※この作品はR-18です。

君が無能くん?魔剣士学園に入学したのに『スキル無し』?ねぇ今どんな気持ち?努力したって報われないのに希望とかあるの?普通の青春を送りたい?あはっ! 無能には無理に決まってるじゃん   作:鳥稲のね

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第40話

 

モモア、リア、ユノアの三人は完全に息を切らし、額から汗を滴らせながら、地面に手をついていた。

 

レティシアによる猛攻に耐え続けたせいで、全身は打ち身だらけ。

 

木剣を握る手も震えていて、まるで今にも崩れ落ちそうだった。

 

 

「……休憩を取るぞ」

 

 

レティシアの一言で、一時的に訓練が中断された。

 

三人はへたり込み、肩で息をしながら水を口に運ぶ。

 

僕はそんな三人の様子を見ながら、ゆっくりとレティシアに近づいた。

 

 

……ここだ。

 

 

このタイミングしかない。

 

そう思って、僕は一歩踏み出した。

 

 

「レティシア様、実は……僕、レティシア様の大ファンなんです」

 

 

そう言った瞬間、レティシアの眉がピクリと動いた。

 

 

「……」

 

 

何も言わず、じっと僕のことを見てくる。

 

でも、すぐに僕の言葉を吟味するような表情に変わった。

 

 

「さっきも好きで好きで仕方なくて……すみません。熱い目線を向けていたので、変に思われていたのかもしれませんね。こんなタイミングでお伝えしてすみません」

 

「……そうか」

 

 

少し間を置いて、レティシアは腕を組んだまま答えた。

 

 

「まぁ、私のファンは多いからな」

 

 

……あれ?

 

まんざらでもない表情してるんだけど。

 

 

「そうですよね。レティシア様ほどのお方です。たくさんファンがいて当然ですし、気持ち悪いファンもいるでしょうから、警戒されるのもごもっともだと思います」

 

 

僕がそう言うと、レティシアの口角がわずかに上がった。

 

……もしかして、こういうのに弱いのか?

 

 

「……あの、レティシア様。僕と握手していただけませんか?」

 

「あぁ、かまわないぞ」

 

 

意外だった。

 

さっきまで僕のわずかな殺気を感じ取って、即座に木剣を喉元に突きつけてきたというのに。

 

 

「うれしいです」

 

「サインもしてやろうか?」

 

 

……え、ノリノリだな、レティシア。

 

まぁいい。

 

とにかく、彼女に触れることができれば――。

 

 

僕は手を差し出す。

 

 

レティシアもためらうことなく、手を差し出してきた。

 

 

……手と手が触れる。

 

 

……握る。

 

 

 

―――スキル強奪、発動。

 

 

 

一瞬、レティシアの身体がビクッと震えた。

 

 

そして……

 

 

「……っ! お前、今何をした!?」

 

 

次の瞬間、レティシアは僕の手を振り払い、拳を振り上げた。

 

 

―――バキッ!

 

 

「いてえ!!」

 

 

頬に鋭い痛みが走る。

 

レティシアの拳が僕の顔面を殴りつけた。

 

僕は尻もちをついた。

 

衝撃で視界が揺れる。

 

でも……

 

死ぬほどではない。

 

耐えられないほどではない。

 

……そうだ。

 

スキルを奪った後だから、レティシアの能力は下がっている。

 

 

「……殴るなんてひどいじゃないですか? 僕は何もしていませんよ」

 

「何もしていないだと……嘘を言うな……変な雰囲気を発しただろ……あれ?」

 

 

レティシアの表情が変わる。

 

訓練中、僕が遠くに立っていた時ですら殺気を拾い上げたレティシア。

 

異常なまでの勘の鋭さを誇る彼女が、今は僕の「違和感」を探ろうとしながらも、それが何なのかわからずに困惑していた。

 

 

「……?」

 

 

首を傾げながら、自分の手を握ったり開いたりしている。

 

気づけないのか。

 

スキルを所持していた時の「感覚」がなくなったせいで、今まで自然に察知できていたものが何もわからなくなっている。

 

 

「ほら、勘違いですよ。僕はレティシア様が好きだから……変な熱意を向けちゃって、それを感じたんじゃないですか?」

 

「……そうだろうか……」

 

 

レティシアは少し考え込んでいたが、やがて僕の言葉を受け入れたようだった。

 

 

「……いや、殴ってすまなかった」

 

「別にいいんですよ。そろそろ訓練を再開されては?」

 

「……ああ、そうだな」

 

 

僕はこっそり、モモア、ユノア、リアにサインを送った。

 

三人は疲れ切っていたはずなのに、僕の意図を察して、小さく頷いた。

 

 

……ここからが本番だ。

 

 

 

 

「……あれれ? レティシア様、どうされたんですか?」

 

 

モモアが不敵な笑みを浮かべながら、木剣を構える。

 

 

「……くっ」

 

「全然に力が入っていませんよ? もしかしてお疲れですか?」

 

 

リアが鋭い視線を向ける。

 

 

「……そんなことはない」

 

「私たちが弱すぎるからって、手加減しないでいいんですよ?」

 

 

ユノアが煽るように言うと、レティシアの顔が少し引きつった。

 

 

「……調子に乗るな」

 

 

レティシアが剣を振るう。

 

……でも

 

先ほどまでの圧倒的な速さも鋭さもない。

 

木剣が明らかに鈍っている。

 

 

「ふっ!」

 

 

―――ガッ!

 

 

モモアの木剣が、レティシアの肩に当たる。

 

 

「はっ!」

 

 

―――ビシッ!

 

 

リアの木剣が、レティシアの手を打つ。

 

 

「……!」

 

 

―――バシュッ!!

 

 

ユノアの木剣が、レティシアの胴を打ち抜いた。

 

 

「よ、よくやった。きょ……今日の訓練はここまでだ」

 

 

レティシアが息を切らしながら、苦しそうに言う。

 

 

「え? もう終わり? さすがに拍子抜けなんですけど」

 

 

モモアがわざとらしく肩をすくめる。

 

 

「今日の訓練はいつもの三倍するとか言ってませんでした?」

 

 

リアが冷静に突っ込む。

 

 

「……やはり、今日は私が調子が悪いのだ」

 

 

レティシアが苦し紛れに言い訳をする。

 

 

「戦場に立つ者が言い訳なんてできないって、いつも言ってませんでしたっけ?」

 

 

ユノアがニヤリと笑う。

 

 

「ほ……本当に今日は調子が悪くて……」

 

「レティシア様、剣を拾ってくださいよ。ほら、立って」

 

「う……」

 

 

こうして、今度はレティシアの地獄の訓練が始まった。

 

 

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