村の広場では篝火が盛大に燃えていた。子どもたちの甲高い笑い声や大人たちの朗らかな会話が交錯する。そんな喧騒の中でも俺の耳には砂嵐のような雑音が入り混じっていた。
「乾杯~!」
酒瓶が行き交い祝宴が始まると、俺は隅の方で麦粥を啜っていた。隣ではアヤノが遠慮がちにムジナに話しかけている。
「ムジナさんも一緒に食べませんか?」
紫色の衣装を纏った少女はただ頷いただけだった。その無機質な表情に広場の空気が一瞬だけ凍りつく。
夜が更けるにつれ人々はそれぞれの家屋へと消えていった。俺も割り当てられた粗末な小屋へ戻る。藁敷きのベッドに横たわっても眠気は訪れなかった。
暗闇の中から浮かび上がった二つの人影が小屋へ入ってくる。
「六花……? ムジナ……?」
まさか二人が来るなんて予想もしなかった。
暗い小屋の中、六花の顔が不気味に浮かび上がる。
彼女の手はムジナの肩に置かれていた。
「それでさぁ」
その声には嘲りが滲んでいる。
「私とムジナさん、どっちが良かった?」
尋ねる口調は軽やかだ。
だが目に宿る光は底なし沼のように昏い。
ムジナはニヤリと笑った。
その唇の端が裂けるほどに歪んでいる。
六花の太腿が右足に絡みつく。
若さ特有の瑞々しい弾力が骨格に沿って密着する。
その温もりが血管を通じて流れ込むような錯覚に陥る。
一方ムジナは背後から覆い被さってきた。
大人の豊満な乳房が背中の凹凸に吸い付く。
汗ばんだ肌が吸盤のように粘り付く感触は重力そのものの質量を感じさせる。
二人の体温が混ざり合い狭い空間に充満する。
六花の肌からは甘酸っぱい制汗剤の匂い。
ムジナからは熟れた雌の濃厚なフェロモン。
その混合臭が鼻腔に直撃し脳髄を麻痺させる。
右腕を六花の腰に回され左腕をムジナの腕に絡め取られる。
自由を奪われた四肢が宙ぶらりんのまま揺れる。
二人の体重が均等に分散されていく物理的感覚が皮膚の神経を灼く。
喉が渇いた。唾液が粘り気を増す。
鼓動が耳朶を突き破りそうだ。
小屋の古びた木板が軋む音が耳障りだ。三人の体温で淀んだ空気が肌にまとわりつく。
「ねえ」
六花の声が右耳の産毛をくすぐる。
「選んで」
左耳孔にムジナの吐息が滑り込む。
「どっちが貴方を喜ばせられると思う?」
拒否権など最初からない。だが二人の囁きが理性を蝕む。
皮膚の下で何かが蠢いた。背筋を駆け上がる悪寒は快感の萌芽だ。
「貴方の反応で決めるだけよ」
ムジナの囁きには粘液質の優越感。
「身体は嘘をつけないもの」
六花が右肩に歯を立てた。鋭い痛みが稲妻のように走る。その刺激で鼓動が爆発した。
「ほら」「もう」「準備万端じゃない」
二人の指が肋骨をなぞりながら下降する。拒む言葉を探しても喉が干からびている。
闇の中、二人の白い肌だけが浮かび上がる。六花の若さ迸る輪郭とムジナの成熟した曲線が視界を侵食していく。
「勝負のルールは簡単」
「貴方が満足した方の勝ち」
この密閉された空間で逃げ場はない。