君が無能くん?魔剣士学園に入学したのに『スキル無し』?ねぇ今どんな気持ち?努力したって報われないのに希望とかあるの?普通の青春を送りたい?あはっ! 無能には無理に決まってるじゃん 作:鳥稲のね
メルキアの評判は、ユノア以上にあっと言う間に地に落ちた。
いや、地に落ちたという表現では生易しいかもしれない。
まるで断崖絶壁から突き落とされたように、彼女の地位と名誉は瞬く間に消し去られたのだった。
リオネ王国の人々は聖女を崇拝する。
彼女たちは、神の恩寵を受けし存在であり、人々を癒し、導く象徴だ。
その中でも最高位聖女ともなれば、まさに"神に最も近き者"とされ、崇拝の対象であった。
それなのに……
その最高位聖女が、浄化もできず、回復もできず、魔法も使えない。
それでは聖女としての価値はゼロ。
いや、ゼロどころか、むしろ失望と不信を生む存在へと成り果ててしまった。
人々の信仰は、力があるからこそ成立するものだ。
それを失った今、メルキアに向けられる視線は、かつての崇拝の眼差しではなく、冷たい嘲笑と哀れみの混じったものに変わっていた。
教会はこの事態に即座に動いた。
秘密裏に「次期最高位聖女審査会」が開かれ、メルキアの後釜を用意する準備が進められる。
彼女が築き上げた地位は完全に瓦解しようとしていた。
今まで彼女の周りには、取り巻きがいた。
"最高位聖女"の威光に惹かれ、彼女の一挙一動にひれ伏し、彼女の言葉を賛美し、彼女の美しさを称えた人々が。
しかし、潮が引くように、その全てが消え去った。
誰もが、彼女を遠巻きに眺め、距離を取るようになった。
まるで"疫病神"を見るかのように。
「メルキア様、申し訳ありません……私は、教会の方針に従わねばならないのです……」
「……メルキア様、あなたのためを思って言います。もう、このまま身を引いた方が良いのでは?」
「ごめんなさい、メルキア様……私たちも生きていかなくてはいけないのです……」
言い訳を並べながら、一人、また一人と、彼女の元から去っていく。
あれほど自信満々に振る舞い、僕を見下し、自らを選ばれし者として高みから見下ろしていた彼女。
今の姿からは、かつての高慢で誇り高き聖女の姿は、もうどこにもなかった。
ゾンビにボロボロにされたメルキアを見て、僕は正直冷めてしまっていた。
泥まみれになって震えている姿を見たら、もはや彼女をハーレムの一人として迎えようとは思えなかった。
だけど、このまま放っておくのは、さすがに可哀想だった。
ゾンビにボロボロにされる前は、確かに美しかったし。
……まあ、そうだな。
今の彼女をハーレムに加える気はないけれど、せめてメイドくらいにはしてあげようかな。
それに、"元・水の聖女"をメイドにしたところで、優越感も何もない。
どうせなら、"水の聖女"の地位を取り戻させたうえで、僕に仕えさせる方が面白い。
聖女としての力を失い、周りからの信頼も失ったメルキアは、学園内でもただただ落ち込むしかなかった。
僕は中庭の片隅で、膝を抱えて俯いているメルキアを見つけた。
彼女の美しい水色の髪は、艶を失い、どこか白っぽく見えた。
かつての気品は影を潜め、ただの哀れな少女がそこにいた。
僕は静かに歩み寄り、囁く。
「メルキア様、急にスキルが無くなったのは、不思議だと思いませんか?」
彼女はハッとして顔を上げた。
瞳は赤く腫れていた。
あれからずっと泣いていたのだろう。
僕は静かに微笑む。
「実は僕がメルキア様のスキルを奪ったんですよ。返してほしければ……」
その瞬間——
メルキアは僕の前に、倒れ込むようにひれ伏したした。
「お願いです!」
泥だらけの地面に額をつけながら、彼女は懇願する。
「今までの無礼は謝ります! 何でもします! 土下座をしろというのであればします! だから、私のスキルを返してください!」
ええっ……!?
ここまで落ちるとは思わなかったな。
かつては"女神の生まれ変わり"とまで言われた聖女が、こうして泥にまみれ、誇りもプライドもかなぐり捨て、僕にすがりついている。
「じゃあ、まあ水の聖女を続けられるようにもしてあげるから、僕のメイドになってよ」
メルキアは、目を見開いた。
「……!」
そして、次の瞬間……。
「はい! ご主人様の靴も磨きます! どんな命令でも聞きます!まずは忠誠を誓わせてください!」
そう叫ぶと、彼女は僕の前で跪き、僕の手を取り、その甲にそっと唇を寄せた。
その瞬間、彼女は僕のものになった。
だからメルキアには、これらから僕の言う通りにやってもらおう。
僕はメルキアのスキルを戻してやるとともに、今まで以上に人気が出るように協力することにした。
「スキルが戻ったんだから、また魔物討伐には問題なく参戦できるよね」
「はい、もちろんです。アルト様のためにも活躍してまいります!」
「じゃあ、今までの聖女の衣装をアレンジして……ミニスカートでニーハイソックスで絶対領域でフリフリ衣装で魔物討伐やってきてね」
「……はい?」
「それから魔物討伐が終わったら、みんなの前で歌って踊ってね。命令だからね」
「……わ、わかりました」