※この作品はR-18です。

君が無能くん?魔剣士学園に入学したのに『スキル無し』?ねぇ今どんな気持ち?努力したって報われないのに希望とかあるの?普通の青春を送りたい?あはっ! 無能には無理に決まってるじゃん   作:鳥稲のね

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第30話

 

学園では一年生の剣姫であるモモア、リア、ユノアの3人。

 

彼女たちは時折、上級生剣姫の指導のもとで任務にあたることがある。

 

今回の任務は、広大な墓地に大量発生したアンデッドの討伐。

 

 

通常、低級のアンデッドならば聖職者の手に委ねられるが、今回は数が尋常ではなかった。

 

レベルの低い死霊系の魔物であれば、聖なる力ではなく他属性のスキル攻撃も通じる。

 

そのため、強力な浄化魔法を使える水の聖女・メルキアが陣頭に立ち、彼女とともに一年の剣姫三人が参加することになった。

 

 

当然、僕も彼女たちと共に現地へ向かうことにした。

 

こんな絶好の機会を逃すわけがない。

 

 

城壁の外なら凶悪なモンスターが無数にいるので、同行できるのは熟練の兵士や騎士に限るのだけど。

 

今回は城壁内の墓地であり、出没するのは弱くて動きも遅いアンデットたち。

 

神官や信徒たちも多数同行しているし、僕がついていっても問題なさそうだった。

 

 

 

現地である墓地に到着すると、すでに異様な光景が広がっていた。

 

無数のゾンビやスケルトンがうごめき、墓石の隙間から生者の匂いを嗅ぎ取っている。

 

メルキアの背後には、彼女に忠誠を誓うメルキアの信徒たちが集まり、その姿を崇めていた。

 

周囲の信徒たちは、期待に満ちた眼差しを向けている。

 

メルキアはその視線を当然のように受け止め、誇らしげに微笑んでいた。

 

 

そう、いつもならば彼女はこの場で奇跡を見せ、称賛を一身に受けるはずだった。

 

そして「さすがメルキア様」「素晴らしい」「メルキア様はまるで女神様のよう」「神々しい」「お美しい」なんて言われたことだろう。

 

しかし……今日はそうはいかない。

 

僕と同じ無能になってもらって、屈辱を存分に味わってもらおう。

 

 

 

~~~~~

 

 

 

討伐任務の開始の合図を待つ前に。

 

モモアがメルキアに向かって言った。

 

 

「メルキア様、私たちアンデッド戦は初めてなので、戦い方の見本を見せてもらえますか?」

 

 

一見、素直なお願いに聞こえるが、それは罠だった。

 

メルキアを単独でゾンビの集団の中に飛び込ませ、僕がスキルを奪うための布石。

 

 

「……低級のアンデッドごときで怖がってどうするんですか? やはり"無能"と付き合っているからですか? 鍛錬が足りませんよ」

 

 

メルキアは呆れたようにため息をつき、見下した視線を僕へと向けた。

 

 

「……申し訳ございません」

 

 

モモアは言い返しそうになったが、ユノアがそっと彼女を押しとどめて、代わりに謝った。

 

だが、メルキアの瞳は冷たい。

 

 

「仕方ありませんね、私が先陣を切りますので。私の後についてきてください」

 

 

得意げに語るメルキア。

 

そして彼女は先頭に立ち、うごめくアンデッドの大群を前にし、誇らしげに腕を掲げた。

 

 

―――今だ。

 

 

「哀れな者たちよ。光の彼方に消え失せよ!」

 

 

メルキアが魔力を発動させた、その瞬間……。

 

 

僕は

 

メルキアのスキルを

 

奪った。

 

 

これでメルキアは浄化も水魔法も使えない。

 

 

「……あれ?」

 

 

メルキアの動きが止まった。

 

普段ならば、彼女の聖なる光が降り注ぎ、ゾンビたちは一瞬で消滅するはずだった。

しかし、今日は何も起こらない。

 

 

「……どうしたことでしょう?」

 

 

メルキアはもう一度、詠唱を試みる。

 

しかし、いくら祈ろうとも、聖なる力は彼女のもとに降りてこない。

 

 

そんなメルキアをゾンビたちは待ってくれなかった。

 

 

―――ペチッ

 

 

「きゃっ……!?」

 

 

メルキアがゾンビに殴られた。

 

 

―――ガブッ

 

 

「いやああああああ!!?」

 

 

メルキアの腕に、ゾンビの歯が食い込んだ。

 

彼女の血が滲む。

 

 

「や、やめて! 近寄らないで!」

 

 

しかし、今まで圧倒的な力で彼らを排除してきた"水の聖女"は、今やただの無力な少女だった。

 

次々とゾンビたちが彼女に群がる。

 

 

メルキアの姿が、ゾンビの群れに埋もれていった。

 

 

「メ、メルキア様が見えなくなったぞ!」

 

「ま、まさか、浄化する前に囲まれてしまったのか!?」

 

 

神官たちが困惑し始める。

 

しかし、彼らはすぐにはメルキアを助けようとはしなかった。

 

何故なら彼らは、『メルキア様なら何の問題なくゾンビを消し去るはず』と信じて疑わなかったからだ。

 

 

「メルキア様の優しさゆえ、アンデッドたちの無念を聞いておられるのでは?」

 

「……な、なるほど。さすがメルキア様。アンデッドに取り囲まれるなんて、私には絶対にできません」

 

「なんと崇高なお心……!」

 

 

その間にも、ゾンビの群れの中から悲鳴が響く。

 

 

「ダレカー!タスケテー!!」

 

「甲高い声が聞こえてきた!まさかメルキア様が?」

 

「そんなわけがない、きっとゾンビの声だろう。生前の救われなかった無念の思いだ」

 

「そ、そうだな……」

 

 

僕やモモア、リアは笑いをこらえるのに必死だった。

 

ユノアは苦笑いしていた。

 

 

「そろそろ、助けてあげようか」

 

 

僕が言うと、モモアが剣を抜き、にやりと笑った。

 

 

「そうですね」

 

 

リアが雷を纏い、ユノアが魔法の詠唱を始める。

 

三人の剣姫たちが一斉に動き出した。

 

 

モモア、リア、ユノアが前に出る。

 

 

炎が吹き荒れ、雷が炸裂し、大地が轟いた。

 

 

アンデッドたちが、一瞬で殲滅される。

 

 

ゾンビの群れの中から引きずり出されたメルキアは、泥まみれでボロボロになっていた。

 

 

髪は乱れ、聖なる衣には汚れとゾンビの体液がこびりつき、血の気の引いた顔には恐怖の色が焼き付いていた。

 

 

これが聖女の姿か。

 

 

「何をやっているんですか……メルキア様?」

 

 

モモアが薄く笑う。

 

 

「まるで無能じゃないですか?ちょっと今日のメルキア様、ザコ過ぎません?」

 

「きょ……今日は体調が悪かっただけです。た、たまたまです……」

 

 

震えながら言い訳をするメルキア。

 

しかし、その姿を見て、信者たちはもう"水の聖女"を崇拝の目で見ることはなかった。

 

彼らの表情に浮かんでいるのは、動揺と疑念、そして失望だった。

 

メルキアの威光は、地に堕ちた。

 

 

ゾンビにボロボロにされ、泥まみれの姿でメルキアが引きずり出された後、教会関係者たちはその様子を見て、小声でささやき合っていた。

 

最初は戸惑いの表情を浮かべていたが、やがて完全なる侮蔑へと変わっていった。

 

 

「……本当に、あれが"水の聖女"なのか?」

 

「哀れなだな……」

 

「一匹のアンデットも討伐できずに負けるなんて……」

 

「全くひどい有様だ」

 

「まるで"女神"どころか"無能"だな……」

 

「"神々しい"どころか、汚らしいな。聖なる衣もズタボロで、泥まみれだ……。」

 

「……とても聖女とは思えない。」

 

「……まさかこんな醜態を晒すとはな。」

 

「やっぱり、"女神に選ばれた"なんていうのは嘘だったんじゃないか?」

 

「今まで彼女を崇拝してきたけど、そんな気が失せてしまった……」

 

「……もう"水の聖女"なんて呼ばれる資格、ないんじゃないか?」

 

 

信頼が、一気に崩れ去る瞬間だった。

 

彼らの言葉は、メルキアを"絶対的な聖女"として崇めていた時とは正反対だった。

 

かつての賛美は、今や嘲笑へと変わっていた。

 

 

彼らの会話を盗み聞きしていた僕は、静かに笑みを浮かべていた。

 

 

 

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