田舎の村に引っ越してきた奈々子は、周囲に馴染めず孤立していた。
そんなある日、奈々子はノーパンで過ごしていた写真を撮られ、脅迫されてしまう。
怖がりながらも指示に従う奈々子だったが……

こちらはSkebで依頼を受けた作品となります。
リクエストありがとうございました!


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犯人くんと裸の私

 今年の初めに、私はここ、 海端村(うみはたむら)に引っ越してきた。小さな村で、学校もこぢんまりとしている。クラスは一学年にひとつだけ。生徒もひとクラス二〇人ほど。それでもプールがあるのは、ちょっと意外だった。海が近くにあるとはいえ、さすがに授業で使うようなことはないらしい。

 いずれにせよ、水泳は大の苦手。水の中で一生懸命に手足を動かしてるのに、疲れるばかりで前に進まない。先生は熱心に教えてくれるけれど、全然変わっていないように思える。

 きっと笑われるんだろうな――なんて私は水の中で泣きそうだったけれど、むしろ、みんなで積極的に教えようとしてくれて――嬉しいというより、なんというか、申し訳ない。私のせいで、授業の流れを止めてしまって。

 でも、少しだけ心強いこともある。

 泳げないのは、私ひとりじゃなかった。 日和(ひより)ちゃんも、私と一緒に頑張ってくれている。普段は眼鏡をかけている彼女は、水の中ではよく見えていないはずなのに、それでも必死に泳ごうとしていて……その姿を見るたびに、私は勇気をもらっていた。

 そんな私だから、つい日和ちゃんとばかり話してしまう。

「はぁ……やっぱり、泳ぐのはいやだなぁ」

「うん、私も。海自体は好きなんだけどね」

「え? そうなの?」

「浜辺で遊んだり、浅いところで浮き輪に乗ってプカプカしたり」

「なるほどねー……授業でも浮き輪使わせてくれればいいのに」

 そんなことを言いながら、私たちは顔を見合わせてくすくすと笑っていた。もし、日和ちゃんがいなかったら――水泳の日は、学校を休んでしまっていたかもしれない。

 

 ツラい体育の授業が終わり、私たちはプールをあとにする。更衣室は広くもないけど、それでも、生徒の人数に対して棚が明らかに多い。おそらく、プールとセットで、決まった大きさで造られたのだろう。大中小、どれにしますかー、みたいな感じで。小でもこのくらいのサイズになってしまったに違いない。それほどまでに、私たち学校は小さい。

 それより、私が戸惑っているのは――みんな、タオルを巻かずに堂々と水着を脱いでいること。最初こそ、『えっ?』と驚いたけど、どうやらこの学校ではそれが普通らしい。そんななか、私ひとりだけがタオルを身体に巻いて、てるてる坊主みたいな格好をしている。――逆に、目立ってるよなぁ。恥ずかしさがじわじわ込み上げてくるけれど、それでもやっぱり、みんなみたいに裸になる勇気はなかった。

 そして、水着を脱ごうとしたそのとき――私は、ふと手を止める。大変な事態に気がついて。

「どうしたの?  菜々子(ななこ)ちゃん」

 日和ちゃんが私の顔をのぞき込む。

「あ、うん……次の授業、なんだったっけなー……って」

 なんて、苦し紛れの言い訳をしながら、私は心の中で大慌て。何故なら――入れてきたはずのパンツがないから! 家を出るとき、水着をあらかじめ着て来ていた私は、終わったあとに穿く用のパンツをちゃんと用意していた“つもり”だった。カバンの中にも入れた“はず”だった。家を出る前にちゃんと確認もしたのに。

 なのに……ど、どうしよう……!

 よりにもよって、今日はスカート。ズボンだったら、もう少し安心できたのに……どうしてこんな日に限って……

 どう悩んでも状況は変わらない。仕方なく、私は諦めてパンツ無しでスカートだけを穿く。……うぅ、スースーするなぁ……

 気にしすぎかもしれないけれど、それでも気になる。なんとか自然を装って、私は日和ちゃんと並んで教室に向かっていた。

「――それでね、宿題、結局半分くらいしかできなくて……」

「う、うん……」

 日和ちゃんの話に相槌を打ちながらも、意識はどうしても下半身に引っ張られる。特に、階段を上るとき。後ろから「わーっ!」と声を上げて駆けていく男子もいて、抜かされるたびに――見られてないかな? なんて不安になったり。でも、気にしているのがバレたら、かえって怪しまれそう。だから私は、なんでもないフリをして歩き続ける。

 教室に入ってしまえば、少しは気も楽だ。私はいつも後ろのほうの席で静かにしているし……今日もきっと、誰にも気づかれずに一日を終えられる――はず。

 この村は、海が近いせいか、水泳がとても盛んらしい。けれど私は、泳ぐのが嫌いだ。聞けば、このあたりのコたちは、夏になると毎日のように海で遊ぶのが当たり前なのだという。そんなの、私にはついていけそうにない。

 みんな、夏休みに入ったら海で何をしようか――そんな話で盛り上がっている。私には、その輪に入ることなんてできようもない。まるでここは自分の居場所ではないのかも――そんな寂しさを感じていた。

 

 一学期も終わりそうなのに、いまだに学校にも馴染めず、私はずっとひとりぼっち。帰り道も、もちろんひとり。延々と続く海辺の道を歩いて帰る。車道は広いけれど、車が通ることはほとんどない。道の横には、何を育てているのかよくわからない畑が広がっている。そんな景色を見下ろしながら、私は堤防の上の道を歩いていた。

 そんな中、海風が吹くと――スカートが、ふわ……って……!

「わわっ、わっ」

 最初は慌てて裾を押さえたけれど――ふと立ち止まって、まわりを見渡してみる。……やっぱり、誰もいない。だったら、そんなに心配しなくていいのかも。私は小さくため息をついて、二度目に風が吹いたときは、そのままスカートがバサバサとなびくのを無視して、スマホを見ていた。

 一日一話だけ読める漫画――それが、いまの私の、たったひとつの楽しみ。ちょっとえっちなシーンもあるから、他の人は秘密だけれど。

 そんな私のひとときを邪魔するように――突然通知が届いた。メール……? 誰からだろう。表示された差出人は、見覚えのないアドレス。変な広告か、ウイルスか、それとも間違いメールか――知らない人からのメールは開いちゃダメ、って、ずっと言われてきた。

 なのに。

『お尻丸出しさんへ』

 ――!? 思わず、まわりをきょろきょろと見渡してしまう。もちろん、誰もいない。けれど、その件名には、あまりにも心当たりがありすぎる。それで、私は――ついメールを開いてしまった。すると、そこには――

『可愛いお尻ですね。もっとみんなに見てもらいたいです』

 ……なにこれ……!? この人、何を言ってるの……? スクロールしようとする指先が小さく震えている。画面には、小さなサムネイル画像が表示されていた。添付ファイル――写真。

 恐る恐るタップすると、画像が開く。そこには、私が写っていた。プールの授業が終わり、教室に戻るために階段を上がっている――その途中で、スカートのすそが風に揺れて――暗がりでもしっかりわかる。私の、お尻の割れ目が――パンツ穿いてないのが……! ……撮られてたなんて……! しかも、下から覗き込むように。気をつけていたつもりだった。特に、男のコたちには。

 それなのに――どうして。どうして、こんな写真が……。私は涙目になりながら――とにかく最後までメールを読んでみる。

『僕とあなただけの秘密にしておきたいなら、僕の指示に従ってください』

 ……何だか、嫌な予感。でも、そうするしかないんだろうな……

『玄関の前にあなたに相応しい服を用意しておきました』

 えっ!? 玄関の前って……。ということは……この人、私の家を知ってるってこと……?

『明日は、その服1枚で登校してください。中に下着を着てはいけません』

 い、一体どんな格好で学校に行かせようというの……? 何かとんでもないことになりそうで、私は帰宅の道を急ぐ。私の両親は離婚してしまったので、いまはお母さんとふたり暮らし。けれど、今年からお祖母ちゃんが老人ホームに入ったそうなので、空いた家に住まわせてもらっている。だからといって、よりにもよってこんな田舎に……なんて、ワガママは言えないけれど。

 それで、お母さんは仕事のために毎日夜遅くまで車で出ている。そのうえ、週末は街に出たまま帰ってこないことが多い。……多分、新しいお父さんと街で過ごしてるんだと思う。寂しいけれど、仕方ない。

 ただ、今日に限っては助かった。家の前に知らない荷物が置いてあったら、怪しまれてしまう。それで……もし、メールの指示に従えなかったら……私が、パンツも穿かずに授業を受けてたことが、みんなにバラされちゃう……!

 そんな不安にドキドキしながら帰ってみると……たしかにあった。二枚の引き戸の真ん中に、ポツンと。……宅配ボックスもないのに、盗まれたらどうするつもりだったんだろう……。こういう小さな村なら、そういうこともないのかな?

 周囲をキョロキョロしながら荷物を回収すると、カチャカチャ、と鍵を開けて、ガラっと戸を引く。そして、逃げ込むように家に入り、ピシャっと閉めると、ガチャンと鍵をかけた。普段、ここまでしっかり戸締りすることはない。でも……怖いから。

 そして、改めて荷物を確認してみると……ふぅん、これ、街でも見るお店のだ。一度開封したような痕跡もない。なら……そんな変な服でもないのかな?

 ちょっとだけ安心したところで、私は中から取り出してみる。すると……わぁ、普通のワンピース。服を買うお金も節約しなきゃなので、ちょっと嬉しくなってしまった。ゼイタク言うなら、白は汚れが目立っちゃうんだよねぇ。

 ……うん? よくよく触ってみると……これ、生地薄くない……? 裏から指を当ててみると……なーんか、ほんのり透けてるような……

 心配になって、私は着てみる。お風呂の脱衣所で。指示通り……中に下着とか着けずに……

「う、う、うーん……?」

 部屋の中なら……ほんのり肌色が滲んでる気がするけど、何とか大丈夫っぽい。けど、昼間の教室は暑いから。汗なんて掻いたら……どうなっちゃうんだろう……?

 これだけでも不安なのに、メールはさらに嫌なことを付け加えてくる。

『水筒を用意して、水分補給は忘れずに』

 それって……いっぱい汗を掻け、ってこと……!?

 けど――

『みんなにお尻を見てもらいたいのなら、このメールは無視してもいいです』

 ……そんなことを書かれちゃったら、私にはどうすることもできないよ……

 

 次の日は、日差しが強くなくて助かった。けど、曇ってる分、ムシムシしてるかも。そんな朝、私はひとり、学校への道を歩いている。家の周りと、学校の周りには建物が多いけど、その間の浜辺の堤防の遊歩道はわりと静か。家から学校まで、全部で二〇分くらい。ここまで遠いと、車で送ってもらうコが多いみたいだけど……うちのお母さんは、朝早くから出てしまっているから……

 家を出た頃は大丈夫だったけど、海辺を歩いているあたりで……何だか、服がペタっと肌にくっついてるんじゃないかと不安になってくる。大丈夫、だよね……? けど、やっぱりそんな気がしてしまうので……学校が近づいてくると、みんなの視線にビクビクしてしまう。

 でも。

「おはよー」

「昨日、最新話が更新されてたねー」

 みんなが楽しそうに話している中、私はやっぱりひとりぼっち。けど……おかげで私の服のことは気づかれてなさそう。今日は一日中危ない感じ。本当に、階段には気をつけなきゃ……

 教室に入ると、私は自分の席に着く。一番後ろの、真ん中あたり。みんなが楽しそうに笑っている姿を眺めていると、少し寂しくなってしまう。それも、さすがに慣れたけど。授業が始まる前に、メールを確認しておこう――そう思って、開いてみたら、妙なことが書いてあった。

『授業中は、スマホをバイブモードにして、おまんこの割れ目に挟んでおいてください』

 お、おま……って……! なんかものすごいこと言ってるよ、この人! そんな汚いところに……何をやらせるつもりなの!?

 けど、そのくらいなら……誰にバレることもなさそうだし……。もうすぐ授業も始まるし、いまのうちに準備しておこうかな。マナーモードの……バイブにして……お股に……うー……あとで拭いておけば大丈夫だよね……?

 こうして、授業が始まった。そういえば、授業中は、ってことは、今日一日こんなこと……? そんなことを考えていたら――

 

 ぶるるっ!

「っ!?」

 

 な、なんなの、いまの……! 多分、チャットか何かの着信があったのだと思うけど……

 

 ぶるるっ!

「はぅんっ!?」

 

 吐息に混ざって、変な声が出ちゃった! さすがに授業中にこれは恥ずかしい……

 なのに!

 

 ぶるるっ! ぶるるっ! ぶるる、ぶるるっ!

「んんっ、んんっ、んんんん……っ♡」

 

 教室を見てみると……男子たちがクスクス笑いながら、スマホをコソコソいじってる! なんか、会話してるみたい。多分、クラスチャットのほうで。そこで誰かが発言すれば、クラス全員のスマホに着信する。だから……!

 

 ぶるっ、ぶるるっ!

「んんんっ、んんんっ」

 ぶるっ、ぶるっ、ぶるるっ!

「んんっ、はぁ……っ、んんん……っ、はぁん……♡」

 

 お願い、もうやめて……! これ以上……ぶるぶるされたら……私、私……!

 震える度にお腹の奥が膨れ上がって、こんなの……こんなの……!

 

 ぶるるるるるっ、ぶるるるるるるる……っ!

「んっ、はっ、あっ……あああああああああ……っ♡」

 

 お腹だけでなく、膝のほうまでビクビクっとして……腰がぐにゃっとなって、机に突っ伏してしまった。ここでちょうど授業が終わって……はぁ、助かったかも……。けど……こんなの、一日中……!?

 授業が終わってスマホを確認すると……うぇっ!? なんか濡れてる……? ちょっと、漏らしちゃった……? 帰ったら除菌ので拭いておきたいけど、いまのところは、ティッシュで……

 あんなにぶるぶるさせて、一体何があったのかと思えば……男子のひとりがしりとりを始めたみたい。けど、悪ふざけが続いて……下ネタやら、『ん』がついてるのに強引に続けたり……はぁ、酷い目にあったぁ……♡

 けど、普段はこんなことしないのに、どうして今日に限って……? だから、私は何となく気づいてしまった。この中に、犯人がいるって。私のスカートの中を盗撮して、変なメールを送ってきている犯人が。同じクラスなら、私の家を知っててもおかしくはないし。……誰だろう? 私はお股にスマホを挟みながら――犯人捜しも頑張ってみるつもりだった。

 

 まあ、全部の授業でしりとりなんてやってたら、先生に怒られちゃうよね。だから、次の授業はわりと静か。けど……

 

 ……ぶるるっ

「はぅんっ♡」

 

 不意打ちみたいにぶるぶるされたら、うっかり声も出ちゃうよ。メールマガジンとか、新しいマンガが公開されましたとか、そんな通知が忘れた頃にやってくる。だから、私は……授業中、ずっと退屈しなかった。

 お昼休みが終わる頃、午後の授業に備えて……私はまたお股にスマホを挟もうとする。けど、そこには――

『次の授業では、胸を濡らして、透けた乳首を写真に撮ってください』

 ええええええええ!? そ、そんなことできるわけないよ! 授業中、スマホを出すだけでもバレたら取り上げられちゃうのに、アレやらコレやら……!

 けど、すぐに追い打ちが飛んで来る。

『クラスチャットに、お尻の写真が流れるかもしれませんね』

 それで、私はびっくりして部屋を見回す。まるで、私の反応を見ていたかのようなメールだったから。やっぱり、犯人くんは教室にいるに違いない。それで、私がズルしようものなら……!

 わかったよ、わかったってば! とにかく、私は水筒を机の下の教科書入れにそっと忍ばせて……犯人くんの命令に備えていた。

 そして、授業中――午後になると、みんなぐだっとしてる。その隙に私は……机の下で、こっそり水筒の蓋を開けて――

 

 びちゃっ

 びちゃっ

 

 わっ、冷たい! けど……ちょっと暑かったから、気持ちいい♪

 でも……ぎゃあ!? 乳首どころか、おっぱいが完全に張り付いて……まるでピンクの模様みたいになっちゃってる……!

 私は慌てて両手で隠すと――じーっと教室の様子を窺う。私を監視しているような動きはない。黒板に書き終わった先生が、色々と説明して……そして、また黒板のほうを向く。そういうちょっとしたタイミングで、私は机の下で準備を進めていた。スマホのロックを解除して、カメラアプリを開いて――先生がこっちを向いたら、スマホはしまって、胸はさり気なく腕で隠して――あ、消音モードにしておかないと、撮ったときに音しちゃうかも――なんてことをしている間に、先生がまた振り向いちゃって――よし、今度こそ……!

 

 ピッ

 

 ……はぁ、これで……いいよね……? やることはやったので、私はスマホを……念のために、お股に挟んでおいた。そういう指示はなかったけれど、一応、ね? ……誰かが、メッセージを送ってくれないかな、って待ちながら。

 

 授業が終わって……私はトイレに駆け込んだ。胸を透けさせながらスマホを確認するのも難しいし。

 そうは思いながらも……案外透けてなかったなー、なんて写真を期待していたんだけど……

「!!」

 こ、これは……! 透けてないどころか……おっぱいのところだけ穴が開いてるかのように、ピンと立った乳首と、その周りのピンクのところが……! こんなの、恥ずかしくて絶対両腕離せないって! なのに……!

『可愛く撮れましたか? 僕にもその写真を添付して見せてください』

 これは、何となく予想してた。撮るだけじゃ終わらないんだろうな、って。だから、そのメールに写真を添付して……はぁ。もし犯人くんの言うことを聞かなかったら、これも一緒に流されちゃうんだろうなぁ……顔は入ってないけど、このワンピースで私だって気づく人、どれだけいるんだろう? ……いないかな、多分。そう思うと、ちょっとだけ安心。

 そして、私は誰にも見られないようにビクビクと席に戻る。スカートにも気をつけなきゃいけないのに、胸からも手を離せないなんて……大変すぎる……!

 残す授業はあとひとつ。これさえ乗り切れば……あとは、ひとりだから。授業を受けながらも、だんだん腕が疲れてきてしまって……よく考えたら、先生さえこっち向いてなければいいんだもんね。ふぅ、とひと息ついて、両腕を下ろした。胸のひんやりした感覚は残っている。すると……これってなんだか、おっぱい見せながら授業を受けてるような。ワンピースの上から撫でてみると……プクっとした乳首が手の平にしっかり感じるし、乳首も手の平を感じている。なんだか……服を着てないみたいで、不思議な気分だ。

 

 そして、ようやくすべての授業が終わる。あとは、急いで帰るだけ……って思ってたんだけど……

『放課後、ひとりで教室に残ること。スマホはおまんこに挟んで次の指示を待っていてください』

 いま届いたメールには、そう書かれている。普段の私は、誰よりも早く帰っていた。友だちもいないし、放課後に残る理由もないし。

 そんな私が教室に残っていたら、不自然に思われるんじゃ――そう心配していたけれど、実際には誰も気に留めていないようだった。掃除が終わると、みんなは「これからどうする~?」なんて言い合いながら、次々に教室を出ていった。私の存在なんて、まるで見えていないかのように。

 だけど――そんな中で、このメールを送ってきた誰かは、私をちゃんと見ている。私のことを知っていて、気にかけてくれていて――……そんなふうに考えてしまいそうになる自分が悔しい。だって、こんなにひどいことをされているのに。

 私は、自分の席にぽつんと座っていた。机は二〇ほどだから、教室はどこかがらんとしている。席の間隔はゆったりしていて、通路も広く、誰もいない空間がやけに広く感じられた。

 これから、私はどうなってしまうんだろう。

 本当に誰かが来るの? 来たら、どうなるの?

 ふたりきりの教室で――何かされる……?

 そんなことを想像するだけで、背筋が冷たくなってくる。

 ……すると、突然――

 

 ――ぶるるっ

「ひゃっ……!?」

 

 股の間で、スマホが小さく震えた。

 そのたった一度の振動に――私はびくりと身体を跳ねさせて、そして……どこか、物足りなさを感じていた。うぅ……私、なに考えてるの……変だよ……

 ともかく、いまはメールを確認しないと。私はそっとスマホを取り出し、画面をのぞき込んだ。そして――息をのむ。え……これ、こ、これは……やりすぎ……っ……!

『服を脱いで、窓から下に投げ捨ててください』

 私、今日はこれ一枚しか着てないって知ってるはずなのに……! それを投げ捨てろだなんて……! どうやって帰れっていうの……?

 でも――

 これはもしかすると、ちょっとしたチャンスなのかもしれない。もし、この指示を出した誰かが、私の服を回収しようと出てくるのなら……その姿を捉えられるかも。

 だから私は、服を脱ぐ前に、そっと窓の外をのぞきこんだ。一階の窓の下には、背の低い植木がいくつか並んでいる。茂みは人が隠れられるほど大きくもない――よし、これなら――!

 私の中に変な勇気が湧いてくる。ここまでされて、ただ泣き寝入りなんてしたくない。できれば、誰にもバレずに、自分の手で――犯人を捕まえよう。たとえその代わりに、着ているものを奪われてしまっても……私なんて、どうせひとりなんだし。裸でも、案外どうにかなるんじゃ……なんて考えてしまう。

 誰もいない教室。静まり返った空間の中で、私の中の天秤が、揺れていた。

 ――犯人くんを捕まえるか。

 ――でも、そのために裸で帰る覚悟を決めるか。

 そんなの、普通じゃないってわかってる。

 でも、気づけば私は――

「……えいっ!」

 思いっきり、白いワンピースを脱いで窓の外へと放り投げていた。風にひらひらと舞う様子をちゃんと見る余裕もなく、私はあわてて窓の下に身を隠す。誰かに見られたら、さすがにまずい。

 少ししてから、そっと身を乗り出して、外を覗いてみる。私のワンピースは、植木の上にふんわりと引っかかっていた。すぐにスマホを手に取り、動画アプリを起動。カメラを低く構え、服のあたりを中心に撮影を開始する。

 ――さあ、来るなら来て。証拠、ちゃんと残してやるんだから。

 けど――

 

 ――ぶるるっ

 

 スマホが震える。今度は変なところに挟んでいなかったから、ただ驚いただけ。そして、すぐに新しいメールを確認する。

『裸のまま、ワンピースを取りに行ってください』

 ええええええええ!?

 声には出さず、私は心の中で絶叫する。なにそれ、無理に決まってるでしょ。だって、裸のまま……それって、校庭に出ろってこと!?

 それに、いまワンピースから目を離したら、私の作戦が失敗になっちゃう。……これって、もしかすると、犯人くんの計算のうちなのかもしれない。私が逆に監視していることも全部読まれてて――

 うぅ……でも、従わなかったら……もっとひどいことになるかも……。そう思うと、逆らう勇気も出てこない。犯人くんは撮影できそうにないけど、代わりに服を着て帰れそうだし。

 私は息を呑んで、耳を澄ませる。……風の音しか聞こえない。誰かの気配も、足音も、ない。この校舎には、やっぱり私しかいない――そう思いたい。少なくとも、生徒は。

 それなら、いまのうちに――!

 私は裸のまま、そろりと立ち上がる。見られたらどうしよう、という恐怖と、妙な開放感を両腕に抱えながら、そっと教室の扉まで歩いていく。そして、ドアの隙間から、慎重に廊下を覗き込んだ。

 ……大丈夫。誰もいない。静まり返った校舎の空気が、余計に心臓の音を強調する。

 ――いける、かな……?

 すー……はー……

 深呼吸をして、心を落ち着ける。

 ――グズグズしてても、見つかるだけ。 どうせこんなの、誰か来た時点でアウトなんだから!

 だったら……!

 私は身体を隠すことすら諦めて、思いきって――

 バッ!

 教室のドアを開けて、飛び出した。

 裸で、風を切る感覚。

 こんなの、もちろん初めて。怖い。けれど――どこか、気持ちいい……?

 そのまま一気に廊下を走り抜け、階段を駆け下りる。けれど、いざ一階の廊下に出る直前で、やっぱり足が止まってしまった。……だ、誰もいないよね? 本当に、大丈夫……? だけど、ここでのんびりしている時間はない。この場所は、誰かが通りがかったら逃げ場もないもの。ぐずぐずしていたら、本当に危ない。

 さすがに、靴を履き替えてる余裕もないから、私は心の中で『ごめんなさい!』って叫びながら、下駄箱を通り過ぎ、上履きのまま外へ飛び出した。

 ――わ、わ、わぁ……! 裸のまま、外に……!

 校庭は、広々としていた。どこまでも抜けた空に、胸やアソコが風と陽射しに撫でられてる。教室や廊下とは違う、この開放感。けど、さすがに何にもなさすぎる。隠れる場所も、隠す物も。これは……さすがにヤバイでしょ……!

 私はすぐさま引き返し、慌てて校舎の中へ飛び込んだ。あんなところで突っ立ってなんていられない! でも……ワンピースは、あの先にある。しかも、昇降口は全面ガラス戸。教室や廊下と違って、身を隠しながら外を窺うこともできない。

 だったら――!

 そっと外を覗いてみる。けれど、植木のあたりはちょうど陰になっていて、肝心のワンピースの正確な位置がわからない。それに、あの植木じゃ背が低すぎて、隠れながら向かうなんて到底無理。

 ……じゃあ、一階の教室の窓から、こっそり出て――? そんな考えもよぎったけれど、それはそれで、誰かが残ってたら最悪だ。

 もう……やるしか、ない。パッと取って、パッと逃げる――最短で!

 私は――裸のまま、外へ……!

 左手に広がるのは、何もない、だだっ広い校庭。その向こうには銀色のフェンスが張り巡らされていて、さらにその先には畑や農道まで見えている。そのどこかに、誰かがいたら――私がいま、こんな格好で走ってるのが、まる見えってこと……!? さすがに遠くからじゃ細かくは見えないかもしれない。けれど、それでも、何も着てないことはバレちゃうかも。

 逆に……教室側だって危ない。校舎の窓は、ほとんどカーテンが開け放たれていて、もし誰かが残ってたら……外を裸で走っていく私が、ばっちり見えてしまう。でも、もう――戻ることも、隠れることもできない。私は、ひたすら走る。植木の上を注意深く探しながら、全速力で――

 だけど――

 ――え?

 校舎の反対側の端まで来たところで、私は思わず足を止める。……ない。なかった!? ワンピースが、見つからない……! うそ……まさか、走りすぎて見逃した!? いやいや、そんなはずない。あんなに大きな白い布、見逃すなんて……そんなわけない!

 えっ、えっ、えっ……どういうこと……?

 私はぐるぐると思考を巡らせながら、その場で振り返る。おそらくまだ誰にも見られてないはず。だったら、もう一度――走りながら戻ったほうが早い!

 もしかしたら、風で植木の裏側に落ち込んでるだけかも。とにかく、確かめなきゃ!

 私は再び、校庭を逆方向へ駆け出した。そして、校舎の真ん中あたりまで戻ってきたところで――

 

 ――ぶるるっ

「わっ……!」

 

 スマホが震える。ちょ……ちょっと、待ってよ……! こんな場所で立ち止まれるわけないのに! でも、いますぐ確認しないと、また何か仕掛けられてるかもしれない。私は走る速度を少しだけ落としながら、慌ててスマホの画面をのぞき込む。

 そして、そこに表示されたメールを読んだ瞬間――

『その場で、おっぱいとおまんこが映るように写真を撮って、送ってください。そうしたら、ワンピースをお返しします』

 その場!? その場って……この場!? 走り抜けて、校舎の中でメールに気づいた、ってことにしちゃダメかなぁ……? けど、この狙いすましたようなタイミング、監視されてる可能性が高い。だったら……あああっ! もう!

 私はとにかく大急ぎで――言われた通りに写ってることだけを確認しながら……ピッ! そして、写真だけ添付して……!

 やることをやったら、私は校舎の中へと逃げ込んだ。ここもまだガラス戸の中だから安全ではないのだけれど。でも、早くワンピースを返してもらわなきゃだし。

 すると、その返事はすぐにきた。

『とっても可愛いですよ。いい写真です』

 そんなのどうでもいいから、ワンピース!

『ワンピースは図書室に置いてきました。全裸のまま取りに行ってください』

 なにそれ聞いてない! 普通に、風で飛ばされただけじゃなかったの!? ていうか、それってつまり……犯人くんがわざわざ拾って、持ち去ったってこと――!?

 私は息を呑む。そんなの、もう確定じゃん……見られてた。どこかから、ずっと。そして、いまも……どこかで誰かが、私のことを見ているに違いない。図書室といえば、下駄箱から一番遠い部屋。つまり、校舎を端から端まで歩いていけってこと……!?

 しかも――

『服を見つけたら、着る前に図書室で写真を撮って送ってください』――多分、誰かに頼んで持ってきてもらうようなズルをしないように、ということだと思う。そんなこと頼める人、いるわけないのに。

 校舎は二階建てだけど、職員室が一階にあるから、私は真っ先に階段を上った。けど、二階には私たちの教室もある。クラスメイトに出会っちゃうかも。私はいつでも教室に逃げ込めるように構えながら一生懸命走って……そっと図書室の扉に隙間を開ける。そこに誰かの姿はなさそう。けど、この部屋は本棚も多いし、どこから人が出てくるかわからない。

 慎重に、中の様子を窺うと――

「!」

 奥の机に乗ってる白い布……多分、私のワンピースだ! とにかくあれだけは取り戻さないといけない。から、私は勇気を出して……!

 図書室の中は、いつもと同じように静かだった。薄く閉じられたカーテン越しに、やわらかい光が差し込んでいて、壁際の本棚には、色とりどりの本がいくつも並んでいる。四角く並べられた読書机には、誰の姿もなく、その空気は少しひんやりしているように感じられた。

 けれど、私にとってはただの静けさじゃない。どこかに何かが潜んでいるような、張り詰めた空気を感じてしまう。その中に、私の鼓動の音だけがやけに大きく響いていた。

 テーブルの上のワンピースのところまで走って行ったら――まずは、それを掴んで机の下に隠れて……そのままこっそり写真を撮って……これからのことをイメージしながら、私はなるべく足音を立てないように図書室へ飛び込む。そして、その机まで一直線!

 けど、服のところまで辿り着く前に――

「えっ!?」

 呼び止めるような小さな悲鳴に、私は思わず足を止めた。扉のところから見えなかった柱の陰にいたのは――日和ちゃん――!?

 

 図書館に他の人がいなかったのは、不幸中の幸いだった。けど、私には――やらなきゃいけないことがある。

「え……写真、撮るの?」

 日和ちゃんが、戸惑ったように小さく尋ねる。

「……うん。そうしないと……」

 私は写真をバラまかれてしまう――日和ちゃんにははっきり言わなかったけれど、何となく状況は察してくれたみたい。

「……わかった。じゃあ……私が撮ってあげる」

「あ、ありがと……」

 これまでの写真は全部自撮りだったから、ちゃんと身体を入れるのが意外と難しくて。けど、今回は日和ちゃんがいてくれるから――少しだけ、心強い。

 私は図書室の中だとはっきりわかるように、本棚が背後に映る位置に立った。そして、ワンピースが置かれていた机の隣に立ち、両腕で顔をしっかりと隠す。

「……撮るね」

 日和ちゃんが、そっとスマホを構える。シャッター音が静かに鳴り、すぐにふたりで画面を覗き込む。すると――

「わぁ……えっち……」

 日和ちゃんが、ぽろっとつぶやいたけど、

「……あっ、ごめん……」

 すぐに顔を赤らめて、慌てて謝った。その様子に、私もつられて、少しだけ顔を緩める。

「ううん、私も……そう思うから……」

 日和ちゃんの言葉に、私は小さく頷く。正直、“気持ち悪い”とか“ヘンタイ”とか、そういう反応じゃなくて、本当に良かった。私のことを、嫌わないでいてくれる――少なくとも、そう思えた。

 私は写真を添付して、メールを送信する。送信完了の表示が出た直後、日和ちゃんが気まずそうに尋ねた。

「……脅されてるの?」

「……うん」

 どうやって脅されているのか、もはや説明の必要はない。ここまでの流れを見れば、それだけで十分に伝わる。

「こ、このことは、みんなには……」

「それはわかってる。でも……これから、どうするの?」

 私は少しだけ俯きながら、言葉を探す。

「……わからない。でも……」

 このままずっと続けていくわけにはいかない。そのことだけは、はっきりしていた。だから――

「……捕まえよう、私たちで」

 日和ちゃんのその言葉に、私は驚かなかった。むしろ、自然と、胸の奥から力が湧いてくる。

「……うん。私たち、ふたりなら……!」

 さっき、ワンピースを窓から投げたときだって――もし、あのとき日和ちゃんに頼んで、下で見張っていてもらえたら……きっと、服を回収しに来た犯人くんを、捕まえられたはず。

 そして、何より――

「日和ちゃん、今日の放課後、図書館に誰が来たか覚えてる?」

 このワンピースがそこにあったということは、その中に犯人くんがいたということ。それは確実。そして、日和ちゃんは図書委員だから、司書としてずっとここにいたんだよね。

 けれど――

「う、うーん……」

 日和ちゃんは、申し訳なさそうに眉をひそめる。

「私が貸し出しをしたのは、女のコひとりだけで……」

 なんだか曖昧な言い方。首を傾げていると、日和ちゃんが少し恥ずかしそうに説明してくれる。どうやら、彼女はずっと司書カウンターに座っていたわけではなかったらしい。実際、私が図書館に入ったときも、カウンターには誰もいなかった。普段の日和ちゃんは、棚から本を選んで、机のほうで静かに読書しているのだという。で、誰かが本を借りたいときは――机の上に置いてあるベルを『チーン』と鳴らして知らせる仕組みらしい。

「ごめんね。扉が開く音は何回か聞いた気がするんだけど……」

 そう言って、日和ちゃんはうつむく。チーンが鳴らない限り、誰かが入ってきても、そんなに気にしてなかったって。

 つまり――

 犯人くんが入ってきたとしても、日和ちゃんは気づけなかった可能性が高い。そして、ワンピースはいつの間にか、あの机の上に置かれていた。

 ……また、振り出しに戻ってしまったみたい。だけど。

「ううん、ここからは……!」

 ここからは、日和ちゃんという協力者がいてくれるから。そのつもりで動けば、きっと犯人くんを追い詰めることだって――!

 

 けれど――

 あの、図書室での写真は良くなかったらしい。これまでの自撮りとは違い、明らかに誰かに撮ってもらったとわかる構図だったから。

 多分、それが“ルール違反”だったのだろう。それで、翌日送られてきた新たなメールは、容赦なく――とんでもない指示を突きつけてきた。

「こ、これ……!」

 思わず、私はスマホを握る手に力が入る。画面に表示されていた内容は、信じがたいものだった。

「おしっこしてるところを動画で撮れ、だなんて……!」

 これにはさすがに声が震えた。なにそれ……犯人くん、もう完全にヘンタイじゃん……! しかも、男子トイレの小便器で……ってことは、立ったまま、ってことだよね……? 女のコはそんなことしないって知らないの!?

「と、とにかく……放課後まで待たなきゃ……だよね……」

 日和ちゃんが、緊張した面持ちで言う。

「……うん」

 少なくとも、男子がみんな帰ってからじゃないと無理。それまでは、私はなるべく目立たないようにして――なるべく水を多めに飲んで、おしっこの準備をしていた。

 

 そして、放課後。校舎の隅にある男子トイレに、私と日和ちゃんはそっと足を踏み入れる。

 当然、入るのは初めてで――

「……これが、小便器……なんだ」

 横一列に並ぶ見慣れない器具を見て、私は思わず小声でつぶやく。

 普段なら絶対に見ることのない場所。なのに、今日はそこで――

「えーと……そもそも、どうすればいいんだろう?」

 トイレの中に立ち尽くしながら、私は不安と混乱でいっぱい。

「ひとまず、パンツは……あ」

 日和ちゃんが、申し訳なさそうに言う。最近、犯人くんから変な命令ばっかりもらってるから、今日はズボンで来てたんだよね。けど、こういうことなら……スカートならいつでもサッと隠せたのに。けど、ズボンだから……ちゃんと脱ぐしかないと思う。膝まで下ろすだけじゃ、濡らしちゃいそうだし。けど、それじゃ、とっさのときに穿き直せない。

「だ、誰か来たら、私がガードしてあげるから……」

 日和ちゃんが、心配そうに励ましてくれる。

「う、うん……ありがとう」

 でも、本当のところは――もし誰かに見られたら、私たちふたりとも終わりかもしれない。女子が男子トイレにいるなんて、それだけでもとんでもないのに、立ったままおしっこしてた、なんてウワサになったら……

 日和ちゃんの前で裸になるのは、これで二回目。だから、図書館のときよりは、ほんの少しだけ恥ずかしさが薄れている。けど、トイレで……しかも男子の、ってなると、恥ずかしいというより“悪いことをしてる”という気持ちの方が強い。

「そもそも、どうやって撮ればいいんだろ?」

 日和ちゃんがスマホを構えながら、困ったように相談する。私が壁の方を向いて立っているから、部屋の構造的に、撮影するスペースもあまりない。

「男子トイレだってわかればいいから……横からじゃないかな?」

 犯人くんだって、さすがに“壁に穴を開けろ”なんて無茶なことは言わないはず。

 一応、撮影の方針は決まったけど……それにしても……うぅ、なにこの、ものすごく変な感じ。トイレの床の冷やかさ。並ぶ小便器。少しこもった空気。そんな中で、私は下半分裸でおしっこしようとしている。しかも、立ったまま。――落ち着けるわけ、ない。

「頑張って! ……出るときは言ってね」

 日和ちゃんの声が、緊張の中で優しく響く。

「……うん」

 恥ずかしくても、やるしかない。男子トイレで、パンツ脱いで――おしっこ。そもそも、このシチュエーション自体が死ぬほど恥ずかしい。男子トイレでアソコ丸出しで……シやすいように割れ目を両手でしっかり開いて……しかも、ガニ股で。もし顔まで写っていたら……想像しただけで、本当に死にたくなる。でも……それでも、私はやると決めた。がんばれ、私――! とにかく、できることはやってみる。大きく深呼吸したり、お腹にしっかり力を入れてみたり。

 そして――

「……っ!? 出るかもっ!」

 そのとき、私はつい叫んでいた。お腹の奥に走った、妙な確信。この一回で決めなきゃ――そんな“予感”に突き動かされて。

「うんっ!」

 日和ちゃんが、すぐさま撮影ボタンを押した……ような気がする。その瞬間――

 

 チョロロロ……

 

 ――少しあふれ出した後は――

 

 シャアアアアアアア……

「はぁぁぁぁぁぁぁ……♪」

 

 喉から、思わず安堵の吐息がこぼれる。しっかり溜めておいたおかげか勢いは強く、とりあえずはまっすぐ受け皿のほうへと飛んで行ってくれてるみたい。

 けど……最後のほうになってきて……勢いが弱まると、徐々に足元のほうに……受け皿にさえ届かなくなって……ひぇ~……床にポトポト落ちちゃってるぅ……

 とりあえず、腰を振って軽く飛沫を取ったところで……撮影終了。あとは、普通に紙で拭いといた。それに、手もしっかり洗ったし。

 終わった……やりきった……!

「す、すごいことしちゃったね……」

 動画を送りながら、私は少し興奮気味に笑いかける。男子トイレの小便器で立ちション――そんな非日常の体験。怖かったし、恥ずかしかったけど……それでも、やり遂げたっていう実感があった。

 けれど――

「……うん」

 日和ちゃんは、落ち着いた声で返すだけ。その表情も、どこか静かで、いつもの彼女とは少し違って見えた。……あれ? もしかして……引かれちゃったかも……? そんな不安が一瞬よぎる。でも、それ以上に彼女の反応は、どこか掴みきれないものだった。

 

 犯人くんからのメールは、一旦そこでピタリと止まる。もしかして、飽きちゃったのかな……? ほっとした反面、捕まえてやりたかったなぁ、という思いと……ちょっとつまんないなぁ、というガッカリ感。日和ちゃんには、まだ保留としてある。もしかしたら、また何かあるかもしれないし。だから――一日おいて、犯人くんからメールが来たときは、ちょっとドキっとしてしまった。少しだけワクワクもしたかも。けれど――その命令は――いよいよ、犯人くんが学校の誰かだと確信させるものだった。

 

 その週の土曜日――お母さんが帰ってこなかったのは――良かったのか、悪かったのか。少なくとも、こんなことをしているのがバレなかった、という点に関しては、運が良かったのかもしれない。念のため、鞄の中には体操服を隠してある。万が一、本当にまずいことになったら――そのときは、写真をばらまかれる覚悟で切り替えるしかない。

 そして私は裸のまま、鞄を背負い――玄関を開けた。

 

 この学校には、『土曜補習』というものがあって――先生は来ないのだけど、参加希望の生徒が集まって、みんなで授業をする日があるみたい。そこに……全裸で登校しろって! しかも、そのまま一日全裸のまま過ごせとか!!

 これには、日和ちゃんもビックリしてたけど……

『もう、みんなで犯人くんを捕まえよう!』

 幸いなことに、今回の土曜補習には女のコしか参加しないみたい。だから、みんなにも相談して……!

 それに、私も……このままこんな感じで、隠しながらコソコソしてたら、いよいよ怪しいコ、みたいに思われちゃうんだろうなぁ、って心配になってきてたから。それならいっそのこと……脅されて仕方なくやってる、って知ってもらったほうがいいかも、って。

 

 そんなわけで、当日の早朝。人目を避けるため、こんな時間の出発となった。もともと人通りの少ない場所だけど、この時間帯ともなれば、本当に人の気配がない。……けど、もし誰かとすれ違ったら? もし、その人に顔を知られていたら、これから私、どうなっちゃうんだろう……。そんな不安に怯えながら、私はそっと戸締りを済ませた。

 スマホには、自撮り棒がついている。家を出る直前に装着してきた。動画アプリも、もう起動してある。おっぱいとおまんこが映るように――それが今回の指示。でも、顔については、特に言われてなかった……はず。だったら、できるだけ映らないように、気をつけよう。

 こんなとんでもない格好で歩いているというのに――自分でも信じられないけれど、ちょっと“慣れて”きている。……それって、かなりヤバいのかも。

 出発してすぐのあたりは家が密集していて、道幅も狭い。その分、曲がり角や塀の陰、物置の裏など、身を隠せる場所は色々ある。けれど、それでも油断はできない。静けさが、不安を余計に際立たせていた。

 そして、しばらく歩いていくと……目の前に堤防が現れる。その下には広くて長い車道。信号もないからさっと渡って、その高台へと上っていくと――そこは海と畑に挟まれた、見通しのいい一本道。何も遮るものがない。ここで誰かと出くわしたら……その瞬間に、すべて終わる。逃げ場も、隠れる場所も、なにもない。なのに、こんな危ういところで、私は――

『朝のおしっこは、堤防で海を眺めながら、立ったまますること』

 うぅ……立ったまま、というのは前に日和ちゃんと一緒に挑戦したおかげで、やれないわけじゃない。なら、やるしかない。私は自撮り棒を左手に持ち替えて、深呼吸をひとつ。右手は……二本の指で……わっ!? 私の、アソコ……ぬ、ぬるぬるになってる……? なんで……? 私、もうおもらししてたの……? でも、やることは、やらなきゃ――。指を滑らせないようにしっかり開いて……

 ……あぁ。海って、こんなに広かったんだ。朝の光を受けて、一面静かにきらめいている。波はまだ穏やかで、遠くのほうでは白く光る波が静かに寄せては返している。空は澄みわたり、海との境界線すら曖昧で――それが、かえって心細さを際立たせる。

 なのに、私はそんな風景のなかで、こんな格好で、これから……

 ……後ろも気になる。下の道路を車が――びゅーんって勢いよく走り抜けてくれれば、逆に気づかれずに済むかもしれない。わき見運転とかしていないようなら。

 でも……左右。来た道も、これから進む道も、どちらかから誰かが来たら――ダメ。アウト。こればっかりは、どうにもならない。だから、早く……早く終わらせなきゃ。

 お腹に力を入れて……でも、緊張から、なかなか出てくれなくて……けど……ちょっとだけ、下のほうに溜まっていくのを感じたら――

 

 ビチャビチャビチャビチャ……

 

「あ、あぁ……あぁ……♡」

 吐息に混じって、変な声が漏れてしまう。立ったままおしっこしてるだけでも十分おかしいのに、裸になって、こんな見晴らしのいい場所でなんて――どこをどう切り取っても、常識から外れてる。足の間に広がっていく水たまり――でも、海風がおまんこにふわっと流れて、朝の空気が肌に触れると、ほんの少しだけ……解放感に気持ちよくなってしまった。

 けれど、我に返った瞬間――恥ずかしさと、おしっこ跡から逃げたい気持ちが一気に込み上げてくる。私はカメラを回したまま、小走りで堤防の上を駆け出した。画面はブレブレだけど、裸はちゃんと映っているはず。……多分、大丈夫。

 やがて、学校が近づくにつれて、周囲は再び住宅街に変わってくる。このあたりは家が密集していて、路地が入り組み、塀や植え込みが多い。そのぶん、人の目も増える。どこから誰が現れてもおかしくない。だからずっと、心臓がドクドクしてる。立ち止まっている余裕もない。

 そして、ようやく……はぁ、やっと着いた……。まだ、朝の七時にもなっていない。けれど、校門にはほんの少しだけ隙間が空いていた。私はそこからするりと入り込む。校舎のドアも、すでに開いていた。裸のまま、下履きだけ脱ぎ、上履きに履き替える。変な感じ。

 がらんとした廊下を、私は静かに歩く。不思議と、さっきまでの緊張はもうなかった。これくらいじゃ、全然平気になってきている。だって、ここなら――どうにでもなるから。教室だって、どこも空っぽだろうし。それに、誰かが近づいてくるなら足音でわかる。“慣れ”って怖い。

 私は、自分の教室の前まで来た。今日はこれから、みんなと一緒に“授業”を受ける。私が変なことをしてるって、いよいよみんなにバレてしまう。

 ……でも。

 これまでほとんど話したこともなかったみんなが、私のために“協力してくれる”って聞いたとき――それは、少しだけ嬉しかった。

 授業の時間はいつもどおり。開始の時間も。だから、私は教室でひとり、一時間以上もぽつんとスマホをいじっていた。まずは……ここまでの動画を送らないと。ちゃんと、裸でここまで来たよ、という証明として。それが済んだら……指示は『裸で学校に行って』『裸で授業を受ける』だったから、この待ち時間までカメラを回し続ける必要はない。スマホもいっぱいになっちゃうしね。

 そして、今日の指示を何度も読み返してみる。少なくとも、新しいメールは届いていない。つまり、やっぱり今日はこのままでいろってことなんだろう。

 それから、女子グループのチャットルームを開いてみた。少しずつ細かい作戦も書き込まれている。

『みんなでちょっとずつ時間をずらして登校しよう』

『校門付近や裏門、昇降口で怪しい人がいないか見張ろう』

『声かけられたら録音ボタン押すこと』

 ――そんなやりとりが続いている。わかりやすいことに、今日の土曜補習は女子だけの参加だから、男子が来れば一発でわかる。その条件も、私たちにとっては都合がよかった。

 そして、授業が始まる三〇分前――

「お、おはよう……」

 日和ちゃんが、そっと教室に入ってきた。

「おはよう……」

 私も、ぎこちなく応じる。平気なフリをしてもらってるけど……やっぱり、気になっちゃうよね。私、裸で堂々と席に座ってるんだから。そのあとも、ぽつぽつとクラスメイトたちが登校してくる。みんな、それぞれのタイミングで入ってくるけれど――その目線は、みんな私に向けられていた。

 そして、全員が揃ったところで――

「えーと……授業の様子は、撮らなきゃいけないんだっけ?」

 日和ちゃんが、教室の空気を壊さないように、そっと確認する。

「う、うん……」

 私はこくんと頷く。これまでは、隠れて撮っていたけれど、今日はもう、みんな知っている。隠すことなんて、何もない。

 私は、空いている男子の席を借りて、そこにスマホを立てかけた。レンズの向きと角度を調整して、カメラを起動する。

 そして――授業が始まった。

 みんなで代わる代わる先生役を交代していく。それぞれが、自分の得意科目を担当する形で。教壇に立ってるコたちが、私のことを気にしているのがどうしてもわかってしまう。これは……恥ずかしいというより、どこか新鮮な気分。これまで、ずっと隠れてやってきたから……こんなに見られる、というのは初めてだし。

 そして、ついに私が先生になる番がやってきた。日和ちゃんがカメラの向きを変えてくれる。

 私はこの村に来てからまだ日が浅い。だから、自分なりにこの村のことを調べて、発表することになっていた。大きな紙には村の全体図を書いて、ここには古墳があって、ここには川が流れていて、昔は……みたいな感じで。

 けど……みんな、そこに注目してない。みんなが注目してるのは、私の身体。胸とか、アソコとか。これまでは先生役のコひとりからだったけど、いまは……一〇人近くのみんなから、一斉に視線を浴びてしまっている。恥ずかしいはずなのに……お股はまるで、スマホを挟んでぶるぶるしているかのような感覚があって……

「そして、この山を切り崩して作られたのが……ぁ……♡」

 つい、気の抜けたような声が混ざってしまう。それが恥ずかしいんだけど……ちょっと気持ち良くもあった。

 

 午前中の授業もいよいよ最後。その科目は……なんと体育。みんなが体操服に着替え始めるなか、私は――鞄の中の体育着を見つめたまま、手を伸ばさなかった。だって、メールには『一日全裸で過ごすように』と書いてあったから。体育の時間だけ特別、なんて許してくれるわけがない。私は鞄をそっと閉じて、みんなと一緒に教室を出る。

 体育館もプールも閉鎖されているから、授業は校庭。今日は曇り空で、日差しも柔らかい。直射日光じゃなくて良かった~……――なんて、そんな呑気なことを思いかけて、すぐに首を振る。私、これから一時間、明るい校庭で裸のまま過ごすんだ。だけど、いまさら引き返せない。下手に目立つ行動を取ったら、それこそまた写真のことを持ち出されるかもしれない。

 だから、私はできるだけ“自然”に振る舞うようにしていた。準備運動が始まると、クラスのコたちがさり気なく私の周囲に立ってくれる。少しでも裸の私が見えないように。でも、ふと思ってしまった。――これ、外から見たらどう映るんだろう。体操服のコたちに囲まれて、ひとりだけ浮いている全裸の私。なんだか、CGで無理やり合成されたキャラクターみたいじゃない? そんなことを想像してしまって、ますます自分の存在が“特別”に感じられていた。

 そして、次はトラックに沿ってランニング。このあたりになると、さすがにガードも難しい。近づきすぎるとぶつかっちゃうし、逆に間隔を空けると“囲い”にならない。それでも、みんなが距離感を気にしながら、私のすぐ前後に位置を取ってくれるのがわかる。走っていても、胸に熱さを感じていた。嬉しさと、恥ずかしさと、申し訳なさが、ごちゃ混ぜになって。

 

 そして――お弁当の時間。授業の様子は撮影しろと言われているけれど、休み時間に関しては何も書かれていない。だからいまだけは、スマホのカメラはオフ。録画もしていない。

 そのおかげで、いまこの教室は、ちょっとした作戦会議の場になっていた。みんなで座席を寄せ合って、私の周りを囲むようにしてお弁当を広げている。だからか――

「少なくとも、体育の授業中には変な人は見かけなかったけど……」

 佐藤さんがそう言いながら、ちらちらと私の乳首に視線を送ってくる。……やっぱり、女子同士でも気になるんだ。でも、正直それはわかる。もし、佐藤さんが裸だったら……私も、やっぱりそこに目がいっちゃうと思うし。

「ところで私、ちょっと思うんだけど……」

 と、清水さんが顔を寄せてくる。

「カーテンを開けておけって指示もあったんでしょ? ってことはさ、やっぱり、遠くから見てるってことじゃない?」

「望遠鏡でも用意してるのかしらね」

 長谷川さんが茶化すように言う。

「ていうか、動画撮らせてるのに、わざわざ生で見るの?」

 吉田さんが、少し真面目な顔で言った。

「確認って意味じゃない?」

 南野さんが、ポツリと補足する。もしかしたら、それもあるかもしれない。

 みんな思い思いに推理を巡らせていたけれど、結局のところ、明確な答えにはたどり着かない。ただひとつ確かなのは――どこかから、誰かが見ている。その実感だけが、じわじわと胸に広がっていた。

 

 そして、午後の授業もすべておしまい。……今日一日、ようやくやりきった……! そう思ったのも束の間、スマホに届いた新たな指示。

『鞄は学校に置いていってくださいね』

 ……ぅっ……。こっそり体操服を持ってきてたの、やっぱりバレてたんだ。帰りは、動画の撮影こそ指示されていない。でも、それは“服を着ていい”という意味ではない。むしろ、“奥の手”がなくなった分、もっと……どうにもならない。

 加えて、こうも書かれている。

『ちゃんとひとりで帰るんですよ』

 そ、それはもちろん、これ以上みんなに迷惑かけるわけにはいかないから……。けど……ちょっとだけ心細い自分もいる……

 やがて、クラスのコたちは「またね」「気をつけてね」と声をかけながら、それぞれ帰っていった。でも、私はまだ、帰れない。だって、私は裸のまま。この格好で、明るい道を歩けるわけがない。少なくとも、夜の暗さに紛れられる時間になるまでは――

 そして、夜八時。ようやく、私は校舎の扉をそっと開けて校庭に出る。そこで、ふと思い出していた。朝、裸で外に出たときのことを。あのときは、心臓が飛び出しそうなくらい緊張していたのに――いまでは、なんだかずっと前のことのように感じる。……だって今日は、それ以上のことをずっとやってきたから。

 右手には、自宅の鍵。

 左手には、スマホ。

 身体を隠すものは、なにもない。

 私はそのまま校庭を横切り、暗がりの中を歩いて――校門の隙間から、そっと道路へ出た。――行きと同じように。

 たしかに、外は暗かった。幸いなことに、街灯もそこまで多くない。だから、私の姿をはっきり照らすことは、ほとんどない。それでも――まだ誰かが出歩いててもおかしくない時間帯だものね。遠くから車や自転車の気配が近づいてくると――私はすぐに道を曲がったり、植え込みの陰に身を隠したり。歩いている人がいないのが、何よりの幸運。だって、私……今度こそ、本当に何も持っていないもの。いざというときのための体操服も、鞄も、全部学校に置いてきた。もし、誰かに見つかったら――それも、ライトをつけていない徒歩の人に――この暗がりじゃ、本当に近づくまでお互い気づけない。そして、そんな間近で鉢合わせてしまったら――逃げる暇もないくらい、すぐ傍で――そんなことを考えながら、私は誰もいない道を探していた。

 ようやく堤防のあたりまで辿り着いたとき、私はそっとスマホで時間を確認する。――普段なら、五分もかからない距離なのに、もう一〇分以上経っていた。でも、ここからはまっすぐ。もう迷うことさえできない。車道側には、ぽつりぽつりと街灯が立っていて、淡い光がアスファルトを照らしている。けれど、その上の高台――堤防の道には、本当に何もない。

 私は、裸のまま、真っ暗な中を歩いていく。本当に何も見えなくて、まるで黒い布に包まれているみたい。そこには、誰にも見られていない、という安心感があった。

 だけど――なぜだろう。どこか、少しだけ物足りなさも感じている。

 夜は、まだ浅い。むしろいまは、ちょうど仕事帰りの時間帯なのかも。車道のほうでは、時おりヘッドライトが行き交う。堤防の上までは、さすがに見えない……はず。でも、もし自転車が近づいてきたら――そんなことを考えてしまう。前方からライトを照らして、まっすぐこちらに向かってくる自転車――そのライトが私の全身をピカッと照らすと――闇に包まれていたはずの私は、一瞬で露わになってしまう。私を包んでいた黒い生地が、その光ですぱっと切り取られるように。そんな想像に、私は思わず――ドキドキしてしまった。

 ……なんか、おかしい。

 最近ずっと、こんな変なことばかりしてきたせいで、感覚が麻痺してるのかもしれない。

 もしかして、私――裸になるのが、ちょっと楽しくなってきてる……?

 幸いなことに、一〇分ほど歩いているあいだに、自転車がやってくることはなかった。でも、もし来ていたら――きっと私は、土手をさっと下りて、どこかに身を潜めていたと思う。そのくらいで、誰にも気づかれないような暗さだから。

 けど、そのとき――『私を照らしてくれたら』なんて――そんなことを、心のどこかで願っていたのかもしれない。

 

 そして、家の近くまで来た頃には――私は、本当におかしくなっていた。このあたりは、本来なら急いで駆け抜けるべきところ。街灯がぽつぽつと立ち並んでいて、その光の下に入るたび、私の姿がはっきりと浮かび上がる。胸の先から、お股まで。

 そして少し進むと、また暗闇に溶け込む。

 けどまた光に晒され、そして闇に紛れる。

 そんな繰り返しが――妙に楽しい。

 おかしい。

 本当に、おかしいってわかってる。

 けれど、止まらない。

 少し疲れたのかもしれない。

 あるいは、もう抵抗する気力がないのかも。

 足取りは遅く、まるで歩くたびに“晒されること”を楽しんでいるみたい。

 街灯に照らされ、通り過ぎて、また照らされる。

 そのたびに、心のどこかがざわついて、じんわりと熱を持つ。

 そして――

 もうすぐ家なのに。

 私は、ある街灯の下で、ふと立ち止まってしまった。

 そして、わざわざ排水溝の上にしゃがみこんで――と思ったけど、すぐに立ち上がって――

 こんなところで? わざわざ?

 そこの角を曲がれば、すぐに家。

 この灯りは、誰が見ても目に入る。

 遠くからでも、通りの先からでも、はっきり見えてしまう。

 そんな場所で――

 なのに、私は……靴が濡れちゃうかも、なんて、変なところだけ気を使って裸足になって、膝を大きく開いて――

 

 チャァァァァァァァ……

 

「…………♪」

 口元から、自然と小さな吐息がこぼれる。今度は――朝のときほど、緊張しなかった。少し力を込めただけで、すぐにあふれ出してくる。けど……意外と出るなぁ、なんて思いながら、私は靴をひょいと指先で拾い直して、裸足のまま――ヒタヒタ――ピチャピチャ――あぁ……あはぁ……私、おしっこしながら歩いてるんだぁ……。こんなことってある? まるで、夢の中にでもいるみたい。

 内ももからふくらはぎの方までおしっこで濡らしながら……次の街灯の下に差し掛かったとき――何となく止まった気がする。こんな自由なおしっこ、初めてだ。そして、楽しい……♪

 ひどく、いけないことをしている気がするのに――楽しい……

 何だろう。すごく悪い遊びを覚えてしまったような。私は、そんな自分に気づきながら、でも止まることなく、ずっと握っていた右手の鍵で、玄関の扉を――そっと、開けた。

 

 もし――お母さんが帰ってきていたら……本当にビックリしただろうし、なにより、とても怒られていたと思う。けれど、家の中は静かで、電気もついていなかった。

 私はそのままお風呂へ直行。そして、脱ぐものもなくシャワーを浴びた。さっき、おしっこしたばかりで足も濡らしてしまっていたし……あ、ここまでの廊下も念のために拭いておいたほうがいいかも……? そんなことを冷静に考えているほど――私はもう、この“遊び”にすっかり馴染んでしまっていた。

 だから――今日は、パジャマには着替えない。なんとなく、このまま裸でいたかったから。そのほうが気分もいいし。ここは、誰もいない自分の家。誰に見られることもないし、恥ずかしがることもない。けれど――それは、本当は普通のことじゃない。だって、これまでお風呂以外でこうやって過ごしたことなんてなかったもの。

 裸でご飯食べたり、歯を磨いたり……どこか、晒されているような感覚が心地いい。だからこそ、ちょっとした“遊び心”も湧いてくる。

 これまでは、怖くてちゃんと見られなかった。自分が写っている動画なんて、恥ずかしくて直視できなかったのに。でも――いまなら、見られそうな気がする。それも、小さなスマホの画面じゃなくて、家用の大きなタブレットで――

 私はゆっくりとその端末を手に取って、部屋のベッドにゴロンと横になった。すると、そこに表示されたのは――

「……こんなの撮ったなぁ♪」

 裸で一日授業を受けてきたばかりだから、濡れて透けたおっぱいくらいなら全然大したことなく思っちゃう。けど……あの日は男子も一緒だったから……もし、男のコに見られたら、どう思われたかな……? そう考えると……ドキドキしてしまう。

 次は……放課後の教室で。けど、このあと廊下を出ることになって、校庭にまで……その写真もちゃんと残ってる。あのときは本当に焦ってたから……つい校舎のほうを向いて撮っちゃったんだよね。だから、私の後ろには校庭が広がってて……ホントに、すごいところで裸になってたんだなぁ、って改めて思う。

 そして、図書室。ここで日和ちゃんにバレちゃって……けど、自撮りじゃなくて他の人に撮ってもらえるようになったから……何というか、ここまでは命令に従った証拠だったけど、これは……しっかり『撮影してます~』って感じだよね。犯人くんが調子に乗るのもわかる気がするよ。

 だから、次は――わぁ……私、男子トイレで……。タブレットの大きな画面に映し出されたのは、あのときの動画。改めて見ると、画角も綺麗に収まっていて、動きも思ったよりスムーズ。ここまで丸裸が多かったけど、これは……下半裸、っていうのかな。こういうのも、意外と……えっち……♡

 しかも。

『はぁぁぁぁぁぁぁ……♡』

 自分の声が、部屋中に響く。喉の奥から漏れる、気持ちよさそうな吐息。顔は映していないはずなのに、どんな表情をしていたかまで思い出せてしまう。私は、釣られるようにスマホを手に取り、股の間に挟んでみた。……でも、当然ながら、着信なんて都合よく来るわけもない。

 それで、代わりになるものを探してみることにした。キーワードは、『バイブ』みたいなやつ。そしたら――『バイブレーター』という名前のアプリが、ずらっと並んだ。それを見た瞬間、なぜかドキドキしてしまう。これだ、って思った。これがきっと、私がいま、求めてるものなんじゃないか――そんな直感。

 何となくで選んで、ひとつをダウンロードしてみた。起動すると、ピンクのボタンがいくつも並んでいる。英語ばかりで詳しい機能はよくわからなかったけれど、中央に電源っぽいマークがあった。

 私は、そっとそれをタップしてみると――

 

 ぶるるるるるるるるる……っ

「わっ……!」

 

 思った以上に強い振動。スマホがブルブルして止まらない。ちょっと怖くなって、すぐに停止ボタンを押す。でも――もう、次は驚かない。私はゆっくりと、スマホをお股の……割れ目の奥にぐっと差し込んでから、もう一度、さっきの電源ボタンに指を伸ばした。

 

 ぶるるるるるるる――

「あ……っ……あ、ああぁ……っ♡」

 

 予想以上に強く響く振動に、私は思わず声を漏らしてしまう。やばい……これ……本当にやばいかもしれない……! アソコが、特に前のほうが、びくびくと反応して――何かが突き抜けていくような、不思議な感覚に襲われる。

 そんな中、私は手元のタブレットで、次の動画を再生していた。私が――家の前で、裸のまま立っているところから始まる映像。画面には映っていない細かい記憶まで、ありありと蘇ってくる。玄関を開けたとき、心臓の音がやけに大きく感じた。海に出るまでは、本当に焦っていたけど――堤防を歩き始めたあたりからは、どこか気持ちよくなっていた気がする。しかも、あんなところで……おしっこしちゃった。指で掻き分けるように割れ目を開いて。誰に見られてもおかしくない場所で、海風を受けながら。

 あのときと同じ格好をしているという感覚が、どこか高揚に変わっていく。その間、ずっとスマホが震え続けていた。私はそのままアソコに当てたまま、ぼんやりと映像を見つめている。それは朝、裸で歩いていた感覚と重ねるように。

 すると――何かが、内側から込み上げてきて……! でも、でも……急には止められなくて……っ!

 

「あはぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 お腹の下のほうで何かが爆発するような感覚が押し寄せてきて……どうしよう、なんて迷っている暇もなく……びくって爆発させられちゃった……。けど、痛いとか苦しいとか、そういうのは全然なくて……どっちかというと……気持ちいい……♡

 身体の奥にふわっと火が灯ったような……そんな、静かな熱の波。……どうして、こんなふうに感じてしまうんだろう。私は目を閉じたまま、少しだけ、深呼吸をした。

 動画の再生は、そのまま次のシーンへと進んでいく。あぁ……私、裸で、普通に授業を受けてる……♪ 画面の中の私は、落ち着いた様子でノートを取っていて――でもその姿は、どう見ても普通のものじゃない。そういえば、もう顔を映さないようにするの、諦めてる♪ 多分、クラスのみんなの前で、いまさら隠す必要もない、って開き直っちゃったんだろうな。

 そして、ふと映り込む隣の席。佐藤さんが、ちらっと私のほうを見ているのがわかる。……やっぱり、気になるよね。わかってた。だって、私だって、逆の立場だったらきっと気になってしまう。今日は女子だけだったから、まだよかった。でも、もし――もしこれが、男子も混ざっているいつもの教室だったら……? ……想像しただけで……胸がムズムズして、アソコがウズウズしてくる。きっと、佐藤さんの視線どころじゃない。男子たちのいろんな目線が、私に注がれて――身体のすみずみまで、全部、見られてしまう――!

 そんな状況でも、動画の中の私は教室に授業を受けている。何も言わず、何も隠さず、いつもどおりのフリをして。

 そして――地域取材の発表――!

 あああああ……私、裸のまま――教壇に立ってる……! 画面のアングルは、席のほうから。だから、教壇に立つ私の姿だけが、はっきりと映っている。おっぱいも、おまんこも――全部。それで、つい妄想してしまう。女のコだけでなく、男のコも、私の……私の恥ずかしいところを……! 視線が集まってる。乳首に、割れ目に。それでも私は、裸のままで教壇に立ち続けている。アソコの奥のほうがじんわり熱くなってきた。お昼の感覚が、静かに蘇ってくる。こんなの、もう……もう……!

 

「はぅっ、はぁっ、ああああああああっ♡♡♡」

 

 またキた……! 激しく……ビクビクビクってなるのが。このとき、一緒に変な声が出てしまうみたい。もし、お母さんが帰ってきてるときにやるなら、本当に気を付けないと……

 そして、極めつけは体育の授業。やっぱりこういう、誰に見られてるかわからないところが一番ヤバイ。そういえば、走った後はバスケもやったっけ。ゴール前で、守備側がボールを取ったら終わり、ってルールのやつ。実はこのとき、試合に夢中になってて……時々、自分が裸だってこと忘れてた瞬間があったんだよね。けど、メンバー入れ替えで気が緩んだとき、あっ、裸だった……みたいに、我に返って、照れちゃって……。そうやって思い出すのも……楽しかったなぁ……

 それに、帰りも……。むしろ、撮ってなかったのが残念、って思えるくらい。学校を出てからのコソコソ移動もドキドキしたし、家の前でおしっこ歩きしたのも……♪

 これまでシたこと……シちゃったこと……それらをすべて観なおして、思い出して……私はタブレットと、スマホのブルブルを止めた。月曜日は、どんな一日になるんだろう……犯人くんは、どんな命令をしてくるんだろう……♪

 

 そのとき――

 ――ぶるるっ、ぶるるっ

 

 突然の振動。まるで、不意打ちのように。

「あぁ……っ、ああぁん……っ♡」

 私は、またびくっと反応してしまった。けれど、今度の振動は、私が何かを操作したわけじゃない。

 ……まさか、犯人くん……?

 そんな考えが、頭をよぎる。いつの間にか、彼からの着信に慣れてしまっていた自分が怖い。男のコに気持ちよくしてもらった、と思うと、すごくドキドキして……すごく悪いことをしている気がして……でも……すごく、気持ちよくて……♡

 でも――画面に表示された名前は、違っていた。

「……日和ちゃん?」

 通知を開くと、そこには短いメッセージ。

『犯人、わかったよ!』

 一瞬、時間が止まったように感じた。

 ……ああ、そうか。もう、終わるんだ。

 私は、心のどこかで――犯人くんに、ちょっとだけ感謝していた。おかしな事件に巻き込まれて、怖くて、恥ずかしくて、どうしようもなかったけど……それでも、そのおかげで、クラスのみんなと少し打ち解けることができた。

 だけど、もう――解決してしまう。そうなったら、私はまたひとりになるかもしれない。誰からも相手にされず、静かに空気みたいな存在に戻っちゃうんだ。

 もし、そうなったら――

 私のことを見ていてくれるのは、犯人くんだけ。

 もう、恥ずかしいところなんて全部、見られてしまっている。

 心も、姿も、声も。

 だから――

 

 日和ちゃんからのメッセージによると――犯人くんが“やらかした証拠”を掴んだらしい。問い詰めたら、観念して、明日の朝きちんと謝りに行くと約束したという。

 だから、日曜日の朝――私は、玄関先で犯人くんが来るのを待っていた。でも、責めるつもりなんて、もちろんない。むしろ、私は――これからも、見ていてほしいと思っている。その気持ちをちゃんと伝えるために――嘘じゃない、って伝えるために――私は今日も、裸のまま。……けど、もう送った動画でいっぱい見られてるもんね。いまさら、ちょっとやそっとで恥ずかしがる必要なんてない。だから、見てほしいと思っていた。私が……あなたを許してるって証拠を。スマホ越しではなく、そのままの姿で。

 会ったら、一緒にどんなことしよう……? 私はこれまで撮影した写真や動画を見ながらワクワクしていた。すると――

 

 ピン……ポン……

 

 控えめに鳴る、ドアベルの音。お祖母ちゃんちにはカメラがついていない。だから、誰が来たのかはドアを開けるまでわからない。犯人くんならいいけど――もし宅配便だったら……めちゃくちゃ恥ずかしいかも。でも、そのときは『すいませーん! お風呂上がりだったものでー』ってごまかして、すぐ閉めればいい。そんなふうに、どこか軽く考えてしまっている自分に気づく。本当に、私はもう――この格好に、すっかり慣れてしまっているらしい。

 そして――

 

 ガラッ!

 

 私は、勢いよく扉を開けた。

 犯人くんをビックリさせようとして。

 ……けど。

 ビックリさせられたのは、私のほうだった――!

 いや、向こうも同じくらいビックリしてるけど……

 でも、目の前に立っていたのは――

 犯人くんじゃない。

 犯人……ち(・)ゃ(・)ん(・)?

 それも――犯人ちゃん……た(・)ち(・)?

「えと、えーと……」

 玄関前で固まったままの日和ちゃん。でも、すぐに気を取り直して、勢いよく頭を下げた。

「ごめん! 日和ちゃんのパンツ、隠したの……私なの!」

 バッと叫ぶように謝る彼女の隣で――

「というか、この計(・)画(・)を言い出したのは私だし!」

 と、佐藤さん。

「でも、最初に菜々子ちゃんを巻き込もうって言ったのは私で……!」

 と、清水さん。

 次々に、頭を下げてくるクラスメイトたち。けど、そんなことより私が聞きたいのは……

「み、みんな……服(・)は……どうしたの……?」

 玄関前に、裸の女のコが三人。朝一〇時。どうしたって、人通りはある。

 けれど――

 通りがかった人たちは、チラッとこちらを見るだけで、どこか微笑んだような表情を浮かべて、何も言わずに通り過ぎていく。だから……信じられた。

「都会の人には信じられないかもしれないけど……」

 日和ちゃんが、ちょっとはにかみながら。

「私たちにとって、裸のまま海に行くくらい、普通のことで……」

 

 家から海までは、歩いて五分弱。その間に、車ともすれ違ったし、近所のおばさんにも挨拶された。それも、まるでこれが当たり前かのように。

 本来、海に行くなら――水着の用意とか、荷物が必要なはず。でも私たちは、本当に身ひとつで歩いていた。

 何もいらない。

 ただ、裸のまま。

「――でね、みんなで裸になって、立ちションするのが私たちの、そのー……仲良しの儀式? というか」

 佐藤さんが、少し照れながら言う。ああ……そうか。それで私に、男子トイレでおしっこを……。練習だったんだ。みんなと仲良くなるための、ひとつのステップとして。

「このままだと、菜々子ちゃん、海にも来てくれなさそうだったし……」

 清水さんが、そっと続ける。うん、あのまま誘われていても、私は絶対に行かなかっただろう。泳ぐのなんて好きじゃないし。

 けど、こういうことなら――そのために、みんなが私の背中を押してくれていた。私はずっと、ひとりじゃなかったんだ……!

 

 そして、海辺に着くと、他のみんなが待っているのが見える。もちろん、全員が何の水着も着ずに、裸で。長谷川さんも、吉田さんも、南野さんも。まるで、そこが更衣室のように。けれど、そこはずっと広くて……遠くまで見えて……明るくて、風を感じられる。そんなところに、裸のクラスメイトたちが――これってなんだか、すごい光景。けど――それを、私はずっとやってきた。ううん、海で裸のほうが、まだ馴染むと思う。私が脱いできたのは、住宅地とか、学校とか。だからか、みんなの様子がそんなに変じゃないように見えてくる。

 私が着くと「ごめんね」とか「色々あって」とか、みんな口々に謝ってるんだか謝ってないんだか。けど、言葉なんてどうでもいい。私のこの姿を見れば――何も気にしていないって伝える必要もないから。

 柔らかい波が寄せる浜辺に、私はみんなと一緒に並んで立つ。肩と肩が触れそうな距離で、隣の人と両手をつないで。私もその輪に加わることができた。まだ少しだけ、心がそわそわしている。でも、大丈夫。恥ずかしさは、波が洗っていってくれる気がするから。

 アソコの奥から、何かが込み上げてくる。……お股は震わせていないのに、ブルブルさせてるかのようにヒクヒクしてる。もしかしたら……ビクってなって立っていられなくなるかもしれない。

 けれど――

 私の両手は、ちゃんと支えてもらっている。しっかりと、右からも、左からも。だから、怖くない。

 足元に流れる開放感と共に――私は、ようやくこの村の一員になれたような気がしていた。

 


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