※この作品はR-18です。

君が無能くん?魔剣士学園に入学したのに『スキル無し』?ねぇ今どんな気持ち?努力したって報われないのに希望とかあるの?普通の青春を送りたい?あはっ! 無能には無理に決まってるじゃん   作:鳥稲のね

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第18話

今日は魔術訓練の日だ。

 

クラウディア魔剣士学園の中にある広大な演習場へと向かう。

 

魔術訓練では、生徒たちが順番に攻撃魔法を披露し、その威力や精度を競い合う。

 

魔法の強さが実力の証明にもなるこの学園では、特に重要な授業だった。

 

生徒たちが整列すると、教師が前に立ち、声を張る。

 

 

「今日は基礎魔法の訓練を行う。順番に攻撃魔法を的に放ち、自分の実力を示せ」

 

 

学園には、魔法を受けても壊れない特殊な的が設置されている。

 

ここでどれだけ強い魔法を放てるかが、強者としての評価を決めるのだ。

 

教師が名簿を確認しながら、生徒たちの名前を順に呼んでいく。

 

 

「では、まず……アルト、お前からだ」

 

 

僕は一歩前に出た。

 

ここでいきなり圧倒的な力を見せるつもりはない。

 

最初にするべきことは、"モモアのスキルを奪うこと"。

 

僕は静かにスキル奪取を発動し、モモアのスキルを手中に収めた。

 

モモアは一瞬、違和感を覚えたのか、小さく首を傾げる。

 

 

「……?」

 

だが、それが何なのかまでは気づいていない。

 

僕は手を前に出し、小さな炎を指先に灯した。

 

 

「プチファイア」

 

 

小さな火球が的へと飛び、ポンッという軽い音を立てて着弾する。

 

――炎魔法の中でも最も初歩的な魔法。

 

炎属性がある子供でも覚えるようなレベルのものだった。

 

 

「すごい、アルト君やったね! 火魔法使えるようになったんだ!? おめでとう!」

 

 

ララが手を叩いて喜んでくれた。

 

彼女の目は純粋な祝福に満ちている。

 

こういうところが好きだ。

 

僕がどんな魔法を使ったのかではなく、ただ僕ができるようになったこと自体を、心から喜んでくれる。

 

僕がやっているのは所詮 "人の褌で相撲を取る" ようなことだけど。

 

 

「ありがとう」

 

 

僕は微笑みながら、ララに礼を言う。

 

そして、奪ったスキルをモモアに返した。

 

 

「――次、モモア」

 

 

僕の後に呼ばれたモモアは、満面の笑みを浮かべながら一歩前に出た。

 

 

「ふふ、見ててね!」

 

 

彼女の指先に炎が集まる。

 

僕が使ったものとは比べものにならないほどの巨大な火球。

 

 

「ヘルファイア!」

 

 

轟音と共に、巨大な炎が的へと放たれ、爆発が起こる。

 

 

―――ドォンッ!!

 

 

「す、すげえ……」

 

「さすが炎の王女 モモア様」

 

「やっぱりモモ様は別格だな……」

 

 

周囲の生徒たちが息を呑む。

 

 

「ま、こんなものかしらね」

 

 

満足そうに笑うモモア。

 

そして、教師が次の名を呼んだ。

 

 

「――次、リア」

 

 

リアが前に出ると、彼女は静かに目を閉じ、魔力を集中させた。

 

バチバチッ……!

 

周囲に電流が走り、彼女の手元に雷が集束する。

 

 

「ライトニングスピア!」

 

 

バシュンッ!!

 

 

雷の槍が空を切り裂き、一直線に的へと突き刺さる。

 

―――次の瞬間

 

轟音が響き渡り、的と共に周囲に雷撃が走った。

 

 

「うわっ……!」

 

「す、すごい威力……!」

 

「こんなに離れていても振動が来た……」

 

 

クラスメイトたちが驚きの声を上げる。

 

リアは堂々とした表情で振り返ると、僕の方を見てわずかにだけ微笑んだ。

 

 

「……さすがだね」

 

「大したことはありません」

 

 

リアとモモアの圧倒的な魔法を目の当たりにし、クラスの誰もが感嘆していた。

 

 

――だが、まだ見せ場が残っている。

 

教師が次の生徒の名を呼ぶ。

 

 

「――次、ユノア」

 

 

ユノアが前に出る。

 

かつて"大地の公女"と呼ばれている彼女は、魔術訓練で常に最高の結果を出してきた。

 

――だが、彼女は知らない。

 

今のユノアに、魔法を使うことはできないということを。

 

ユノアは胸元に手を当て、目を閉じて魔力を込める。

 

その時。

 

――スキル奪取、発動。

 

僕はユノアのスキルを奪った。

 

 

「ガイアスパイク……!」

 

 

地面が隆起しミサイルのように飛び出し、敵に激突する。

 

彼女の得意魔法が発動する――はずだった。

 

 

しかし。

 

 

何も起こらない。

 

 

「……え?」

 

 

ユノアの顔に戸惑いが浮かぶ。

 

 

「ガイアスパイク……っ!!」

 

 

もう一度、魔法を発動しようとする。

 

しかし――何の反応もない。

 

 

「な……なぜ?」

 

 

彼女の顔が青ざめる。

 

 

「あれ……」

 

「ど、どうしたの?」

 

「大丈夫かな、ユノア様……」

 

 

周囲の生徒たちも異変に気づいたようだ。

 

 

「ユノア、魔力切れか?」

 

 

教師が訝しげに問いかける。

 

 

「い、いえ……っ……でも、なぜか魔法が……」

 

「魔力制御を間違えたか? もう一度試してみろ」

 

「は、はい!」

 

 

ユノアは焦りながら、今度は別の魔法を試そうとする。

 

 

「ストーンバレット!」

 

 

しかし――それも発動しない。

 

 

「えっ……?」

 

「ユノア、まさかと思うが、魔法が使えないのか?」

 

 

教師の言葉に、ユノアの全身が震える。

 

 

「ち、違います……ただ、ちょっと……調子が悪いみたいで」

 

 

否定しようとするが、現実は非情だ。

 

 

「サンドショット……!」

 

 

ランクを落とした違う魔法を試す。

 

しかし、それすらも発動しない。

 

彼女は必死に魔力を込めようとするが、何の反応もない。

 

 

「そんな……嘘……」

 

 

唇を噛み締め、膝が震え始めるユノア。

 

 

「魔力切れかなら 今日はもういい、次の者に――」

 

 

教師が次の生徒を呼び、訓練を進めていった。

 

 

 

 

 

「そんな……嘘……」

 

 

唇を噛み締め、膝が震え始めるユノア。

 

僕は、その光景をじっくりと眺めていた。

 

 

彼女がどんな表情をするのか、どんな風に取り乱すのか――

 

焦燥と困惑が入り混じる彼女の様子を、しばらく"楽しむ"ことにする。

 

 

焦りの色を浮かべたまま、ユノアは必死に何度も魔法を試す。

 

 

「ストーンバレット……! サンドブラスト……! ロックフォール……!」

 

 

何度唱えても、魔法は発動しない。

 

 

「どうして……? なんで……? こんな……!」

 

 

いつもなら簡単に強大な魔法を操っていたユノアが――

 

今はただの無力な少女のように震えている。

 

 

ついに彼女は、震える拳を握りしめたまま、一人で立っていた。

 

僕はそこでやっと、優しい声をかけてやることにした。

 

 

「ユノア、大丈夫?」

 

 

その言葉だけで、何も説明しない。

 

あくまで心配しているふりをしながら、彼女をじっと見つめる。

 

 

「アルト……」

 

 

ユノアの瞳が揺れる。

 

いつも見下すような眼差しを向けていた彼女が、今は縋るように僕を見ている。

 

 

「ど、どうしよう……魔法が、使えなくなった……」

 

「そっか……それは大変だね」

 

 

僕は同情するような顔を作りながら、静かに頷く。

 

 

「僕も、ずっと無能だったからさ。魔法が使えない辛さ、よくわかるよ」

 

 

ユノアの肩がビクリと震えた。

 

 

「でも、きっと大丈夫。魔法がなくても、生きていけるよ」

 

 

――スキルを取り戻す方法がある、なんて言わない。

 

 

僕がそう言うと、ユノアの顔が歪む。

 

 

「で、でも……どうして……私、こんな……」

 

 

まだ偶然かもしれないと思っているのか、震えながら何度も何度も魔法を試す。

 

 

――だが、そのどれもが発動しない。

 

 

やがて、彼女の唇がわななき、小さな声が漏れる。

 

 

「嫌だ……」

 

「え?」

 

「魔法が使えないなんて……そんなの、嫌……っ!!」

 

 

堪えきれなくなったのか、ユノアの瞳に涙が滲み始める。

 

 

ああ、面白い。

 

 

つい昨日まで、"魔法を使えない者"を見下していた少女が、今や"魔法を使えない者"になっている。

 

 

「ユノア……」

 

 

僕は少しだけ優しく、彼女の肩に手を置いた。

 

 

「もし……話を聞いてほしいなら、僕は聞くよ。僕も、"無能"として生きてきたからさ」

 

 

ユノアはその言葉に、一瞬唇を噛み締めた。

 

だが――次の瞬間、震えながらも小さく頷く。

 

 

「……助けて、ほしい……」

 

 

かつて"大地の公女"と呼ばれた少女が、ついに僕に助けを求める。

 

 

――いいよ、ユノア。

 

 

でも、すぐには教えてあげない。

 

 

焦らして、焦らして。

 

 

無能がどんなものか、じっくりと味わってもらおう。

 

 

 

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