君が無能くん?魔剣士学園に入学したのに『スキル無し』?ねぇ今どんな気持ち?努力したって報われないのに希望とかあるの?普通の青春を送りたい?あはっ! 無能には無理に決まってるじゃん 作:鳥稲のね
王立クラウディア魔剣士学園の一年生でありながら、七剣姫の一人。
大地の公女 ユノア・グランツバッハ。
広大な大地を治める名門貴族、グランツバッハ公爵家のご息女。
彼女は大地を操る魔法の名手であり、集団戦闘では無類の強さを誇っていた。
だが……。
ある日を境に、ユノアは魔法を……それを使うための土台とも言える "スキル" を失った。
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「ユノア様、大丈夫ですか?」
最初のうちは、周囲の生徒たちも彼女を気遣っていた。
授業の合間や廊下ですれ違うたび、心配そうな顔で声をかける者が後を絶たなかった。
「無理しないでくださいね」
「先生に相談してみたらどうですか?」
「きっと、また魔法も使えるようになりますよ!」
クラスメイトたちの言葉は優しく聞こえる。
だが、その瞳の奥に浮かぶのは憐れみ。
ユノア自身もそれに気づいていた。
最初は必死に笑顔を作り、彼らの言葉に感謝を述べていた。
だが……日が経つにつれ、状況は変わっていく。
次第に、誰も彼女に声をかけなくなった。
ユノアが魔法を失ってから、一週間。
かつて彼女を慕っていた生徒たちは、まるで触れてはいけないものを見るような目で彼女を見た。
この学園は実力至上主義の世界だ。
スキルを持たない者は、存在価値すら認められない。
……ユノアは『無能』になったのだから。
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「ユノア様、今回の集団戦闘訓練、誰と組むんですか?」
ある日の訓練前のこと。
授業の時間になると、教官の号令と共に、生徒たちは次々とチームを組んでいく。
本来なら、ユノアは引っ張りだこだった。
炎のモモア、雷のリア、――彼女たちは単騎では最強クラスだ。
しかし、炎も雷も守りには向いていない。
集団戦になるとユノアの地属性魔法が一番優位に働く。
彼女の魔法があれば、大地の操作による防御壁や地割れ攻撃で敵の動きを封じ、味方を有利に導くことができた。
だが――。
「……えっと、私は……」
ユノアがそう言いかけると、微妙な空気が流れた。
魔法を失った彼女を前にして、生徒たちは目を合わせない。
「あっ、ごめん! 私もうチーム決まっちゃった!」
「えっと……すみません、私も……」
彼女を拒絶する声が、次々と飛び交った。
かつて誰もが頼りにしていたユノア。
しかし、魔法を失った今、彼女はただの足手まといでしかない。
「ユノア様は……見学されたらどうですか?」
そう言ったのは、かつて彼女とよく組んでいた女子生徒だった。
苦笑を浮かべながら、どうしようもないと言わんばかりの顔で。
「……っ!」
ユノアは唇を噛んだ。
彼女の拳は震えている。
『お荷物とは一緒に戦いたくない』
それが、今のユノアに対する評価だった。
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美しいものに惹かれるのは、人の性だ。
当たり前のことだが、ユノアは魔法を失っても、その美しさを失うわけではない。
むしろ、無力な美少女になったことで、彼女に向けられる視線は別の意味を持つようになった。
「ユノア様、最近元気ないですね? 俺が楽しい所に連れて行ってあげましょうか?」
「悩みがあるなら、相談に乗るよ? 二人きりで、ね?」
「前から君のことが好きだった。君の支えになりたい」
下心が見え見えの男たちの誘い。
お高くとまってたご令嬢も、今なら素直になるんじゃないか。
魔法を失ったことで、彼女に手が届くくらいまで価値が下がったと考えたのだろう。
この隙に、自分のものにできるかもしれない、と。
……僕と同じ思考だな。
けど、残念ながら。
ユノアには、すでに僕がツバをつけている。
無能のことが理解できるのは無能だけ。
お前たちみたいな中途半端な才能を持っている人間には、絶対になびかないよ。
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ユノアは、必死にスキルを取り戻す方法を探していた。
何とかして自分を取り戻そうと頑張り続けていた。
図書館で毎日、昼休みや放課後、何時間も魔法の書物にかじりついて調べものをしていた。
他の学生たちが休憩を取っている間も、ユノアは決して休まなかった。
分厚い魔道書を机いっぱいに広げ、黙々とページをめくる。
「何か見つかるかもしれない……」
彼女は小さく呟き、魔力が元に戻る可能性のある情報を探し続けた。
失ったスキルを取り戻す方法、魔法を使えるようになる方法。
どれも有用な情報が見つかるわけではなかったが、ユノアは諦めることを知らなかった。
『自分にはスキルがない』という現実を、受け入れたくないのだろう。
それを覆す方法が、どこかにあるはずだと信じている。
その姿を見ながら、僕はゆっくりと彼女に近づいた。
「ユノア、無理しすぎだよ。休憩しなきゃ、身体が持たないよ。」
僕が声をかけると、ユノアはびっくりした顔で振り返った。
「アルト……?」
「これ、差し入れだよ。ずっと頑張ってるみたいだし、少し休んだ方がいいよ。」
僕は、彼女の好きな小さな焼き菓子を差し出した。
ユノアは少しだけ困ったように微笑むと、その差し入れを受け取った。
「ありがとう……でも、私は……」
「大丈夫、きっと大丈夫。だから、少し休んで。また元気を出して。」
ユノアは、ほんの少しだけその疲れた表情を緩めて、僕の差し入れを受け入れた。
「そういえば、最近さ……」
僕はわざと何気ない口調で切り出した。
「学園の男子たちが、ユノアにちょっかいかけてるの、見たよ。」
「……っ!」
ユノアの表情が一瞬にして強張る。
「別に……相手にしてないから。」
「でも、あいつらしつこそうだよね。ユノアが魔法を使えなくなったから、前より誘いやすくなったと思ってるんじゃない?」
ユノアの顔がさらに曇る。
実際、学園の男たちは、ユノアが以前のように「手の届かない存在」ではなくなったと考え、好意を装って接触しようとしている。
「ユノアは美人だからね。今までは強さがあったから、みんな遠慮してたけど……今は違う。」
「……そんなの、わかってる。」
「だから、変な男の甘い誘いに乗っちゃダメだよ?」
「…………」
ユノアが僕をじっと見つめる。
「アルトは、そんなふうに私のことを心配してくれるんだね。」
「当たり前だよ。僕はユノアの味方だから。」
もちろん、利用するために、だけどね。
ユノアは少しだけ顔を赤らめ、視線をそらした。
「……ありがとう。」
ユノアは、ほんの少しだけ笑顔を見せた。
「そうだね……こんな状態で誰かに頼るなんて、私らしくないもの。変な誘いになんて乗らないわ」
「うん、ユノアは強いから。」
彼女はまた微笑み、再び魔法の本に目を向けた。
君が絶望の底に沈むまで、僕はゆっくりと寄り添ってあげるから。
真剣な彼女も美しい。
こんな美少女の横にいられるだけでも幸せなことだ。
でも……結局、ユノアには僕のものになってもらうんだけど。