本編は通常投稿で申し訳ない。
一話よりホテルに逃げ込んだ際
xxxxxxxxxxxxxxxxx
「体術はわたしの勝ち」 と嬉しそうに四季は彼に背を預け、ざらざらとしたストッキングの上から小陰唇をマッサージして、微弱な快楽に酔いしれた。 「これくらいならいいよね」 と振り返って彼を見上げた。
よくはなかったが、お構いなしに四季は自慰を続けた。おとこの人が見ている前でするなんて、どうかしている。明確に恋愛感情を抱いているかどうかは、媚薬の支配下ではわからない。そういうことにしておこう。
だが、将来においてはわからない。好きに、なるかも。だったらやはり唾をつけおくべきだ。日日を困難な仕事で明け暮れているなら、もう会えない可能性もある、あの世でしか。だからマーキングしておこう、メスの香りをつけておこう。
四季は彼と足を絡ませ、背をよじって、発情した臭いを擦りつけようとした。 「あ、くぅ。ん……ねえ、触ってくれるのもなし?」 懇願するように喘いで言った。 「愛撫してくれたら、許してあげる。我慢、する」
媚薬を盛られていたので許すも何もなかったが、ひたすらに詫びていた彼はそれを欲しているようだった。交換条件ということなら、ひょっとすれば呑んでくれるかもしれない。
戸惑う彼の手を秘部と胸に誘ってやる。遠慮がちに乳房が揺すられ、異性の指に局部は戸惑った。ブレザーとブラウスのボタンを外し、ブラと柔肌の間に手を挿入させた。ストッキングを破り、Tバッグをずらして生の性器に触れさせる。
最初は自分で自慰するほうが気持ちいいと四季は小さく落胆したが、しかしやがて、しっとりと汗ばんだ胸を揉みしだかれ、クリトリスをむにむにとした親指の付け根でゆっくりと摩擦圧迫されると小さく嬌声を上げた。
「あっ、それいいッ」
自慰は、自分の身体なので、どこをどうすると、どれくらいの快感を得られるかということは理解できる。だから中途半端に他人にされる事に比べると、前者の方が良くて当たり前だった。
だが愛撫となると話は別だ。自分の意思とは無関係に快感を与えられ、その予測のつかない刺激ゆえに未知を感じる。恐怖にも似ていたが、だからこそ鼓動は早まるし、乗り越えた時のカタルシスは自慰とは比べ物にならない。
「ん、もっと」 と四季はせがむように甘えて言った。 「指、入れて。ね?」
彼の中指がとろりとした膣口に入れられた。赤子が吸い付くオシャブリのように異物を離そうとしない。膣内に指を入れるのは初めてだったが、指の腹で浅いところを摩擦されると、クリトリスとはまた違った感覚に顔が緩んだ。
乳房を指の間で乳首を挟むように揉み上げられ、秘部は親指でクリトリスを、中指で膣内を擦られる。
もうちょっと、と四季は愛撫の快楽を少しでも長く甘受しようと歯を食いしばって、彼の腕を掴んで耐えようとした。あざ笑うかのように愛液が淫靡な音を鳴らした。腰が浮きそうになるが、手首で押さえつけられる。
「ひぅっ、来る、逝く。待ってまだ、やだやだ。逝きたく、んぐぅん……あぁッ!」
ストッキングに包まれた足指を丸め、声を押し殺して、瞼を強く閉じて、瞳の端に涙を浮かべて。女は絶頂した。
四季は全力疾走したかのように呼吸を荒げて、彼を背に脱力していた。なんとなしに彼のジャージのポケットに手を突っ込んで携帯を取り出すと、慣れた動作でカメラ機能をオンにして、自画撮りの要領でシャッターを切った。次いで自分の携帯に送信する。
「おいちょっと」 と彼。ふにゃりとした腕から携帯を奪い返す。 「どこに送った?」 画面にはすっかり惚けた表情の四季が、片方の乳房を露わに、両足をだらしなくひらいていた。シーツに飛び散った愛液が、彼女が受けた快楽の度合いを物語っている。
「わたしの、記念に。はぁ……ん」 と四季は身をよじって、もう一度背を強く擦りつけた。 「ねえ、固くなってるよ」 言って前かがみになり、むっちりとした尻で勃起した男性器を挟むように押し付けた。
xxxxxxxxxxxxxxxxx
二話より鈴音が階下にやってきた時
xxxxxxxxxxxxxxxxx
「じゃあわたしには欲情しない?」 メガネの奥で、挑発的に彼を見やって鈴音。見せつけるように両手で余る胸を押し付けた。谷間から除くホクロがエロチックだった。
「……バイなのかも」 彼は泣きそうな口調で言った。
「疲れてたのよ、きっと」
「だといいけど」
「試してみる? わたしとシて、まだ男に反応するのかどうか」 言って彼女は彼の首筋に唇を這わせた。Tシャツを脱がせ、鎖骨を舐める。
「いや、おれシャワー軽く浴びただけだから」
「じゃあこの手は何?」 パジャマに手をやり下着越しに秘部をまさぐる腕を内腿で締め付ける。お返しとばかりにジャージ越しに彼の一物を擦りあげる。
そのまま小さく笑うと彼をソファに座らせて下を脱がした。股座に顔を埋める。陰茎の根元を丹念にくちづけて、尿道を舌先で舐め上げると亀頭にむしゃぶりつく。
「ん、ちゅ。んぁ」
端整で凛凛しい顔つきの女性が、大きな口を開けて舌先で亀頭の裏をほじるように弄ぶ。歪な美しさがあった。目が合う、ふしだらな視線で見上げられた。乱れた髪を耳にかけ直し、流れるように深く咥えては温かい口内から出し入れする。
んっ、んっとディープスロートの運動量が必要とする酸素を吸入するため、懸命に喘いで空気を取り入れていた。粘質で淫靡な音がするが、それは口淫だけが理由ではなかった。
鈴音は懸命に奉仕しながら、踵を合わせ、大きく膝を開いて自慰をしていた。それは快感を得る為ではなく、彼を受け入れる為に濡らしている。
先端から根元まで、柔らかい膣で包み込んであげる。そう考えると愛液は滴った。
「ぷはぁ、ねえ、どこに出したい?」 鈴音は唾液とカウパーに糸を引く口で試すように言った、くちくちと陰茎を手淫しながら。 「顔にかける? メガネはしたままのほうがいいかしら? それとも……ふぉのまま?」
言い終わるよりも早く、耐えきれなかったかのように咥えこんだ。舌を魅了する先走りの味に目を細めた。搾り取るように柔らかい下唇で尿道を圧迫し、ピストン運動で送り上げる。
口内で陰茎が短く跳ねる。どうどう、と暴れ馬をあやすように両頬と舌腹で押さえつける。どこに出すのか、問うように彼を見上げるがしかし、小さく謝罪されると頭を両手で掴まれる。
彼はソファから立ち上がるといったんはペニスを口から引き抜きかけた。鈴音は戸惑うように亀頭までも離したくないと、小さな唇で懇願するように弱弱しく吸い付いた。
彼は戸惑いの表情の彼女を見下ろし、もう一度謝ると一気に鈴音の頭を引き寄せた。剛直な男根が根元まで口内に挿入される。
鈴音の喉奥が圧迫され、呼吸が困難になる。
「んぐぅっ!?」
目を白黒させて戸惑う鈴音をよそに、亀頭は喉奥のツルツルとした、歯の生えていない甘噛みのような歓待を受けた。再び頭を股間から引き離すと、全く同じ要領で喉奥を凌辱する。二三するうちに速度を速め、顔を打ち付けるような乱雑さで物のように女を扱う。
それでも鈴音は舌を休めることなく、頬をすぼめて暴虐の限りを尽くす陰茎に奉仕した。片手では秘所を濡らす作業を怠らず、もう片方では自分の胸を弄った。彼を迎え入れる為という、本来であればそれほどの快楽を伴わないそれに何故だか今日は、絶頂の間際まで上り詰めそうになる。
眼の端に涙を貯める。息苦しく、吐き気もする。それを懸命に飲み込むと一段深く捻じ込まれた。
「んぶっ、がぁ、うんむぅうん!」
同時に喉奥で亀頭がドクンドクンと精液を流し込んでいるのがわかる。食道に直接注がれていた。んふっんふっ、と咳き込むのを耐える。喉に絡みつくそれを何とか飲み下すと、ゆっくりとペニスが引き抜かれた。涙が頬を伝った。彼と鈴音は再び視線を合わせる。鈴音は目を閉じて、追いすがるように滾りの衰えを見せない男根を飲み込み、尿道に残った精液を丹念に吸い出して、最後に尿道口に小さくキスをした。
「げほっ、えふっ……」 と今更に呼吸を荒げて鈴音。ずり落ちかけたメガネをなおして、からかうように言った。 「どうしたの、久しぶりだから? なかなか帰ってこれない事、怒ってる?」
「いや、じぶんでも何故だかわからない。ただ無性にその……」
「言って」
「無茶苦茶にしたくなった」
「じゃあ、して」
鈴音はパジャマを脱ぎ捨てると立てかけられていた姿鏡を間に壁へ両手を合わせ、腰を突き出した。肉付きのよい脚に支えられた、もっちりと白く、曲線美を描く尻を誘惑するように振る。 「ね?」 と、鏡越しに彼に甘えるように。
彼は息を荒くして卵のような尻肉を掴んだ。親指で秘部を広げるように割り、我慢できないと言った具合に涎を垂らす秘部へ肉棒を突き刺す。
「あ……くっ、深っい……あっ、んんっはぁ、いい。凄い」
獣がいればそうかもしれない。愛があるかどうか疑問に思えるほどに単純な性行為だった。彼の腰は鈴音の尻を打ち付け、そのたびに尻は小さく波打った。
口淫の時とは比べ物にならないほど淫靡な音を鳴らして、一定間隔で発生するそれはサブリミナル的に卑猥さを喚起させ、興奮の度合いを加速させた。肉壁を搔き分け、ぷにぷにとした最奥を突くたびに下腹部は痺れた。キツく絞められた入口は陰茎を離したくないと駄駄をこねるようで、引き抜くときは少しでも抵抗しようと必死に食らいつくようだった。
鏡の中で鈴音が紅潮した表情で悶えている。たわわな二つの果実がピストンのたびに揺れた。肩甲骨と背の中心を走るすらりとした溝が創る陰影が堪らなく生命を感じさせる。じっとりとかいている汗が淫靡に質の光を反射してぬらめいていた。首裏に浮き出た玉のような汗を一粒舐めとる、しょっぱい。塩分が含まれるからだ。当たり前か。
「あんっ、舐めちゃ、はぅ、だめ。激し、あぁっ!」
と言って、もっとと鈴音がせがんだ。彼はくびれに腕を回し、密着するように身体を重ねた。もう片方の手で揺れ動く乳房を掴む。吸い付くような肌に圧を加えると五指が包み込まれ、間から脂肪が零れるように形を変えた。掌全体でこね回すようにもてあそぶ。
「ごめっ、なさ……わたしもうっ!」
鈴音は固く目を閉じ、拳を握りしめ、歯を食いしばって言った。嬌声を耐えるくぐもった喘ぎが品の良い唇から漏れ出している。
彼は子宮口にぴったりと尿道口を当てつけ、腰を突き上げた。力強く脈打つ陰茎を抑え込むように膣壁は収縮する。
「い、ひくっ……うぁ」 と耐えるように鈴音は零した。爪先立ち、骨の髄まで貫く女の喜びを封じ込めるように身体を震えさせた。 「許し、先に逝っ……ぐ、ひんっ、出てッ? 出し、ふぁあぁ、あぁ」
鈴音の口調は理性からなる謝罪の内にあったが、びゅるびゅると大量の精液を吐き出さすたびにのたうつペニスを感じると力が入らなくなる。注ぎ込まれた熱さにだらしなく目じりを下げ、蕩けたような表情で喘いだ。
すらりと伸びていた脚を生まれたての小鹿のように震わせ、快楽に明滅する思考を手放す。
感じやすいのか敏感すぎるのか彼にはわからない。が、彼女がこうなるのは珍しい事ではないのでさして驚きはしなかった。怪訝に思ったのは、気を失っている鈴音を抱えて寝室のベッドまで運ぶと再び腰を動かしていることだった。
力なく横たわる鈴音の足を開き、どろりと醜悪な白い塊を覗かせる秘所へ、当たり前のように挿入する。腰を振るたびに、ぐっぽぐっぽとゼリー状の精子が膣内を移動した。筋力に支えられていない鈴音の頭が突くたびにカクカクと揺れる。
普段なら鈴音が起きるまで待っていた。せいぜい頭を撫でたりするくらいだったのに。なぜだろうか。彼は物言わぬ人形のような両手首を交差させ、重力で左右に広がった乳房を纏めた。ピストン運動を速めると、振動するように震える胸に顔を埋める。深呼吸し、汗と女の匂いをたっぷりと肺に入れて二度目の射精をした。
鈴音の意識はなかったが、それでも膣は別の生き物のように、うねりついて離そうとしなかった。
結局、鈴音の覚醒の切っ掛けは顔にかかる異物の感触だった。おぼろげに瞳を開けると、彼がのしかかって、赤黒い男根を胸で挟み込んでしごいている。たっぷりと白濁液で鈴音の顔を穢したあとも、淫液でどろどろになったペニスを乳房で拭きとるように扱っていた。
鈴音は小さく笑って自分の胸を両側から押し上げ、音を立てて亀頭にくちづけると尿道に残った種子を丹念に吸い上げた。
「ちゅ、んむ……ごめんなさい、わたしまた」 と申し訳なさそうに鈴音。口元に滴るザーメンを舐めとった。
「いや、やっぱりわたしはどうかしてる。意識のないきみを」
と言ったところで鈴音は無言でねめつけた。居心地が悪そうに彼は言い直す。 「おれは、どうかしてた。あの後もずっと鈴音を、その、物のように扱っていた」
彼が腰を上げようとすると、鈴音は抵抗するように一段と強く胸を締め付けた。ややあって、にゅるんと勃起を続ける男根が淫液を跳ね散らせて出てくる。
「興奮した? 睡眠薬を飲ませて犯してるみたいで」 と悪戯に鈴音。子宮に収まりきらなかった淫液が作った水たまりを見て言った。べとべとの手でナイトテーブルのリモコンを取ってテレビの電源を点ける。薄暗い部屋に切り取ったような光源が射した。
「嫌いだよ、薬だのなんだのは。そんなのを使ってたら、ほら、なんだっけ。都市伝説のなんとかマンにビームを撃たれる」
「なにそれ」 鈴音は苦笑した。
「知らない? まあおれもよく知らないけど」 ようやく半立ちになったムスコを見て、彼は一安心。
録画してあったナイトスクープが再生された。軽快なオープニング曲が流れる。
「どう?」 と鈴音。彼の肩に頭を預けて言った。
「局長を見ても興奮はしない。よかった、たまたまだったみたい」 と心底安心したように、鈴音の華奢な肩を抱き寄せた。
「違うでしょ」 べったりと精液にまみれた顔を彼の胸板に擦り付けた後、それをソースに舌で乳首を舐めまわしながら緩やかに手淫する。 「久しぶりにわたしとの時間ができたら。でしょ?」
それを示すようにいきり立った男根を間に、彼の肩に手をやると下品にも大きく足を開いて腰をゆっくりと落とした。彼の眼にはテレビの逆光で、シルエットのように映る。グロテスクに天を向く肉棒に、滑らかな曲線の尻肉が近づいてくる。
「一回で入ったら、今晩はたっぷり可愛がってね」 妖艶な表情で鈴音。
「外れたら?」
「可愛がってあげる」
膣から垂れ落ちた淫液が、彼の亀頭を撫でる。彼はテレビの電源を切った。
xxxxxxxxxxxxxxxxx
五話より責任取れんとかほざきながらホテル入った時
xxxxxxxxxxxxxxxxx
室に入ると見覚えがあった。以前逃げ込んだ場所だった。
彼はとりあえず飲料を冷蔵庫から取り出そうと思ったが、四季はつないだ手を離そうとしない。
「どうした?」
「あ、いやごめん」
慌てて手を離すと周囲を観察しながらベッドに腰掛けた。 「トマトジュースある?」
「ない。トマトジュースが好きなの?」 お茶を手渡した。
「うん、まあ」 と固い口調。
「こないだ来たところだろ」 隣に腰掛ける。
「でもあの時はそんな気なかったし……サウナとか、あるんだね」
「入る?」
「やめとく、門限もあるしそんなにのんびりできないから」
微妙な沈黙が訪れた。
どうすればいいんだっけ。と四季は早る鼓動を押さえて必死に思い返していた。服は自分から脱いだ方がいいのか、それともシャワーだろうか。その場合は下着を付け直すべきなのか。ネットで調べた気がするが、どうだったっけ。
「シャワーいってきなよ」 と彼。
うん、と唯唯諾諾に四季は腰を上げ、そこでふと見下ろして言った。 「あのさ、同棲相手の人とは、その、どうやってたの?」 言って、しまったと気が付く。配慮がないにもほどがある。 「……ごめん」
「いいよ、もう吹っ切れてるから。だから婚約に必死になってた。きみを身代りにしようとも思わない」
「そういう意味じゃなくて、あーもう。白状する、誘ったはいいけどどうすればいいのかよくわからないから元カノとか関係なく同じようにして欲しいって事」
一息で言って、四季は再びベッドに腰掛けた。すると肩に手をまわされ、優しく押し倒された。カットソーを下から捲られ、健康的な柔肌が露わになる。おもわずぎゅっと目を閉じた。いよいよだ。が、それ以降の彼の動きはなかった。
「ねえこのコルセットみたいなのってどうやって脱がすの?」
小さく笑って答える。 「いいよ、そのままで」
「汗かくよ」
「そん時はそん時。はあ、もっとこう、ロマンチックにお願いしたいところね」
「ビビってたくせに」
「ばーか」
言って彼の頭に手を回す。途中まで引き寄せて再び目を閉じる。手の感覚から、彼がゆっくりと近づいてくるのがわかる。ファーストキスのシチュエーションにしては少し間抜けだが、これくらいでいいのかもしれない。緊張のほぐれた気持ちで、四季はそう思った。ウーロン茶の味だ。唇が離れる、潤んだ瞳で彼を見上げた。
異性に胸を触られるのは奇妙な感覚だった。ビスチェの上からなのが野暮ったく感じてしまう。自ら背面の紐を緩めて、乳房が出るようにずらした。意図を察したかのように掌が滑り込む。その手が徐徐に下へと肢体をなぞる。あばら、ゆっくりと胎動する腹部、くびれ。
嗚呼。四季は期待に胸を膨らませていた。あの時の快楽を与えられるのだ。スクリーン越しの自分と同じ、自慰ではない愛撫を。すべすべした内腿を行き来する掌に、じれったそうに言った。
「早く」 誘うように、膝を曲げて股を広げる。
中指がパンティの肌触りのよい生地越しに割れ目に沿って動いた。既に湿気を帯びている。ねだるようにむっちりとした太ももで腕を挟み、擦りあげた。
それでも指は挿入されず、どうすれば彼がその気になるのかと四季は考え、実行した。恐る恐る彼の股間へと両手を伸ばすと、熱を持った膨らみがある。ちらと彼を伺うとパンティがずらされ、待望の指が侵入してきた。
ぎこちない手探りでベルトのバックルを外し、できた隙間から思い切って両手を侵入させる。熱いものが指に触れた、そっと包み込んでみるとゴツゴツしていて、下着の中で苦しそうに膨張しているのがわかる。可哀想、と四季は無意識に思った。こんな大きなものを狭い場所に閉じ込めておいたままにするなんて。慈愛の精神からペニスが引っかからないように下着をずり降ろすと嬌声を押し殺した。
「あっ、それ。そこぐりぐりするのっ」
ジンと頭が痺れるようだ、なるべく長くこの感覚は享受したいとさえ思う。もっとゆっくり、とせがもうとすると彼は下着を脱ぎ捨てて態勢を変えた。四季の秘部に顔を埋める。
「え、ちょ」 という四季の戸惑いに関せず、濡れそぼった女性器を下からクリトリスまでたっぷりと舐め上げる。 「き、汚いって。待って、んっ」
なんとか彼の頭を引き離そうとするがしかし、舌を挿入されると無意識に押し付けたい衝動に駆られ、ためらいがちに実行した。淫靡な生き物が膣内を蠢いている。膣壁を濡らす愛液を舐めとられ、吸い上げられ、クリトリスをねっとりとむしゃぶられた時などは腰が抜けそうになった。
「や、もう辞めっ、あっ。シャワーまだ」 いいつつも彼の頭を撫で、ストッキングに包まれた足で上体を固定する。
「きれいだ」
「ばか」
彼が官能的な味のする蜜にまみれた口で言った。
惜しくもあったが、四季は両足の拘束を解く。膝立ちの彼の局部を見上げる。尿道口にぷっくりとカウパーが球を作っていた。凶器のようだ、悪魔的な儀式に使用する、得体のしれない背徳的な物体にも見える。
枕もとのゴムに手を伸ばす彼に言った。「待って、わたしのバッグにあるの使って。ホテルのよりいいやつ、だと思うから」
「なんでそんなもん持って来てんだ。ローション使う?」
「やだ。保健体育の授業内容が男女一緒だなんて思わないでよ。それとも、避妊に配慮がない女の方が好き?」
彼は言いさした口を閉じて適当にバッグを漁った。ちょっとした化粧品や携帯、お守りは意外だ。
「付けてみたい、ゴム小っちゃいね」
「いいから」
「我慢できない?」 生意気に四季は笑った。口元のほくろが可愛いな、と彼は思った。
正上位で大きく開脚させ、局部にあてがう。湯気が立ちそうなほどトロけ、生生しい桜色の秘部と人工的なゴムのギャップは奇妙だった。より、異物を挿入するという事を意識させられる。
合図を発声することもなく、四季と視線を交わすと彼は手早く根元まで挿入した。四季の身体が短く震える。
「泣かなかったな」
「ばか」 空元気で軽く返す。 「動いていいよ」
「やめとく、良すぎてすぐ出そうだから」
「じゃあ、勘弁してやる」
そのまま破瓜の痛みが引くまで抱き合い、間で四季は彼の口を求めた。彼は愛液の事もあってお茶でうがいでもしようかと思ったが、ぐいと顔を掴まれては抵抗できなかった。まあいいかと小鳥がついばむような口づけを受ける。
四季にすれば不思議だった。白銀の少女も逃げ出す忍びなのに、力はこんなに弱い。手加減しているのかもしれない。どっちでもいい。弱くても強くても、関係ないと、ホテルを出てもそう思っているだろう。
身体を密着させたくて、ビスチェを脱ぎ捨てる。汗でじっとりとした肉体を重ねるのは気持ちが良かった。安心する。
「舌、入れてみたい」 冒険するような口調で言った。
彼は黙って深く口づけると四季の舌と涎を吸った。ざらついた表面とつるつるの裏面を交わらせる。荒くなった吐息と粘質な音が淫靡に頭蓋に響く。
ふう、と糸を垂らして四季。 「ありがと、そろそろ本当に動いていいよ」
ゆったりと浅く性交する。矮小な膣壁が異物を押し出そうと必死だった、凌辱という言葉が相応しい。変質されているにも関わらず、ヒダはカリ首を愛撫し、膣は快楽を覚えつつある。犯され、拒絶したいがこのまま続けたらどうなるのかという好奇心を捨てきれない。
やがて浸透するような悦が染み渡る。
まだ痛みが引かないとはいえ、均衡するような心地よい痺れがある。なるべく後者に意識を集中したくて、目を閉じて再び舌を求めた。映画のラブシーンのように。
映画ではハッピーエンドだった。では自分はどうなるのだろうかと四季は考えた。少なくともいまは幸せだ。彼の身体に擦れる乳房、絡む舌、喉を通る唾液、背にまわされた腕、肉が打ち付けられる音、ベッドの軋み。脳髄が溶けそうになる。
吐息にも似た喘ぎ声を出していた事に気が付く。やがてそれは本能からくる、よがり声に変わった。足を彼の腰に巻き付ける、身悶えを堪えるように背に爪を深く立てた、足の指をぎゅっと丸める、口づけも忘れて声を上げた。
痺れが下腹部を満たそうとしている。臨界が近い。
「いいっいいよぉ。奥がっわた、しっ。もっと、もう。ぅんん、わかんない、ぁああ!」
温柔の膣壁が昇天の快楽に収縮と弛緩を不規則に繰り返して陰茎をしごき、同じレベルへと引き上げた。痙攣するように大量の精子が無残にもゴムに吐き出される。ぽってりとした子宮口が招き入れるはずだった、髪の毛より薄い膜に包まれたそれを惜しそうに包み込む。
互いの性器の一時的な胎動が収まってしばらくしても、荒い息をするだけで抱き合っていた。ただただ、徒労感と、爪の先まで満たされる充足感と、初めてのセックスのこの上ない成功と、鐘の音のように響く絶頂の余韻に浸る。
重い、という四季の言葉でつながったまま体位を逆にした。押しつぶされた乳房が横にはみ出る。四季はこの感覚すら愛撫のように思えてならなかった。背と尻を撫でられるだけで気持ちが良い。
「抜くよ?」 と彼。
「やだ」 と四季。彼の肩に枕をかけて、顔を埋めている。
「出したからだめ」
彼は尻を持ち上げ、ずるりと半立ちのペニスを引き抜いた。
「やんっ……へえこんなに出るんだ」 四季は淫液でどろどろのペニスに興味津津。 「これどーすんの、結ぶんだっけ。あそうだ」
とバッグから携帯を取り出して彼に手渡す。 「写メ撮って」
「やめとけ」 と露骨に嫌そう。
「大丈夫、顔は隠すから。記念記念」
結局彼は渋渋とリクエストに答えて、まだあどけない顔にどろどろの肉棒をべしゃりと置いて目線を隠した。口に使用済みのコンドームを咥えて悪戯に微笑み、ピースサインの四季にシャッターを切る。胸元の汗が情事の出来を物語っている。
「うわっ、われながらえろいなー。おじさんの携帯にも送ってあげよう」
「いらないよ」
「いいからいいから、おかずにしてもいいよ」
彼はご満悦の四季を置いて、とりあえず汗を流すべく浴室へ向かうが、結局一緒に入った。背中を流してあげようと言う行為に甘えながら、ぼうっと夢想する。白状すればシャッターを切った時、球のような汗を舐めとり、両手に余るほどの胸に顔を埋めたいと思った。そして今は透明な浴室の壁に手を突かせて、形の良い尻に五指を食い込ませて犯したいとさえ、声が枯れるまでよがらせたいと。
それを留める理由を懸命に探し、まだ破瓜の痛みもあるだろうと性欲を納得させる。ソーププレイに興じようとする四季を小突いて一緒に室を出てバスローブに着替えた。とりあえずベッドに並んで横になる。
なんとなしに四季はテレビのリモコンを取り、アダルトな映像を流した。女優は巨乳だったが、四季より小ぶりだ。あんあんと声を出している。
「なんでAV?」
「勉強になるかなって思って、やっぱり逝くときは逝くって言った方がいい?」
「とりあえずテレビ切って」
「そうだよね、これからはパパが教えてくれるもんねー」
「ぱ、パパはやめろ。中年と同じ雰囲気がある」
「えーなんでー。パーパ、ユキチさん五人でどう?」
「やっぱわかってて言ってんじゃないか。そういう知識ってやっぱネット?」
「ま、ソーシャル・ネットワークでコミュニケーション取ってると、嫌でも目に付くっていうか」
「年齢制限とかあるんじゃないの」
「出会い系とかはあるって聞いた。わたしは興味ないからそっち系はやってないよ、十五だし」
嘘だろ……と、彼はバスローブの中で呼吸に合わせて艶めかしく動く大きな胸を見やった。去年まで中学生というなんとも犯罪ちっく言葉が脳裏をよぎる。
テレビの中では女優が口淫している。亀頭を咥えて陰嚢を揉み、竿を手淫している。それを見ても彼は興奮しなかった。もし仮にこれが四季ならばと考え、下腹部に血が集まるのを感じて思考を投げ捨てた。斑鳩なら、ともすればよいというものでもない。誰かを当てはめる事自体が無礼だ。
「ふ、ふうん。大人びてるんだね」
「ロリコン」
「やめよう、年齢の話は」
「これってピロートーク?」
「どうかな」
四季はこれ見よがしに、ベッドに横になった時から繋いでいた互いの手を上げた。
「……そうかも」
「そっちに寄っていい?」
返事を待たず、彼の肩に頭を預ける。 「今日帰るの面倒だな」
「寮だっけ? いいじゃん、料理とか出してくれるんでしょ」
「うん。おじさん、いま食事どうしてんの。今度作りに行ってあげようか。練習しとくよ、天ぷら」
彼は迷った末に言った。 「シチューがいい」
その後、四季は自室で物思いにふけった。
それでも彼は、わたしの事が忘れられなくて連絡を取ってくるのだ。この前のお詫びがしたいからと映画とショッピングに付き合ってくれて、それが下心と手淫させてしまったことに対する謝罪が混濁していることに罪悪感を覚えてしまっている。
彼は忍びだけど、媚薬に対する抵抗能力がわたしより低い事から腕は未熟だ。ひょっとしたら最近になって忍びを目指したのかもしれない。半蔵学園の卒業生なのだから、トップである半蔵がOBである彼に声をかけたのかもしれない。最初は忍び学科の用務員とかに迎え入れるつもりだったが……そこから忍びに憧れるようになった。だとしたら色色と教えてあげてもいい。
それで秘密の訓練を定期的に続けるようになって、やがて子弟関係以上の親密さを求めるようになる。
ううむ、なんだかヘタな恋愛ものになってきてしまったと四季は唸った。ま、とにかく立場が逆になったとしてもデートくらいはしていただろう、吊り橋効果ではないと暫定的に決める。
次はええと、生存競争からくる本能的に優秀な遺伝子を求めているにすぎないという問題も同上で解決して、単に欲情しているだけなのかどうか。不意に情事を思い出して、顔を赤くした。
浴室で、透明な壁に胸を押し付けて喘いでいる自分を妄想した。尻を抱かれ、肉棒で恥肉を搔き分けられる。しだいに立っていられなくなると四つん這いで犯される。
恥ずかしさから下唇を噛みしめて、嬌声を堪えた。しかし彼が出したいと言うとなぜだか辛抱できなくなって、外聞もなく、よがりあげた。前腕を枕に額を埋める。尻だけを突き上げて、自らも腰を振った。願望をめちゃくちゃに叫ぶ。
「出してえっ! そのまま出して、思い切り良くして! ああー!」
ダムの決壊のごとく流れ込む精液に、子宮が打ち震えるようだった。絶叫じみた声を上げて昇天する。
はず、だったがジンと膣を鈍麻させるのは自慰の快楽だった。あまりの落差に、いつの間にか眠りについていたことを知る。秘部と指先は不快に濡れていた。
寝ながらオナニーするとは。四季は苦笑して再びシャワーを浴びた。
その後は、と思考の糸を手繰りよせる。かしずいて淫液にまみれた男性器を、おしゃぶりフェラ? お掃除フェラか、してもいい。あるいはつながったまま口をねぶり合うのも、そのまま第二ラウンドでも。
もしもエッチが朝からなら、遅めの昼食を取りに外に出る。水族館とか行って、買い物にも付き合ってもらって帰る、戦利品でファッションショーをしてもいい。昼からならディナーだ、うんとセクシーなドレスを着て夜景の綺麗なホテルがいい。夜からなら、朝までくだらない会話をしよう。
そこまで考えて、どれも後戯に近いことに気付いた。買い物に付き合ってもらって帰る、の帰るとは彼の自宅を無意識していた。つまりは性欲が満たされた後も彼と居たいという訳で、ううむ。
わからん。と匙を投げる、そも理由で恋愛ができるものかと言ったのは自分ではないか。つまりこの思考の混沌こそが……そう、なのかも。
xxxxxxxxxxxxxxxxx
六話より雅緋が彼の家で妄想した時
xxxxxxxxxxxxxxxxx
彼に何のメリットも与えずにこちらの要求をのませるというのは虫が良すぎる話。とはいえ忍びらしく、最善と最悪の状況を考える。
最上は彼が知らない振りをしてくれることだ。なんの取引にも応じず、何の事だ、ととぼけてくれるのがありがたい。暗黙の了解で秘密は守られる。彼はわたしと次期学園長の座を得て、父上は学内政争の地盤を固められる。
次いで取引だ。わたしを差し出す以上の要求を迫られるかもしれない。彼は金に執着を見せていないので、何を必要とされるかわからない。やはり、おんなだろうか。
最悪なのは傀儡化されることだ。父上を欺くほどに、彼は極めて深い精神制御の知識を身に着けている。転じてその知識を行使する可能性も高い。しかしそれは詮無きこと。父上の上を行く忍びならば、誰にも対抗できない。一応は精神対抗の備えはしてあるものの、どうせ無意味だ。
雅緋はその際の彼を想像した。男を知らない生娘ゆえに古臭いアーキタイプな男性像を。
無理やりに口を奪われ、股を開くように命令される。無意識化では嫌だと叫んでも傀儡化された意識は嬉嬉として彼に従う。洗っていない男性器の臭いを肺一杯に吸い込んで、頬ずりをして娼婦のように口淫をねだる。媚びるように彼に視線を交わしたまま、嗚咽を堪えて喉奥まで咥えこんでは唇をすぼめて吸い上げる。たっぷりと胃に精液を注ぎ込まれ、尿道に残った汁を残らずねぶって咀嚼し、飲み下す。
発情した犬のように腰を振ってねだり、破瓜に喜んで膣内射精によがり狂わされる。穴という穴を凌辱され、彼なしでは生きられなくされてしまう。
やがて他のおんなも要求される。忌夢などは、ひょっとしたら少しでもわたしの慰めになればと自ら進んで贄になるかもしれない。
互いの膣から溢れる白濁液を吸うように抱き合い、愛液と唾液でぐちゃぐちゃになったそれを大きく口を開けて、彼に見せつけてから味わって飲み込む。さらに求めるように、忌夢と競い合うように男性器に奉仕する。例えば、と――
雅緋自身、おんならしくないとは自覚している。それでもおんなを捨てたという訳ではない。らしくありたいという願望すらある。
そういった乙女の心を踏みにじるかのように、彼はくちびるの純潔を強奪する。雅緋は頭を引き寄せられ、口を吸われる。彼の舌が懸命に閉じた唇から口内へと侵入を試みる。
きつく目を閉じた。端から、雅緋の清純さが目に見える形となって零れ落ちる。穢された肉体に存在することはできないと逃げるように涙は頬を伝い、無垢は床へと投身した。それはもう戻ってはこない。
くちびるを犯されるまでは常にこの身にあったはずなのに、いざとなると肉体を見捨てて、己だけは汚されるくらいならと自殺したように感じられた。裏切られた。いや、裏切ったのは自分だ。純真性を彼に殺させたようなものだ。なんという残酷な事をしてしまったのだろう。足が、手が、身体が震える。
罪悪感から彼の舌を口内に迎え入れる。純真性の贖いと、汚れに対する諦観だった。
抱き酔寄せられ、粘液にまみれた舌を吸われる。くちゃくちゃと粘質な音が頭蓋骨を伝わり、舌の絡み合いを直接に意識させられる。つまり、凌辱を。
唾液が混ざり、どちらのものとわからない。いつまでも口内にそれを置いておくわけにもいかず、飲み込んだ。彼が食道を伝い、身の内から浸食しているようだ。
口がほとんど塞がれているので息苦しく、自然と呼吸が荒くなる。興奮のせいではないと、雅緋はじぶんに言い聞かせた。
彼の隆起した男性器を下腹部に感じるようになって、糸を引いて舌が離れた。
命ぜられるがままに衣類を脱ぎ、全裸で彼にひざまづく。震える手でベルトのバックルを外す。ジッパーを降ろし、下着をずらすと怒張した肉棒があった。血管が浮き出て、赤黒い色彩と暴力的なグロテスクさがある。
夫婦なのだから、愛撫はしなければならい。しなければ、ならないと念じて蒸れた臭いのする男の先端に向かって大きく口を開ける。つややかな亀頭を一口して、舌先でちろちろとおっかなびっくり舐める。彼を覗うように視線をあげると、頭を掴まれ強引に引き寄せられた。悲鳴と嗚咽が混濁した苦悶の呻きをあげる。
雅緋は両の手は開いたままだ。つまり、今にも彼を押しのけてしまいたいという反射的な欲求を理性で堪えている。耐えなければならない、夫婦になってしまったのだから。ここで折れる訳にはいかない、負けてはならない。学び舎を守らなければならない。
彼は雅緋の頭から手を離した。喉奥を突くことに飽きたのでも満足したからでもなく、雅緋自ら頭を振って彼の先端から根元までを雑に飲み込んでは吐き出し始めたからだ。
本能的な抵抗を示していた両手は彼の腰に巻き付け、ただただ頭を振った。喉を責められるたびにくぐもった声をあげてしまう。口内で空気と粘液が、ぐぽぐぽと音を鳴らす。口の端で唾液が泡を作った。一個の、装置のようだった。
頭がぼうっとするのはたぶん、脳を激しく揺さぶっているのと運動量に見合った呼吸ができていないことによる酸素不足からだ。雅緋は理性で、そう判断した。するしかなかった。自己を客観視することで、彼に頭を撫でなれながら激しく口淫する惨めな自分を忘れたかった。
深く飲み込んだ瞬間に男性器は痙攣したように大きく震えた。反射的に頭を離そうとするがしかし、彼に強く抑え込まれる。塊のような熱い性を食道に吐き出された。呼吸に支障が出たことから、喉は陰茎を嘔吐する時と似た反応で取り除こうと懸命に蠢くがしかし、それは彼にとって更なる射精を促す媚でしかなかった。
射精が収まった後も亀頭を喉奥のふよふよとした粘膜に擦り付けるように頭をぐりぐりと弄び、口にいまだ衰えを見せない男性器を挿入したまま雅緋をゆっくりと押し倒し、逃げ場をなくした頭に数度腰を打ち付けて、ようやく解放した。
「げほっ、えふ、かっは……」
口から、もう何やらわからぬ淫靡な匂いのする液体を吐き出し、雅緋がえづく。味などわからない。それよりも呼吸だ。
無意識に腹をさすった。また、胃に流し込まれた。彼の性はこうして身体に吸収され、いずれは彼の性を自らの体臭のように発してしまいそうな気がする。そんな身体で、忌夢とは会えない。
呼吸を碌に整える暇もなく雅緋はベッドに四つん這いになり尻を大きく突き上げ、彼の枕に顔を埋めた。
まるまるとした白い臀部が汗だけではない液体でしっとりと湿っていた。薄明かりに反射して、怪しくぬらめいている。尾てい骨あたりから、なだらかに伸びる背筋が美しかった。柔らかに隆起する肩甲骨のその先には細い首筋があり、触り心地のよい白銀の髪がある。表情は見えない。
彼は固定するにしては過剰な力を五指に籠めて雅緋の尻を掴んだ。柔肌に指が食い込む、雅緋の秘部に彼の先端があてがわれる。雅緋の唾液と彼の性を纏った男根が。
雅緋は再び、強く目を閉じて身震いした。
一息で最奥まで貫かれる。滑らかな挿入は言葉にせずとも喉を犯されて感じていたという事実を、否が応にも突きつけられるようだった。それが嫌で嫌で仕方がなかった。
ねっとりとした膣壁をカリ首で抉られるたびに、雅緋は嬌声を押し殺した。尻肉に腰を打ち付けられる音と、自身の意思に反してにちゃぐちゃと嬌声をあげる膣を可能な限り無視した。
強く彼の枕に顔を押し付けた。肉壺をかき回されるたびに乳房はゆれ、シーツのざらざらとした表面に擦れる。呼吸は乱れるので、枕から彼の匂いを体内に取り入れざるを得ない。
雅緋は、彼から言われない限りは後ろから犯される事を望んだ。物のようにおんなを扱う彼は獣だと思った。なら、獣らしいあしらい方をしてやるというささやかな自己完結の反抗だった。悦ばされている顔を見られたくはなかった。
夫婦なのだから、身体を重ねるのは自然だ。夫から望まれれば、したがって妻は受け入れなければならないという事だ。受け入れなければ身体を重ねる事はできないので、夫婦として不自然状態と言える。
だからこれは義務だという理屈で、身悶えを押し殺して雅緋は達した。同時に手早く肉棒が引き抜かれ、産毛一つない陶器のような背を精でたっぷりと汚す。
雅緋は深く深呼吸し、ゆっくりと顔をあげた。彼の枕に、目と口から零れた快楽の染みを残して、男性器をたっぷりと覆う淫液を豊満な胸で包み込んで、労わるようにしごいた。
それが雅緋にとってのルーチンワークだった。
ほどなくしてそこに忌夢が加わった。なぜかはわからない。悲しみを共有しようと進んで贄となった気もするが、彼が忌夢に強制させた気もする。はたまた雅緋が頼んだのかもしれない。
雅緋は自分と同じように彼に犯される親友を見つめていた。忌夢がぎこちなさの残るくちびると手でもってして男性器をしごいている。裏筋に吸い付き、ぽってりとした亀頭にかわいらしい舌を絡ませる。やがて生臭い性が顔に放たれた。忌夢はこれでいいのかと精液が付着した眼鏡越しに彼を見上げる。
それではだめだ、と雅緋は思考を行動に移した。忌夢の唾液と精液が付着した男根を、ツンと筋の通った小さな品のよい鼻を彼の腹へ押し付けるように一気に頬張る。
彼はゴムをつけてくれない。口淫の後は挿入が待っているので、なるべく精液は取り除いておかないといけない。それも、彼が挿入するまでの短い時間の間にだ。あとで忌夢に教えておこう。
頬とくちびるをすぼめて尿道に残った性を搾り取るようにゆっくりと口から男根を引き抜く。舌で可能な限り陰嚢をまさぐった。いつもとは違う、忌夢の味が混ざっている。苦く、酸いようで甘い。カリ首などは構造上、精液が残っているような気がして念入りに。
二、三回のイマラチオで彼は雅緋の頭をそっと引き離した。ベッドでは忌夢が仰向けになって、両ひざ裏を抱えて足を開いていた。秘部からはおんなの蜜が溢れている。拭うように彼が舌を這わせると忌夢は短く身悶えした。じゅるじゅるとわざとらしく音を立てて生娘はねぶられ、乳首を勃起させていた。
忌夢の足を握る手に力が入っているのに、雅緋は気づいた。経験から、それが凌辱を堪えているのか、それとも秘部をむしゃぶる彼の頭を柔らかな太ももで挟み込み、両手で押さえつけて喘いでしまいたいのかのどちらかだと考えた。どちらでもあるのかもしれない。精液に汚れたメガネの奥の瞳とくちびるはきつく閉じられていてそれ以上を推察することはできない。抱きしめたくなるような白くてふわふわとした身体は、うっすらと汗で湿っている。
たっぷりと蕩けた秘部に、彼が亀頭をあてがう。小陰唇が吸い付くようにひくついた。破瓜の際、忌夢は雅緋を見やった、泣いている。涙が顔を伝っていた。純潔だ。忌夢は友情を守るために純潔を見殺しにした。天秤にかけて雅緋を取った。
その結晶を、雅緋は犯されている忌夢にそっと近づいて舌先で舐めとる。無垢はしょっぱかった。メガネを取ってやり、頭を抱いてやる。小さくくちづけをした。彼がしたように口内まで強欲なものではなく、重ねるだけのささやかなものだ。痛みに耐える忌夢を少しでも楽にしてやろうと、男根に貫かれる忌夢に何度も何度もくちづけた。
忌夢が再びぎゅっと顔をしかめた。歯を食いしばっている。彼は忌夢の脚を抱き、淫液をローション代わりにしてむっちりとした太ももの中で射精した。脚が開かれると、ねばりとした白濁液が糸を引いている。
忌夢は果てたのだろうか。果てさせられたのだろうか。雅緋は自分の胸に忌夢を抱き寄せて思った。すすり泣きが聞こえる。乳房に熱い涙を感じた。
痛いだけでは酷だ、快楽を感じてくれていればせめての慰めにもなるだろうと。あやすように忌夢を抱きしめて背を撫でた。抱きながら、彼の男根を口淫で労わる。これが性行の一つの単位として扱われていたからだ。挿入の後の彼への慰労で、ようやく終わる。忌夢の味がした。忌夢が胸の中で震え泣いた。
嫌悪と快楽の両方があった。さながらカードの表裏のように。
忌夢を取り入れてからルーチンワークは変化した。彼がどちらかで達せば、もう片方へと性の矛先が向けられる。口淫、挿入、慰労という単位も無くなり、偶数回の射精でその日の性行が終わるようになった。
ある日、いつものように彼を含めた三人の入浴の時の事だった。ボディソープを身体に塗りたくり、マットの上で彼を二人で挟んだ。暗黙の了解で、どちらが下になるかは順番だ。この日は雅緋が下で、彼を挟むと忌夢の背へと手を回して固定する。足を絡ませて可能な限り皮膚の接触面積を取った。柔らかい腹に熱い一物が食い込むように当たる。乳房が彼の胸板と背でむにゅりむにゅりと形を変える。乳頭は摩擦がボディソープによって形容しがたい痺れを与えた。
いつもであれば、彼はこの場では達しないはずだった。が、雅緋は膣内に侵入した異物に瞠目する。彼は挿入したのだ。ちらと忌夢を見やるが、頭は彼の反対側の肩にあるので見えない。下くちびるを噛んで腹をごりごりと削るようなピストンに堪えた。動きはゆっくりとしたものだったが、忌夢はこの行為に気付いていないと考えると、一層声を押し殺さねばならないような気がして必死で抑える。
いつもはどちらかに見せつけるように性交する彼が、なぜ秘密裏に性交したのかはわからない。そういう趣向なのかもしれない。だが、と雅緋は考えた。
もしもここで黙って彼を射精まで導けば、忌夢が彼を相手する回数が一回減るのではないか?
そんな保証はないが、どちらかが彼を射精されればもう一方へと矛先が向く。ここでわたしが忌夢に悟られることなく済ませれば、もう一度雅緋を相手する取引を、彼は無言で持ちかけた。
思い込みかもしれない。だが、これまでの彼との性行のパターンを外れたという事はなんらかの事情があるわけだ。それは気まぐれかもしれないが、耐えてみろ、と彼が言っているような気がした。
それならば受けて立つ。親友に少しでも彼の穢れが降りかからない可能性があるのであれば。それにデメリットのない話だ、彼にそのつもりがないならいつもどおりに忌夢が抱かれる。
彼が雅緋の歯形のついた下くちびるを慰めるように舐めた。極力意識しないように、目を閉じる。あまりにも身体を洗う時間が長いと忌夢に怪しまれるかもしれない。どうすれば膣内の男性器に刺激を与えられるかなど考えたこともなかったが、下腹部に力を籠めてみたりもした。尻を振ってみもする。
いつもとは違う、じんわりと浸透するような快楽が下半身から脊髄を登って脳に伝わる。雅緋が初めて味わう浅いセックスだった。
にちにちと肉体がいやらしい音を立てる。彼は膣外に出してくれるだろうか、そうでなくても従属させられる屈辱を分かち合ってくれた友人に、たった一回でも危害が加わらない可能性のためなら、一度くらいは子宮に注がれてもいい。あの、焼けるような熱を持つこってりとした粘液をぶちまけられても。
雅緋は膣にだけ意識を集中させた。鼓動も、何もかもを捨て去って男性器を昇天させるため、忌夢に気付かれないように腰を蛇のようにぐねつかせ、膣内射精と同時に深く達した。精液は、忌夢にわからないようにシャワーで洗い流してしまえばいいと安息の表情を見せた。
「雅緋?」 と、忌夢が彼の背からわずかに離れ、信じられないといった表情で見下ろす。 「どうして」
「何がだ」
と気丈に雅緋。ばれてなどいないはずだ。声も出さなかった。
「入れられたの?」
「いや」
「ならどうして。逝ったよね?」
「達してなどいない」
忌夢はゆっくりと上体を起こして背を向ける。それを見て雅緋は愕然とした。快楽を耐えようとするあまり深く突き立てた爪痕が生生しく赤い線を引いていた。意識しすぎたのだ、秘密裏に彼を果てさせようとするあまり、そんな単純な事にも気が付かなくなっていた。
華奢な肩から見返す忌夢の視線は仄暗い。
彼に抱かれる事に半分は嫌悪を感じていた。もう半分は快楽だ。これは二人の仲で共通の認識といってもよかった。
雅緋は嫌悪を肩代わりしたいがために、黙って射精させることで忌夢の身代りになろうとした。転じてそれはカードの表裏のように、雅緋が快楽を得たいがために、黙って射精させることで忌夢を出し抜いたとも取れる。
「違うんだ、忌夢。勘違いするなわたしは」
言いさしたが、続く言葉が見つからない。取り返しのつかない事をしてしまった。秘部からは後悔をあざ笑う口から出た舌ように白濁した液が滴った。
浴室から出る。忌夢は全裸に濃い紫のニーハイソックスを太ももに食い込ませていた。ベッドの上で、肉付きのよいその脚を彼がもてあそんでいる。湯上りでしっとりと水分を吸ったニーハイを撫で回し、食い込みから手を潜り込ませて肉を揉んでいる。雅緋はその様子をじっと見ていた。違うんだ、と念じながら、頭を雅緋とは反対側へと向ける忌夢を見つめる。
彼は忌夢の脚の付け根からゆっくりと先端まで顔を擦り付けるように香りを肺に入れた。風呂上がりの石鹸と、わからない程度の乙女の汗、肌触りのよい生地の匂い。むちむちとした太ももから膝裏、引き締まったふくらはぎ、ぷにぷにと柔らかい足裏。ニーハイが足の指の裏と土踏まずに作る陰影が性的だった。
嗚呼。
聞き間違いでなければ、雅緋は確かにそう聞こえた。控え目で、媚びるようではなく本心から零れ落ちたような感嘆とした吐息。
忌夢はもう片方の脚で彼の背をぐいと引き寄せる。
「入れて」
その一言で挿入されると忌夢は理性が決壊したように、濁流のごとく乱れた。正上位で彼の腰に両足を巻き付けて一生けん目に喘いでいる。
「いいっ! いいよ! 突いて、もっと激してもいいから、ぼくのこと物みたいしてもいいから。おまんこの奥まで、ずぼずぼしてぇ! ぼくも頑張るから。もう前みたいに外に出さなくていいから! 受け止めさせて……あぁっ! 気持ち、いいよう。出しても、お口で綺麗にしてあげるからね、ぼくの愛液で汚れたおちんぽを喉奥も使ってお掃除するから。遠慮しないで。めちゃくちゃにして、ね? お願い、返事してよ。やだ、ぅん! おっぱい舐めてよ、好きなの! 出る? 逝く? 一緒がいい。早く逝こ? ぼくもう、限界。やだ、ひとりで逝きたくない。お願い、出して。雅緋にしたみたいにどろどろにしてよ。キスする?」
忌夢は哭くように喘いだ。大きく口を開けると彼の突き出された舌をねぶった。そのまま深く絡ませて唾液を貪欲に飲み下す。
雅緋は泣いていた。ふらりふらりと力なくベッドに崩れ落ちる。
「違うんだ、違うんだ忌夢。わたしは……」
肉が打ち付けられ、粘質な音と忌夢の嬌声が室内に響いた。そうして忌夢は、雅緋と同じように達した。受けた快楽の度合いは比べようもないが、それでも秘部に大量の精液を注がれた事と、抱く背に爪痕を残したという点では同じだ。
呼吸を荒くする忌夢が、雅緋の顔を抱き寄せて涙が流れる頬を舐め上げる。しょっぱかった。
そのまま瞳を閉じ、口をつけて舌を交わらせる。
もう取り返しはつかないのだと雅緋は理解した。諦めたのかもしれない。艶めかしい吐息で互いの口を貪った。
その後、数度の膣内射精に溢れた互いの秘部からザーメンを吸い出した。暗黙の了解で、妊娠しては事だという建前があった。本音は、なんとなくしてあげたかったからだ。忌夢が悪戯交じりに雅緋のクリトリスを舌先で弄る。お返しとばかりに舌を深く膣に捻じ込んだ。暇を持て余した彼が、重なり合う雅緋に背後から挿入にしようとしたところ、言った。
「わたしは浴槽で出してもらった。偶数回の最後は忌夢だ」
カードの裏を忌夢に譲る。最後に二人で慰労した。彼の亀頭を間に挟んで、舌を絡ませて深くくちづけた。ぷりぷりと張った亀頭を二人の舌とくちびるで奉仕する。口を合わせてかっぽりと亀頭を覆い、ねぶり回す。あっという間に性は吐き出された。
雅緋は忌夢のメガネについたザーメンを舐めとって綺麗にしてやった。
そこまで考えて雅緋はかぶりを振る。考え過ぎだ。少女漫画の影響だと憤慨した。少女というわりには過激すぎる。
気持ちを切り替えて一階に戻り、あり合わせで親子丼の下ごしらえを済ますと風呂を沸かしてシャワーを浴びた。