※この作品はR-18です。

君が無能くん?魔剣士学園に入学したのに『スキル無し』?ねぇ今どんな気持ち?努力したって報われないのに希望とかあるの?普通の青春を送りたい?あはっ! 無能には無理に決まってるじゃん   作:鳥稲のね

13 / 74
第13話

リアが雷魔法を使おうとする――が、何も起きない。

 

教室の中は、ただの静寂に包まれていた。

 

 

「ど……どうして?」

 

 

リアの声が震える。

 

彼女が誇りにしていた雷の力は、完全に消え去っていた。

 

 

「やっぱりね。残念だなぁ……学園最強の一角が、無能になってしまうなんて。やっぱり、無能をバカにしたせいかな~。……気をつけてね。それじゃあ」

 

 

リアの身体がピクリと震える。

 

スキルがない――それがどれほど恐ろしいことか、彼女がようやく理解したのだろう。

 

馬鹿にされる。それだけならいい。

 

もし、スキルがない状態で変な奴に襲われたら?

 

得意の雷で追い払うこともできない。

 

 

「行こうかモモア。」

 

「え……あ、うん……」

 

 

モモアは小さく頷き、僕の隣に寄る。

 

僕たちは踵を返す。

 

扉に向かって歩き出す。

 

 

 

その瞬間……

 

 

 

「待ってください!」

 

 

焦りに満ちたリアの声が教室に響き渡った。

 

僕たちを引き止めるかのように、リアは一歩踏み出す。

 

 

「……アルト!」

 

 

リアは苦しげな表情を浮かべ、唇を噛んだ。

 

 

「モモアと一緒に……アルトのことをバカにしてごめんなさい。こんなことになるとは思わなくて……」

 

「へぇ? つまり後悔してるんだ?」

 

「……そうです。謝罪します。だから、スキルが元に戻る方法を知っているんですよね? 教えてください!」

 

 

リアの言葉は真剣だった。

 

だが、僕はただ首を傾げる。

 

 

「謝罪だけでは足りないかな……?」

 

 

リアの顔が引きつる。

 

 

「……じゃあ、どうすればいいんですか?」

 

 

僕は満面の笑みを浮かべ、言った。

 

 

「僕の恋人になるんだ。」

 

「……え?」

 

 

リアの動きが完全に止まる。

 

 

「この症状は、無能を馬鹿にすることによって発症している。つまり、僕のことを敬い、どんなことでも従うと心から誓うなら……もしかすると元に戻るかもね?」

 

「そ、そんなこと……できるはずが……!」

 

 

リアは僕を睨みつけた。

 

だが、その視線には先ほどまでの余裕はない。

 

 

「モモアはやったよ?」

 

「……っ!」

 

 

リアの視線がモモアへと向かう。

 

モモアは沈黙したままだった。

 

 

「僕のことを愛してるって、どんなことでも従うって誓った。僕の恋人になった。そうしてスキルを取り戻したんだ。」

 

「モモアが……?」

 

 

リアの表情が揺れる。

 

 

「まさか……モモア、本当に……?」

 

 

モモアは震える声で答えた。

 

 

「……そう、よ。」

 

 

リアの顔から、血の気が引いていく。

 

 

「本当に……そんなことを……?」

 

「……」

 

 

僕は、ゆっくりとリアへと近づき、優しく囁いた。

 

 

「どうする? 君も、スキルを取り戻したいよね?」

 

 

リアは、唇を噛み締める。

 

 

「……」

 

 

彼女の目が揺れ動く。

 

学園最強の一角としての誇り。

 

雷の皇女としての威厳。

 

けれど――スキルを失ったら、それらは何の意味も持たない。

 

 

僕は続けた。

 

 

「スキルを失った君が、どれほどの価値を持つと思う? このまま無能のまま過ごして、みんなから哀れまれるのがいいか、それとも僕の恋人として、再び雷の皇女としての力を取り戻すか。」

 

 

僕はリアの目をじっと見つめた。

 

 

「選んで。」

 

「…………わ、分かりました」

 

 

ついに、リアは静かにそう言った。

 

その声には、かつての誇りも、気高さもなかった。

 

代わりにあるのは、屈辱と、絶対に逆らえないという敗北感。

 

 

「なるほど、分かったんだね」

 

 

僕は微笑みながら、リアの目を覗き込んだ。

 

 

「じゃあ、僕に跪いてキスをするんだ。」

 

「…………」

 

 

リアの顔が、驚くほど赤くなっていく。

 

 

「そんなこと……!」

 

「できないなら、リアは一生無能のままだね」

 

 

リアの唇が震える。

 

 

そして、ゆっくりと……彼女は膝をついた。

 

 

教室の床に両膝をついたまま、悔しそうに僕を見上げる。

 

 

雷の皇女とまで呼ばれた彼女が、跪いて僕に忠誠を誓おうとしているのだ。

 

 

「じゃあ、ちゃんと言って?」

 

 

リアの拳が震える。

 

 

――誇り高きヴォルデンベルク家の令嬢である彼女にとって、跪くという行為はあまりにも屈辱的だったのだろう。

 

 

 

「……っ……アルトの恋人にしてください……愛してます……」

 

 

 

まるで苦しみを絞り出すような声。

 

それでも、確かに彼女は言った。

 

 

恭しく……ただ僕に触れたくないからそのよう見えただけかもしれないが……僕の手を取った。

 

 

リアが、僕の手の甲にキスをした。

 

 

雷の皇女が、僕に屈服した瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「モモア、先に教室に戻っておいて」

 

「え?……分かったわ」

 

 

それじゃあ

 

ゆっくりと

 

じっくりと

 

ねっとりと……

 

 

二人きりの教室で、リアにスキルを返してあげることにしようかな。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。