「おい! どこ行ってたんだ!」
太田の怒鳴り声が洞窟に響いた。俺は肩で息をしながら皆の元へ歩み寄る。背中にムジナの体温を感じる。
「お前……その娘は……」
アヤノが目を見開いた。当然だ。つい先程まで敵だった相手が今俺の肩に凭れているのだから。
「そのなんというか、話し合ってなんとか味方になったというか」
「・・・そいつに殺されかけたの、もう忘れたの」
アヤノはそう言いながら、ムジナがこれまで行ってきた事を再度語る。そして、ムジナに対して刃物を向ける。
「おっおいおい、落ち着けよ」
「こいつのせいで死にかけた事も」
アヤノはそう、睨みながら言う。
「・・・けれど、ムジナも殺されかけた」
先程、彼女が従っていたリヴァイアモン。
そいつによって、ムジナもまた殺されかけた。
「それは、そんなのっそいつの自業自得じゃないの」
「・・・かもしれない。けれど、俺達が同じ状況だったら」
そう言って俺は言う。
「俺達も簡単に裏切ったかもしれない」
俺の言葉にアヤノは刀を納めた。刀を納めて改めて周りを見る。そして。
「なら、そいつが裏切るような真似を一瞬でも見たら、殺す」
アヤノはそう言いながら刃を納める。
そして俺はアヤノをなだめる。
「アヤノ!落ち着けっまずは話を聞こう!」
その太田の言葉によりアヤノは落ち着く。
冷たい岩肌に背中を預けて座り込んだ。汗と泥にまみれた服が肌に張り付き不快だ。洞窟の奥で焚かれた小さな薪火が唯一の光源だった。煙が立ち昇るが換気口がないので洞内に充満し始める。
「それで」
太田が低い声で切り出した。彼の目は俺とムジナの間に置かれた位置に固定されている。
「具体的にどうする?」
アヤノは離れており、刀の柄に手を掛けていた。彼女の視線は常にムジナの首元に向いている。その殺意は冗談ではない。
「とりあえずムジナを生かす為にはどうすれば」
「・・・ムジナって、リヴァイアモンから何か情報とか聞いている?」
俺はそう尋ねると。
「・・・まぁ、ある程度は」
ムジナはそう言う。そう言えば彼女は先程までの行為が嘘かのように無感情でいる。だが、その事について追求するのは止めた。それよりも優先すべきは仲間の説得だった。
「ならっ何か情報を伝えれば良いんじゃないか!」
俺はそう言う。
「・・・でもムジナから教えられた情報が本当なのか」
アヤノの懸念も尤もだ。敵だった者が突然味方に寝返るという構図はあまりに都合が良すぎる。
「そこだな問題は」
太田が溜息混じりに答えた。彼の指が無意識に眼鏡のブリッジを押さえる。知的な焦燥が垣間見える仕草だった。