君が無能くん?魔剣士学園に入学したのに『スキル無し』?ねぇ今どんな気持ち?努力したって報われないのに希望とかあるの?普通の青春を送りたい?あはっ! 無能には無理に決まってるじゃん 作:鳥稲のね
「俺に恥をかかせたんだから、その分、ちゃんと償ってもらうからな」
蹴りを入れようとするが、ただ虚しく空を切るだけだった。
——このままでは、本当に……!
心臓が恐怖に締め付けられる。
「ああ、いい表情ですね、ユノア様」
男がまた顔を近づける。
歯を食いしばるユノア。
どうすれば……。
「い……今なら……誰にも言わないでおいてあげるわ……っ!だから……やめて」
ユノアの声は震え、喉がかすれていた。
だが――
「へへっ……」
男たちは薄く笑うだけ。
「や……やめて……っ!」
顔が近づく。
「いや……いやあっ……!!」
どんどんと……顔が近づく。
コイツに汚されるなんて、考えられない。考えたくもない。
死にたい。殺したい。許せない。
でも……何よりも……怖い。
…………誰か。
…………助けて。
…………お願いします。
…………誰でもいいから。
…………一体誰が私のことを助けてくれるの?
…………。
……………………。
「……アルト」
「ん?何だって……?」
男が不思議そうに首を傾げる。
「助けてぇぇ!アルトーーーッ!!」
ユノアは思い切り叫んだ。
――その時。
「やめろよ」
静かな声が響いた。
男たちが驚いて振り向くと、そこに僕――アルトが立っていた。
「……なんだ、お前?」
「おいおい、まさか“無能”のアルトさんが、俺たちに説教でもしにきたのか?」
「はははっ、冗談キツいぜ。無能が正義の味方か?」
三人の男たちは揃って嘲笑する。
「ユノアが嫌がってるだろ。放せよ」
僕は静かに言った。
「……は?」
一瞬、男たちは呆気にとられたようだったが、次の瞬間、嘲笑はさらに大きくなった。
「おいおい、こいつ本気かよ?」
「無能が英雄気取りとは、笑わせるな!」
「お前に何ができるってんだ?」
彼らは楽しそうに笑い、僕を嘲りながら、一歩、また一歩と近づいてくる。
「だったら……」
僕は静かに地面へ手をついた。
「証明してやるよ」
——ゴゴゴゴゴゴ……!!!
次の瞬間、地面が大きくうねり、轟音と共に爆発的な土煙が巻き起こった。
「な、なんだ……!?」
「地面が……動いてる!?」
「くそっ、足が――!」
——ズズズズッ……!!!
彼らの足元が、一瞬にして土に絡み取られた。
まるで生き物のように動く土が、男たちの足を掴み、次第に絡みついていく。
「おい、離せっ!」
「動けねぇ! なんだこれ!?」
三人の男たちは、必死に足を引き抜こうとするが、無駄だった。
彼らの膝まで、すでに土が絡みつき、動きを封じている。
「くそっ! 何でこんな、こんな無能が……!」
——ゴゴゴゴゴ……!!!
さらに地面が隆起し、巨大な土の壁が彼らを包み込んでいく。
「や、やめろぉぉぉぉ!!」
「こんなの……何も出来ねえじゃねえか!!」
男たちは恐怖に顔を歪め、もがく。
しかし、土の壁はさらに厚みを増し、彼らを閉じ込めていく。
「ひ、ひぃぃぃ……!!」
「おい、本当にやばいって! こんなの高等魔法だぞ……!」
その通りだ。
これはただの魔法ではない。
ユノアのスキル――本来なら彼女レベルでないと使えないはずの土魔法。
しかし、僕はそれを使うことができた。
何故か?
答えは簡単。
僕が彼女のスキルを――『奪った』からだ。
「お、お願いだ……! もうしねぇ、もうユノア様には手を出さねぇから……!!」
「だから……助けてくれ……!!!」
もはや三人の男たちは、先ほどまでの余裕はどこにもなかった。
恐怖に顔を引きつらせ、必死に許しを請うていた。
僕はそれをじっと見つめる。
「……二度とユノアに近づくな」
低く、静かな声で告げると――
―――ズゴンッ!!!
土の壁が弾け飛んだ。
「うわぁぁぁ!!!」
解放された男たちは、地面に転がり込む。
「ひっ……!?」
「に、逃げろ……!」
「う、うわああああ!!!」
彼らは転がるように立ち上がり、足をもつれさせながら、裏庭から逃げ去っていった。
彼らの背中が見えなくなるのを確認し、僕はゆっくりと息を吐いた。
そして、振り返ると――
「アルト……あなた……」
驚きと感動の入り混じった表情のユノアが、僕を見つめていた。
「……どうしてもユノアを助けたいって思ったから……」
僕はわざとらしく、考え込むフリをしながら言う。
「もしかしたら、その想いが強かったから……ユノアのスキルが、僕に宿ったのかもしれない」
もちろん、真実は違う。
僕がユノアのスキルを奪っただけ。
でも、それは言わない。
「そんなことが……あるの?」
ユノアは呆然としながら、僕を見上げていた。
「うん……今、僕は……僕自身のスキルの説明まで知ることができるんだけど……」
僕は少し間を開けて続きを説明した。
「『強い想いを通じ合わせた相手同士は、スキルを共有することができる』だって……」
「……っ!」
ユノアが目を見開く。
「じゃあ、私の力が……アルトに?」
「うん。でも……ユノアは僕のことなんて、何とも思ってないよね」
僕はわざと目を逸らす。
仕掛けは完璧だった。
だって、ユノアはもう僕に依存しかけているのだから。
ここで否定するはずがない。
「そんなことない……」
ユノアは小さく、しかし確かな声で言った。
「私……アルトのことが好き」
その言葉に、僕は驚いた。
こんなにうまくいくなんて……。
ユノアは、恥ずかしそうに顔を俯かせた。
「アルトは……魔法を失った私をずっと気にかけてくれた。みんなが離れていったのに、あなたはずっと傍にいてくれた。私にとって……アルトは、すごく……特別な存在になってたの」
僕の計画通りだ。
……だが、まだ終わりじゃない。
僕はさらに、"最後の一押し"を仕掛ける。
「……でもね、ユノア。僕はユノアにこのスキルを返したいんだけど……」
わざと声を低くする。
「もうひとつの条件が書いてあって……」
「条件……?」
「うん……もし完璧にスキルの譲渡を受けるためには……」
僕は、ゆっくりと呟いた。
「スキルを受け取る相手に対して、奴隷に準ずるような従属が必要……って出てるんだけど」
ユノアの身体がピクリと震える。
そして――ほんの一瞬の沈黙の後。
「……それでも、大丈夫」
「……え?」
「アルトになら……何をされても、大丈夫」
まったく。
そんなこと、言ってしまっていいのかな?
僕は本当は、"悪い奴"かもしれないのに。
でも、もう止めないよ。
僕は静かに微笑んだ。
「じゃあ……誓ってくれる?」
ユノアは、一瞬のためらいの後――小さく、でも確かに頷いた。
「……誓うわ。アルトに、従うって」
「僕に跪いてキスをして」
静かに、けれど確実に、僕は彼女に命じた。
ユノアはゆっくりと膝をついた。
地面に触れる彼女の膝。
大地の公女と称えられ、誰よりも努力し、誇り高く生きてきた彼女が、今こうして僕の前で跪いている。
「……私……」
絞り出すような声。
「例えどんなことがあっても、僕を裏切らないという覚悟を見せて」
ユノアの肩がわずかに震えた。
それでも彼女は、逃げなかった。
覚悟を決めたのか、ゆっくりと顔を上げ、僕を見つめる。
「……私は……」
声が震えている。
「アルトを、絶対に裏切りません……」
そして――
ユノアはそっと顔を近づけ、僕の手の甲に唇を落とした。
かすかに触れる温もり。
誓いの証。
それは、彼女が自ら選んだ従属の証だった。
「いい子だよ、ユノア」
僕は彼女の髪を優しく撫でた。
ユノアは、少し恥ずかしそうに目を伏せたが、それでも僕の手を拒むことはなかった。
これで、ユノアは完全に僕のものになった。