする俺の足に何かが絡む。
「まさか、見た目が陰陽師のように見えましたが」
視線を向けた先では、メガログラウモンがタオモンの攻撃に苦戦を強いられている様子が見えた。
タオモンの戦闘方法は狡猾そのものであった。木々の間を縦横無尽に跳躍しながら死角から奇襲を仕掛けてくる。その尾の先端から放たれる霊力弾が鋼鉄の装甲を削り取る度にメガログラウモンは低いうなり声を上げる。
「こっちが接近すれば幻術で惑わし、近寄らせてもくれない」
舌打ちをしながら戦況を分析する。タオモンは九尾の特性を活かして森そのものを武器にしていた。枝葉の隙間から差し込む日光さえも利用し光と影で視界を攪乱してくる。
一方のメガログラウモンは持ち前の防御力を頼みに耐えている。巨大な爪付きの拳を構えて防御姿勢をとっているが、連続する打撃により装甲表面には無数の亀裂が走っていた。
「まだ反撃できるか?」
心配になり確認するとメガログラウモンは微かに頷いた。しかしその動作は精彩を欠いている。タオモンの放つ霊力波の直撃を受け続けたせいか関節部分から蒸気が漏れているのが見て取れた。
「チャンスを探るしかない」