【――遠い日の思い出・2歳】
――……キャハハハハハ……
ランデル「……ちちうえ。はは、うえ……」
エリヒド「おぉっ……! 見ろ、二人とも。ランデルが笑ったぞ! こんなにちっちゃいのに、かわいらしい笑顔で絵」
ルルアリア「まぁまぁ、あなたったら……」フフッ
エリヒド「ははっ、なんとも可愛らしい顔だちだ……それでいて、聡明な瞳をしている。きっと、将来はこのハイリヒを守りし少年として、多くのために慕われる王となるだろう」
エリヒド「……その時は、この世を見守ってくださるエヒトさまの下で、民を守っていくに違いない」
ランデル「……? えひとさま?」
エリヒド「この世界を見守ってくださる尊き神だ」
エリヒド「……神様、か。ランデルに教えるにはまだまだ早いかもしれん。この世界を作ったエヒトさま、それらを信奉する聖教教会。ハイリヒと聖教教会、その関係性は、お前がこれからたくさん学んでいかなければならないものだ。ランデル、それはわかるな?」
ランデル「……??? んー、わかりました。ちちうえ」
エリヒド「ほら、みろ! この年で分かったといったぞ!」
ルルアリア「まったくもう……それは単に反応しているだけですよ」
ルルアリア「……確かに、この国の将来や亜人族の関係を考えれば……この子が知らなきゃいけないことは沢山ある」
ルルアリア「でも、それだけではないでしょう? この子に教えなきゃいけないことは……もっとほかにあることを」
エリヒド「むっ……そうだったな」
エリヒド「……ランデルよ、よく聞いてくれ。これはハイリヒの将来の話でもあるが……お前自身の話でもあるのだ」
ランデル「……んぅ……??」
エリヒド「……いま、この世界はまだまだ将来という不安に包まれている。亜人族との問題、魔人族という脅威。他国や他所の国とのいざこざ……はっきり言って、数えきれん。きっとお前は、この時代に生まれてきたのは……酷な事だったかもしれん」
エリヒド「だけど……いや、だからこそだ」
エリヒド「ランデル。いいな、絶対に、何があろうとも。お前はお前自身を見失ってはいかん」
ランデル「……?」
エリヒド「信じられるものは神でもいい、それこそほかの何かだっていい。お前には王となってみんなを民を守ってほしいが……それでも私は、お前が自分の中にある『何か』を信じられる強い人間として生きてほしい」
エリヒド「……魔人族という脅威。エヒト様という絶対神。きっと混乱の渦中へと叩き込まれ、お前はその渦の中で生き続けていくかもしれない」
エリヒド「それでも……それでも、な。私はお前に未来をプレゼントしたいと思っているよ」
エリヒド「だから、それまでは私とルルアリアが、お前とリリアーナを支えよう。あの子もまだ6歳になったばかりだが……」
エリヒド「姉であるあの子や、母上。そして……」
エリヒド「その時は、父である私も支えてほしい」
ランデル「……ん! わかりました、ちちうえ!」
エリヒド「……いい返事だ! さすが私の息子だな!」
ランデル「きゃははははっ!!」
ルルアリア「……ふふっ、もう……あなたったら……」
………………
――この時の余は、生まれた時から世界は輝いて見えていた
――大好きな父上、大好きな母上、大好きな姉上
――そして、城で働く者たち
――余は、幼いころから厳しくも優しい父上の下で育てられてきた
――あの方は立派だった。余はまだ子供だが、父上が国の政治のために身を粉にしてまで勤めていたのが理解できた
――でも、それを傍らで見ていたからこそ、余は支えたいと思っていた
――いつか、余が大人になったら父上を支えるのだ
――そして、王座を譲り受けた際は、これまでの生涯を振り返りながら穏やかな余生を送っていただきたいと思っていた
――この戦乱の世で、ちっぽけだけれどありふれた幸せを……余は、欲していたのだ
――……欲していたのだ
………………
…………
……
【――フェルニル、食堂にて】
清水「ん~~……あとちょっと……かぁ」
檜山「あぁ、なんだか何か月もハイリヒから離れていた気がするよな……」
恵里「実際は一か月も経っちゃいないんだけどね。怖いよねぇ、濃密な体験ってのはさ」
――ガサガサッ……パリッ、ムシャッ……
鈴「それにしてもうまいねぇ、このスナック菓子。南雲くんが作ったんでしょ?」
ハジメ「まぁな。元の世界に帰れた時のことを考えて、自分好みの飯はいろいろと手を付けてみた」
清水「そーいや、愛子先生との再会した時にもカレーライス食いに来た時何だっけか。話聞いたよ」
龍太郎「あー、シルニッシル、だっけか」
――ムシャムシャ……
光輝「……このままいけば、一日で着くんだろ?」
ハジメ「? それがどうかしたのか」
光輝「なぁ、思ったんだけれど……たしか南雲って、いろんな所に転移できるアーティファクトを作ってなかったか?」
光輝「そっちのほう、使えるんだろ?」
光輝「それに……ノイントやエーアストも。確かワープできるような魔法もあった気が……」
ノイント「……」
エーアスト「……」
ハジメ「ん……それなんだけどな」
――スイッ……
ハジメ「……実のところを言うと、姫さんやランデルたちをここに呼ばなかったのはそのためなんだが……」
ハジメ「――さっきから、ハイリヒのほうで連絡が取れねぇ」
光輝「……えっ?」
雫「連絡が取れないって……それ、どういう……」
ハジメ「さっき言ったとおりだ。ハイリヒの方で設置してあった連絡用のアーティファクトが……どういうわけか全然つながらねぇ」
ハジメ「ランデルのやつ、言ってたんだよ。自分が持っていた連絡機器は遠藤の奴が持っているって。なら、これで連絡を取れば繋がるのはあの影の薄いアイツだ」
檜山(影の薄い、で指摘されてるのかわいそ)
清水(いやでも、俺もそれでしか覚えてないしなぁ……アイツの事)
ハジメ「だったら、こっちから連絡を取ろうとすればアイツの方に繋がるはずなんだが……」
雫「……なにかあった……ってこと」
ハジメ「可能性、あるだろうな」
光輝「そ、そんなっ……!!」
ハジメ「なぁ、ノイント、エーアスト。お前らの方は……」
ノイント「……先ほどからあちらの方に転移を試みてはいるのですが、まったく……」
エーアスト「同じく。我々の力をもってしても『妨害』されてしまうのです」
光輝「妨害!? 神の使徒であるお前たちが!?」
ノイント「……我々の力は、決して主であるあのお方を超えることは出来ません」
ノイント「それゆえに、この盤上である世界を管理するように命じられており、トータスにおいては我々の手が及ばない場所は」
ハジメ「ユエの居場所」
ノイント「……一部を除いて、ないのです」
清水(あるにはあるんだ……)
香織(まぁ、あるにはあるよね……)
光輝(だったら俺たちは呼ばれてなかっただろうしなぁ……)
ノイント「そんな盤上の上で、我が主にあだ名す……南雲ハジメとはまた別のイレギュラーが荒らしているのは明白」
ノイント「しかし、そうであるならば……この状況をもたらしている者は……」
光輝「……南雲どころか、エヒトに迫るほどの存在……?」
檜山「……それってよ、ちょくちょくちょっかいかけてくるあの獣だの竜の神だっつー連中か?」
ノイント「……おそらくは。あの者たちが原因かと」
雫「ちょっと待ちなさいよ……それって、つまりハイリヒは……」
エーアスト「……可能性は、あるでしょうね」
エーアスト「あなたがたが迷宮攻略にいそしんでいる間、奴らの手がすでにハイリヒに向けられている可能性がある事を」
――ガチャンッ!!
光輝「っ!?」
ハジメ「なっ……」
ランデル「……な、ぁ……」
香織「で、殿下……!?」
雫「っ……」
ランデル「……余、余も……すこしみなと話を……しようと、おもって……」
ランデル「だ、だから……おかし、もってきて……」
ランデル「っ……す、すまない。少し、一人にさせてくれ」
――スタスタスタ……
光輝「ら、ランデル殿下!!」
ハジメ「まて、止めろ天之河!」
光輝「で、でもっ……!」
雫「……光輝。彼には、下手な言葉はかけない方が良い」
雫「私たちは時間をかけすぎた。おそらく、ハイリヒでは何かが起きている……いや、何かをされている」
龍太郎「……どっちに転ぼうと、覚悟を決めるしかない……かぁ」
香織「……あとでリリィに話をしておかなきゃね。隠すことなんて絶対にできないんだし」
ハジメ「……」
………………
…………
……
【――遠い日の思い出・6歳】
ランデル「……あ、姉上……」
リリアーナ「あら、どうしたのランデル。こんな夜更けに」
ランデル「そ、その……」モジモジ……
ランデル「……い」
リリアーナ「い?」
ランデル「……っ、いっしょに、寝てもよろしいでしょうか!!」
リリアーナ「……?」
リリアーナ「……ぷっ、ふふっ。いいわよ、ランデル。ほら、こっちにいらっしゃい」
ランデル「……はい、姉上」
………………
リリアーナ「……おっきくなったわね、ランデル。まだまだちっちゃいけど、いつか私の事も追い越しちゃうんだろうな」
ランデル「は、はい。絶対に、姉上の身長を越して見せます」
ランデル「なにせ、余はもっともっと大きくなるのですから。大人の男になります。絶対に、絶対に」
リリアーナ「あらあら、別にそこまで張り切らなくてもいいのですよ?」
リリアーナ「……あなたはあなたのペースでおっきく成ればいいのだから」
ランデル「……っ!」
リリアーナ「みんな、あなたの事を見守っているわ」
リリアーナ「だから、そこまで焦らずとも――」
ランデル「……それではダメなのです……姉上……!!」
リリアーナ「……? ランデル……?」
ランデル「……姉上、余は姉上の気持ちがわかります」
ランデル「姉上にしつこく話しかけてくる……バイアスという男を……」
リリアーナ「……そっか、わかるよね。ランデルもおっきくなったもんね……」
ランデル「姉上、なぜ、なぜあのような男に媚びなきゃいけないのですか」
ランデル「姉上はもっとあの男を突き放しても良いと思うのです。あの男に、姉上に触れる資格なんてありません……」
リリアーナ「……ランデル。あなたが理解していないだけで、王族による結婚というのは恋愛感情によって左右されるものではありません」
リリアーナ「大事なのは、国という繋がりが……いかにして大きくなれるかどうか」
リリアーナ「私は、それらを大きくさせるための歯車に徹するだけなのです」
ランデル「でも……でもっ……!」
リリアーナ「ランデル。あなたの気持ち、私はよくわかります」
リリアーナ「ですが、今ここで人同士の繋がりを強固なものにしなければ、私たちは魔人族の手によって滅ぼされる」
ランデル「っ……」
リリアーナ「……今は魔人族を相手に、人間族は数で有利を保てている」
リリアーナ「そして、その有利を維持できているのはヘルシャー帝国があってこそ。ここで、数という優位を崩すわけにはいかないのです」
ランデル「っ……そんなっ……ハイリヒが……ハイリヒだけじゃ……だめだからっ……」
リリアーナ「……えぇ、そうですね」
リリアーナ「ごめんなさいね、不安にさせて。でも、大丈夫よランデル」
リリアーナ「例え、遠い場所でお嫁さんになっても……私はずっと、あなたのお姉さんよ」
ランデル「……っ」
………………
――大きくなったら、余は『現実』という物が見え始めてきた
――自分を取り巻く環境、ハイリヒの王になることは、何を意味するのか
――余が六歳になり、周りのことが良く見えるようになった
――ハイリヒ王国と聖教教会の関係
――それらを信奉する者たちの姿
――そして、人間族に牙をむく魔人族の存在
――産まれたばかりのころは、いつかは父上を支えたいと思っていた
――だけど、力をつけていなかったあの頃の余にとって……この世界は、あまりにも荒々しく、無情なものであふれかえっていた
――世界どころか、国どころか、家族さえ支える事すらできないちっぽけなものだと思い知らされたのは――この時だ
………………
…………
……
【――夜、フェルニル、食堂にて】
ハジメ「ふわぁぁぁぁ……あー……寝れねぇ」
ハジメ「……なんつーかな。こういう体になったおかげで夜食を食っても体に悪い影響がないってのがありがてぇわマジで」
ハジメ「……」
ハジメ(……)
ハジメ(ランデルのやつ、気にしてるんだろうな。ハイリヒのこと)
ハジメ(……まぁ、そうだろうな。今こうしてる間にも、俺たちが不在のハイリヒでは何かが起きている)
ハジメ(シアか、ユエか、はたまたティオか……たぶん、ハイリヒにはあいつらがいる)
ハジメ(……俺にはやるべきことがあった。帰るべき場所、会わなきゃいけない家族。俺は、父さんと母さんのところに戻りたい)
ハジメ(だから、ハイリヒよりもそっちを優先することは……なんらおかしな話じゃないんだ)
ハジメ(……ない、のに……)
ハジメ(俺は、何物をもぶちのめして……立ちはだかる物は敵だと言って戦ってきたのに)
ハジメ(それを、やっぱり『気になりだしたから』で、振り返ってしまう……俺は……っ)
――ガサッ……
ハジメ「っ……! ……お前か」
ランデル「……っ! 南雲、ハジメ……どの……」
ハジメ「……ハジメでいい。天之河にも同じ風に呼んでるんだろ」
ランデル「む、わかった……では、その……ハジメ」
ランデル「その……夜食とやら、余にも付き合わせろ」
………………
ランデル「……これが、カップラーメンか」
ハジメ「ま、トータス各地を回ってみて、それっぽい名産品を集めてみて再現したやつだ」
ハジメ「俺のおすすめ。カレーヌードル……あぁ、ここではシルニッシルのほうが馴染みがあるか」
ランデル「あぁ、その料理なら余も聞いたことがある。ピリリと辛いスパイスの味わい……余も気に行っておるよ」
ハジメ「そりゃどうも」
ハジメ「……」
ランデル「……」
ランデル「ハジメよ、お前たちはこの世界に呼び出されてどう思った?」
ハジメ「……」
ハジメ「ふざけんなって思ってた」
ハジメ「俺は……俺たちは何も知らないのにつれてこられた。拉致同然で戦わされて、何にも知らないうちに命を賭けた迷宮に連れてこられて……」
ハジメ「生きたかった。死にたくなかった。だから、必死になった。そのためなら、どんな手段も選んでみせると誓った」
ランデル「……そうまでして戻りたかったのは死にたくなかったからか?」
ハジメ「あぁ、そうだよ。でも、それ以上に」
ハジメ「家族に会いたかった」
ランデル「………………そうか」
ハジメ「……」
ランデル「……余も、家族に会いたいと思っている」
ハジメ「えっ……」
ランデル「ハイリヒにいる父上と母上……お前にとっては、印象に残っていないだろうが……あの方々は、召喚されたお前たちの事をずっと気にかけていた」
ランデル「王城での暮らし、その生活での周辺。父上が気を回さなければ、きっと一部の貴族たちからたたき出されるように戦うよう命じられていたかもしれぬ」
ランデル「……お前は知らないかもしれんがな。お前が奈落に落ちたと誰もが聞いた時、一部の者がお前を無能だと侮辱していたのだ」
ランデル「その時、一喝したのが我が父上だった」
ハジメ「……!」
ランデル「その時にな、いろんな者たちがお前を庇っていたのだ。あの光輝でさえ、奈落に落ちたお前を侮辱した貴族に対し、怒りを見せていたのだ」
ハジメ(! あいつが……)
ランデル「父上は、お前たちを呼び出されたお前たちの事を後ろめたく思っていた。召喚したのがエヒト本人とはいえ、それに賛同し、協力したのは父上だ」
ランデル「だから、父上もお前たちが元の世界に戻れるのなら……きっと喜んでくださると思うのだ」
ランデル「だけど……その父上も……一部の狂信者の如くお前を崇めていた」
ハジメ「……っ」
ランデル「……ハジメよ。お前に言っておく」
ランデル「帰れる手段が見つかったのなら、お前はそのまま帰るといい」
ハジメ「……えっ」
ランデル「父上に何が起きているのか、皆目見当がつかん。けれど、それは我々がどうにかしなければいけないのだ」
ランデル「ハイリヒの一族として、王族として。何よりも、父上の息子であるランデルとして」
ハジメ「……ランデル」
ランデル「だから、ハジメよ」
ランデル「お前は、お前の家族の下に帰れ。余も、自分の家族と向き合うために戦う」
ハジメ「……確かに、俺たちはこのまま帰った方が良いかもしれないな」
ハジメ「ただ、な……こっちとしても、さすがに何もしないまま帰ったんじゃ……目覚めが悪い」
ハジメ「少しだけ協力させろ。呼び出されて世話になった分は……返したい」
ランデル「……わかった」
ランデル「ハジメよ、これらがすべて片付いた時……」
ランデル「お前の家族にもよろし――」
――南雲っ!! 南雲ォォォォォ!!!!
ランデル「っ!? な、なんだ!?」
ハジメ「……天之河!?」
――タッタッタッタ……バンッ!!!
光輝「ここにいたか! 南雲!」
光輝「ハイリヒが……ハイリヒが!!」
ランデル「!? どうしたというんだ!? 何があった!?」
……カツカツ……
恵里「……殿下、南雲。すぐに降りる準備をしてくれ」
ハジメ「……あっちのほうで何があった」
恵里「私の術で、ハイリヒの様子を感じ取れた。まだ、数十キロ離れた距離だけれど……」
恵里「――おびただしい魂を感じられた。あまりにも多すぎる……死者の数が……!!」
ランデル「なっ……!!」
光輝「艦内にいる人たちを起こしてくる!! リリィたちにも声をかけておいた!!」
ハジメ「降りる準備をするぞ!! ハイリヒではなにがあるか分からない! お前たち、気を引き締めておけよ」
ランデル「……っ父上……!!」
【――遠い日の思い出・転移前のこと】
【――王城、通路内にて】
……ジーッ……
ランデル「……」
……ヒソヒソ……あらやだ、殿下があんなところに……
……ふふっ、かくれんぼかしらね。見ないふりをして差し上げましょ
ランデル「……あそこにいるのが、例の……」
………………
エリヒド「そ、それでは……これより転移を始めるのですな?」
エヒト「その通りだ。やつら魔人族を打ち倒すためには、異世界の神の使いによって戦うしかない」
エヒト「そのためにも、聖教教会の本山である【神山】にて転移の儀を始める。お前たちハイリヒの者には、彼らを受け入れる準備をしてほしい」
エヒト「よいな? 彼らは何も知らないまま、この世界に連れてこられる者たちなのだ。どうか、配慮していただきたい」
エリヒド「も、もちろんですエヒトさま……!!」
………………
ランデル「……父上の目が、妖しく光っている……」
ランデル「どういうことだ。あれだけ力強く、逞しいと思えた父上が……なぜ、エヒトさまを目にした途端、あんなにも妖しい目で見つめるのだ……」
ランデル「まるで……心を操られているみたいではないか……」
ランデル(……それにしても、転移者たち……かぁ。神の使い、いったいどのような者たちなのだろうか)
ランデル(やはり、物語に出てくるようなかっこいい青年や美人な魔法使いとか出てくるのだろうか……ううむ、会ってみたい気がする……)
――グイッ……!
ランデル「っ……! は、母上!」
ルルアリア「まったく、この子ときたら……ランデル、お部屋でお勉強をしなさいと先生から言われていたでしょう?」
ランデル「きょ、今日の分は終わらせております母上。それよりも、余もエヒトさまに一度お会いしたく……」
ルルアリア「駄目ですよランデル。エヒト様は戯れるためにハイリヒに来たわけではないの」
ルルアリア「……これから、人間族の未来を決めるための『転移の儀』が始められる。これから召喚される者によっては、魔人族との戦いが左右される」
ルルアリア「祈りましょう、ランデル。祈れば、きっと私たちに未来が――」
ランデル「祈るって……誰にですか母上……?」
ルルアリア「……誰、って……それは、エヒトさまにほかならな――」
ランデル「で、でも。これから戦いに向かうのはその転移者という話ではありませんか」
ランデル「転移者はよそから来た者たち。いや、それどころか……何も知らずにここに連れてこられるような者たちですぞ?」
ランデル「そんなよそ者たちが、我々の救いの主なのですか? そんな者たちに、余は、ハイリヒの者はすがらなければいけないのですか?」
ランデル「我々、人間族は……ハイリヒだけじゃ……ダメなのですか……?」
ルルアリア「……っ、ダメなのよランデル。わかって頂戴」
ルルアリア「聞いたところによると、ここ最近、魔人族が使役する魔物がその数を増やし続けているの」
ルルアリア「人間族の強みは数。その数を覆されたら、もうどうにもならないの」
ルルアリア「……今、その覆された数の優位性をどうにかするためにも……他所から力のある者たちをつれださなければいけないのです」
ランデル「……母上……っ」
ルルアリア「……きっと、あの人も決断したに違いありません。エリヒドは……あの人だって、何も知らぬ者たちを呼び出すことを良しとしないはずですから」
ルルアリア「何も知らぬ者たちを連れてくる罪も、彼らを巻き込むことによる罪も……すべて、受け入れるつもりです」
ルルアリア「ですが、これから先の未来は……その重みだけは、あなたたちには背負わせません」
ルルアリア「どうか……あなたのお父様の気持ちを、わかってあげてくださいね」
………………
――……違う、違うのだ母上
――余は、何もよそ者が来ることによって憤っていたのではない
――ハイリヒの王子としてのプライドだとか、父上が情けないからではない
――余が……余は……
――頼られたかったのだ
――誰よりも身近にいながら、ずっとつながりの深い家族である余を
――産まれた時からずっと父上と共にいたから、その子供である余に
――力になれずとも……心の支えになりたいと、そう思っていたのだ
――……知っていたのだ。そんなこと、無理だと
――力にも、心にも、支えられることなんて出来るほど……何もできないのが、余なんだと
――……だから、わかったのだ
――人は、こうして力のある物に縋ってしまう
――形ある強さに、それを目にできるものに縋りついてしまう
――『ステータス』……
――強さというステータスに、父上は縋りついてしまったのだ
――……家族というつながりは、ステータスという強さに叶わなかった
――……ただ、それだけなのだ
………………
…………
……
【――ハイリヒ王国、城下町】
――イヤァァァァァァ!!
――誰か! 誰かーーーーー!!!
――たすけてっ!! 助けてくれぇぇぇぇ!!
……ザッザッザッザ……
近藤「はぁっ……! はぁ、はぁっ……!!!」
中野「やべぇ、やべぇよぉっ……!!」
斎藤「あ、あきらめんな!! とにかくこいつらをぶっ倒さなきゃっ……!!」
中野「で、でもどんだけ出てくんだよこいつらぁ!」
近藤「もう町の人たちを護るにも限界があるだろうがよ!! オレ……倒れちまいそうだよぉ……!」
近藤「っ……」
……ザッ……
魔物「グゥゥゥゥ……!!」
近藤「ひ、ひっ……!!」
中野「ま、また出やがった!!」
斎藤(っ……! こっちも、そろそろ体力の限界だってのにっ……!)
斎藤(……ここまで、かっ……!)
――――ズドォォォォ!!!
斎藤「っ! 今の……風の魔術っ……!!」
檜山「お、お前らーーーーー!!」
中野「ひっ……檜山ァァァァ!!!」
近藤「うぉぉぉぉぉぉ!! 帰ってきたかオイ! 戻ってきたかよオイ!!!」
檜山「ま、まぁな……! なんとか無事にってな感じだ」
――バシュッ!! ズシュッ!!
恵里「ちょっと、なにこの魔物の大軍!」
清水「また魔人族が攻め込んできたのか!? ってか、なにがあって……」
中野「おおっ! お前たちもか!」
檜山「あ、それより……お前らなんでここに……っていうか、街の中、どうなってんだコレ!?」
近藤「わからねぇよ! 国には結界が張られていたはずなのにっ! なんだか知らねぇけど!! たくさんの魔物がここに攻め込んできやがったんだ!!」
近藤「それで……それで……たくさんの人が死んで……もう、どうすりゃいいかわからなくてっ……!!」
恵里「っ……とにかく、こっちのほうにも鈴やらほかの人たちに人員を割いてもらってるから……」
清水「魔物との乱戦なら、俺がどうにかする! もうここに来てから、何匹か操っておいたから!」
中野「た、頼れるなぁ」
斎藤「お、オイ。それより南雲は……あいつはどこにいった!?」
檜山「あいつらは船に乗って城の方に向かった。俺たちは街にいって生き残りを探して来いって……」
清水「姫様とかイシュタルのおっさんとか……同行してる一部のモンたちは船に残ってもらってるけどね……」
斎藤「城のほうって……オイ! だったらやべぇぞ! いま、城のほうは……城のほうは……」
檜山「っ! 何が起きたんだ!?」
斎藤「――今、城の方で愛ちゃん先生が捕まってんだ!!」
清水「えっ……えっ!?」
中野「お、俺たち……城のほうで……エリヒド陛下に捕まりそうになって……」
近藤「メルド団長が俺たちを逃がそうとしてくれたんだ。でも、逃げようとした先でも追手が待ち伏せていて……」
中野「何人かが城のほうに連れてかれた……!! みんな……みんなっ……!!」
清水「そ、そんな……」
檜山「……ん? あぁ、だったら大丈夫だろ。むしろそっちのほうが……」
恵里「だね。捕まってるっていうなら、むしろアイツのほうが適任だ。きっと、突破してくれるよ。なんせ規格が――」
斎藤「あ、いやっ……そうだけど……そうじゃ、なくて……」
檜山「? なにをいって……」
斎藤「その……」
斎藤「手遅れ……というか、なんていえば……いいんだろう……アレは……」
………………
…………
……
【――ハイリヒ王城】
光輝「……ええと、ついたけど……」
雫「ここ、城の方……なのよね。なのになんで……」
――シーン……
ハジメ「……なんだこれ。城の方、やけに静かじゃねぇか……?」
龍太郎「お前の魔眼でも何も見えねぇのか?」
ハジメ「……ぼやけるような感じがして、ぜんぜんわかんねぇ」
ハジメ「おい、白崎。一応、回復の術はいつでも使えるようにしてくれ。たぶん、けが人が相当いると思う」
香織「わ、わかっているけど……」
――シーン……
――コツ……コツ……
龍太郎「……町の方、マジでやべぇことになってるのによ。城のほうはシンとして、なんもねぇってのはどういう事なんだよマジで……」
雫「クラスメイトのみんな……城にいるメイドさんたちや働いている人たち……王妃様や陛下は……?」
ハジメ「……俺はこのままエリヒドのほうに向かう。お前たちはクラスメイトの所に行け」
ハジメ「何か……嫌な予感がする」
光輝「……わかった。いこう、みんな」
………………
……コツ……コツ……
ハジメ「……」
ハジメ(どういうこと、なんだ)
ハジメ(今、街で起きているあの状況は魔物による殺戮……なら、ここにも魔物たちが押し寄せてもおかしくはないはずだ)
ハジメ(それなのに、なぜここにはこない。なぜ、魔物たちはここへは何もしてこない)
ハジメ(……ここで、何がおきて――)
――シュバッ!!
ハジメ「っ……そこにいるやつ。顔を出しな」
「……」
ハジメ「……?」
ハジメ「っ!? お、お前らっ……!」
ハジメ「――ミュウ!? ランデル!? なんでここに来てる!?」
ミュウ「っ……ご、ごめんなさいなの……パパ……っ」
ランデル「う、うむ……すまぬ。その、どうしても気になって……」
ハジメ「っ……クソ、もう少し気を回しておくべきだったか……」
ハジメ「あぁ、いや……もういい。わかった……ここに来てから、気が気でないお前の気持ちをもう少し察しておくべきだった」
ハジメ「……わかった。一緒に行こう。離れんなよ、お前ら」
ランデル「う、うむ」
………………
ハジメ「とにかく、エリヒドのところに向かう。そこへ行って、何があったのか……」
ハジメ「……何をされているのか、調べに行く。おそらくお前にとってショックな光景を目にするかもしれんが……」
ランデル「構わぬ。余は父上の力になると決めたのだ。そのためならば、ここで立ち止まるわけにはいかない」
ランデル「……それに、護身用の剣も持ってきてある。子供として非力な余でも……多少は力になれるはずだ」
ミュウ「ふふっ、ランデルくんはかっこいいの」
ランデル「は、ははは……」
ハジメ「……ほほえましいもんだな」
――……チュッ……ヌチュッ……
ハジメ「っ! ……ここから、か……!」
ランデル「ミュウ、さがっておれ……!!」
ミュウ「う、うん……!」
ミュウ「……でも、この音何なの……?」
ハジメ(……この先に、誰かがいるのは分かる。わかる、んだが……)
ハジメ(……さっきから聞こえるこの音はなんだ……?)
――ガチャッ……ギィィ……
ハジメ「――………………」
ミュウ「――………………」
ランデル「――………………」
ランデル「……ち」
ランデル「ちち……うえ……??」
……………………
【――ハイリヒ王城、クラスメイト達のいるところ】
【――誰かの部屋】
――……ぬちゅっ……っ♡ ぬちゅっ……♡♡ ぬちゅっ……♡ ぐちゅっ……♡♡
龍太郎「………………ぁ……? は…………?」
――……ぬちゅっ……♡ ぬちゅっ……♡ ぐちゅっ……♡♡ ぬぢゅっ……♡♡
香織「………………ぅえっ……あ、ぇえぇえ…………?」
――……ぐっちゅっ……♡ ぐっちゅっ……♡ ぐっちゅっ…………♡♡♡
雫「………………う゛、うぅぅ゛……ゥ゛え゛っ……!!」
――……ぬっぢゅっ……♡ ぬっぢゅっ……♡ ぬっぢゅっ……♡♡
光輝「……」
光輝「なぁ」
光輝「なにを……してるんだ……?」
兵士「……ん? あぁ……勇者(笑)ですかな」
兵士「はは……いやはや……こんな時代遅れの産物が……なぜこんなところにいるのっ……やらとっ……!!」
――ぬっぢゅっ……♡ ぬっぢゅっ……♡ ぬっぢゅっ……♡ ぬっぢゅっ……♡♡
香織「ひっ……! ひっ……!!!」
兵士「ははは……いや、何をしているのかと聞かれましたら……」
兵士「魔王さまの兵を……こうしておつくりになっているのですよ……!!!」
――ぬっちゅっ……♡ ぬっちゅっ……♡♡
兵士「いや、これは勇者(笑)殿やほかの方々は知らない者もいたのですけどね……実は、この『案』はハイリヒの一部の貴族によって考案されたものなのです」
兵士「呼び出した者たちの中に、女がいるのであれば……その者に…………」
兵士「『種付け』をして、強力な戦士をつくればよいのでは……という案なんです」
――ぬっちゅぬっちゅっ♡ ぬちゅぬちゅっ♡♡
園部「――……ぁ゛っ……ぁ、あぁあっ……」
香織「っっ゛……!! ぁ、あぁぁぁあっ……!!」
龍太郎「そ、園部……!!」
雫「な……んでっ………………!!??」
兵士「なんで? ははは……いやはや、何を言いますかな」
兵士「よく考えてごらんください。あなたがた神の使徒は……我々と違って、特別な力を得られる特別な肉体なのです」
兵士「それゆえに、当時の一部の貴族たちはこう考えたのです。ならば、その者たちを種付けさせて、逃げられないように子供を孕ませ――」
兵士「生まれた子供を、より強力な兵隊として利用してしまえばいい……と」
兵士「言ってしまえば、これは初期により没にされた案を再び採用した……ということになりますかな。ははは……」
――ぬっちゅぬっちゅっ♡♡♡ ぬちゅぬちゅっ゛♡♡ ぐぢゅっ゛♡♡♡ ぬぢゅっ゛♡♡
雫「っっ゛……!! う゛っ……うぇ゛エェ゛ぇぇぇぇっ……!!!!」
園部「………………ァ゛、ぁああっ……!!! み、みんな゛っ……!!」
園部「あぁぁぁあっぁ゛ああ゛ァァァァ゛っ゛ぁあ゛ーーーー!!! みないでっ゛!! みないでぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!!」
――ぬぢゅぬぢゅっ……♡ ぬぢゅっ♡ ぬぢゅんっ……♡♡
兵士「ほれ、ちゃんとおまんこを締めなさい! まったく……これからは魔王様の時代……ハジメ様のためにも、しっかりと元気な子供を産むんですぞ!!」
園部「ああ゛ァァァァ゛! あ゛ーーーーーーーっ゛!!!」
光輝「……………………………………………………」
兵士「こうして組み伏せることが出来るのも……まさに今、魔王様の加護があってのもの! 今、我々には……魔王様の加護により、力が漲っているのです!!」
兵士「いやぁ~~~~! この没案が再び採用されたときは心底良かったなぁと思いましたとも!」
兵士「なにせホレ! そこにいる勇者(笑)殿が初期も初期に……イシュタル殿に気に入られたり、積極的に発言したりと……実質発言権を握っていましたからなぁ!」
龍太郎「こ、光輝が…………? 光輝が、今まで口を出していたから……してこなかった……??」
龍太郎「じゃあ、お前らは……最初からこんなことを……??」
兵士「陛下なんかも……よそ者である神の使徒を尊重せよと言って……ねぇ? ぜんぜんこういったことをやらせてくれなかったのですから」
兵士「今となってはメルド団長も……あ、まだ見ておりませんか? 傑作ですよ? 股間スマッシャーの彼であるハジメさまにちなんで……」
兵士「切り落とした性器を口に咥えさせた生首が……いま……ええと、どこに飾ったんだっけ。ま、いっか」
――ぱんっ♡ ぱんっ♡ ぱちゅっ♡ ぱちゅ………………っっ♡
――びゅぐぐぐぐぐっ゛♡♡♡ ぶびゅるるるるっ゛♡♡ ぶびゅっ゛♡♡ ぶびゅ~~~~っ゛♡ ♡
園部「あ゛っ……!! あぁぁっ……!! あぁ゛っ…………!! ァァァァあぁ゛ーーーーーーーーーーっ゛!!! やだぁぁぁぁぁっ゛!!!!!」
兵士「お、出た出た……さてさて……」
兵士「おぉ……尊きハジメ様よ! 感謝します! 感謝します!! 悪しきエヒトを退け、今こそ魔王であるあなたがこの世界を支配してくださいませ!!!」
兵士「この者の胎を捧げます! 子供を捧げます!! この享楽の舞によって……今こそ、あなた様のお力に! この信仰の力を! ぜひ!!」
兵士「ハジメさま! ハジメさま! ハジメさま! ハジメさま! ハジメさま! ハジメさま!!!!」
光輝「……」
光輝(これはないだろ)
光輝(こんなの、これはないだろ)
光輝(あぁ、そうだよ。あいつは確かにろくでなしだったよ)
光輝(周りのことは振り返らなかったよ。自分の事しか見てなかったよ)
光輝(でも、それでも)
――チャキッ……
兵士「……どうされましたか? 勇者(笑)殿」
光輝「もういい」
光輝「もう、いい……」
………………
【――ハイリヒ国、王城、エリヒドの部屋】
――ぬっぢゅっ……♡ ぬっぢゅっ……♡ ぬっぢゅっ……♡ ぬっぢゅっ……♡♡
エリヒド「……おぉ、ランデル! ちゃんと部屋で勉強をしなきゃダメではないか」
愛子「――ぁ゛……う゛、あぁぁっ゛…………」
ランデル「……ちち、うえ……??」
ミュウ「な、なにしてっ……なにを、してるのっ……!?」
ハジメ「っっ!!! み、見るな! ミュウ、ランデル!! 見るなっ!! 見るなァ!!!」
エリヒド「おっ……!! おおおおおっ!! ハジメ様っ!! ハジメ様ではありませんかぁっ!!!」
愛子「ぐっ゛……!! ぐっ、ぃっ゛……!!」
――チャキッ……
ハジメ「オイ、糞野郎っ……!! 今すぐその人から離れろ! いまっ!! すぐっ!!! 離れろ!!」
エリヒド「離れろ……? 何を言いますかハジメ様!! これはすべて……あなた様に捧げるためのモノなのですよ!?」
ハジメ「なっ、なに、いってっ……!!」
ランデル「ち、父上……? ちち、うえ……!?」
エリヒド「今、世界は新たな主を見つけたのです! 我々は!! 新たな主のひざ元で!!! 永遠の安寧を得るのです!!」
エリヒド「もう誰にも犯されることはない!! 傷つけられることは絶対にない!! 我々は、ようやくっ!! ようやくっ!!」
――ぬぢゅっ゛……♡♡ ばぢゅっっ゛♡♡
愛子「いぎぃっ゛……!! ぎ、んぃぃぃっ゛……!!」
エリヒド「この世界の頂点に立ち……家族と共に、平和に暮らしていくことが出来るのです!!」
――どぢゅんっ゛♡♡♡
愛子「んぃィィイいい゛っ!!」
エリヒド「すでに王妃の首を切り取り、適当な場所に捨てておいてあります!」
エリヒド「今より、神の使徒として優れたこの者のナカに種を仕込み!! 優れた子を産ませて! あなたさまの兵士に仕立て上げて見せます!!」
ミュウ「……ま、待って。王妃って……それって……ランデル君の……!!」
ランデル「――………………ぁ、ぁあぁっ………………」
ミュウ「……ら、ランデルくん……!? ランデルくん! しっかりするの!」
――ドパァンっ゛!!!
エリヒド「っ゛……な、なにをするのですか……肩が、いたいっ……」
ハジメ「……ゴム弾だ。痛みを加えるだけで、肩が抉れるようなことはぜったいにねぇ」
ハジメ「だが……それをしねぇのはテメェには世話になったから……そして、ランデルの家族だからだ!!!」
ハジメ「命を取られたくなかったら!!! 今っ!! すぐっ!! そのきったねぇモンを!!! その人から引き抜けェ!!!」
……ズズッ……
ランデル「……どうして、ですか……父上。なぜ、このようなことを……」
エリヒド「……ランデル……」
ミュウ「……ランデル君」
ランデル「父上は、立派な人だった……尊敬する人だった……誰よりも民を想い、国を想い、家族を想っていた……」
ランデル「それが!? それが、なぜ! なんで!! こんなことを!? 一体、何が父上をここまで狂わせたのですか!?」
エリヒド「………………」
ランデル「神の使徒として連れてこられたこの者たちを保護しようとしたのは父上だ!!」
ランデル「何かあれば彼らの後ろ盾になろうと言って……守ろうとしたのも父上だ!!」
ランデル「それなのに……王妃を……母上に手をかけて……家族を守ってもらえる!? なぜ、なんで!! そんな支離滅裂なことを!!!」
エリヒド「……ランデル、そうだよな……お前はまだ……」
エリヒド「――『子供』、だものな。我々のやっていることが理解できないのも……無理はないか」
ランデル「……こ、ども……? なに、いって……」
エリヒド「……ランデル。もう手段を選んでいる場合ではないのだ。偉大なるハジメ様の力があれば、この世界は……もっとマシな方に支配していただける」
エリヒド「だからこそ、そんな偉大なる神に守っていただくために……我々は、魔王様と同じことをして、彼を真似るのだ」
ミュウ「パパの、真似……?」
ハジメ「………………あっ…………」
エリヒド「あぁ、そうだ。その通りだ……」
エリヒド「圧倒的なまでの力を振りかざし、強者を蹂躙し、あまねく女をその身に抱き寄せてしまう」
エリヒド「向かう所に敵があれば、その力を持ってすべてをぶっ殺す。それが神であっても」
エリヒド「偉大なる魔王さま、恐るべき股間スマッシャー、多くの女を侍らせる漢」
エリヒド「魔人族の恐怖に晒されたこの世界で――」
――どぢゅんっ゛♡♡♡
愛子「あぁぁぁぁ゛ぁあぁぁあ゛ーっ゛!!!」
エリヒド「どれだけっ!! どれだけっっ!! 心強かったことか!!」
エリヒド「あなたさまが活躍するたびに、我々の心は震えた! ついに、この恐怖から解放されるのだと!!」
――どぢゅっ゛♡ どぢゅっ゛♡ どぢゅっ゛♡♡
エリヒド「偉大なる魔王が支配していただければ!! 偉大なる方に支配していただければ!!」
エリヒド「国を護れる! 民を守れる! リリアーナを! ランデルを!! すべて、守れるのだ!!」
エリヒド「目的の為なら周囲の事を顧みない魔王様の姿にあこがれた!!」
エリヒド「だから! 私も手段を択ばないことにした!! 魔王様と……同じように強く成りたかったから!!!!!!」
――どぢゅんっ゛♡♡
エリヒド「ハジメさまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ゛!!!!!! みてくださいませぇぇぇぇぇぇ゛!!!!」
エリヒド「これがっ! これがあなたさまに捧げる信仰です!! 我々皆、魔王様であるあなたさまのしもべです!!!」
エリヒド「どうか! どうか!! 我々をあなた様の下にぃぃぃぃぃ゛!!!!」
ハジメ「………………」
ハジメ(……ずっと。もう、ずっと前だった気がする)
ハジメ(夢の中の声の主……アイツが言っていたことだった)
ハジメ(人は……無意識のうちに……強い者に自己投影し……それが強者としての姿かたちになるのだと)
ハジメ(だから……俺は……自分でも無意識のうちに……俺を虐めていた連中と同じような人間を真似ていた)
ハジメ(それなら、だったら)
ハジメ(傍若無人に振舞い)
ハジメ(何物をも振り返ることなく、自分の意志だけで突き進み)
ハジメ(そして、力があるから歯向かう壁も敵も突き崩して……)
ハジメ(今、こうして傍若無人に振舞っているコイツらが真似ている『強者』は……)
ハジメ「――……俺………………」
ランデル「……」
――チャキッ……
ミュウ「……? ら、ランデルくん……?」
――……スタスタ……スタスタ……
エリヒド「ぐ、うぅぅぅっ゛……!! おぉ、女神よっ……!! その胎の卵にっ……!! いまこそ、種を!!」
エリヒド「魔王ハジメさまの!!! 優れた兵士を!! いま、胎の中に!!」
――……スタスタ……スタスタ……
――……ピタッ
ランデル「……」
ランデル「父上」
ランデル「ごめんなさい」
エリヒド「むっ……すまんなランデル。今は忙しいのだ」
ランデル「父上が辛いときに、傍にいてあげられなくてごめんなさい」
ランデル「父上が心細い時に、心の支えに慣れなくてごめんなさい」
ランデル「きっと、本当に必要だったのは力じゃなかった。言葉だけでも、一緒にいてあげるだけでも、ぜんぶ違っていた」
エリヒド「さぁぁぁぁぁっ……!! きますっ! きますぞっ!! その優れた力を持ちし体にっ!! 今こそ! 種を!!」
――チャキッ……
ランデル「だから、今ある『力』で」
ランデル「勇者殿から教わった、守るためのこの剣で」
ランデル「終わらせます。この、醜悪な夢から」
エリヒド「でるっ!! でるっ、でるっ! でるぅぅぅぅっ!!!」
ランデル「……父上」
ランデル「――さような……っ」
――ドパァンッ!!!
エリヒド「ぎゃぴっ゛!? ぎ、ぃ゛……っ゛……!」
――ドサッ……
ランデル「……ぁ、あ……っ……父上……」
ランデル「あたま、ふきとんで……」
ミュウ「……ぱ、パパ……!?」
ハジメ「……」
――スタスタ……
ハジメ「……お前が天之河から教わった剣は、家族を守るための剣なんだろ」
ハジメ「それを……家族の血で汚す必要はない」
――ツテツテツテっ……
ミュウ「っ……!! ランデルくん! ランデル君っ……!!」
ランデル「……あはっ、あはははっ……」
ランデル「………………ははっ……」
ハジメ「…………っ、せ、先生……」
愛子「っ……ごめ、んなさいっ……わ、わたし、たちじゃ……とめ、られなくてっ……」
愛子「なにが、おこったか……しらな、いけどっ……こんなこと、させちゃってっ……」
ハジメ「……お、おれ……俺は……」
愛子「……だい、じょうぶ、ですよ……」
愛子「あの子に……むすこである……ランデルくんに……背負わせたく……なかったん、ですよね……」
愛子「キミは……人に命のおもみを……背負わせないせいとだって……しってるから……」
ハジメ「……せ、せんせ……お、れは……おれはっ……」
愛子「ごめ、んね……ほんとうに、ごめ、んねっ………………」
………………
…………
……