君が無能くん?魔剣士学園に入学したのに『スキル無し』?ねぇ今どんな気持ち?努力したって報われないのに希望とかあるの?普通の青春を送りたい?あはっ! 無能には無理に決まってるじゃん 作:鳥稲のね
ユノアがスキルを失って、一人で悩み、毎日必死にスキルを取り戻す方法を調べている頃……。
とある休日、僕はモモアとデートすることにした。
僕からスキルを返してもらう代わりに、僕の恋人になったモモア。
モモアには、僕に反抗的な態度さえ取らなければ、恋人として扱うと言っていた。
半ば無理やり恋人にしたとは言え、恋人は恋人。
恋人ならデートくらいするだろう。
今まで、女の子とデートなんてしたことなかったけど……。
さて……モモアは王族だ。
高級なレストランとか連れて行ってもきっと喜ばないだろう。
逆に、下町とか連れて行ってやろう。
ゴミゴミした感じとか、汚さとか、その中にわずかに光る "良さ" を見せて、驚かせてやろう。
そうだ、チャビーメルトを食べさせてやろう。
チャビーメルト……それは「太っちょさんのとろけるホットサンド」といったところ。
超ガッツリ系ホットサンド。
トーストした食パンの間にハムやソーセージ、牛ステーキなんかをこれでもかってくらい挟んで、その上からチーズをどっさり乗せる。
そして、そのままオーブンで焼いてチーズをとろっとなるまで溶かす。
仕上げにトマトとビールをベースにしたピリ辛の特製ソースをかける。
サンドイッチだけど、ソースがたっぷりかかっているので、 ナイフとフォークがないと食べられない。
そんな王族が絶対に食べたことがないだろうB級グルメだ。
どこで食べてもおいしいんだけど、一番人気があるお店に連れて行くことにしよう。
~~~~~
「……本当に、行くの?」
目の前で少し不機嫌そうな顔をしているモモアは、今日も相変わらず炎の王女としての気位の高さを崩していない。
僕と恋人になってから、ちょっとデレ始めたかな……と思う瞬間があったものの、彼女の反発心は消えていない。
毎朝、登校する時に繰り広げられる攻防戦――
「手をつなぐの? ………えっと、今日はほら私、手袋してなくて……。」
「昨日もしてなかったでしょ?それに、素肌で触れ合えた方がいいに決まってるじゃん。」
「~~っ!! な、何言ってるのよ!」
「恋人同士なんだから、これくらい普通でしょ?」
「だって……! そ、それはそうかもしれないけど……!いや、そんなことはないけど!」
結局、僕が根負けしないと分かると、ため息混じりに小さな手を差し出してくる。
その度に僕は笑いながら、わざと耳元で甘い言葉をささやくのだ。
「モモアの手、温かいね。」
「~~~~っ!! そ、そんなこと言わなくていいから!」
「モモア、今日もいい匂いがする」
「何を言ってるの……!?私の匂いを嗅ぐな!」
耳まで赤く染めて、そっぽを向くモモア。
こういう反応が面白くて、ついついからかってしまう。
そんな僕らの奇妙な関係が続いている中で迎えた、当日――
今日は、ついにモモアとのデートだ。
「……で? どこに連れて行くつもり?」
モモアは腕を組み、ジト目で僕を見てくる。
王族である彼女は、きっと高級なレストランや、華やかなショッピングエリアでのデートを想像しているのだろう。
だけど、僕の目的は――そんなモモアを驚かせること。
「まあまあ、ついてくれば分かるって。」
「……なんか嫌な予感しかしない。」
僕はニヤリと笑い、モモアを連れて学園の敷地の門を出た。
~~~~~
「……ここ、どこ?」
モモアが辺りを見回しながら、不思議そうに眉をひそめる。
僕が連れてきたのは、クラウディア王国の王都・クラウディアシュタットの下町――
華やかな王城や高級住宅街とは違い、活気ある市場や、地元の人たちが行き交う賑やかな通り。
露店が並び、香ばしい匂いや甘い匂いが入り混じっていて、どこか懐かしさを感じさせる場所だ。
「な、なんでこんな場所に……。」
モモアは少し困惑した顔をしていた。
そりゃそうだ。
高貴な王族が、庶民の生活が溢れる下町に来るなんて、普通はありえない。
でも、だからこそ――
「王族のモモア様には、きっと初めての体験でしょ?」
「そ、そんなことわないわ……! それに、別に私、こんな場所に興味なんてないし……」
「ま、せっかく来たんだから、少し歩こうよ。」
「……仕方ないわね。」
ぶつぶつと文句を言いながらも、僕の後をついてくるモモア。
その様子を見て、思わず笑ってしまう。
なんだかんだで、少しは興味を持ってくれているらしい。
「な、何よ……!」
「いや、なんでも。」
「ムカつく……!」
~~~~~
「ねえ、本当にどこに行くつもりなの?」
市場を歩きながら、モモアが問いかける。
「ちゃんと目的があるんだよ。王族のモモアが絶対に食べたことのない、最高のB級グルメを食べさせてあげる。」
「B級……? グルメ……?」
「そう。『チャビーメルト』って言ってね……」
僕は少し得意げに説明を始める。
「分かりやすく言うなら『太っちょさんのとろけるホットサンド』って感じになるかな」
「……ホットサンド? そんなものを食べるために、私をここに連れてきたの?」
呆れたような目で見てくるモモア。
「バカにしてるでしょ? でも、食べたら考えが変わるから。」
「……ふーん? どうせ普通のパンに何か挟んでるだけでしょ?」
「いやいや、そんなレベルじゃないって。トーストした食パンの間に、ハムやソーセージ、さらにステーキまで挟んで……。」
「ステーキ……?」
「その上から、たっぷりのチーズをどっさり乗せて、オーブンで焼いて、とろっとろに溶かすんだ。」
「チーズを……?」
モモアの表情が少しだけ変わる。
「さらに仕上げに、トマトとビールをベースにしたピリ辛の特製ソースをたっぷりかけるんだよ。」
「……な、なんか……すごくカロリー高そう……。」
「まあね。でも、その分美味しさも保証付き。」
「……そんなに美味しいの?」
「どこで食べても美味しいけど、今日行くお店は特に人気なんだ。」
「……。」
結構興味を持ち始めた様子のモモアを見て、僕は心の中でガッツポーズを決めた。
――さて、王女様をどれだけ驚かせられるか。
僕たちは、少し足早に『チャビーメルト』の人気店へと向かった。