日の光が朽ちかけた障子越しに差し込み、昨夜の情事の残滓を明らかにしていく。薄汚れた布団の上には互いの汗と体液が染み込んだ痕跡。隣で眠る六花の横顔が朝日に照らされ妙に神聖なものに見える。
(あれは本当に現実だったのか?)
一夜明けると猛烈な罪悪感が襲ってきた。制服の下の柔肌。荒々しく求め合った記憶。すべてが鮮明でありながら幻であったかのように曖昧だ。
「ギルモン?」
不意に背後から呼びかけられて飛び起きる。そこには赤い恐竜型ケモノガミが首を傾げてこちらを見つめていた。隣の白犬型ケモノガミ・ラブラモンも同じく純粋な瞳で俺たちを凝視している。
「んー……なに?」
六花が寝ぼけ眼をこすりながら上体を起こす。彼女の胸元には昨晩つけた所有印が鮮やかに残っている。慌てて目を逸らす俺の挙動不審さを見透かしたように六花が小さく笑った。
「別に気にしなくていいじゃん」
さらりと言ってのける態度が妙に心臓に悪い。彼女は制服のボタンを留めながら立ち上がり窓辺へ向かう。半裸のまま外を眺める姿は無防備すぎるほどだ。
「まずは連絡手段探そうよ」
提案は現実的だがどこか他人事のような響きがある。六花の気怠げな口調に混じる諦念の色が気になった。
「どうやって?」
俺の問いかけに彼女は肩を竦める。
「スマホとかあったら便利なんだけどねぇ」
そんな都合の良い話などあるはずもない。
すると、建物の外から悲鳴が聞こえた。
森の奥から甲高い悲鳴が響いた。それは間違いなく人のものだ。六花と俺は顔を見合わせ、即座に声の方向へ駆け出す。ギルモンとラブラモンも不安そうな鳴き声を上げながら続く。
茂みを掻き分け辿り着いた場所には少女がいた。
黒の短髪を靡かせ、眼を恐怖で歪ませている。その背後では四足歩行の狼型ケモノガミが低く唸り声を上げている。
だが彼女を守っているのかと思った瞬間―
「逃げろ!!あんたら!!」
叫び声とともに前方から別の影が飛び出してきた。漆黒の毛並みを持つ獅子型ケモノガミだ。その巨体からは想像もつかない敏捷さで木々を薙ぎ倒しながら迫ってくる。
「駄目っ!」
咄嗟に六花を庇いながら後退する。狼型ケモノガミが少女を守るように立ちはだかるが力の差は歴然だ。爪による一撃であっさり吹き飛ばされ樹木に叩きつけられる。
「グルルル……」
勝利を確信したような唸り声に背筋が凍る。今度は標的を俺たちに定めたらしい。鋭い牙の間から涎が滴り落ちる光景がスローモーションのように視界に入る。
「ギルモン!!!」
俺の叫びと共に、ギルモンの姿が変わる。
その姿は、昨日見た巨大な獣、グラウモンへとなった。
グラウモンは、そのまま、獅子を殴り飛ばす。
「グアァッ!」
獅子型ケモノガミの咆哮が森に響き渡る。その巨体が宙を舞い、数本の大木を薙ぎ倒して地面に叩きつけられた。砂埃が舞い上がり周囲の景色を灰色に染める。
「大丈夫か!」
「あんたは」
「今は、それよりも、目の前にいる奴をなんとかしないと」