※この作品はR-18です。

君が無能くん?魔剣士学園に入学したのに『スキル無し』?ねぇ今どんな気持ち?努力したって報われないのに希望とかあるの?普通の青春を送りたい?あはっ! 無能には無理に決まってるじゃん   作:鳥稲のね

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第23話

 

王立クラウディア魔剣士学園の一年生でありながら、七剣姫の一人。

 

 

大地の公女 ユノア・グランツバッハ。

 

 

広大な大地を治める名門貴族、グランツバッハ公爵家のご息女。

 

彼女は大地を操る魔法の名手であり、集団戦闘では無類の強さを誇っていた。

 

 

だが……。

 

 

ある日を境に、ユノアは魔法を……それを使うための土台とも言える "スキル" を失った。

 

 

 

~~~~~

 

 

 

「ユノア様、大丈夫ですか?」

 

 

最初のうちは、周囲の生徒たちも彼女を気遣っていた。

 

授業の合間や廊下ですれ違うたび、心配そうな顔で声をかける者が後を絶たなかった。

 

 

「無理しないでくださいね」

 

「先生に相談してみたらどうですか?」

 

「きっと、また魔法も使えるようになりますよ!」

 

 

クラスメイトたちの言葉は優しく聞こえる。

 

だが、その瞳の奥に浮かぶのは憐れみ。

 

ユノア自身もそれに気づいていた。

 

 

最初は必死に笑顔を作り、彼らの言葉に感謝を述べていた。

 

 

だが……日が経つにつれ、状況は変わっていく。

 

 

次第に、誰も彼女に声をかけなくなった。

 

 

ユノアが魔法を失ってから、一週間。

 

かつて彼女を慕っていた生徒たちは、まるで触れてはいけないものを見るような目で彼女を見た。

 

 

この学園は実力至上主義の世界だ。

 

 

スキルを持たない者は、存在価値すら認められない。

 

 

……ユノアは『無能』になったのだから。

 

 

 

~~~~~

 

 

 

「ユノア様、今回の集団戦闘訓練、誰と組むんですか?」

 

 

ある日の訓練前のこと。

 

授業の時間になると、教官の号令と共に、生徒たちは次々とチームを組んでいく。

 

 

本来なら、ユノアは引っ張りだこだった。

 

 

炎のモモア、雷のリア、――彼女たちは単騎では最強クラスだ。

 

しかし、炎も雷も守りには向いていない。

 

集団戦になるとユノアの地属性魔法が一番優位に働く。

 

彼女の魔法があれば、大地の操作による防御壁や地割れ攻撃で敵の動きを封じ、味方を有利に導くことができた。

 

 

だが――。

 

 

「……えっと、私は……」

 

 

ユノアがそう言いかけると、微妙な空気が流れた。

 

魔法を失った彼女を前にして、生徒たちは目を合わせない。

 

 

「あっ、ごめん! 私もうチーム決まっちゃった!」

 

「えっと……すみません、私も……」

 

 

彼女を拒絶する声が、次々と飛び交った。

 

かつて誰もが頼りにしていたユノア。

 

しかし、魔法を失った今、彼女はただの足手まといでしかない。

 

 

「ユノア様は……見学されたらどうですか?」

 

 

そう言ったのは、かつて彼女とよく組んでいた女子生徒だった。

 

苦笑を浮かべながら、どうしようもないと言わんばかりの顔で。

 

 

「……っ!」

 

 

ユノアは唇を噛んだ。

 

彼女の拳は震えている。

 

『お荷物とは一緒に戦いたくない』

 

それが、今のユノアに対する評価だった。

 

 

 

~~~~~

 

 

 

美しいものに惹かれるのは、人の性だ。

 

 

当たり前のことだが、ユノアは魔法を失っても、その美しさを失うわけではない。

 

むしろ、無力な美少女になったことで、彼女に向けられる視線は別の意味を持つようになった。

 

 

「ユノア様、最近元気ないですね? 俺が楽しい所に連れて行ってあげましょうか?」

 

「悩みがあるなら、相談に乗るよ? 二人きりで、ね?」

 

「前から君のことが好きだった。君の支えになりたい」

 

 

下心が見え見えの男たちの誘い。

 

お高くとまってたご令嬢も、今なら素直になるんじゃないか。

 

魔法を失ったことで、彼女に手が届くくらいまで価値が下がったと考えたのだろう。

 

この隙に、自分のものにできるかもしれない、と。

 

 

……僕と同じ思考だな。

 

 

けど、残念ながら。

 

ユノアには、すでに僕がツバをつけている。

 

無能のことが理解できるのは無能だけ。

 

お前たちみたいな中途半端な才能を持っている人間には、絶対になびかないよ。

 

 

 

~~~~~

 

 

 

ユノアは、必死にスキルを取り戻す方法を探していた。

 

何とかして自分を取り戻そうと頑張り続けていた。

 

図書館で毎日、昼休みや放課後、何時間も魔法の書物にかじりついて調べものをしていた。

 

他の学生たちが休憩を取っている間も、ユノアは決して休まなかった。

 

分厚い魔道書を机いっぱいに広げ、黙々とページをめくる。

 

 

「何か見つかるかもしれない……」

 

 

彼女は小さく呟き、魔力が元に戻る可能性のある情報を探し続けた。

 

失ったスキルを取り戻す方法、魔法を使えるようになる方法。

 

どれも有用な情報が見つかるわけではなかったが、ユノアは諦めることを知らなかった。

 

『自分にはスキルがない』という現実を、受け入れたくないのだろう。

 

それを覆す方法が、どこかにあるはずだと信じている。

 

 

その姿を見ながら、僕はゆっくりと彼女に近づいた。

 

 

「ユノア、無理しすぎだよ。休憩しなきゃ、身体が持たないよ。」

 

 

僕が声をかけると、ユノアはびっくりした顔で振り返った。

 

 

「アルト……?」

 

「これ、差し入れだよ。ずっと頑張ってるみたいだし、少し休んだ方がいいよ。」

 

 

僕は、彼女の好きな小さな焼き菓子を差し出した。

 

ユノアは少しだけ困ったように微笑むと、その差し入れを受け取った。

 

 

「ありがとう……でも、私は……」

 

「大丈夫、きっと大丈夫。だから、少し休んで。また元気を出して。」

 

 

ユノアは、ほんの少しだけその疲れた表情を緩めて、僕の差し入れを受け入れた。

 

 

「そういえば、最近さ……」

 

 

僕はわざと何気ない口調で切り出した。

 

 

「学園の男子たちが、ユノアにちょっかいかけてるの、見たよ。」

 

「……っ!」

 

 

ユノアの表情が一瞬にして強張る。

 

 

「別に……相手にしてないから。」

 

「でも、あいつらしつこそうだよね。ユノアが魔法を使えなくなったから、前より誘いやすくなったと思ってるんじゃない?」

 

 

ユノアの顔がさらに曇る。

 

実際、学園の男たちは、ユノアが以前のように「手の届かない存在」ではなくなったと考え、好意を装って接触しようとしている。

 

 

「ユノアは美人だからね。今までは強さがあったから、みんな遠慮してたけど……今は違う。」

 

「……そんなの、わかってる。」

 

「だから、変な男の甘い誘いに乗っちゃダメだよ?」

 

「…………」

 

 

ユノアが僕をじっと見つめる。

 

 

「アルトは、そんなふうに私のことを心配してくれるんだね。」

 

「当たり前だよ。僕はユノアの味方だから。」

 

 

もちろん、利用するために、だけどね。

 

ユノアは少しだけ顔を赤らめ、視線をそらした。

 

 

「……ありがとう。」

 

 

ユノアは、ほんの少しだけ笑顔を見せた。

 

 

「そうだね……こんな状態で誰かに頼るなんて、私らしくないもの。変な誘いになんて乗らないわ」

 

「うん、ユノアは強いから。」

 

 

彼女はまた微笑み、再び魔法の本に目を向けた。

 

君が絶望の底に沈むまで、僕はゆっくりと寄り添ってあげるから。

 

真剣な彼女も美しい。

 

こんな美少女の横にいられるだけでも幸せなことだ。

 

 

でも……結局、ユノアには僕のものになってもらうんだけど。

 

 

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