絶望で終わる物語が好きだった
救いもなく、光など微塵もない、そんな物語が
現実がどうしようもない俺にはそれが救いに見えたから
高い高いビルの屋上、もう何も考えたくないと目をつぶってそのまま空に身を任せようとしたその時だった
バンッとドアが開け放たれたかと思えば声が響いた
「灰崎ィ!」
虚ろな目でフェンス越しにその声に振り向いた。そこには涙を流しながら怒りの表情を浮かべる工藤 暁人(くどう あきと)の姿があった
「お前っ、このまんま終わりでいいのかよ!?まだ何も成し遂げてない、抵抗すらしないでこのまま死ぬのか!?」
工藤は嗚咽混じりに叫び僕を止めようとする、分かってるさ、そんなこと抵抗すればまだ何か救われたかもしれないなにかに心から打ち込めばなにか生きる希望みたいなのも見つけられたかもしれない
……でも、何もかもに疲れた僕にとってはそんなことどうでもよかった
死んで、虐めてきたあいつらを、親を、世間を、呪ってみんな地獄に行けばいいと思った。希望なんて抱くだけ無駄だと思った。
「……君にはわからないだろうけど、僕はもう疲れたんだ。もうどうなろうと構わない、死ぬのすらもはや祝福だと思うね」
「違うっ!」
工藤は僕の言葉を遮るかの勢いで叫んだ
「死ぬのが祝福?どうなろうと構わない?そんな理由で全部終わらせるのか!?お前を大事にしてる人は、お前に救われた俺は、どうでもいいのか!?」
……どうだっていいそう言い返そうと口を開くが不思議と口は違うことを言っていた
「君は僕に生きて欲しいのかい?」
「そうに決まってるだろ!!!お前が俺の恩人で、大事な友達だ!生きててほしくてお前が生きてくれる理由なら俺が作ってやる!……だから……」
「ふふっ」
不思議と笑みが出た
「大丈夫、人の心の中ではその人が生きてようが死んでようが、その人は生き続けるらしい、僕を苦しめ続けた君の中で僕は君の呪いとなって生き続けるよ」
そう言うやいなや僕は体を空に任せた、工藤もあの距離から、しかもフェンス越しだ間に合うわけが無い
工藤の叫び声が聞こえた、でもそれもすぐに遠く意識もなくなって言った
……走馬灯だろうか、工藤暁人と初めてであった頃の思い出が浮かぶ
彼は虐められていた……誰も彼も飛び火が怖くて助けようとする人などいなかった、でも、僕にとってはその飛び火すら怖くなかったんだ
「本当に、君達は馬鹿みたいだね。君たちがしてきたこと、全部知ってるよ。明日からが楽しみだね」
虐められている証拠、人、方法、全てを記録して学校に突き出す、どうせ停学くらいで終わるのだ。なら、もう少し苦しめてやろうかとメディアにもこの情報を渡した。それは大事になり虐めていた主犯格達は外を歩くことすら怖がる始末だった。
それから狂い始めたのだ、彼は僕に執着するようになった初めはただのお礼のようなものだったが日に日に彼は狂った
僕の陰口のようなものを言う奴がいれば殴り掛かり、家族がいないと知るや毎日僕の家に来た
初めは僕も嬉しかった、でも、度が過ぎた彼は僕に多くの敵を作った勿論、当の本人は知りもしないが
彼といれば不幸になる。だから距離を置いた。関わらないようにした。なのに彼はしぶとく着いてくる
……疲れた、こんなことになるなら少しの正義で立ち会わなければ良かった、助けた意味なんて無かった
そう思えば不思議と「死」というのが1番楽な気がした
…………走馬灯ももう終わり
ただこの世界に、彼に、呪いあれ