俺達はケモノガミ達の村に足を踏み入れた。砂利を踏む足音さえ響く静寂の中、遠くからこちらを見ていた六花の姿が認められた。
彼女は最初にムジナの存在に気づいたようだった。その大きな瞳が更に見開かれ、口元がわずかに開いた。右手が無意識に刀の柄へ伸びかけたが、すぐに自制の色が浮かぶ。
「ねぇ、その人ってもしかして」
「・・・あぁ、ムジナだ」
その一言で、村にいたケモノガミ達は、すぐに怯え始めていた。
ここにいるケモノガミ達は、見た目からも、ギルモン達よりも幼い事は分かる。
そんな彼らからしたら、村の外で、何か不気味な事をしていた。
そんなムジナに対して、警戒心を持つには仕方ない事だ。
「・・・彼女を仲間に入れるのは、本気なんだね」
そう、実際にムジナと相対した事のある氷室が再度問いかける。
この場において、六花と氷室だけが、敵対した時のムジナの事をよく知る。
ムジナの後ろには、既にレナモンもいる事もあって、下手に動けば状況は一変する可能性もある。
ムジナの後ろにいるレナモンと氷室が睨み合う様子。
どちらも油断出来ない状況だ。
そんな中でムジナだけがいつも通りだった。
「・・・・・・」
そのムジナが俺の方を見た。俺はそんな彼女に対して小さく頷く。
「信じるしかないでしょ?」
そう言ったのは以外にもアヤノだった。
「仲間に入ったんだから」
そう言ったのは太田。
太田はムジナを睨みつけたまま。
「信じる他ないだろ。それに信用が出来るまでは監視も付けれる」
太田の発言にムジナは少しだけむっとした表情を浮かべるが何も言わない。
だが俺はムジナが何を考えているのか分からなくて怖かった。
敵として現れた時は恐ろしい怪物に見えた。だが今は違う。
六花と氷室は顔を見合わせて黙考した。
「確かに……恐ろしい相手には違いないけど」
六花が呟くように言った。氷室も腕を組みながら頷く。
「反対に言えば、もし味方になってくれれば」
二人の視線がムジナへと向けられる。彼女は依然として無表情で佇んでいた。
「心強いかもしれない」
そう結論付けると六花は肩の力を抜いた。「それじゃあ……」
彼女が手を差し伸べる。ムジナは少し困惑した様子でそれを見つめたが、やがてゆっくりと自身の手を重ねた。
村の中央では残りのメンバーも不安げな視線を送っていたが、徐々に緊張が解けていく。唯一アヤノだけが眉間に深い皺を寄せていたが、他に反対意見は出なかった。
「それじゃ、さっそく食事にしようか!ムジナちゃんは何、食べる!」
「・・・美味しい物だったら、なんでも」