君が無能くん?魔剣士学園に入学したのに『スキル無し』?ねぇ今どんな気持ち?努力したって報われないのに希望とかあるの?普通の青春を送りたい?あはっ! 無能には無理に決まってるじゃん 作:鳥稲のね
クラウディア魔剣士学園において、年に一度の特別な日が訪れた。
―――ルルディ記念日。
別名『聖花の日』または『一輪の花の日』ともいう。
それは想いを寄せる人に一輪の花を贈る日。
現代日本で言うなら、ちょうどバレンタインデーに近い。
ただ、違いがあるとすれば、贈るのは女子からではなく男子からという点。
花を受け取った女子は、相手のことが気に入ったら、後日デートに誘う。
この日が近づくと、男子の間では誰に花を贈るかが話題の中心となる。
この日が終わると、女子の間では誰から花をもらったかが話題の中心となる。
モテモテの女子ともなれば、一輪ずつもらっても大きな花束になり……それが何束にもなる者もいる。
そうなると、相手の男子のことなど一人一人覚えていられないだろう。
だから、そういった相手には花とセットで手紙を贈るのが習わしとなっている。
―――トア・フェルディナント
クラウディア魔剣士学園の三年生。
七剣姫のリーダーでもある。
「癒しの巫女」 の名を冠し、フェルディナント家に伝わる神秘的な舞いと強力な治癒魔法を扱う美しき魔剣士。
その力は肉体だけでなく精神にも作用し、彼女の微笑み一つで心の傷さえ癒す。
それ以上に、彼女の魅力と言えば……。
彼女のふわふわの淡いピンク色の巻き髪。
そして豊満なバスト。
柔らかく包み込むような優しい雰囲気。
そして豊満なバスト。
優しく微笑む口元。
そして豊満なバスト。
つまり、おっぱいが大きい。
やほいうほほい爆乳だ。
その母性は男子たちの憧れの的。
彼女は、学園内で絶大な人気を誇る存在だった。
この日、学園の男子たちは朝から異様な緊張感に包まれていた。
「くっ……緊張する……!」
「お、お前もトア様に花を贈るつもりか!?」
「当たり前だろ! でも、俺なんかが渡しても……。」
「いや、わからんぞ! ほら、あの噂を聞いたか? 何でも『無能』のやつが七剣姫の誰かと付き合っているとか……」
「……ま、まじか!? それが本当なら、俺にだってチャンスがあるかもしれない!」
「よし、覚悟を決めるぞ……!」
次々と意を決した男子生徒たち。
トアがいる三年生の教室のへと向かう。
「トア様! これ、受け取ってください!」
最初に飛び込んできたのは、一年生の男子。
緊張で震える手に、一輪の美しい青い花を握っている。
「まあ、ありがとう。」
トアはにっこりと微笑みながら その花を受け取る。
少年の顔が、一瞬にして真っ赤に染まる。
「あと、こ、これ……!」
差し出されたのは、一通の手紙。
「ラブレターです! ぜひ読んでください!」
「うれしいわ。」
―――ビリッ
読まずに破った。
「えっ……?」
彼は、目の前で破られたラブレターの紙片が宙を舞うのを、ただ呆然と見つめることしかできなかった。
「……!?」
「ふふっ……ごめんなさいね?」
トアは微笑みながら、まるで大したことではないかのように、紙片を床の上に放った。
「今日は忙しくて、いちいち読む暇がないのよ。」
「…………。」
「いつもなら細かい所まで読んで馬鹿にして差し上げるんですが……」
それを見ていた周りの男子生徒たちの顔が、スゥッと青ざめていく。
しかし、ここまで来て退くことは出来ない。
「トア様……! お、俺も……!」
「ありがとう。」
―――ビリッ
「トア様! これ、思いの丈を書いてきました……!」
「うれしいわ。」
―――グシャグシャ…ポイッ
「トア様、僕の気持ち、受け取ってください!!!」
「まぁ……。」
―――ビリビリッ
トアの机の上に、花だけが積み重なっていく。
彼女は 淡々とラブレターを破り続けた。
「え、えぐい……!」
「トア様、マジで一瞬で破り捨ててるんだが……。」
「何だろう、目の前で破られるって、すげぇダメージ だ……。」
「心が折れる音がした……。」
もちろん、トアが読まずにラブレターを破っているのには理由がある。
「トア様、お花を!」
「トア様、どうか受け取ってください!」
「トア様ぁぁぁ!」
彼女の元に殺到する男子の数が、尋常ではないのだ。
すでに教室の一角は、男子たちの行列が出来ており、廊下にまで伸びている。
彼らの手には一輪の花とラブレターが握られている。
「ふふ……今日は本当に忙しいわ。」
彼女は、次々とラブレターを破りながら 穏やかに微笑んだ。
男子たちの心が次々と折られる中、トアの机の上には、数え切れないほどの花が積み上がっていく。
それは、まるで巨大な花束の山。
「トア様、俺の花と手紙も、もらってください……!」
「ええ、ありがとう。」
———ビリッ
こうして、クラウディア魔剣士学園の『一凛の花の日』は、男子生徒たちの地獄となった。