君が無能くん?魔剣士学園に入学したのに『スキル無し』?ねぇ今どんな気持ち?努力したって報われないのに希望とかあるの?普通の青春を送りたい?あはっ! 無能には無理に決まってるじゃん 作:鳥稲のね
SIDE:モモア
その夜、私はベッドの上で大きなクッションを抱きしめながら、じっと天井を見つめていた。
カーテンの隙間から差し込む月明かりが、ぼんやりと部屋を照らしている。
けれど、その静かな光は、少しも私の心を落ち着かせてはくれなかった。
胸の奥がざわつく。
じんじんと焼けるような感覚が広がっていく。
……理由は分かっている。
何度も、あのことを思い出してしまうからだ。
アルト……
同じクラスになった、あの無能の男子。
私からスキルを奪い、それを返す条件として、キスをしろと要求してきた。
「……っ!」
また、顔が熱くなるのを感じる。
……ありえない。許せない。
スキルを奪われただけでも腹が立つというのに、それを返す代わりにキスを求めるなんて、ふざけるにもほどがある。
私はクッションを蹴り飛ばし、布団に顔を埋めた。
「……なんで、なんであんなことを……!」
心臓がバクバクとうるさい。
あの時の光景が頭から離れない。
アルトのまっすぐな視線。
からかっているのか、本気なのか分からない口調。
しどろもどろになりながら、私は言い訳を重ねた。
……そして結局、私は彼の手の甲にキスをしてしまったのだ。
「……っ!」
悔しい。屈辱的だ。
炎の王女であるこの私が、あんな男に翻弄されるなんて。
なのに……
「……あいつの手、意外と大きかったな……」
ふと、そんなことを考えてしまった自分に気づき、慌てて頭を振る。
違う、違う! これは憎しみを忘れないため!
アルトの髪の色、背の高さ、骨格、顔立ち、鼻筋、声、仕草――
私はそれらを鮮明に思い出そうとする。
……違う!
これじゃまるで、あいつに恋しているみたいじゃないか!
私はアルトを絶対に許さない。
何度もそう自分に言い聞かせ、拳を握りしめた。
今朝の件……あれだってそうだ。
許せない。
恋人同士であれば一緒に学園へ行くものだと言われた。
「さあ、手をつないで行こうか。」
差し出された手。
ためらった自分。
意地でも拒否しようとしたのに、結局つないでしまった瞬間。
あの感触が、まだ手のひらに残っている気がする。
周りの好奇な目線に晒されながら、歩く通学路。
あまりの恥ずかしさに手を離そうとすると、アルトは強く握ってくる。
それだけでなく……
『モモア……綺麗だ。大好きだよ。』
「っ……!!」
顔が熱くなる。
体が熱くなる。
布団を頭まで被り、荒ぶる心臓を無理やり押さえつける。
(違う……こんなの、私らしくない!)
だけど、いくら否定しても、心の奥底では――
今日、手を繋いだ時のぬくもりが消えなくて、どうしようもなくなっている。
じっと手を見つめる。
自分の手のひらを、指を、ゆっくりと動かしてみる。
(私は……アルトと手を繋いだ……)
たったそれだけのことで、私は今こうして、まるで高熱を出したかのように体が火照っている。
(……違う、これは、ただ苛立って興奮しているせい)
そう自分に言い聞かせる。
でも……
『モモア……綺麗だ。大好きだよ。』
耳元で囁かれた言葉が、何度も頭の中をリフレインする。
くすぐるような低い声、近すぎる吐息、速くなる鼓動。
(んんんんん……っ!!!)
両手で頭を抱えてベッドの上をゴロゴロ転がる。
ダメだ、思い出してはいけないのに。
忘れなきゃいけないのに。
こんなにも憎くて仕方がないはずなのに……
(……もう一度言って欲しい……なんだったら、頭を撫でて欲しい……)
何を考えているんだ、私は!!
私は近くにあったクッションを全力で投げつける。
壁にぶつかると同時に、炎の魔法を放った。
―――ボンッ!
「あっ」
床に落ちたクッションは、一瞬だけ赤く染まり、じりじりと焦げていた。
だが、燃え上がることはない。
部屋の中には防炎の加護が付与されている。
壁も床も、布団も枕も、すべてが耐火処理済みだ。
……私が、時々、衝動的に炎を出してしまうせいで。
昔は酷かった。
寝ている間に無意識に炎を放って、部屋を黒焦げにしかけたこともある。
それに比べたら、今は成長したはず……なのだが。
久しぶりに部屋の中で火魔法を放ってしまった。
勢いよく布団を被り直し、深く潜り込む。
暗闇の中で、ひとつ、ふたつと深呼吸をする。
落ち着け。私は何もおかしくない。私は冷静だ。
私は、アルトと手をつないだ右手を、自らの脚の間に挟んだ。
太ももにキュッと力を入れて、手を股間に密着させる。
子供っぽい仕草かもしれない。
でも一人で部屋にいる時は、よくこの体勢でいる。
寝る前などは必ずやっている。
内股を閉めて、手が股間を圧迫するようにすると、何だか安心する。
指を動かす。
偶然を装ってアソコに触れる。
ピクっと体が反応してしまう。
自分の指をゆっくりと動かす。
ショーツの上から割れ目をなぞる。
くにくにと指を動かすと、少しずつ湿ってくるのを感じた。
「はぁ……ん……」
息が荒くなる。
もっと触りたいと思ってしまう。
「あ……ん……」
これまでも触ったことはあるけれど、今日ほど興奮したことはない。
体の奥底から快感が湧き上がってくる。
「はぁ……んん……」
徐々に動きが大胆になり、より強く押し当てる。
もっと触りたい。
ぎゅっと抑えつけ、ぐりぐりと押し込むように弄びたくなる。
「あ……はぅん……」
もどかしい快感に耐えかねて、枕から顔を上げ、ショーツの中に手を滑り込ませる。
今度は直接、割れ目を指でなぞる。
ぬちゃっとした感触。
思わず声が出そうになるのを、唇を結んで我慢する。
そして……
指先が小さな突起に触れた瞬間、全身が大きく跳ね上がった。
「はぁんっ……!」
自分の意思とは裏腹に、体がビクビクと痙攣する。
「あっ……あ……あっ……」
頭が真っ白になり、何も考えられない。
気持ちいい……。
「アルト……」
また口から出てきてしまったアイツの名前。
「違う……違うのにぃ……」
誰にも届かない言い訳をする。
「ああ、もう……!……アルトのバカ」
私は夜更けまで一人遊びを続けたのだった。