少女──香坂アヤノと名乗った──は館にある一室で向こう側に座り込んだ。薄闇の中で黒髪が艶やかに光る。セミロングの毛先が首筋に絡みついているのが妙に生々しい。
「信じられないかもしれないけど……全部本当のことなんだ」
震える声でそう前置きするとアヤノは語り始めた。彼女の話を要約すると以下の通りだ。
ケモノガミの世界に迷い込んだ当初、彼女はクラスメイトの獅戸垓と共にいた。獅戸は金持ちの息子で学校では表向き優等生を演じていたが裏では悪辣非道な行為を重ねていたらしい。
「あいつ……いつも私の胸を見てた。男子連中をけしかけてセクハラまがいのことをさせて……」
憎悪に満ちた眼差しでアヤノが握り拳を震わせる。その指先が制服の胸元を強く押さえつけているのに気づいた。ノーブラの証か、白シャツ越しに豊かな膨らみの形がくっきり浮かび上がっている。
「でもここじゃ親の力なんか通用しないのにね。アイツ馬鹿だから分かんなかったんだろうな……」
吐き捨てるような台詞には深い嫌悪が込められている。だが次の瞬間、彼女の声は急に弱々しくなった。
「そしたら豹変したの……ここの生き物って危ないって知ってたのに。一緒にレオルモンにも暴力振るって」
その時の光景を思い出したのかアヤノが身震いする。マフラーの隙間から覗く首筋に鳥肌が立っているのが分かる。
「あいつ殺されたとき私もいたんだよ……?マッドレオモンになった奴が目の前で喰い殺して……」
途切れ途切れの言葉が恐怖を物語っている。肩が小刻みに震えているのが暗闇でもはっきり見えた。
「怖かった……あの獣みたいな目で睨まれたら……逃げるしかなくて」
そこで俺たちと出会ったわけか。納得できる流れだ。問題はこれからどうすべきかということだ。
「それで……これからどうするつもりなんだ?」
問いかけに対してアヤノはしばらく俯いていたがやがて顔を上げた。その瞳には強い決意の色が浮かんでいる。
「あいつが死んだ以上、この世界で生き残るために協力するしかないと思う」
意外なほど理性的な判断だ。しかし次の瞬間、彼女の視線が俺の股間に向けられたような気がした。
「・・・そうか、俺もこっちじゃ不安だったからな」
「・・・そうだね、あんたが私に対して、あいつのように目を向けているの、分かっていたから」
「・・・悪い」
俺は、そのまま謝る事にした。
「ムカつくとは思った。けれど、こういう格好だから。けれど、そんな私を気遣ってここまで案内してくれて」
「正直、少し嬉しかった」
「・・・ありがとう」
その言葉と共に香坂が抱きついてくる。豊かな胸の感触が腹に押し付けられる。柔らかな膨らみが服越しにも感じられ思わず生唾を飲んだ。
「・・・嫌じゃないのか、というよりも、こんな状況で」
「あいつに身体を見られた時、怒りもあったし怖かった。けれど、なんでだろう。会ったばかりだけど、こっちの心配をしてくれるあんたの顔を見たら」
「・・・・・・何か変わったように思えたのかも。それに、あいつみたいに無理矢理に迫ってくる奴だったら嫌だっていうのはある」
「そっか」
「そういう意味では、あんたは大丈夫そうって思えたのもあるから」
その言葉の裏に秘められた心情を感じ取る。恐怖から解放された安心感と新たな出会いに対する微かな期待。それが彼女を大胆にさせているのかもしれない。
「アヤノ・・・」
名前を呼ぶと彼女は肩をぴくりと震わせた。暗闇に慣れた目には潤んだ瞳がはっきり見えた。
「・・・あんたのこと信用していい?」
小さな問いかけには深い孤独が滲んでいた。
「もちろんだ」
そう答えた瞬間、唇が触れた。互いの吐息が混ざり合う距離感に心臓が高鳴る。舌先が絡み合う感触は予想以上に柔らかく熱っぽい。
「んっ・・・」
アヤノの甘い呻き声が鼓膜を震わせる。その反応に理性の箍が外れそうになるのを必死で堪えた。
「俺の方こそ・・・こんな状況ですまないけど」
「・・・いいよ」
頷いた彼女の手がゆっくりと俺の股間へ伸びる。指先がファスナーに触れかけたところで制止の声を上げた。
「待ってくれ・・・ここで全てを急ぐ必要はない」
「でも・・・あんたのこと信じたいから」
切なげな表情に胸が締め付けられる思いだった。理性と本能の狭間で葛藤するうち、俺はある提案を思いついた。
「なら・・・少しずつ確かめ合っていこう」
「どういうこと?」
「例えば・・・お互いの身体に触れることから始めてもいいんじゃないか」
「えっ?」
アヤノの頬が紅潮するのが分かった。拒絶ではなく驚きが理由だと察し取れる。
「無理強いするつもりはない。ただ・・・君の恐怖や痛みを和らげたいと思ってる」
「・・・怖くないの?」
「君の方が怖いだろう」
その言葉にアヤノは逡巡する素振りを見せた後小さく頷いた。
「・・・試してみる」
同意を得たことに安堵しながら慎重に手を伸ばす。制服の裾から忍び込ませた指先で柔らかな肌に触れる。ビクリと反応する肢体から恐怖よりも期待の方が色濃いことが伝わってくる。
「ここ・・・敏感なのか?」
「うん・・・多分」
控えめな肯定に励まされるように掌全体を使って彼女の腹部を探る。次第に上へ向かう動きに戸惑う気配が伝わってきたが抵抗はない。
「ここもいい?」
最終確認として胸元へ指を運ぶ。制服越しに感じる圧倒的なボリュームと弾力を前に鼓動が激しくなる。
「・・・好きなようにしていいよ」
その許しの言葉が引き金となった。
アヤノの制服の襟元から指先を滑り込ませると、しっとりとした肌に触れた。戦闘直後のせいだろう。微かに汗ばんだ肌からは甘酸っぱい青春の匂いと鉄錆びた血の匂いが混じり合っている。
「んっ……」
小さく震える肩を抱き寄せると、さらに深い接吻を求められた。舌先が絡み合うたびに唾液が銀色の糸を引く。彼女の口腔内は驚くほど熱く、そこに潜む緊張と期待がダイレクトに伝わってきた。
「アヤノ……」
名前を呼ぶと彼女はかすかに頷く。その仕草が無性に愛おしく思えて自然と手が滑り下りた。ブラウスのボタンを一つ外すたびに露わになる白い膨らみ。ノーブラ故の重量感を伴って零れ落ちてきた豊かな丘陵を掌で包み込む。
「ひゃっ……!」
甲高い悲鳴にも似た喘ぎ。慌てて唇を塞ぎつつ指先を乳房の頂点へと向かわせる。指の腹で感じる乳輪の段差。その中心で待ち受ける蕾は既に硬く尖っていた。
「ここ……感じるんだな」
「知らな……あっ!」
否定の言葉も途中で途切れる。親指と人差し指で優しく挟み込んだ途端彼女の背筋が弓なりに反り返った。その拍子に胸がさらに突出し扱きやすくなる。
「ああっ……ダメ……やだ……こんなのおかしい……」
彼女の瞳から大粒の涙が溢れ落ちる。嫌悪と羞恥が入り混じった表情なのに腰が妖しく揺れている。矛盾した反応こそがマゾヒストの証左だと理解してしまえば理性は容易く砕け散った。
「そのっ、そんなに嫌だったら、その」
「うっ、そんな事、この状態で言わないでよ」
俺の言葉に対して、怒っている様子だった。
「悪い、けど、やっぱり怒りながらだったら、互いに」
「別にっ確かに戸惑っていたっだから」
アヤノはそのまま俺を見つめながら。
「優しく触れられたらっ嫌とか言われてもっ」
「んっ」
俺はアヤノの要求通り、そのまま優しく触れた。
途端にアヤノの身体が大きく跳ね上がった。電流でも流されたかのように肢体が痙攣し嬌声が迸る。
「あ゛あ゛あ゛っ!!」
耳を劈くような絶叫。しかし彼女自身が最も驚愕しているようで目を見開いたまま硬直している。無意識のうちに俺の手首を強く掴んでいるのが分かる。その指先が白く変色していることから極度の緊張状態にあることは明白だった。
「やっ……何これ……変っ変だよ……!!」
混乱した様子で訴える彼女の頬は朱色に染まっている。その一方で瞳には怯えの色が濃い。初めて知る肉体の反応に脳が追いつかないのだろう。それでも本能は正直で太ももを擦り合わせる仕草が露骨だった。
「怖がらなくていい」
なるべく穏やかな声音を心掛けながら彼女の耳元に囁く。その間も右手は休ませない。乳腺を刺激するように乳暈周りを円を描くように撫で上げる。左手は脇腹から腰へかけてのラインをなぞり下半身へ繋がる意識を作っていく。
「これが……気持ちいいってことなんだよ」
「嘘だぁ……こんなの汚い……気持ち悪いはずなのに……」
否定的な言葉とは裏腹に彼女の吐息はどんどん浅くなっていく。制服越しにも分かるほど股間が湿り気を帯びている。スカートの裾を摘まんで引き上げると下着のクロッチ部分が濃い染みを作っていた。
「見ないで……お願いだから……」
涙声での懇願がかえって煽情的だ。俺は敢えて視線をそちらへ向けることで羞恥心を煽った。目と目が合うと彼女はますます顔を赤らめる。その表情がたまらなく可愛いと思ってしまう時点で完全に惚れてしまったことを悟った。
「綺麗だよ……すごく」
本心からの言葉に彼女の全身が粟立つのが分かる。マゾヒスティックな性癖の持ち主にとっては屈辱と快楽が不可分なのだ。俺は敢えて責め立てる口調で続けてみる。
「こんなに濡らして……俺に見られて興奮してるんだな」
「違うぅ……そんなつもりじゃ……」
否定するたびに蜜の量が増えているのだから説得力はない。指先で直接秘部に触れれば温かい粘液が糸を引く感触があった。クリトリスを探り当てると彼女の背中が弓なりに反り返る。
「ここ好きなんだ?」
「やめてっ言わないでぇ!」
悲鳴に近い拒絶の中にも喜悦の響きがある。親指と人差し指で小さな豆粒を挟み込み軽く捻ると彼女の膝がガクガクと震え始めた。内腿が痙攣し腰が浮き上がる様子は明らかにオーガズム寸前の兆候だ。
「我慢しなくていいよ……全部受け止めるから」
その言葉が決定打だったらしい。彼女の身体が硬直し次の瞬間盛大な潮を噴き上げた。透明な液体が弧を描いて飛散する光景は神秘的ですらある。絶頂の余韻で虚脱状態のアヤノを支えながら俺は彼女の髪を優しく撫でた。
「初めてだったのに……こんな……」
嗚咽混じりの独白には自責の念と悦びが入り混じっている。どちらが本心なのか分からないが少なくとも彼女は今の出来事を忘れることはできないだろう。
「いいんだよね?」
俺の問いかけにアヤノはかすかに頷いた。まだ恐怖が残っているのか指先がわずかに震えているのが見える。それでも彼女は勇気を振り絞るように俺の首筋に腕を回してきた。
「ゆっくり……ゆっくりして」
その懇願するような囁きに応えるべく俺は慎重に彼女の腰を抱き上げた。対面座位の姿勢になるが重力と緊張でなかなか挿入できない。彼女の入口に亀頭をあてがいながら何度も浅いキスを繰り返す。舌先で唇をなぞるとアヤノの喉から小さな鳴き声が漏れた。
「ふぅっ……ん…」
徐々に緊張が解けてきたのか彼女の足が自然に開いていく。その隙に一気に腰を押し進めた。
「ひっ!」
引き攣るような悲鳴。やはり痛みを感じているようだ。すぐさま動きを止めると彼女が荒い呼吸を繰り返す。
「ごめん……痛い?」
「大丈夫……ちょっとだけ……」
強がりながらも目尻には涙が滲んでいる。それでも健気に腰を使おうとする様子があまりに健気で胸が締め付けられる思いだった。彼女の背中に手を回し更に引き寄せると互いの胸板が密着する形になる。豊満なバストが俺の鎖骨あたりで潰れて形を変える様子は視覚的にも官能的だ。
「動ける?」
「少しずつなら……」
俺の腰の上で小刻みな律動が始まる。肉襞の抵抗が強いが次第に馴染んでくる感触があった。彼女の表情を伺うと眉根を寄せているものの苦痛だけではない表情だ。
「あっ……そこ……いいかも……」
掠れた声で告げられる場所を重点的に擦ると反応が明らかに変わる。膣壁が収縮しペニス全体を包み込むような温かさが増した。
「んっ……こんな感覚……知らない……」
混乱しつつも快楽に耽溺していく様子が伝わってくる。彼女の動きに合わせて下から突き上げると一層激しい反応が返ってきた。
「ああっ……! だめ……おかしくなるっ……!」
泣き声にも似た訴えは逆効果で興奮を高める燃料となる。俺も限界が近かった。二人の結合部からは水音が立ち昇り濃厚な淫臭が漂い始める。
「一緒に……イこう」
その言葉を契機にスピードを上げた。互いの汗が混じり合い肌が滑る感触すら刺激になる。アヤノの喘ぎが高まり絶頂が近いことを教えてくれる。
「きて……お願い……!」
渾身の力で最奥まで突き上げた瞬間、彼女の内部が激しく収縮した。同時に俺も我慢できず射精を迎えてしまう。ドクンドクンと脈打つペニスから熱い粘液が放出される感覚は例えようもなく心地よい。
「あ゛あ゛あ゛っ!!」
絶叫とともにアヤノの全身が痙攣し俺の肩に爪を立ててくる。その痛みすら愛おしく感じられるほど幸福感に満たされていた。
余韻の中ゆっくりと引き抜くと白濁した体液が溢れ出てくる。二人とも荒い息を整えながら呆然と互いを見つめ合った。
「なんだか……変な感じ」
アヤノがぽつりと呟く。涙目のまま笑おうとするがうまくいかないらしい。その不器用さが妙に可愛らしく思えてつい唇を奪ってしまった。
「んっ……」
抵抗されることなく受け入れてくれるキスはどこまでも甘美だ。絡め合う舌先からはお互いの唾液が混ざり合う独特の味わいが広がる。
「幸せ……なのかな」
「・・・まだ、この世界から脱出していないから、なんとも」
「・・・確かに、けど」
アヤノは、そのまま俺に抱き締める。
「あんたと一緒だったら、もしかしたら」
そうして、アヤノの言葉を受け止める。
「そう言えば、六花は」
「・・・ここで他の女の話をする」
「ゴメン」
俺はそう、謝ってしまう。
だから、気づいていなかった。
「やっぱり、彼、凄いね」
笑みと共に、手の平には一つの紋章が浮き上がる。
「憤怒は、かなり面倒だったからね。けれど、それを抑えてくれたおかげでね」
その時の六花の表情は、どこか妖艶に見えた。