朝焼けが乾いた大地を赤く染め始めていた。地面に敷かれた擦り切れた毛布の上で俺たちは輪になっている。配給されたのは乾燥したトマトのような果実が三つと濁った水の入った革袋だけ。爪で皮を剥きながら咀嚼する音だけが不気味に響く。
「……」
ムジナは何事もなかったように果実を丁寧に噛み砕いている。昨日あれほど乱れていた紫色の髪はきちんと整えられ、薄い寝間着の上から簡素な外套を羽織っている。あの濡れた肌や熱い吐息の記憶が鮮明なのに、今の彼女はただの無機質な石像のようだ。俺だけが幻を見ていたかのような錯覚に陥る。
「どうしたの? そんなに見つめて」
声の方を向くと六花がいた。彼女は片手で器用に果実を割りながらもう片方の手で髪を掻き上げていた。昨夜は髪留めを外し荒波のように乱れていた髪が今は清潔にまとめられている。目尻には隈もできていない。本当に何もなかったかのような落ち着きぶりだ。
「いや……別に」
乾いた喉が張り付いて上手く喋れない。手の中の果実が妙に熱く感じられる。皮を剥こうとする指先が震えてなかなか力が入らない。
「疲れてるのね」
六花が小さく笑った。
ムジナが突然口を開いた。
「強欲と嫉妬……残りの大罪はこのふたりね」
その言葉に全員が凍りついた。果物を切り分けていたナイフが岩肌に当たり耳障りな金属音を立てる。
「ちょ……いまここで話すことかよ」
太田の声が裏返った。六花はむしろ落ち着き払って指に付いた果汁を舐め取っている。アヤノだけが微かに頬を引き攣らせていた。
「なんでいまさら……」
「だって気になるじゃない」
ムジナは果物の皮を無造作に千切った。紫色の果汁が滴る指先を俺の前に突き出す。
それに対して、俺はそのまま受け止める。
「気になるって」
「・・・この戦いももうすぐ終わる。その結末の為にも」
そうしながら、そのまま食事を続ける。
「・・・それで、そいつらもまさかあんたみたいな感じなの?」
ムジナに対して警戒するように、アヤノは呟く。
すると。
「少し違うかもね。私は正直、全てがどうでも良かったから従っていた。けれど、他の奴らはどうやら力が強くなっていて、洗脳に近いみたいだね」
「えっ、どうしてそれを!?」
「リヴァイアモンが呟いていた」
これまで知る事が出来なかった情報を聞く事が出来た。
確かに未だに魔王と呼ばれているケモノガミと接触したのは、そのリヴァイアモンのみ。
だからこそ、それが本当か嘘かはまだ分からない。
けれど。
「もしも洗脳って言う話が本当ならば、なんとかしなければならないか」