君が無能くん?魔剣士学園に入学したのに『スキル無し』?ねぇ今どんな気持ち?努力したって報われないのに希望とかあるの?普通の青春を送りたい?あはっ! 無能には無理に決まってるじゃん 作:鳥稲のね
僕たちが通う学園まで、歩いて数分くらいだけど、せっかくモモアが恋人として振る舞ってくれるのだ。
楽しまないともったいない。
僕は立ち止まり、彼女の手を引く。
そして、僕は微笑みながら、彼女の耳元で囁いた。
「モモア……」
「な……何?」
「好きだよ」
「……っ!!」
モモアの顔は、真っ赤になっていた。
「な……何を言うの!?アルトはただ、私を力で屈服させたいだけじゃないの?」
その問いかけに、僕は軽く首を振る。
「そんなことないよ。僕は普通の恋愛がしたいんだ。モモアが反抗的な態度を見せない限り、恋人として接するよ。」
「……っ」
モモアは、唇を噛みしめる。
まあ、このモモアとのやりとりが普通の恋愛とは思っていないけど。
「貴族って大体、親が勝手に決めた相手と結婚するんでしょ?それでも仲のいい夫婦もたくさんいるよね。」
「それは……まあ。」
「最初、モモアが僕のことを馬鹿にしていたけど……力関係は逆転した。それからでも仲のいいカップルになっても別によくない?」
「……」
モモアは答えない。
でも、否定もしなかった。
それが、僕には"十分な"答えだった。
僕は、彼女の手を握る力を少し強める。
「ねえ……モモア。」
そっと囁く。
「大好きだよ。」
「……っ!!」
「モモア……すごく綺麗だね」
「………」
「長くて赤い髪が綺麗だし、まつ毛も長くて、目もパッチリてて、顔の造形も整ってる」
「………」
「肌も白いし……今は黙ってるけど、声もすごくかわいいよね」
「……っ!!」
モモアは、ますます顔を赤くし、目を逸らした。
そして、小さな声で言った。
「……もう!……ちょっと気持ちを整理する時間を頂戴。」
「分かったよ。」
僕は軽く頷いた。
……だけど
モモア一人だけを恋人にするつもりはない。
~~~~~~
待ち合わせ場所にいた段階でモモアは、ただ立っているだけで周囲の視線を集めていた。
燃えるような赤い髪、鋭く整った顔立ち、そして"炎の王女"と称されるほどの強さを誇る誇り高き剣姫。
彼女の存在感は常に圧倒的だった。
しかし、僕が隣に立ち、その手を握り、歩き始めた瞬間――
周囲の視線は、ただの憧れや畏敬から、驚愕へと変わった。
「は!? ちょっ、あれ、見て!?」
「ん? ……えっ!? 嘘だろ!?」
「え、え、え、えええええ!?」
周囲のざわめきがどんどん大きくなる。
まさに驚天動地の大事件だ。
みんなが僕たちを見つめている。
僕はモモアの方を見て、呟いた。
「みんな僕たちのこと、驚いているみたいだよ」
「……知らない」
モモアはそっぽを向く。
照れてるモモアも可愛いな。
「……あの赤い髪……モモア様だよな?」
「うん……間違いない、炎の王女モモア様……でも、その隣の男……」
「あれって……無能のアルトじゃね?」
「はぁ!? なんであんな無能がモモア様と!? ちょっと意味が分からないんだけど!!」
ここに来て初めて、"無能"であることが役に立ったと思った。
周りの奴らをこんなに驚かせ悔しがらせることができるんだから。
「いやいやいや、待て待て、落ち着け。これは何かの間違いだ……いや、間違いであってくれ!」
「うわぁぁぁぁ!! モモア様ぁぁ!! 目を覚ましてくださいぃぃぃ!!」
「俺たちがどんなに努力してもモモア様と並ぶことすら許されないのに……なんであいつが……!!」
モモアファンの男子、ご愁傷様です。
君たちも無能だったらチャンスがあったかもしれないのにね。
むせび泣く男子をちらっと見ながら、僕はモモアの髪を撫でる。
「……もう、やめてよ」
モモアは僕を睨んで、そっと手を引こうとする。
でも、繋いだ手は離させない。
「なに、罰ゲーム? いや、でもモモア様がそんなことするわけないし……」
「いや、あれは罰ゲームでモモア様が無能と一緒にいるのでは?」
「いやいや、まるで本当に仲がいいみたいに見えるんだけど……」
ざわめきが、混乱が、混沌が、加速度的に広がっていく。
それを見て、僕は思わず口元を歪めた。
ああ、面白い。
~~~~~
学園の教室。
僕とモモアが、手を繋いだまま仲良く教室に入ると、そこにいたクラスメイト全員も驚愕していた。
今日は合計で何人を驚愕させたことだか。
「な……なんで……?」
「モモア様とアルトが……?」
「えっ、どういうこと……?」
「……おかしい、これは夢か?現実か?」
ざわめきが広がる。
特に驚いていたのはモモアの幼馴染の二人、雷の皇女リア、大地の公女ユノアだった。
雷の力を司る"剣姫"に、大地の力を司る"剣姫"。
どちらも今の状況に困惑を隠せない様子だった。
それくらい、あり得ない光景なのだろう。
けれど、僕は気にしない。
むしろ、この反応を楽しむように、モモアの手を引いて、僕の隣の席に座らせた。
当然、リアやユノアが彼女に話しかけることを阻止するために。
「おはよう、ララ。」
「おはよう、アルト君……」
僕がララに話しかけると、彼女は少し戸惑った様子で返事をした。
そして、僕の隣に座るモモアを見て、ますます困惑する。
「あの……どうしてモモアさんが?」
「モモアも、僕やララと仲良くしたいんだって? ねえ、モモア?」
「……うん、よろしくね。ララ。」
モモアはぎこちなく、ララに挨拶をする。
「え……あ、こちらこそよろしくお願いします。」
ララも、戸惑いながら頭を下げた。
――ふふ。
この違和感が、どれほど広がるのか楽しみだ。
~~~~~~
休憩時間。
リアが真剣な表情でモモアに近づいてきた。
「モモア……一体どうしたんですか?」
「そ……それは……」
モモアは言葉を詰まらせる。
「それは言いにくいから、人のいないところで話そうか?」
僕は優しく提案する。
リアは、明らかに僕を警戒するような目で見たが、やがて小さく頷いた。
「……分かりました。行きましょう。」
こうして、僕とモモア、そしてリアの三人で、人気のない空き教室へ向かうことになった。
雷の皇女、リア・ヴォルデンベルク。
すでに彼女も僕が手に入れたも同然だ。
リアには何をしてもらおうかな?
考えるだけで、胸が高鳴った。