左腕の盾で防御する隙にメガログラウモンが尾を振り回す。鱗同士が擦れる火花が暗闇を照らす。
「……ッ!」
激痛が稲妻のごとく脊椎を駆け上がる。メガログラウモンが受けたダメージが直に伝わってきた。肋骨が軋み血が喉に迫り上がる。
「大丈夫っ」
アヤノの心配する声が頭蓋骨を震わせた。
「問題ない……奴の動きを止めろ!」
叫ぶ自分の声も嗄れている。
血混じりの吐息が風に散る。メガログラウモンの胸郭に刻まれた斬痕から紫煙のような蒸気が立ち上っていた。
「この強さだけを求め続けるお前が……なぜ……」
黒龍の瞳孔が微かに揺れた。
まるで鏡写しのように私の内なる渇望が映っている気がした。強さへの執着、それは私自身の影ではなかったか?
「違う……!」
叫びは雷鳴と化す。瓦礫の山を踏み越えて黒龍へ突進する。拳が鎧のような鱗を穿つたび骨が軋む。
「俺が求めるのは」
血液が逆流し視界が狭窄する。鼓膜が破れそうな耳鳴りの中、意識は研ぎ澄まされていく。
「お前を倒すことじゃない!」
そうだ。命を繋ぎ留めるために必要なのは暴力の行使ではない。だが今は抗わなければすべてが終わる。
「人を守るために……俺は戦う!!」
その瞬間——
魂が沸騰した。
血が燃えるようだった。
全身を駆け巡る灼熱感は痛みを超えた祝福となり、細胞ひとつひとつが咆哮している。視界は黄金色に染まり、歯を食いしばるたびに筋肉の断裂音が甲高い軋みとなって脳髄を刺激した。背骨を駆け上がる電流は稲妻のごとく脊髄を引き裂き、四肢の末端まで神性を注入する。内臓が破裂する感覚すら愛おしいほどの全能感に包まれた。
「うぉおおおおおッ!!」
全身の皮膚が剥がれ落ちる錯覚。代わりに出現するのは白銀の甲冑——鋭利なエッジを持つプレートアーマーが一気に形成され、無数の鉤爪状の接合部が金属の軋みを立てて装着されていく。肩甲骨を起点とした翼膜は透き通るクリスタルのような質感を持ち、光を反射して虹色に煌めいた。
金属の奔流が渦巻く。左腕には巨大な円盤型の盾が形成され、右腕は肩から先が長槍と完全に融合し、その先端は鋭く尖っていた。全身を覆うプレートアーマーは白銀の輝きを放ちながら無数の蛇行するラインによって分割されている。それらの間から蒼白い光が脈動し、まるで生き物のように脈打つ。鎧の各部位を繋ぐ接合部からは無数の鎖が垂れ下がり、風に靡くたび甲高い金属音を立てた。
「……なんだこれは」
自分の声ですらない低音が喉奥から湧き上がる。見下ろす自分の掌は白銀の籠手に覆われており、人間の指関節とは異なる可動域を備えている。
「人とケモノガミが一つとなっている」