君が無能くん?魔剣士学園に入学したのに『スキル無し』?ねぇ今どんな気持ち?努力したって報われないのに希望とかあるの?普通の青春を送りたい?あはっ! 無能には無理に決まってるじゃん 作:鳥稲のね
僕が用意していたのは六本の花。
無難に定番の白い花にした。
すでに、一本は朝一番でメルキアに渡した。
残りは五本。
ララ。モモア。リア。ユノア。そして、レティシアの分。
さて、次はララに渡さないとな。
教室に到着し、中に入る。
すでにクラスメイトの大半の生徒が着席し、それぞれ会話を楽しんでいた。
机の上に花を並べて談笑する女子たち。
誰に渡そうとしているのか、手に一本の花を持ったままの男子たち。
学園の花贈りの習慣は、毎年の恒例行事だ。
もらった花の数がそのまま人気を示す指標のようなものになっている。
僕はララに挨拶をする。
「おはよう、ララ。」
「アルト君、おはよう」
ララは僕に手を振ってくれた。
自分の席に座っていたララ。
机の上には十本程度の花が置かれていた。
モモアたちに比べたら少ないのだが……ララも十分にモテる。
―――そうか……十人以上もライバルがいるのか……。
僕はララの前に立ち、ゆっくりと、一輪の花を差し出した。
「ララ……これ、もらってください」
「え……あ、ありがとう。」
ララは驚いたように花を受け取り、そのあと、少し照れくさそうに微笑んだ。
「……うれしい。でも……今年の私って変なんだ。こんなに花をもらってるんだよ?やっぱり、アルト君のおかげかな」
「僕のおかげ……何で?」
「だって……アルト君のおかげで、モモアさん、リアさん、ユノアさん……こんな素敵な三人と一緒にいる機会が増えて。きっと後光効果ってやつだよ……」
そう言って彼女は自嘲気味に笑った。
後光効果……ハロー効果ともいう。
ある対象を評価する際に、その目立つ特徴に引きずられて他の特徴についての評価が歪められる現象を指す。
「……私なんて全然かわいくないのに。こんなに花をもらえるようになっちゃった」
「そんなことないよ。」
僕は即座に否定する。
「ララは素敵な女の子だと思うよ。」
「……ありがとう。あ、そうだ……アルト君は、もうモモアさんたちにお花を渡したんだよね?」
「まだだよ」
「えっ!?……先にモモアさんに渡さなくてもいいの?」
「うん、大丈夫。このあと渡すし」
「そう……なんだ」
その言葉を聞いて、ララは微妙に複雑な表情をした。
―――やっぱり、渡す順番って重要なのか。
僕は心の中でため息をつく。
モモアも、リアも、ユノアもそうだった。
女の子たちは花を受け取る順番に対して、思っている以上にこだわるらしい。
僕には モモア、リア、ユノアという恋人がいる。
そこに、レティシアや……あと一応メルキアも加わった。
でも、それは僕が『スキルを奪う力』を持っていたからに過ぎない。
彼女たちは僕の恋人だけど、どこか歪な関係だ。
その一方で、ララだけは違った。
彼女は僕のスキルと関係ない。僕という人間を見て、判断してもらいたいと思っている。
だから、僕からは 告白しない。
無理やり何かをすることも絶対にしないと決めていた。
僕はただ、ララが僕を選んでくれる日を待っている。
そして、僕はモモアたちの元へ向かった。
「……モモア。」
僕が花を差し出すと、モモアは驚いたように目を見開いた。
一瞬、僕の顔をじっと見つめた。
そのあと、彼女は恥ずかしそうに視線をそらしながら、ゆっくりと手を伸ばして受け取った。
「……ありがと。」
いつもより小さな声で、少し早口だった。
「リア。」
「……ありがとございます。」
リアは、いつも通り。
表情は変わらないんだけど。
でも、きっと喜んでくれてると思う。
「ユノア。」
「うん……ありがとう。」
僕が花を差し出すと、ユノアは柔らかく微笑んで、それを大事そうに受け取った。
僕はふと、三人が持っている花束に目を向けた。
男子生徒たちから何十本もの花を受け取っている。
……でも。
よく見ると、三人とも僕が渡した一本だけ、別に分けて持っていた。
僕の花だけが、特別だった。
それが、彼女たちの想いを示しているように感じた。
なんだか気恥ずかしくなって、僕はそっとララの方へ視線を移す。
ララは……?
そう思って彼女がもらっていた花を見ると、僕があげた花も一束にまとめていた。
いや、別にいいんだけど……。
普通そうすると思うし……。