※この作品はR-18です。

君が無能くん?魔剣士学園に入学したのに『スキル無し』?ねぇ今どんな気持ち?努力したって報われないのに希望とかあるの?普通の青春を送りたい?あはっ! 無能には無理に決まってるじゃん   作:鳥稲のね

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第47話

 

『一輪の花 ~聖花の剣姫 ルルディ・ブルーメ~』

 

 

――それは、王国を救った 聖花の剣姫・ルルディ と、彼女を愛し続けた一人の文官 サイモンの、儚くも美しい物語。

 

 

時は今から数百年前。

 

王国は存亡の危機に瀕していた。

 

魔王軍は勢力を増し、王都の目前まで迫っていた。

 

防衛の要である国境の砦はすでに陥落し、王国軍は劣勢を強いられていた。

 

王城では連日、戦況報告と対策会議が開かれていたが、結論は一つ……

 

 

―――勝ち目は薄い。

 

 

王国には、戦況を覆せるだけの戦力がなかった。

 

この時代、剣士たちはまだスキルという概念を持っていなかった。

 

剣技と魔法を組み合わせた魔剣士という存在すら、まだ生まれていなかったのだ。

 

 

そんな中、唯一の希望とされたのが、王国最強の女騎士ルルディ・ブルーメ だった。

 

彼女は騎士学校(現在の魔剣士学園の前身)を首席で卒業し、数々の戦で輝かしい戦績を残していた。

 

魔法も少しは扱えたが、それはあくまでも補助程度。

 

彼女は戦場を駆け、幾度も仲間を救い、王国を支えてきた。

 

 

しかし……

 

『たった一人英雄がいるだけで、魔王軍の大群に勝てるはずがない。』

 

それが、誰もが抱いていた本音だった。

 

それでも彼女は剣を手に取り、戦場に向かう覚悟を決めていた。

 

 

 

出陣の前夜。

 

 

 

ルルディは 一人の男性に会いに行った。

 

彼の名は サイモン。

 

かつて彼女と共に騎士学校で学んだ同期だった。

 

しかし、サイモンは剣の才に恵まれず、騎士になる夢を諦め、文官の道を選んだ。

 

彼の頭脳は優秀で、今では国の行政を支える立場にあった。

 

 

ルルディは、ずっと彼に想いを寄せていた。

 

そしてサイモンもまた、同じ想いを抱いていた。

 

 

だが、お互いにそれを口にすることはなかった。

 

騎士として生きる者と、文官として国を支える者……。

 

二人は違う道を歩んでいたから。

 

 

「……もう、行くのですか」

 

 

サイモンの声は震えていた。

 

 

「ええ。たぶん、これが最後になるかもしれないわ」

 

 

ルルディは微笑んでみせた。

 

サイモンは、一輪の白いの花を取り出し、彼女に差し出した。

 

 

「戦場に花束は邪魔でしょう。……だから、これを」

 

 

ルルディは、目を丸くした。

 

一輪の花だけで思いが伝わった。

 

サイモンも自分のことが好きだったのだ……。

 

 

「帰ってきたら、大きな花束を贈りますよ」

 

 

サイモンはそう言って、彼女の手にそっと花を握らせた。

 

ルルディはしばらくその花を見つめ、やがて微笑んだ。

 

 

「その時は私からデートに誘うわね」

 

 

二人は、互いに何も言わず、ただ短く笑い合った。

 

 

 

それが、彼らの最後の約束だった。

 

 

 

ルルディは戦場で奇跡を起こした。

 

 

彼女はただの剣士だったはずなのに、戦場で突然、異変が起こったのだ。

 

 

 

花が咲いた。

 

 

 

それは、戦場に咲くはずのない美しい花だった。

 

魔王軍の兵たちは、ルルディが生み出した謎の力に怯え、混乱し、戦意を喪失した。

 

未確認ながら、彼女は 「花のスキル」 を開眼したのではないかと言われている。

 

それが何なのか、どんな効果を持っていたのか、今となっては誰にも分からない。

 

ただ確かなことは、ルルディがその戦いを制し、魔王軍を撃退したこと。

 

そして、彼女は二度と帰って来ることはなかった……ということ。

 

 

 

戦況をひっくり返し、王国を救った彼女は、その場に倒れ、動かなくなった。

 

彼女の亡骸の周囲には、一面の花が咲き乱れていたという。

 

人々は、彼女の戦いを 『聖花の奇跡』 と呼び、その名を後世にまで語り継いだ。

 

 

 

ルルディの死は王国中に広まり、誰もが彼女の英雄としての最期を悼んだ。

 

そして、彼女の墓には数えきれないほどの花が捧げられた。

 

大勢の人々が豪華な花束を捧げる中、たった一輪の白い花そっと墓前に置いている者がいた。

 

 

サイモンだった。

 

 

「……いつも君は僕よりも遥か先を行ってしまう。今回はえらく遠くの待ち合わせ場所を選んだね」

 

 

彼は、それ以上、何も言わなかった。

 

 

 

その後、サイモンは王国の宰相にまで上り詰め、魔族との戦争の傷跡からの復興においても尽力し、国家の発展に大きく貢献した。

 

 

彼は死ぬまで独身を貫いた。

 

生前、サイモンは身の回りにたくさんの花を飾っていた。

 

周りの者が理由を尋ねても、彼は決して答えなかった。

 

多分……彼は花が好きなんだろう……それくらいにしか思われなかった。

 

 

そして、彼が天寿を全うし、死の間際に残した最後の言葉は……。

 

 

「……やっと君の元に花束を届けられるよ」

 

 

そう、彼はいつ死んでも、すぐにルルディに花束を届けられるように、生きている間ずっと、身の回りに花を飾り続けていたのだった。

 

 

国民は彼の死を悼み、再び数えきれないほどの花を彼の墓へと捧げた。

 

サイモンとルルディの愛の深さに思いを馳せ、心を痛ませ、涙した。

 

 

 

しかも、ちょうど彼が旅立ったその日は、ルルディの命日であった。

 

 

 

やがて、人々は ルルディとサイモンの命日 を『聖花の日』 として記念するようになった。

 

 

この日、王国では 男性が女性に一輪の花を贈る風習が生まれた。

 

それは、かつてサイモンがルルディに贈った一輪の花から来ている。

 

そして、花を受け取った女性は気になる男性をデートに誘うという習慣も、この物語に由来している。

 

 

―――サイモンは言った。

 

「帰ってきたら、大きな花束を贈りますよ」

 

 

―――ルルディは言った。

 

「その時は私からデートに誘うわね」

 

 

こうして、今でも 『聖花の日』 には、多くの男性が意中の女性へ花を贈る。

 

 

それは、ただの贈り物ではない。

 

それは、誓いの花。

 

それは、想いを込めた花。

 

 

そして……

 

 

かつて王国を救った聖花の剣姫と、存命中は彼女と結ばれることがなかった不器用な青年との、永遠の敬意の証。

 

 

 

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