レンゲの場合
「ナグサ先輩、アタシが青春を求めてるってのは知ってるよな」
「ええ、そのために部活を渡り歩いたとか」
「そうだ。でもどうしても手に入らない青春があったんだ」
「……?何が言いたいの?」
「つまり、だ」
不意打ち気味にナグサの肩を掴んで壁に押し付ける。
「……っ、レンゲ……っ?」
動揺しているナグサに畳みかけるようにレンゲは口をふさぐ。
「……っ!…………ゃ…っ」
強引な接吻から逃れようとするが、左手は抑えられ、顎にもう一方の手を添えられたことでそれも叶わなくなる。
「んっ…れろ……」
押しのけようとする舌に絡みつく。強く吸われ、喉の奥の空気まで持っていかれるような錯覚さえする。酸素の足りなくなった身体はその場に崩れ落ちようとしていた。
が、
「んん……っ!?」
股の間に挟まれたレンゲの脚がそれを許さない。どころか、よく鍛えられた太ももでナグサの弱い部分を圧して刺激していく。口内を蹂躙され続け、股間を刺激されはじめ、ほどなくしてナグサは達してしまった。
「はっ…あ……ぁ……」
息も絶え絶えと言った様子でレンゲの顔を見ることさえできない。そんなナグサを見下ろしてレンゲは言葉の続きを聞かせる。
「どうしても手に入らない青春ってのはさ、こういうことなんだよ」
自分の手で絶頂させてしまった雌の姿が本格的に自分の理性を崩壊させると思ったのか、背中を向けて語る。
「こういうことをしたい相手は誰かって考えたら一人しか浮かばなくってさ でも、その人は皆からも慕われてる なのにアタシの気持ちには気づいてくれない だから誰かに先を越される前にって」
と振り返ると、そこには誰もいなかった。
「…………」
しかし、ナグサがへたり込んでいた場所の湿り気が決して夢や妄想ではないことを証明していた。
ユカリの場合
「な、ナグサ先輩!どうなさいましたの!?も、もしや不埒な輩に何かされたとか!」
レンゲに気づかれないよう逃げ出して隠れていた所をユカリに発見された。ナグサが言葉に詰まっていることから訳ありと思ったのか、ユカリは自身の屋敷の一室へと彼女を保護することにした。
「お怪我は…されておられないようですわね」
そういった危ない目に遭ったわけではないと分かって一安心といった様子だ。そして、そこまでしてもらってようやくナグサもある程度の平静を取り戻した。
「ありがとう、お陰様で落ち着いたわ」
「いえ、それはいいんですの。……それで、何がありましたの?」
自分を尊敬する後輩に話すべきことではない。しかし今の自分に彼女の追及から逃げ切るだけの余裕はない。だからこそ詳細をぼかしつつ事情を話した。それが間違いだと気づかずに。
「そう…レンゲ先輩が……」
尊敬する先輩の行動にはやはりショックだったのだろう、うつむいたユカリにそんな感想を抱く。こんな同情を誘うような話をしてしまったことに今更ながら自己嫌悪をする。そして、そんなことを考えているから反応が出来なくなる。
「……ナグサ先輩」
ナグサの胸に抱き着いたユカリに話したことを後悔し始めた、その直後に後悔の内容が変わることとなる。
「んっ」
「ン……!?」
本日二度目の接吻が行われる。
『その人は皆からも慕われている』
レンゲの言葉を思い出したナグサは咄嗟にユカリを突き飛ばして這う這うの体で逃げ出そうとする。
「どこに行かれますの?」
背中にのしかかる形で捕まってしまう。
「なん…で…どうして……」
「ナグサ先輩がいけないんですのよ… 身共がこれほどナグサ先輩をお慕い申し上げておりますのに、レンゲ先輩に唇を許してしまわれるなんて」
ナグサを捕らえる手が彼女の身体を這っていく。片や鎖骨をなぞり、制服の下へ進み、かすかな膨らみに添えられていく。片や首を蛇が巻き付くように伸ばしていき、色素の薄い唇をなぞりつつ口内を侵していく。
「レンゲ先輩がそう来られるのでしたら、身共ももう我慢しませんわ」
「ゆ、ゆふぁり……っ」
「ナグサ先輩、お覚悟を♡」
勘解由小路の屋敷の一室に外部の人間であるナグサの逃げ場はない。
加減知らずのお嬢様は、敬愛する先輩をたくさん悦ばせた。
制止の声も聞き入れず、絶頂の報告も聞き流し、ただひたすらに肉欲に喘ぐ雌の嬌声を求め続けた。
キキョウの場合
時間の感覚も身体の感覚もあいまいになり、足腰がまともに動かない状態でナグサは帰路についていた。責め疲れて眠ったユカリのスキをついて逃げ出したナグサはとにかく安心して休む場所が欲しかった。一人の状態ではいつレンゲやユカリが襲ってくるかも分からない。
だからこそ彼女は頼みの綱にすがることとした。
「……………」
恐ろしく厳しい顔をしていた。内心は様々な感情でごった返しているだろうことは想像に難くない。
(きっと、失望している……)
レンゲとユカリに、という意味だけではない。後輩に良いようにされて逃げてすがってくるような自分にきっと失望しているに違いない、という意味だ。
「アヤメだったら、こんなことになっていなかった」
思わず口をついた言葉は何度も心の中で繰り返したものだった。でも事実だから、きっと皆も誤魔化されているフリをしているだけで気づいているから、そんな言い訳がぐるぐる浮かぶ。
「はぁ……」
黒く染まった空気の見えそうなため息がキキョウから吐き出される。
「ご、ごめ…」
「何が?」
言い切らせない。
「またそうやって自分を卑下するの?私たちはあんたを見てるってのに」
「でも…」
「客観的に見ても優秀で頑張ってるあんたがずっと卑下するから、あんたが好きな私が馬鹿みたいじゃない」
すぐにでも謝りそうなナグサをキキョウは押し倒す。レンゲ、ユカリにたっぷり啼かされたナグサに耐えるだけの体力は残っていない。
「キ、キキョウ……っ」
今にも泣きそうな、どころかすでに目頭に涙を浮かべている。
後輩から良いようにされて泣かされる先輩に、そんな先輩に懸想していることに、そして先を越されたことで理性が限界を迎えた自分自身に
「反吐が出る」
ロクに抵抗する力も残っていないナグサはされるがままに貪られていく。
レンゲのように勢いだけでなく、緩急をつけて舌を絡めていく。口内をしゃぶりつくし吸いつくしていくかと思えば、今度は唾液を飲ませていく。
ナグサの細い喉がキキョウの体液をこくりこくりと飲み下していく。口内も喉も胃も、身体の中まで犯すようにゆっくり確実に飲ませていく。
飲みきれない唾液が口の隙間から零れ、流れていき、はだけた制服の下へ伝っていく。
ようやく口を離し、ナグサから完全に抵抗の意思が消えたことを確認して服を脱がしていく。
「もうあんたを誰にも抱かせない」
体の上から下へ、全身を愛撫しながら口づけをしていく。そのたびにナグサの身体は小さく跳ねる。
愛撫で達しているのか、口づけで達しているのか、あるいはキキョウに触れられるだけで達してしまっているのか、もはやナグサには判断がつかない。
丁寧に、しかし容赦のない行為は先の二人の残り香を完全に霧散させてしまった。
「……っ…………っ♡」
「あんたは私のモノ、もう絶対に離さないから」
ナグサの白かった肌は全身の接吻の跡で薄桃色に染まっていた。