君が無能くん?魔剣士学園に入学したのに『スキル無し』?ねぇ今どんな気持ち?努力したって報われないのに希望とかあるの?普通の青春を送りたい?あはっ! 無能には無理に決まってるじゃん 作:鳥稲のね
僕とモモアが休日デートをした翌日。
学園での休憩時間の様子――。
いつも僕とララが並んで座り、その後ろにはモモアとリアがいる感じのポジションだ。
普段は僕とララが話しているだけで、リアとモモアはあまり話してこない。
二人は僕のお飾りとなっていることが多かった。
しかし、今日は……。
「ねえ、ララ。」
珍しくモモアが、自分から話しかけてきた。
ララも少し驚いた様子だった。
「……あの……チャビーメルトって知ってるの?」
唐突な質問に、僕とララは一瞬目を合わせる。
やっぱり、昨日のことが相当印象に残ってるんだな……。
ララはにこりと笑って答えた。
「もちろん知ってるよ。チャビーメルトは有名だもん。お父さんが大好きでさ、家族でたまに食べに行くの。」
「へえ……やっぱり、みんな知ってるんだ……。」
モモアは少し感慨深げに呟く。
王族として育ってきた彼女にとって、庶民の定番グルメなんて知る機会はなかったのだろう。
「でも、私も好きだよ! すっごく美味しいしね。ただ、カロリーがすごいから、あんまり頻繁には食べないけど……。」
ララは苦笑いしながら、自分のお腹をさすってみせた。
僕も昨日は晩御飯を食べれなかった。スペシャルにした上に、モモアの残した分まで食べきってしまったから……。
「分かる……。私、昨日初めて食べたんだけど……あれは本当にカロリー爆弾よね。」
モモアの声が少し弾む。
「え!? モモアさん、初めて食べたの!? どうだった!? ねえ、どうだった!?モモアさん全部食べきれた?」
ララが身を乗り出して、モモアに興味津々な視線を向ける。
「……すごく美味しかった!全部は食べきれなかったけど……。」
モモアの顔がぱっと明るくなり、昨日の感動を思い出したかのように語り出す。
「パンがサクサクで……中のハムやステーキがジューシーで……それにチーズがとろとろで……。しかも半熟の目玉焼きがのっていて、切ったら黄身とソースがとろっと垂れてきて……。」
「わかる! あれ、チーズの量がすごいよね!」
「そうなの! 一口食べるたびに、チーズがとろーんって伸びて……ソースもピリッと辛くて……何だか……すごく幸せな気分になった……。」
話しているうちに、モモアは頬を赤くしながらも無邪気な笑顔を見せていた。
その笑顔を見て、僕はちょっと驚いた。
こんなふうに素直に楽しそうにしているモモアは、初めてかもしれない。
僕と話しているときは、肩肘張っている感じだけど。やっぱりクラスメイトの女の子と話す方が楽なのかしれない。
「いいなぁ~! 昨日食べに行ったんだ? どこのお店?」
「えっと……。」
モモアは一瞬、僕の方をちらりと見て――
「その……アルトと一緒に行ったんで、お店のことまでは覚えてない……。」
「えっ……!」
ララの目が大きく見開かれる。
「アルト君と……デート……!?」
「で、デートっていうか……その……!」
モモアは顔を真っ赤にして、慌てて言い訳しようとする。
でも、その反応が余計に『デート』感を強めてしまっていた。
「へええ~~……。」
その様子を見て、ララはニヤニヤと笑みを浮かべる。
「それで昨日、モモアさん、すごく機嫌良さそうだったんだ~!」
「そ、そんなこと……っ!!」
「もう~、素直になればいいのに~。」
「素直とか、そんなんじゃないから!!」
モモアがぷいっとそっぽを向く。
二人が盛り上がっているのを見て……対照的に、リアの表情が沈んでいた。
口数が少ないのはいつものことだけど、今はそれ以上に存在感を消しているような感じだった。
ララとモモアが楽しそうに話している様子を横目で見て、リアは疎外感を感じているのかもしれない。
「……チャビーメルトですか。……私も……食べてみたいですね。」
リアは小さな声で、ポツリと呟いた。
モモアの食レポが、リアの心も掴んでしまっていたようだ。
チャビーメルト、恐るべし。
……次は、リアを誘おうかな。
そんなことを思いながら、僕は彼女をそっと見つめていた。