最近、時間が出来てはふと気づいたことがある。よく私の視界にアラタが居ること。アラタの方から入ってきているわけじゃない。私自身がアラタを目で追っている。ココ最近そんな事が増えてきた。なんでなのかは分からないけれど、アラタを見ていると不思議と笑顔になっているような気がした。
「あ〜らら、随分熱烈な視線じゃない? ユノ」
「え? あ、キャサリン」
いつもの休み時間。またアラタを眺めていたらキャサリンがそれを遮るように視界へ入ってきた。そのニヤケ顔がいやらしい。そういう所も流石と言えるのが私の部隊の隊長だ。
「別に、アラタがまた変な事言ってるって見てただけだよ」
「ほんとに〜? 目の色は正しく恋する乙女♡って、感じだったけど?」
「そんなわけないでしょ、キャサリンの妄想だから」
あながち間違いじゃないって思ってしまった。そんなに分かりやすかったかな。ちゃんと気をつけないと他の人にもバレちゃう。バレたら何言われるかわかんないしね。
「運命の正位置。分かりやすい」
すかさずキヨカがCCMを突き付けてきた。見事にタロットカードの運命の輪が表示されている。相変わらず勘が鋭いキヨカに汗を垂らした。
「席に着きなさい貴方達、ホームルームを始めます」
と、そこで美都先生がやってきた。これで、私達の一日が始まる。
「それでは明日の作戦の内容です。ジェノックの第2部隊が滞在しているフラッグ付近で近々他国が貨物輸送を行うようです。恐らく、補給物資の調達かと思われますが───」
確かにココ最近、アラタの戦闘ログを見るのが増えた気がする。アラタから継いだドットフェイサーの利点を見つけて自分の戦闘スタイルに合わせたいって言うのもあるけど、ウォータイムに出ている時のアラタの顔を見るのが主になってきているのも確かだった。前からアラタの事なんて天然で子供っぽいって思ってたけど、色々日々を過ごしていく中で本当は優しくて仲間思いなやつなんだってわかった。危険を顧みず仲間を助けてくれる、私も実際何度か助けて貰った。その時の安心感は本当に心に残ってしまう程に嬉しかった。多分今でも思い出すだけで。
「アラタ……」
今じゃもう名前を呼ぶだけで。なんて、らしくもない。私はジェノックの隊員で、第4小隊の鹿島ユノ。今の私はそうなるべきなんだ。
「そこで今回のこの作戦は第1小隊と第4小隊に行ってもらいます」
「ぃよっしゃ! 俺達の出番だな!」
「騒ぐなアラタ。作戦遂行部隊が決まっただけだ」
「その通りよ、今回の実働部隊は第4小隊。第1小隊は援護よ」
「なんだよ〜待機かよ……」
「全く……」
ヒカルとハルキが呆れて、サクヤが苦笑い。うん。いつもの第1小隊。いつものアラタだ。そんな調子のアラタを教室の皆が揶揄う。これもいつもの光景だ。
「ふふっ」
…………*
「え〜っと、キヨカのがこれで、キャサリンのがこれで……」
「ユノ!」
「アラタ」
その日の放課後。キャサリン達に買い物を頼まれた私は帰るついでに商店街へ向かっている途中にアラタに出会った。
「今日は一人か?」
「うん。買い物あるから」
「なら、一緒に行こうぜ。俺もサクヤに頼まれてるものがあるからさ」
どうやら、第1小隊のメカニックはアラタ達のLBXの修理に忙しいみたい。そのお使いを最近はアラタが率先してやってるってハルキから聞いた。なんだか、弟みたいで可愛いな。
「明日の作戦。上手くいくといいね」
「大丈夫だろ。俺達が出撃するんだからな」
笑顔で親指を立てて見せてくれるアラタの顔は相変わらず子供っぽくてたくましい。不思議とそんなアラタに惹かれる私も似た者同士なのかな。LBXの事になると子供っぽいのに作戦中はずっと真剣な顔。そんなアラタを見るのが私も好きになっていた。いつまで見てても、何故か飽きない。キャサリンの言う通りかもしれない。
「も〜、またそんなこと言って。なら、私がピンチになったらちゃんと助けてよね」
冗談交じりにそんなこと言ってしまった。ハッとなって口を手で隠してしまった。らしくない事というよりはアラタに頼るような言い方をしてしまって何かを察せられたくないっていう気持ちが上だった。
「何言ってんだ、当たり前だろ。第4小隊のピンチだろうが、ユノのピンチだろうが、俺が絶対助けてやるって!」
「っ……」
期待通りの言葉をそのまま送り込まれてしまった。胸が一瞬高鳴って、苦しくなってしまった。それぐらい嬉しい言葉を貰った。なんだか、アラタを見てると私まで笑顔になってしまう。
「あっはは、じゃあその時はちゃんと助けてよねっ。アラタ」
「おう!」
…………*
『第1小隊。合流地点へ到達。そのまま待機せよ』
『第1小隊、了解』
『こちら第4小隊、目標降下ポイントまであと五十』
『了解、その先に障害物、敵砲台なし。進行続け』
『第4小隊、了解』
キャサリンが通信を切ると、気だるそうな声を上げる。
『も〜、なんでフラッグ付近からの強襲じゃなくて予測ルートの先回りなのよ』
『しょうがないよ。もしフラッグに気づかれた時のリスクを考えてのことでしょ』
『ミトせんせー慎重になりすぎ』
「敵戦力も小隊規模じゃないかもって言ってたし観察は必要だよ。それに私達なら出来るよ。キャサリン」
ユノが言うと、通信越しのキャサリンとハナコが珍しいものを見たような顔をする。
「な、何?」
『なんか……らしくないセリフ』
『ユノあんた、変わったわね』
「えぇ〜……」
『ラヴァーズの正位置。うん。キャサリンの言う通りかも』
「ちょっと……キヨカまで…………っ!」
『あ、みつけたっ!』
と、そこで目標地点の通信アラートが鳴る。付近にはちゃんと今回の目標の輸送隊がいた。輸送コンテナ2機、護衛LBXが4機。動きから見るに自動操縦の無人機。美都司令の話とは少し様子が違っている。本来なら、大部隊が居るはずだった。敵機の数を見てキャサリンが得意げに鼻を鳴らすと操縦桿を握る。
『いいあなた達、降下から十秒後、司令室との通信が途絶します。以降は全て現場判断に委ねるわ』
『了解先生! 少ないのなら好都合! 第4小隊、降下開始っ!』
『『了解!』』
LBXの輸送機のハッチが開く。
「行くよ、ドットフェイサー!」
『セットアップ。ゼットライフル』
降下中、第4小隊は敵機に向かって遠距離武器で一斉射。予測通り護衛のLBXは無人機。対応が単調なので降下中に1機をブレイクオーバーにする事が出来た。
『残り3機、一気に行くわよ!』
「了解っ!」
キャサリン達は着地と同時にブーストオン。それぞれ各個に敵機へ向かう。流れるようなチームプレイで敵機をそれぞれ上空へ打ち上げる。そしてユノのドットフェイサーがゼットライフルを構えている。
『『ユノッ!』』
「任せて!」
『アタックファンクション! ホークアイドライブ!』
ターゲットを捉えて、高弾速、高威力のライフル弾を3発。しっかり敵機に当てて、ブレイクオーバー。
あっという間に輸送コンテナの護衛LBXを全て撃破した。当たりを見ても、ミニマップを確認しても他の敵は見えない。第4小隊のチームプレイの賜物だ。
「よし、これで任務完───」
ビーッ! ビーッ! ビーッ! 、敵機が間近まで迫っている時のアラートが第4小隊のLBXに響き渡る。
『敵警告!? 何処にいるの!?』
キャサリンのセイレーンが辺りを見渡す。しかし、誰もいない。崖の上、物陰、後方、前方、どこにも見当たらない。そして、画面に表示されているミニマップを覗く。敵機の反応は輸送コンテナの中だった。いち早く気づいたハナコのセイレーンがライフルを向ける。
『何……あれ……?』
そのコンテナから現れたのは剣を二本携えた黒基調にオレンジのライン塗装が施されたアキレスタイプのLBX。その佇まいは普通のLBXでは無いことを感じさせる。
「アキレスタイプ? でも、アキレスディードじゃ……ないよね?」
『LBXをスキャンしても該当する機体がない……あれもしかして、新型?』
『なんにせよ迎撃するわよ、フォーメーション!』
『『了解ッ!』』
キャサリンの号令と共に第4小隊がフォーメーションを組もうと再度固まろうとした瞬間、アキレスの瞳が起動した。
『え───』
声を発した時には既にハナコの前にアキレスが肉薄していた。
遅れて回避行動を行おうと操縦桿を動かした時には既に壁に打ち付けられていた。
顔を上げた時には既にハナコのセイレーンはブレイクオーバーの表示が出ている。
今の一瞬でアキレスは体当たりを繰り出してハナコのセイレーンをブレイクオーバーさせた。
『ハナコ!?』
「なんて機動力っ……目で追えなかった……! キャサリン!」
『えぇ、一旦引くわよ! あれを相手取るのはまずいわ!』
「了解!」
キャサリンとユノは散開。相手を銃火器で牽制しつつ物陰へ後退する。が、アキレスはそれを逃さない。再びアキレスの瞳が輝くと音声が再生される。
【ソードビット】
アキレス背部のユニットが展開。そこから合計八本ほどのエネルギー状の剣が生成される。それを追尾ミサイルのように射出して来た。
『なっ!?』
「なにこれ……きゃあ!?」
二人は反応する間もなく流星群のような剣撃をまともに食らってしまう。あっという間に二人はその剣に磔にされ反撃が不可能になってしまった。ドットフェイサーの機動力ですら反応出来ない速度のソードビット。機体性能。どこの国が開発したかは分からないが、目の前にいる敵機は普通のLBXではない。
「っ……このっ!」
剣の拘束を振り解き、ユノのドットフェイサーは加速する。
『ユノ! 待って!』
「キャサリン達のエスケープの時間ぐらいは稼いでみせる!」
『セットアップ! ゼットソード!』
脚部の車輪を全回転。ゼットソードの間合いへ詰めてそのまま胴体へ鋒を突き立てる。
「はぁっ!」
渾身の一撃は、呆気なく受け止められる。ドットフェイサーの剣撃を返され、アキレスの反撃。流れるように繰り出される二刀流の斬撃をユノは何とか盾と武器で凌いでいる。しかし、その連撃の中に先程の【ソードビット】が混ざり、防戦一方になる。
「このままじゃ……きゃぁっ!」
反撃の手を考えている内に、盾とゼットソードが手元から弾かれた。
「っしまっ……くっ!」
突き付けられる剣の鋒。ほんの僅かでも動いたら破壊される。せっかくアラタから託されたドットフェイサー。この機体の気持ちにすら答えてあげられない。どれだけ操縦桿を強く握っても目の前のアキレスは無情にも剣を突きつけている。自分の弱さと情けなさ、才能の無さ。どれだけ訓練を詰んだとしても本物には勝てない。
ただ、ユノは悔しさで顔を歪めるしかなかった。
ただ、誰かが助けてくれるのを懇願するしか無かった。
「助けて……アラタ……っ!」
何も出来ないと悟り目を閉じたユノ。アキレスが剣を振りかぶり踏み込んだその瞬間───
「ユノッ!」
「アラタ!?」
アキレスの剣を弾き、ユノのドットフェイサーの前へ庇うように立つ。
「な、なんでアラタが……!?」
「悪い。でもなんか嫌な予感してさ」
辺りを見渡すとブレイクオーバーされたハナコ、剣に拘束されているキャサリン。荒らされた戦場に、目の前にいる黒いアキレスタイプのLBX。一目でわかった。この状況の原因は目の前の黒いアキレスだということが。
「ユノは俺が守る!」
「アラタ……」
「行くぞドットブラスライザー!」
『ラグナロクフェイズ!』
アラタがドットブラスライザーの特殊モードを起動。起動と共にの各所の装甲が展開。高出力状態の『ラグナロクフェイズ』へと変わる。アラタは目標を正面に捉えてスラスターを最大出力にしてアキレスへ接近。ブラストソードを振るう。アキレスはそれを受け止めるが、ドットブラスライザーの方がパワーが上なのか押し負け後ろへ弾き飛ばされる。
【ソードビット】
弾き飛ばされながらアキレスはソードビットを使用。自分が態勢を整える時間を稼ぐつもりらしい。かなり不規則な軌道を描き射出されたソードビット。しかし、アラタは既にオーバーロード状態へ入っている。その一本一本を目で追いかけて迎撃の準備を整えた。
「これで!」
『セットアップ! ブラストマグナム!』
ブラストソードを変形。マルチギミックサックのブラストマグナムを構えた。二丁のマグナムで自分の四方へ飛んでくるソードビットを完全に撃墜。
「くらえ!」
すかさずアキレスへ追撃を掛ける。アキレスはソードビットを使い盾のように並べて防ごうとするが、ブラストマグナムの威力は通常武器とは桁違いの威力。重ねたソードビットも無惨に砕け散り、アキレス自身も弾丸を受けて態勢を崩してしまった。
「終わりだ!」
『アタックファンクション! シャイニング・ラム!』
ブラストマグナムを投げ捨て、ドットブラスライザーは右手のマニピュレータのビームクロー、ヴァリアブルクローを展開。そこにエネルギーを収束させアキレスへ踏み込んだ。
「いっけぇぇぇ!」
アキレスは最後の抵抗でソードビットを全射出。しかし、ドットブラスライザーのフルスピードは捉えきれずヴァリアブルクローにコアブロックを刺し貫かれ、撃破される。
「アラタ……」
ユノはドットブラスライザーの背中を見つめている。アラタ本人をそこに重ねて。胸に手を当てて、自分の鼓動の速さを確かめる。そして、その気持ちにはもう確信を得てしまったこの瞬間。ユノは自分がアラタを好きなのだと理解した。
「ユノ! 大丈夫か!?」
「ぇ、あ、うん! ありがとうアラタ……」
『ちょっとアラタ! アタシも心配しなさいよ!』
「キャサリンは大丈夫だろ。しぶといし」
『何を〜〜!!!!』
…………*
その日の作戦は無事成功を収めた。補給物資の強奪に成功し、ジェノックはしばらくは潤沢な物資を得て戦えるようになった。アラタの単独行動に関しては今回の敵新型LBXの撃破と一緒に不問になった。美都先生の怒り顔を目の前にしたアラタは小動物みたいに震えていたのを覚えている。こっぴどく叱られてきたアラタの慰め役として私達は教室で話していた。
「美都先生、あんなに怒ることないよな。せっかく作戦が上手くいったのにさ」
「でも、単独行動はやめなさいって言われてたでしょ? 言う事聞かないアラタが悪いんだよ?」
「ちぇ〜っ。ハルキにもめっちゃ怒られたし。今日は散々だよ」
この二人の時間が私にとって心地いい。さっきまであんなに真面目な顔してたのに、今はこんなに子供っぽい顔をしてむんつけている。可愛いとかカッコイイとか、ほんと忙しいやつなんだから。
「ねぇ、アラタ、ちょっといい?」
「ん? なんだ?」
そうして、話題がなくなった頃。私は意を決して話題を変えた。
「今日は……その……たすけてくれてありがとう。アラタが居なかったらどうなってたか分かんなかった」
「気にすんなって、ユノが無事ならよかった。あの時もなんかユノの声が聞こえた気がしたからさ」
「そっか。そう……なんだ……」
私にとってすごく眩しい笑顔は今この瞬間、私にだけ向けられている。そう考えるだけでなんだか爆発しそうな程に嬉しくなった。
私がアラタの顔を見れなくて顔を伏せている事を除けば。
「ユノ?」
「ま、待ってね!? ちょっと待ってね!?」
「おう?」
やばい! 見れない! 顔見れない!
アラタってこんなに顔良かったタイプの人種だっけ!? これ私のせい!? これもしかして私が自爆してる感じ!? だったら、私が間抜けすぎる!?
「ユノ? 大丈夫か?」
「い、いいいや! べべ別に!? 大丈夫だけど!? ……だけど……」
どうしても、顔を見ると安心する。ありがとうとは言えたけど……それ以上を欲してしまう。これ……完全に私アラタの事が好きなんだ。積み重なってたものが溢れてるんだからそうだ。間違いない。
私は、アラタの事が好き。誰よりも特別になりたいの好き。
「アラタはさ……みんなの事、守りたいんだよね?」
「ぇ……あぁ、まぁ、そうしたいとは考えてるけど…………っユ……ノ!?」
アラタに体重を預けて、寄り添うような形をとる。ちょっとアラタがビックリしてる事に心で謝りつつ、私は頭を擦り付ける。他の誰よりもアラタの事を知っている訳じゃないけど、私は……私がアラタの一番になりたい。他の誰よりも優先して貰えるようになりたい。そんな子供みたいな考えが今ずっと頭の中を巡ってる。
「それ……さ。私だけ優先してくれるって事に出来ないかな……?」
「そ……それって……どういう───」
言い終える前に私は1歩、アラタへ踏み込んでいた。時間が止まったように静まり返って、それなのに体は爆発しそうな程に高鳴っていて、凄く不思議感じ。でも、それはアラタも同じなんだって分かるほど、私達はお互いを感じられる距離にいる。恋愛とかはよく分からない。漫画とかで見るようなもの。そういうものだと思ってる。だからこれは気の迷いとかじゃないって分かる。
「こういう……事なんだけど」
「っ……!? っっ……!?!?」
アラタの顔を見る限りは言ってる意味は分かってるだろうけど、すっっごい目が点滅してるように見える。あ〜ぁ、私のファーストキス。ホントにあげちゃった。
「ねぇ、どうなの?」
「ぅえ!? そりゃぁ……ユノが望むなら……俺は……その……いいけど……さ」
こんなしどろもどろなアラタを見るのは新鮮だった。いつもはグイグイ自分から来る癖に逆に押されるとこんなに弱くなるやつだったんだアラタって。なんか意外かも。
「じゃあ、良いなら遠慮しないっ」
「わっ、ちょ、ユノっ」
今度は思い切り抱き着いた。良いって言って貰えるだけで嬉しいのに、今アラタに触れると余計にアラタの事が好きになる。抱き返してくれたアラタも同じ気持ちならいいな。
「っ……!」
「んむっ、ア、アラタ?」
急にアラタの腕の力が強まった。痛くは無いけど閉じ込めるような力の入り方。顔を覗くと真剣な顔で真っ赤になったアラタの顔。私は見た事ない表情に首を傾げてしまった。
「いや……その……急に来られるとこっちの限界があってな?」
「限界って…………っ!?」
その意味を理解した時にはもう既に遅かった。抱きしめられている私の体に当たるモノ。男女が二人こうなることは未来にあることは予想してたけど今まさかこの瞬間になるなんて予想はしてなかった。
「ま、待ってもしかしてここで……」
「ユノは……嫌か?」
いつの間にか机に乗せられて迫られる。そんな熱っぽい顔をされるとこっちもその気になってしまう。告白からここまで一気に進展するなんて思ってもいなかったこと。肩に顔を乗せてくるアラタを止められないのも、こうなって嬉しいと思うのも全部私が悪い。
「いやなんていうか……その……この学校に来てさ。色んなやつに出会って、ユノと出会って、色んなことがあって、それでいつの間にか目で追ってる人がいたんだ。普段は気づかれないようにしてたんだけどさ」
「それって……私?」
私の問いかけにアラタはゆっくり頷いた。お互いが両思いだったことを知った時私の体全体が引き締まったような感覚に陥った。好きな人に求められるって事がどれだけ嬉しい事か。好きな人と両思いだった事がどれだけ嬉しい事か。
「ユノの事考えながら、シた事もあるし」
「っ!?」
「こうしてユノを独り占めしたいって思うこともあった」
つないだ手が熱くなる。握りめるよりも絡めるように。もっともっと求めてと願うように。今私は女としての喜びを知りたがっている。
「っじゃあ……シてみる? 本物の私と……」
「シたい。俺、ユノが欲しい」
そうして訪れた二度目のキス。こんなに早く叶うなんて思わなかった。布が解ける音、机が軋む音。二人の息遣い、アラタが私を呼ぶ声。全部聞こえて嬉しい音。お互い慣れない手つき、手探りで相手を思いやる。
(アラタの……苦しそう。顔も少し必死だし。ちょっと可愛いかも)
目の前にいる好きな人を貪る男子の目。手つきに視線。胸も背中も足も、どこを触られても今は全て気持ちいい。脱がされる事に抵抗なんてなくて、全てを晒すことも何も思わない。むしろ自分からシようと言ったのだから逆に求められる事が嬉しい。
「ひゃぁっ♡」
「っあ、悪い!」
内股を撫でていたアラタの指が私のアイラインに触れた。つい驚いた声が漏れてしまって慌てて口を隠す。
「ごめん夢中になってて……痛かったか?」
「ううん大丈夫。私もびっくりしただけだから……」
少し指先が触れるだけで全身に電気が走ったような感覚。触ってなくても下着がダメになるほど濡れているのもよく分かる。
「さ、触っていいか?」
「自分だけ触られるのはなんかヤだ……。私アラタの触る……」
「……分かった」
私はスカートをたくし上げ下着を見せる。アラタはズボンのチャックを下げて大きくなったソレを出す。初めて見たけど、ホントにガチガチになってて、苦しそう。なんか形も少しグロい。亀の頭みたいな所は少し柔らかくて他の所はしっかり固くてドクンドクンいってる。つい撫でてあげたくなる様な形をしている。
「っ……ユノっ……それ気持ちいい……っ」
「アラタの手ぇ……っ、おっきくて気持ちいいよ……っ」
布越しに撫でられてるのに自然と腰が動いてしまう。よく見るとアラタも少し動いてる。アラタも気持ちいいんだ。なんか嬉しい。お腹の奥がきゅう、と締まる。これから、コレ挿入れるんだよね? こんなおっきいの入るかな?
「ユノ……いい?」
「ん……いいよ。アラタ……」
私が下着を少しずらすとアラタが先端を私の入口に当ててきた。アイラインをなぞるように少し動かして入る場所を探られる。こうしてるだけでも私の方が限界になりそう。
「アラタ、そこ、もう少し下……っ」
「ここか?」
「ぁ……うんっ、そこ……ゆっくり……ね?」
「わかった……」
そうしてアラタは私の膣中へ挿入ってきた。
「は、ぁ、あぁぁぁぁぁ……」
奥に進んでくると私の体が勝手に縮こまってしまう。少し怖くなってアラタへまた抱きついた。一番奥に当たった感触とアラタの気持ちよさそうな声が耳元にやってくる。吐息混じりのアラタの声が私の事を余計に蕩けさせる。
「っはぁ……ユノ……っ……ユノっ……!」
無我夢中で腰を動かして私の膣中を刺激する。初めては痛いって聞いてたけど私は痛みを感じなかった。それよりも自分の膣中がいっぱいでそれ以外考えられなかったからかも。
「アラ、タぁ……アラタぁ……!」
「っ……ユノ! ……ユノっ……!」
教室の中に響く、水っぽい音と打ちつける音。私達にはそれしか聞こえなくて他の物が全てどうでもいい。私にはアラタだけで、アラタには私だけで、この空間を作っている。
「アラタぁ……私っ……も、ィく……っ、っっっ〜〜〜〜〜!!!!」
「ぐっ……!」
一際強い一突きを受けると、アラタは私の膣中へ吐き出した。それと同時に私も限界を迎えた。一番奥に押し付けている間、ずっと膣中で脈打つソレは最後の最後まで私の中を染めていた。
「っはぁ……はぁ……はぁ……」
「はぁ……はぁ……ふふっ……ふふふっ……」
「なんだよ、急に笑って」
「ん〜ん。なんか勢いで最後までしちゃったね」
「確かに……なんかいろいろ飛ばしすぎたよな? これ」
アラタが引き抜くと膣中から出されたものが少し溢れて出てきてしまった。こんなに出されたんだ。ちょっとお腹重くなったような気がする。アラタってばさいてー。
「皆にバレちゃうじゃん。これじゃあ」
「しょうがないだろ、気持ちよかったんだから。って、門限ヤバそうだし帰ろうぜ。立てるか?」
「うん、ありが───あれ?」
「っと! 大丈夫か?」
「ちょっと足に力入んないかも」
机から降りようとした時、さっき限界を迎えてしまったせいで、足に力が入りづらくなっている。アラタは支えてくれた後、私のカバンと自分のカバンを持って手を差し出した。
「ほらよ。支えいるだろ?」
「うん。ありがとう。アラタ」
私は手を繋いでゆっくり立ち上がる。その日アラタと私は寮に帰るまで手を繋いだままだった。そんな幸せな日々が続くといいな。皆と一緒に、アラタと二人で。
「ハルキ、アラタが昨日帰ってきてからおかしいんだ。なんかアラタらしくないというかなんというか」
「いりなり部屋に押し入るなり何言ってるんだお前は。アラタはいつもおかしいだろ」
「ハルキ、さりげなくディスるのはやめようよ。祝ってあげよう?ね?」